終局
「ソウマさん、コレは…」
「後でマカに怒られるのでは…」
「…またとんでもないことになったものね」
ハズミ・マミヤ・マリーの3人は、新聞を広げて見ながら、引きつった表情を浮かべていた。
「…ウチの責任、ですかねぇ」
さすがのソウマもバツの悪そうな顔をしていた。
新聞の一面には、廃墟と化していた地域の記事が載っていた。
そして写真には、崩壊した廃墟跡が大きく掲載されていた。
『一瞬にして崩れ落ちた廃墟! 老朽化が問題か!』
などと記事には出ていた。
「あのお客様、大人しそうに見えて、かなりの激情家だったんですね」
「女を舐めたら痛い目見るって、マカで習わなかったの?」
マリーが呆れた顔で、ソウマを見た。
「あはは…」
「あの幽霊地域、すっかり見通しが良くなったみたいだな」
「ある意味、解体する必要が無くなったとも言えるんだが…」
さすがのハズミとマミヤも、戸惑いを隠せない。
彼女の一蹴りは、全ての廃墟を崩壊するほどの威力を持っていた。
それはもちろん、ソウマが買わせたあのネックレスのせいだ。
「あのネックレスはそもそも、持ち主の感情を吸い込み、力に変換するだけの物だったんですけどね」
ソウマは遠い眼をした。
「まさかアレほどまで激情家だったなんて、思いもよりませんでした」
「あの女の子、気が強いどころの話じゃなかったみたいだな」
「ハズミは気付いていたんですか?」
「まあ何となくは。病弱体質というわりには、不満バリバリって顔してたし。それが自分に向けてのものなのか、それとも他のモノに対してなのかは分からなかった」
「でっでも少なくとも、この店に来た時は前者だったんじゃないか?」
「マミヤの言う通りだと、オレも思う。けど調子付いてしまったんだな。自己反省よりも、責任転嫁することを覚えてしまった」
新聞をたたみ、ハズミは難しい顔をした。
「まあどちらにしろ、結末は変わんなかったと思うぜ? 他人に向かおうが、自分に向かおうが、どの道あの女の子は強い感情を持ち過ぎた。コントロールできなかったのは、彼女に非がある」
「そう言ってもらえると、少しは救われます。問題は…」
「マカ、だな」
「…ええ。今から来るそうです。この事件のことについて、聞きたいことがあると」
「あらまあ。じゃあせめて、マカの好きな飲み物とお菓子を用意しときましょうよ。女の子は甘い物には弱いから」
「マリー、それがマカにも通用すると思いますか?」
「たっ多分」
「まっまあまあ。ソウマさん、備えあればですよ。用意はしときましょうよ」
マリーとマミヤが必死でとりつくろう。
「…はあ。そうですね。ではマカの好きなダークチェリーを使ったホワイトチョコケーキでも作りますか。あとココアコーヒーですね」
「マカ、ココアとコーヒーをブレンドした飲み物、好きよね」
「マリーが作ってあげてから、すっかりお気に入りのようですよ」
「アラ、嬉しい。じゃあ早速粉を挽いておきますか」
「ハズミとマミヤはケーキ作りを手伝ってください。大至急、作らなければなりませんから」
「あいよ」
「分かりました」
そして四人は店の奥へと姿を消した。




