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「わたし、どうなっちゃうんだろう…?」
この先の不安はあった。
親しい人々が離れて行って、寂しい気持ちもあった。
けれど溜まりに溜まった気持ちを、どこにも吐き出せないのが一番辛かった。
誰にも打ち明けられず、押し殺すことしかできないのがイヤだった。
「でもっ…!」
今更クラスメート達に謝るのもイヤだと思う自分がいた。
彼女はまだ、感情を良く理解できていなかった。
だから周囲の人間が離れて入った理由も、よく理解できていなかったのだ。
周囲からどんなに言われても、聞き入れられなかった。
いや、聞き入れたくなかった。
今まではしてくれたのに、いきなりしてくれなかったことに不満を感じたのだ。
その理由が、自分が元気になったことだなんて、納得できるはずがなかった。
彼女は自分が元気になろうがなるまいが、変わらぬ接し方を求めていたのだ。
だがそこの意見が食い違い、あんなことに…。
「何よ…。わたしは悪くない。わたしは元気になりたいって、願っただけじゃない」
願いは叶った。
あの店で買ったネックレスによって。
ネックレスを服の下から出し、ぎゅっと握った。
赤いハート型の石は、買った時よりも美しく輝いていた。
「わたしにはコレさえあれば、充分」
そう思っているハズなのに、どこか心が満たされない。
ぐっと歯を食いしばった。
閉じたまぶたの裏には、自分を気味悪そうに見ている周囲の人間達の姿が、浮かんでは消える。
「何よ…。何でそんな眼で、わたしを見るのよ…!」
じわじわと、暗い感情が心を満たしていく。
それと同時に、赤い石が光り輝きだす。
「わたしは…悪くない! わたしは何にも悪いことはしていない!」
石の光は彼女の手からもれ出し、周囲を赤く染める。
しかし眼を閉じている彼女は気付かない。
「何よ何よっ! 全部消えてよっ!」
彼女は耐え切れなくなり、地面を蹴った。
すると…。
ピシビシっ
建物にヒビが入っていく。
やがて地面にまでヒビが入り、建物は崩れ始めた。
「っ!?」
彼女が気付いて動くのには、数瞬ほど遅かった。
崩れていく建物に、彼女の体は飲み込まれていった。
彼女の体と共に、赤い光も落ちていった。