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3

スッと彼女の目が細められた。


「わたし…丈夫になりたいんです」


「お体が弱いのですか?」


「ええ…。生まれ付き、心臓に持病があって…。普通に元気には生きられないんです」


「それはそれは」


「だから、普通に生きてみたい」


その声は消え入りそうなぐらい小さかったものの、強い意志がこもっていた。


「―かしこまりました。少々お待ちください」


青年は踵を返すと、品物を置いている棚から何かを取り、戻って来た。


「お客様にはこちらが良いかと思われます」


そう言って差し出してきたのは、1つのネックレスだった。


金の鎖に、ハート型のクリスタルが付いている。


「可愛いですね」


「喜んでいただけて嬉しいです。どうぞお手に取って見てください」


青年から手渡され、彼女はネックレスを手にした。


よく見ると鎖は編みこまれており、ハートのクリスタルも、中に小さなハート型の赤い石がある。


「あの、この赤い石は何ですか?」


「それもパワーストーンなんですよ。それを身に付けていれば、お客様は元気になれます」


「はあ…」


パワーストーンはいくつか持っていた。


けれどそれも物は試しという気持ちだった。


でもこのネックレスは、不思議と惹かれてしまう。


特にクリスタルの中に、赤い石が入っているという珍しいのに、興味がわいたのかもしれない。


「…じゃあ、コレをいただきます」


「ありがとうございます」


彼女は立ち上がり、青年と共にカウンターに向かった。


「お客様は感情が昂りやすいですか?」


「えっ?」


ネックレスを包んでいた青年が言った言葉は、彼女にとっては身に覚えのないことだった。


「いえ、全然。あんまり感情が昂ると、倒れちゃうんで…」


「…そうですか。ならば大丈夫だと思いますが」


青年は笑みを浮かべたまま、包装し終えたネックレスを差し出した。


「感情はコントロールしてください。くれぐれも、あまり昂らせないよう、お気をつけてください」


「はっはい…」


お茶とネックレスの代金を支払い、彼女は店を後にした。


彼女が店を出て行くと、奥から3人が出て来た。


「久し振りの客だったな、ソウマさん」


最近の若者風の青年ことハズミが、ニヤニヤ笑いながら声をかけてきた。


「でもまたマカが怒り出しそうな品物を売ったんですね」


真面目そうな青年ことマミヤが、複雑な表情でドアを見つめた。


「お客様のご要望でしたからね」


「でもあのネックレスの真の力、説明しなくても良かったの?」


紅一点のマリーは壁に寄り掛かり、ネックレスがあった棚に視線を向けた。


「あのネックレスの正体を話したところで、彼女は信じないでしょう。黙ってあげた方が、効果が出た時、喜ぶでしょう」


「でもそれじゃあマカに怒られるんじゃないの~?」


マリーはニヤッと笑う。


ハズミもニヤニヤ笑う。


「そうそう。あのネックレス、いかにもマカが嫌いそうな効果を発揮するからな」


「ですが警告はしましたよ? 後は彼女次第ですよ」


店主・ソウマも笑みを浮かべる。


しかしその笑みの意味は、決して良いものではない。


それを悟り、マミヤは深く息を吐いた。


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