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「ふぅ…」


改めて一人になると、彼女は胸元を押さえ、ため息を吐いた。


痛みは何とか治まったが、不安は残った。


今朝は体調が良かった。


だから授業も最後まで受けた。


でも…やっぱりムリだった。


疲れが心臓にきてしまった。


いつもこうだった。


ちょっとでも疲れたり、動いたりすると痛む心臓。


それだけならまだマシ。


酷い時は貧血で、その場で意識を失うこともあった。


自分ではどうにもならない分、苛立ちは募っていく。


家族や先生、友達が自分のことを疎ましがっているように思えてならなかった。


いつも自分のこの体質が原因で、面倒をかけてしまっていたから。


何とか丈夫にならないものかと、いろいろ試したが全ては無駄な努力となった。


今では何とか心を平穏に保つことで、症状を抑えている。


本当は大声で叫びたい気持ちもあった。


けれどそんなことをすれば、ぶっ倒れるだけだろう。


時間と共に、希望は潰え、虚しさだけが心を占めていった。


「お待たせしました」


青年が奥から戻って来た。


テーブルには良い香りのするハーブティーとスコーンを置かれた。


「美味しそう!」


ハーブティーを一口飲むと、体の中からスッキリした気分になる。


「スコーンは生クリームとイチゴのジャム、そしてチョコクリームでお召し上がりください」


「はい。あのこっちの茶色のはココアですか?」


「ええ。プレーンとココアをご用意いたしました」


彼女はプレーンのスコーンにイチゴジャムを付けて、頬張った。


「このスコーンも美味しい! ジャムも美味しいですね」


「ありがとうございます。ハーブティーはおかわり自由ですので」


「分かりました」


彼女はしばし時間を忘れ、スコーンとハーブティーを楽しんだ。


やがてスコーンを食べ終え、ハーブティーも最後の一口を飲み干したところで、再びため息が出た。


「ありがとうございました。美味しかったです」


「いえ、こちらこそ」


青年は微笑み、食器を片付けた。


「ところでお客様」


「はい?」


「お客様のお望みになる品物は、何でしょう?」


「えっ…?」


彼女は眼を見開き、青年を見上げた。


青年は変わらず笑みを浮かべ続ける。


「当店には、心よりお客様が望むモノしか置いてありません。つまり、お客様が強い望みを持つ方だということです」


「わたしの…望み…」


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