表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

少しの感情の昂りも、すでに力となって現われてしまう。


ネックレスはすでに、クリスタルの部分は無くなっていた。


真っ赤なハートのネックレスを首から下げ、彼女は暗い表情をしていた。


「外さなきゃ…でも…」


ハートを見るたびに、外そうと思う気持ちは消え失せてしまう。


毒々しくも、見るモノを魅了する赤い色。


それが眼に焼き付くのだ。


「もう…部屋から出なくてもいいかな」


外すぐらいなら、外の世界との関わりを絶った方が良いと思ってしまう。


そうして彼女は部屋から出なくなった。


けれど両親は心配する。


なので夜にたまに散歩することにした。


人に見られるのがイヤだった。


例の学校での事件は、かなり噂になっていたから。


そしてある日、彼女は試した。


街外れには廃墟が建ち並んでいる。


景気が良い時は盛り上がっていたが、不景気になるとここには人が寄り付かなくなった。


廃墟となったマンションやビル、それに工場が建ち並ぶここには、人は滅多に寄り付かない。


彼女はネックレスを握り締め、眼を閉じた。


心の底から、封印していた激情がわき起こる。


彼女は足を踏み締め、その場でジャンプした。


すると軽く3メートルは跳んだ。


建物のベランダに足をかけると、次々と跳び、ついには30階建てのマンションの屋上までたどり着くことができた。


そこまで息1つ切らさず、しかし彼女は愁いの表情を浮かべていた。


「どうしてっ…こんなことができるの?」


例の店に行こうとした。


だが何故か、何度行っても行けなくなっていた。


あの建物と建物の間の道を通っても、裏通りに出るだけ。


そこは住宅街になっていて、店なんてどこにもなかった。


住人達に店のことを尋ねるも、誰も知らないと首を横に振るだけだった。


店の人達のことを聞いても、知らぬ存ぜぬという言葉が返ってくるだけ。


「どうなっているんだろう…」


ため息をつきながら、屋上の柵に寄り掛かった。


感情を押し殺そうと思っても、一度解放することを覚えてしまったせいか、中々上手くいかない。


そのせいで、部屋中の物が壊れてしまっている。


壊したくて壊しているワケじゃない。


けれどもれ出した感情が、暴走しているのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ