表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

10日間の謹慎処分が開けて学校へ行くと、彼女に近付く人はいなかった。


遠巻きに彼女を見ては、ヒソヒソと話をしている。


だが彼女はそのことに、怒りを感じなかった。


あの日、あの時感じた戸惑いから、未だ抜け出さずにいた。


クラスメートを押した時、さして力なんて入れていなかった。


なのにクラスメートの体は吹っ飛び、ガラス窓を突き破ったのだ。


そんなこと、大人の男性でも難しい。


そこまでの力が自分にあるとは思えなかった。


しかしコレは現実。


つまり自分は元気を通り越して、力が有り余っている状態になっているのか。


彼女は制服の上からネックレスを掴んだ。


赤い石は、クリスタルより二回り小さいぐらいになった。


最初はそれこそクリスタルの10分の1ぐらいの大きさだったが、今ではここまで大きくなっていた。


この赤い石の成長と、自分の力は無関係なのだろうか?


今頃になって、このネックレスの不気味さを感じてきた。


確かあの店の青年は言わなかったか?


『感情はコントロールしてください。くれぐれも、あまり昂らせないよう、お気をつけてください』


…と。


すなわち、自分の感情の昂りが、このネックレスを通して発揮されるということだろうか?


彼女はグッと歯を食いしばった。


それからというもの、彼女は元気になる以前よりも、人と接することを減らした。


感情の昂りが、力の制限を越えてしまうことを自覚したからだ。


本当はネックレスを外せば良かった。


けれど外そうとネックレスを見ては、赤いハートを目にして、思い留まってしまう。


外すよりも、自分で感情をコントロールすればいいだけだと、考えてしまうのだ。


周囲の人間の態度は冷たいものの、何かを傷つける方が怖かった。


彼女はしばし、感情を殺した生活を送っていた。


…だが、それも長くは続かなかった。


人と触れ合うことを減らすと、だんだんストレスが溜まっていった。


何故自分がこんな目に合わなくちゃいけないのか。


そもそもあのクラスメートが自分を怒らせなければ、こんなことにはならなかったのではないのか。


誰にも打ち明けることのできない不満は、クリスタルの中の赤い石を大きく成長させていった。


バキンッ!


「えっ?」


彼女は驚いて顔を上げた。


無意識に掴んでいた鏡が、割れていた。


「あっ、今…イライラしてたから?」


彼女は呆然と割れた鏡を見下ろした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ