第十六片-偶像枝篇-
超絶遅い投稿となりまことに申し訳ありません(泣)また、今回は今までシリアスばかりだったためギャグ成分多目でお送りいたします
禍津町・影沢診療所にて…。
因縁の相手であり実兄でもある凍牙・ヴォルフとの戦いに終止符を打ち、致命傷を負いながらも悪運と生命力の強さ、そして何よりリューカ達の尽力によって一命を取り留め、現在治療中につき響の叔父である影沢纐纈の経営している診療所にて入院中の蒼牙・ヴォルフはというと…。
(あーーーー………ヒ・マ・だ!傷を治す為とはいえ、何もしないでこうして寝てるだけってのも退屈なもんだな…)
…暇を持て余していた。当然である。なにせ運び込まれた当初は凍牙の死に際の悪足掻きにより脇腹が抉れてしまっており、モノがモノなだけに絶対安静の緊急入院を影沢から言い渡されていたのだ。魔族は生き延びさえすればその生命力の高さ故に大抵の傷は直ぐ様塞がり元通りになるものの…彼の場合はほんの一時とはいえ生きることを諦めていた事が原因だろう、回復が通常よりもかなり遅れているため必然的に入院期間も長引いてしまっているのだ。
(ヒマッ…ヒマッ…ヒマ、ヒマ、ヒマ、ヒマッ…!!ヒーマーだーッ!あーーーー!!ヒマァッ!!死ぬッ!退屈過ぎて逆に死ぬわッ!!入院と聞いて『え?仕事休めんの?ラッキー♪』とか言って喜んだことを今更ながら後悔してる。店の皆…申し訳ない。)
加えて蒼牙は人間界に馴染み過ぎてバリバリの仕事人間…否、仕事魔族になってしまっており、人生初の病院での入院生活にはじめこそは正当な理由で店を休めることに若干喜んでいたものの、いざ実際にこうなると驚くほど暇であり、ぶっちゃけ食って寝てるだけ…何もしないがこれほどキツイとは思いもしなかったのだ。むしろ自分がこうしている間もせっせと働いているだろう勤め先の『ホワイトアウト』の同僚達に対する罪悪感まで沸いてくるほどだった。
(しかもあの変態糞親父…じゃなかった。影沢先生よぉ…なーにーがーっ…『すぐ戻る』だッ!かれこれ二時間くらい経ってるが一向に戻ってくる気配無ェんだけど!?井戸端会議終わらない近所のオバハンの終わる終わる詐欺よりひっでぇ嘘だな!オイ!?重傷患者に留守押しつけて出てイクとか有り得ねぇ!!本当に医者かよ、あの人ッ!?)
更に現在…信じられないが主治医である影沢は事もあろうに私用で出掛けておりこの場に居ない、比較的回復してきてるとはいえ蒼牙が未だ傷が癒えてない身であるにも関わらず二時間以上もそんな彼を放置したまま今尚全く戻って来なかった。どうやら響の生来のドライな性格はこの血筋から多少引き継がれてるようだ。
さてそんな影沢はナニをしているのかというと…
禍津町の隣町…蒼牙の住んでる根之国町の、飲み屋街・閻魔王通りにて…
「はっはっはっ!!今日も私の奢りだ!諸君!!たっぷり楽しんでくれたまえ!!」
「「「きゃーっ!カゲちゃん!サイコー!!」」」
「「「いよっ!センセッ!太っ腹!!」」」
日も沈まぬ内から居酒屋で知り合いのキャバ嬢や酔っ払い共と盛大に飲み会(費用は全て影沢持ち)をヤッていた。しかも…。
「二次会はいつものホテルでイイかな?予約は常に済ませてある。」
「もっちろーん♪ウチの娘達がたっぷりサービスしてくれるわーん♪」
「いつも思うけどカゲちゃんイイの?患者さん入院してるんでしょ?しかも久々の…。」
「はっはっはっ…大丈夫、大丈夫。なんか知らんがあの患者君、やたら回復が早い子でね、まず心配無いだろう…多分。」
「「「た、多分…!?」」」
性欲の思うがままに風俗嬢達を連れて然るべき場所での二次会(意味深)にイく気満々らしい、この調子では恐らく今日は丸一日帰っては来れまい…しかも医者にあるまじき最低なヤブ発言までしてる始末、とんだド畜生である。
(ヒドイッ!ヒド過ぎるっ…!いくらなんでも無責任だろ!?泣くぞっ…!寂しくて泣くぞっ…!!診療所に不法侵入してくるアリンコのアリアやアリババ、アリざえもん達の観察日記付けるのだって飽きてるんだぞ!?)
入院中に何故か蟻の観察日記…しかも愛着でもあるのか?律儀に一匹一匹丁寧に名前まで付けてるという妙な趣味が出来てしまってるものの、蒼牙は完全に一人だけの寂しい退屈な日々を過ごしている訳でもなかった。何故なら…。
「お、お邪魔しまーす…」
「うぉおおお…ありがてぇ…!ありがてぇ…!今日も来てくれてありがとう…!」
毎日の様に見舞いに来てくれるリューカをはじめ、牧志とリクス、響…数日で知り合った人々が居るからだ。差し入れとして見舞品を持ってきたり、何気無い話で談笑して盛り上がったり…皆が来てくれた時のやり取りだけが蒼牙の数少ない楽しみになってきたので思わずどこぞの黄色いネズ公みたいなしわしわ顔になる。同時にまさか自分が知らない間にこんな寂しがりやになってるとは思いもしなかったという。
「こ、これ…今日はリンゴのコンポートを作ってみたの…。」
「わ、私も少しだけ手伝ったのだが…」
「おぉーっ…今日のもなんて美味しそうなんだ!二人共、ありがとう!!」
リューカは見舞品としてリンゴを使ったレモンと砂糖だけのシンプルなシロップで煮込んで作った所謂コンポートと呼ばれるスイーツを蒼牙に渡すと大変喜ばれた。見舞いの時に来た際に彼の口から大の甘党だと告げられて以降、リューカはシャーベットやスムージーなどドンドン色んな物を作っては差し入れており、また、リクスも助手として少々手伝っているというオマケ付きである。
「本当に、ありがたいよ…こうして皆から、色んな人達から助けられて…リューカのおかげで少しずつだが、『生きていても良いんだ』って思えるようになった。リクスや牧志のおかげで信頼出来る人達も居ると解った。響のおかげで影沢先生の所に来られたんだからな…」
「そ、そう改めて言われると恥ずかしいよ…蒼牙さん…。」
(フフッ…蒼牙殿にならリューカを安心して任せられるな。)
(ああ♪弟としても安心かな?リューカ姉の男嫌いも克服されて一石二鳥だぜ♪)
(まさか、他人なんかどうでもいいと思ってたこの僕が人から感謝される日が来ようとは…)
凍牙との決着後、一度は責任を負う形で本気で生きることを諦めた蒼牙だった。不謹慎ながらも事件を通してではあるが恋仲となった最愛のリューカ達をはじめとした出会いから今では立ち直り、胸を張って生きようとしている蒼牙の姿を見て一同は少しこそばゆい気持ちになりながらも自分達が誰かの支えになれている事を喜ばしく感じたのであった…が。
「…だ・け・ど!オレが入院して以来、一度たりとも顔すら見せに来ないヤツが『約一名』居るたぁどういうこった!?」
(しまった…忘れていた。あの馬鹿女の事を…響少年でさえ一緒に来てくれてるのにな。)
(え!?サン姉って一回も来てないの!?超絶ドライな響兄もこうして来てくれてるのに!?)
(そ、そうなの…?あの響君でさえそこそこ来てくれてるのに…)
(あれ?僕、なんで皆からディスられてるの?ナニこれ?イヂメ?)
…約一名の例外が居た。サンディアに関してはというと、なんと薄情な事か…基本的に他人など知ったこっちゃない響でさえ自主的にではないにしろ回数は少ないものの見舞いに来ているというのに彼女は一度も来てない事に蒼牙が憤慨し、全員がそれに納得してしまう…シレッと遠回しに冷血人間呼ばわりされる響はいいとばっちりである。
(僕も少しは人に優しくすべきなんだろうか…?)
「…………。」
「あの女!今度会ったらガツンと…お?どうした?牧志?オレに何か…?」
「いや、若く見えるけど蒼牙兄って何歳かなー…って。」
あまりに非人間扱いされる事に流石にヘコんだ響が体育座りで落ち込む傍ら、蒼牙は牧志の興味津々な視線に気づく…どうやら彼は自分の年齢が気になるようだ。擬態しているとはいえ魔族というものは人間の倍以上の気が遠くなる様な時を経ており、見た目だけでは判別つかない場合が多い。例としてこの場に居るリクスも1540歳と人外らしい冗談の様な実年齢である。蒼牙の場合もさぞかしとんでもない年齢だろう、そう思われていたが…。
「ん?オレの歳か…?今年でちょうど1000歳だが?」
「なっ!?なんと…私よりも年下、だったのか…?」
「ねぇ、リク姉。蒼牙兄の歳って人間でいえば何歳くらいなの?」
「そ、そうだな…些か言いにくいのだが…その…蒼牙殿は人間の年齢にすると、だな…。」
ジャスト1000歳、意外にもリクスよりも年下であると判明した。しかしそれでもあまりに人間離れした年齢のため牧志はイマイチ実感が沸かなかったため、『人間の年齢に換算した場合はどうなるか?』とリクスに聞いてみたが彼女は『発言していいものか?』とでも思ってるのだろう、何故か歯切れが悪い…だが、それが愛する牧志の知りたいことならばと迷いつつも包み隠さず正直に公表した。
「10歳だ。」
「「「え。」」」
…瞬間、牧志・リューカ・響の三人はその言葉を理解出来ず化石の様に固まった。今、リクスはなんと言った…?
「もう一度言う、10歳だ。」
大切なことなのでリクスは念押ししてもう一度、こう言った…。
蒼 牙 ヴ ォ ル フ く ん 1 0 歳 。
「嘘だろ!?オィイイイイイ!!?アンタ、僕より年下なのォオオオオオオオ!!?」
「響兄どころかオレよりも一歳年下じゃねぇかァアアアアアア!!?っていうか『今年で10歳』って事は…ついこないだまで9歳だったってのか!?どうなってんだよ!アンタの生態ィイイイイイ!!」
前代未聞の実年齢公開に響と牧志は絶叫したが無理も無い…見た目だけならば蒼牙は完全に20代前半くらいの成人男性、それも身長180㎝以上というそのでかい図体と貫禄に反して10歳児だというなにかがおかしいを通り越して狂いに狂いまくってる真実に激しく困惑したからだ。単に適当な人間の姿に擬態しているだけだから外見年齢は関係無いのだろうか?それとも人外の存在である魔族は肉体的な年齢と実年齢は別なのだろうか?いずれにせよ…
お ま え の よ う な 1 0 歳 児 が い て た ま る か 。
「ハッハッハッ♪なんなら気軽に呼び捨てしてくれても構わねぇんだぜ?」
「いやいやいやいやいや!!?そ、それはちょっと…!!」
「む、無理だ…オレにこの御方を呼び捨てで呼ぶ勇気は無いよ…普通に『蒼牙兄』呼びでいいね?ねぇ、リューカ姉…って。」
思わぬ形で自分の年齢が露見されたにも関わらず蒼牙本人は特に気にしてない様子であり、むしろ『響と牧志の方が年上なんだからこれからは堂々と名前を呼び捨てでも構わない』などと悪戯っぽく笑いながら言ってのけるのだが…その謎の余裕が逆に二人をますます混乱させてしまってる事に気づいてないという。そんな二人を他所にリューカはというと…。
「…♪」
「?」
「おい、そこの男性恐怖症。」
「対応今まで以上に優しいなぁ!?オイィイイイイイッ!!年下って解った途端、これかよォオオオオオオオッ!!?」
(むぅ…リューカ、あんなに嬉しそうに…私も撫でられたい…はっ…!?あぅううう…わ、私は一体、何を血迷った事を…?あの日以来どうかしてしまっている…)
満面の笑みを浮かべながら完全にデレた様子で愛おしそうに蒼牙という名の幼児の頭をナデナデしているという今までの男性恐怖症っぷりが嘘みたいな掌返しをしたため響と牧志から即座に突っ込みが入ったのは言うまでもない。そして種族間を越えた親友であるリクスはそんなリューカのデレっぷりに対し密かに拗ねており、同時にまたもやあらぬ感情が沸きかけてる自身の心境の変化に困惑していたという…。
「あぁ…衝撃的な事を知って疲れた…テレビなんかやってないかな…?」
蒼牙と馬鹿姉のせいでグッタリと疲れ果ててしまった牧志は軽い気分転換のために何気なく病室のテレビを点けてみる何かの歌番組が放送されており、様々な歌手やアイドルが変わる変わる多種多彩な歌を歌っていた。
「それでは次は話題沸騰のこの子に歌ってもらいましょう!クオンさーん!お願いしまーす!」
「「「キャアアアアア!!クオンちゃんよー!!」」」
「「「ワァアアアア!!クオンー!!」」」
番組の司会者の呼び声と客席からの大歓声と共にステージに現れたのは見た目としてはリューカより少々年下くらいだろうか?身長は150㎝あるかどうかすら怪しい小柄な体型ながらも赤と白を基調としたフード付きのアイドル衣装の上からでも解るような見事に大きな胸の持ち主であり、目深に被ったフードから覗かれる前髪部分が鮮やかなワインレッドとなっている金髪ロングヘアーの所々に白のエクステを付け、紅玉の如く見るもの全てを魅了するかの様に煌めいている深紅の瞳、表情こそは乏しく見えるためか?それがどこか儚げで透明感のあるもののその赤い輝きを宿した瞳が何処か静かな情熱の火を燃やしている様にも映る…そういった独特の美しさを醸し出している『クオン』と呼ばれた少女である。
「マ・ジ・か・!?クオンちゃん出てんじゃねぇか!?クオンちゃん!!うぉおおおおおお!!」
「蒼牙さんンンンンンーッ!?」
「そ、蒼牙殿…?い、一体どうしてしまわれたのだ…?」
「あ、テレビ壊さないでくれない?叔父さんに怒られるの僕なんだけど?」
「そういうこと言うから響兄はドライだって言われるんだよ!?皆、蒼牙兄止めんの手伝ってくれよッ!!」
興奮のあまりに近過ぎるを通り越してテレビの画面に顔面突っ込んで破壊しかねない程にへばりつくという奇行に走り、女子二人を大いに困惑させるわ、自身の態度を改めようとした響があっさり前言撤回したかの様に冷血人間に戻るわ、収拾が付かなくなったこの状況でまともな状態が牧志だけだと異常事態に発展してしまう。
やがて冷静さを欠いた蒼牙が落ち着きを取り戻した後…
「「クオン…?」」
「おいおい、なんだ?知らねぇーのか?リクスは仕方ないとして、響が知らないのは意外だな。」
「別に、興味無い。」
「おやおやー?魔族であるオレが言うのも変な話だが、お前は本当に血が通ってる人間か…?心を無くした悲しい機械なのか?ロボットなのか?」
「蒼牙兄ィ、悲しいことに響兄ィという名のサイボーグはこれで通常運転なんだよ…血の代わりにオイルが流れてるって言っても誰も疑わないよ…小学生のオレでさえクオンちゃんの事はそこそこ知ってるのに。」
「マジィ?お前、本当に大丈夫???」
「…返す言葉も無い…」
人間界に長年居続けたせいかアイドルに詳しいなど妙に俗っぽく染まりその辺の人間よりもよっぽど人間らしくなってしまっている蒼牙は逆に世俗や流行に無関心・無頓着な世捨て人的な態度が災いし人間らしい感情があるかどうかさえ疑わしい響を血の通ってないロボット扱いするが彼の同情の余地が無いレベルでドライな性格を熟知している牧志からもフォローが来るどころか同じく冷たい機械扱いを受けてしまい、響は軽くイラッと来たもののまさにその通りなので反論出来ずにいた。
「牧志、蒼牙殿、そのクオンというのはどんな人だ?」
「んー?あんまり詳しくないけど、リク姉やサン姉がこっちに来る前にデビューしたばかりのアイドルだよ、でも結構謎が多い娘でさぁ…そもそもの話、『どこの誰か』さえも解んないって専らの噂なんだよねぇ…。」
「何?どういうことだ?」
「『クオン』って名前自体もアイドルとしての芸名、本名はおろか詳細の一切が完全非公開、歌う時以外喋る事はNGだから歌以外の素の声は誰も聞いたこと無いんだ。それに基本的にステージに立つ時以外は全身黒ずくめの格好、徹底し過ぎて普段は顔すら見えないんだよ。」
「何かの宗教か!?」
(それは果たして本当にアイドルと言えるのだろうか…?)
一足先に人間界に来ていた蒼牙を除き、リクスとサンディアが訪れる前の一年前、突如として芸能界に流星の如く現れた深紅の歌姫『クオン』はその全てがトップシークレット指定であり正体は依然として謎に包まれいた。
牧志や蒼牙の説明曰く、日を追う毎に各方面のメディアへの露出ならびにファンも次第に増えつつあるものの取材に関しても専属のマネージャーをなどの関係者を通した最低限しか行われず、本人からの何かしらの発言は一切無し、ライブやイベントなどでは歌以外で声を発する機会などは皆無に等しいまでに無口、ステージ以外の公の場所では基本的に顔どころか素肌の一片たりとも見せない全身を黒い布でグルグル巻きという季節外れの我慢大会かと言わんばかりの冗談の様な格好で過ごしており当然ながらグラビア撮影などの素肌を少しでも晒すようなエロ方面の仕事は全面的に厳禁とされているというアイドルとして前代未聞の活動の方向性だった。
「ふーん…それを差し引いても人気があるんだから世の中解らないものだな…単なるイロモノなアイドルかと思ったけど…。」
「響少年よ、人気というものもそれだけで絶大な影響力を及ぼす力だ。このクオンとやらに力があるからこそその様な珍妙な振る舞いが許されているのだ。これは我々魔族の弱肉強食の掟に通ずる物がある。」
「ハッハッ♪そんなにオーバーに考えるなよ、リクス。そもそも人間のアイドルってのはな人を楽しませ…ハッ!?」
しかしそれだけの我を通すだけの人気と実力があるからこそ全てが許される資格を持っている…力さえ伴っていれば例え一国を築こうが何千何百もの軍勢を従えようが誰一人たりとも文句を言わない、そういう力の世界の住人である魔族達にどこか似てるものを感じたと響に説くリクスを見て蒼牙はアイドルという存在はそんなお堅くて大層なものではないと言いかけた時、背後から放たれる暗い悲しみのオーラに気づく。
「…ところで、蒼牙さん。随分とクオンちゃんの事、お詳しいんだね…?ボクも名前くらいしか知らないのに…さっきのっ…テレビにしがみついた時、だって…ひっく…明らかにボクが来た事より、も…喜んで…うっ…ぐすっ…。」
「わぁあああああ!!?リューカァアアアアアア!?いや、そのっ…ごめんッ…!!さっきのあれはつい、無意識でっ…本当にごめん!ごめんなさいィイイイイイ!!」
「なっ!?リューカ…!?な、何も蒼牙殿は外へ出て実際に他の女性相手に現を抜かしてる訳では無いのだから…な、なぁ牧志…?」
「そ、そうだよ!リク姉の言う通りだよ!リューカ姉!!むしろ『アイドルに憧れちゃって、可愛いところあるんだね♪』(※似てないリューカの声真似)…くらいに思わなくっちゃ!」
「そもそも蒼牙が10歳児って年齢を考えたらごく自然な事だと思うよ、キレイなもの見てつい目移りしちゃった的な…。」
折角恋仲の関係になったというにも関わらず蒼牙が情報の大半は非公開とはいえクオン…自分以外の女性の事を他人に言って聞かせられるくらいに詳しい上に夢中になってる姿を見たリューカはまるで除け者にでもされてしまったかの様な疎外感を感じてしまい、同時にクオンに嫉妬する悔しさから涙をポロポロ溢し泣き出したため、オロオロしながら必死に謝罪する蒼牙に続くように慌ててリクス・牧志・響の三人が彼へのフォローをしていく羽目になり、泣き止んでくれるまで相当な時間が経過してしまったという…。
その頃、蒼牙の見舞いに一度とさえ来なかった例の馬鹿女はというと…。
禍津町・六道商店街、鯛焼き屋『干魃亭』。
「えぇと、そうね…決めたわ、小豆クリームに抹茶クリーム、あとカスタード&ホイップと…そこの新商品の鯛焼きフロートってのも頂戴。」
「はい、毎度ありがとうございまーす!鯛焼きフロートは少々御時間貰います。お先にこちらの三品お出し致しまーす!御待ちくださいませー!」
…呑気に商店街へと繰り出していた。黒のキャミソールの上から炎のトライバルパターンの紋様が背面に印されたグレーの長袖の上着を羽織り、青のジーンズ生地のスカート、黒革のロングブーツ…といった例によってまたリューカの私服を借りたサンディアは店員に注文を述べ、響に貰った必要最低限のお小遣いから代金を支払い、取り敢えず鯛焼きフロートなる新商品が来るまで野外のテーブル席で三種類の鯛焼き(全て生クリーム入り)を堪能することにした。
(ん~♪美味しいじゃない♪抹茶とかいうのはちょっと苦いけどクセになる味ね、不思議とやめられなくなるわ♪)
中学生男子から貰った金で買う鯛焼きは余程美味しいのだろう…実に幸せそうな満面の笑みで抹茶クリーム鯛焼きを瞬く間に食べ終わる。
(…っていうか、アイツら馬鹿じゃないの?あの犬ッコロも魔族なんだから放っときゃ治るってのに、わざわざ様子見に行くとか意味解んない…うーん、小豆とっても甘ーい♪)
サンディアのみ何故蒼牙の見舞いに行っておらずこんなところで鯛焼き貪ってるのかというと、魔族の持つ回復力の高さ故にそのうちケロッと治るだろうという超アバウトな見越し且つ響も恐らくドン引くレベルの超絶ドライな理由からだった…もっとも、病院に居る蒼牙は当然お冠だったのがそんなことなぞ知ったこっちゃないらしく、小豆クリーム鯛焼きを真っ二つに裂いて頬張りこれまたお気に召したのか?みるみるうちに完食、最後のカスタード&ホイップクリーム鯛焼きに手をかけようとした時…。
「やぁ、そこのいい食べっぷりが素敵なお嬢さん♪」
「あー、ん…あ゛?」
突如、年齢的には響より年上ぐらいの高校生か…どこかの制服を軽く着崩した爽やかなイケメンフェイスの少年に声をかけられ、カスタード鯛焼きを頬張ろうとしたサンディアは途端に顔をしかめさせ、露骨なまでの不機嫌面になる。
「此処の鯛焼き良いですよね、僕も気に入っててよく食べに来ますよ♪」
「あっそ…(なにこいつ?殺してイイの?)。」
「ですが此処の他に良い場所知ってますよ?もし良ければ御一緒にどうです?」
「…へぇ~?そうね…でもその前に私、今喉がとーっても、渇いているの♪なにか一本奢ってくれない?」
「勿論、喜んで♪」
…口調こそは穏やかながらも、要は解りやすいまでのナンパだった。よく居るしつこく絡んできそうなタイプではなさそうなものの当然ながらサンディアはこの邪魔者に段々とイライラが募りはじめてきたが、ふと、なにか良からぬ事を思いついたらしく、『飲み物を奢ったら考えてやる』といった主旨を伝えると少年はそれに対してムカつくほどの爽やかな笑顔でOKを出した…が、それがいけなかった。
「アーッハッハッハッー♪悪いわねーっ♪一本でイイって言ったのにこんなに沢山奢ってもらっちゃって♪」
「。」
「あ、私だけ全部飲むのも悪いから一本だけあげるわね♪」
「うっぎぃいいいい!!?熱ギャアアアアアア~!!」
「お待たせ致しました♪御注文の鯛焼きフロートのお客さ…キャアアアアアアッ!!?一体ナニ事ォオオオオオオッ!!?」
サンディアは実にいい笑顔の悪人面でケラケラと笑いながら近場の自販機に頭を突き刺したままピクピクと痙攣してるだけで動かなくなった少年に全く感謝の気持ちのこもってない礼を告げつつ、破壊された自販機からボロボロ溢れ出てきた無数の缶ジュースの類をヒョイヒョイ拾い集め、おまけに少年の首筋に缶コーヒー…しかも熱々のホットをかけて悶絶させるという悪魔の所業をやらかした後、再び店の席に戻ると丁度鯛焼きフロートが運ばれてきた…この惨状を見た店員から悲鳴が上がったというのは言うまでも無いが。
「こ…これは!絶っ対…美味しいはず…!間違いなく…!!いっただきまーす!!」
「もしもし!警察ですかー!?はい!事件は現場で起きているんです!すぐにでも飛んできてください!っつーか、来てッ!!」
店員が慌てて警察に通報してるとは露知らず、運ばれてきた鯛焼きフロートなる新商品とはビールのジョッキを大型化したような巨大なグラスに注がれたメロンソーダに南国の島の様にプカプカ浮かぶ大量のバニラアイスクリーム…所謂クリームソーダというものだった。アイスクリームには店側のヤケクソとしか思えないほど戦国時代の城の瓦やシャチホコの如くウエハースや頭から突っ込まれた鯛焼きがふんだんにデコられており、この奇抜ではあるが超豪華仕様の新感覚スイーツの見た目にひねくれ者のサンディアも珍しく素直に称賛の言葉を送り、スプーンとストローの二刀流を構え…いざ、実食。
(あ~♪なにこれ!なにこれ!?最っ高!キャー!やめらんなくなっちゃうじゃないィイイイ!!)
頼む方も作る方も正気の沙汰ではないデカ盛り通り越したバカ盛りスイーツを食したためか、ナンパ野郎の妨害で削がれた気分もあっという間に元通り…むしろそれ以上に御機嫌となったサンディアはメロンソーダを飲みつつ、バニラアイスを鯛焼きやウエハースに乗せながら口に放り込んだり、鯛焼きフロートを堪能してる内に気づけばいつの間にか半分にまで減らしていた。
「ふふーん♪どう?『アンタ達』も欲しい?残念だけど少しもあげな…ハッ!?」
…完全に無意識での事だったが、サンディアは今この場に居るのが自分一人だと気づくが時既に遅く、居るはずの無い響達にかけてしまった声の虚しさに絶句し、激しく狼狽する…。
(な、なんで…?なんで私は、あいつらの事なんか、考えて…?)
『有り得ない』…だがこれは事実だ。以前のサンディアならともかく、今現在の彼女にとって響達と居るのがいつの間にか当たり前になってきており、それが原因で先程の失態を犯してしまったようだ。
(…う、嘘よッ!!そんな…これじゃあ、まるで私があいつらと一緒に居たいと…な、仲間だと思っ…!?違う、違う…!違うッ!!私はもう弱く無い!だからそんなもの必要無いッ!!だって、だって一人でも充分だった…これからも、この先も…!!)
全ては愛する両親と一族の復讐のため、それを成し遂げるために…全てを捨てた。目の前で理不尽に奪い尽くされた時に自分は何をしていた?
怯え、震え、泣く、魔界の魔族にとって弱さは恥…屈辱この上無い恥だ。ならばどうするか?それらを捨てて強引にでも変えるしかない。
壊れやすく傷つきやすい脆弱のどうしようもなく甘ったれな自分から…それこそ全てを焼き尽くまで消える事の無い永劫の業火そのものの様な苛烈さと残虐さを秘めた…そんな強いはずの理想の自分に。
無論、両親と眷属達亡き後も頼れる者は少ないながらも確かに存在していた…だが、いつまでも頼っていられない、いつまでも一緒に居られない、それがいつしか甘さに…過去の自分の弱さに繋がり、苛立たせてしまうからだ。
それが今ではなんだ?仮に過去の自分が見たら間違いなく現在の自分を躊躇いなく…こう言うだろう。
『私は何をやっているの!?』
『信じられるのは自分だけ!あの時からそう決めたでしょ!?』
『いつまであんな連中と一緒に居るつもり!?私にそんな余裕も時間も無いはずよ…とっとと離れるなり殺すなりしなさい!それが出来ないならッ…!!』
『…私が私を殺す…!!』
(…………。)
過去の自分の幻像への返す言葉さえ浮かばなかった…どうしてこうなった?どうしてこんな惨めな気持ちになる?先程まで一人であんなに楽しく食べていた鯛焼きフロートの美味しさも途端に消え失せ、今では…ちっとも嬉しくない。
(あれ?おかしいな…どうして、手が、身体が震えてるの…?誰、か…。)
見舞いをサボりにサボり続け、あの響達と離れ一人で好き放題していただけなのに…一人は慣れっこのはずなのに、それが今では一人で居る事がどうしようもなく『怖い』と感じてしまい、小刻みに身体を震わせ、答えの出ない自問自答の果てに言い様の無い寂しさを感じ、泣きそうになり、一番したくない最も忌むべき選択…誰かに助けを求めかけた時…。
「…………。」
「…ちょっ…!!え!?えぇっ!?だ、誰ッ!?」
気づくと、自分の側になんかいた…
「…………。」
(見てる!こっちめっちゃ見てる!?なに!?ナニ!?なんなのォオオオオオオッ!!?)
全身を黒い布でグルグル巻き状態にしている謎の布お化けは何かするわけでもなく無言でこちらをジーッと見つめながらモゴモゴと蠢いており、この得体の知れないナニカのせいでサンディアの出かかっていた涙はたちまち引っ込んでしまい、違う意味で助けを求めたくなってしまった。
「…………。」
(新手の木乃伊族か彷徨霊族!?じっと見てくるだけで何かしようとしてるわけでないのがまた不気味ったらありゃしない…鯛焼きフロートは勿体無いけど、こうなったら逃げ…!?)
この前の凍牙の様な『不死鳥の軍勢』の手の者なのか?それ以外の人間界で好き勝手にしている野良魔族なのか?何者なのか?何が目的なのか?解らない事だらけだったものの幸い別段サンディアに危害を加える様子も無く見つめてきてるだけだが依然として正体不明のこの布お化けの意図が読めず、鯛焼きフロートを犠牲にするのは惜しいがこの場の離脱を決意したものの…
「動くな!警察だ!オラァッ!お前かァアアア!!あそこの自販機に突き刺さっていた顔つきが気に入らねぇチャラクソガキ…じゃなかった、いたいけな一般市民の少年か?とにかく!暴行の容疑あるから署への御同行、ひとっ走り付き合えよッ!」
「はっ…?はぁッ!?意味解んない、それの何が悪いのよ!?」
タイミングが悪いことに店員からのガチの通報により到着した警察官が現れる…魔界出身者であるサンディアにとって暴力や殺人などといった物騒な犯罪などは日常茶飯事な自然の摂理だがそんな魔族のルールが人間界で通じるはずも無く、当然ながら先程の自販機に突き刺した少年への暴行の件でサンディアに同行を要求してきたのだ
「じょ、冗談じゃない!!付き合いきれないってーの…!そもそもアイツから突っ掛かってきて、『一緒に服を脱いで裸踊りしましょう!』とか『卑猥!全裸の力を見せ過ぎ、法律を超え、解放の快楽を晒しめす裸の王者!』とか、ふざけた事ほざいてきて、とにかくアイツしつこいのなんの…!!」
「あ゛ぁーん!?社会の御荷物な生ゴミ老害共…じゃなかった、敬愛すべき御老人方も騙せねぇ嘘つくなボケェッ!!乳揉むぞ!!」
「はぁあああああ!!?な、なんで胸揉まれなきゃいけないの!?このヘンタイッ…!!」
たかだか人間如きに従う義理などサラサラ無いためサンディアはこの場から逃れるために被害者の少年への偽証罪極まりないレベルのデタラメな冤罪をでっち上げようとするも…内容が内容のため、むしろ何故それで騙せると思ったのか?当たり前だが速攻で嘘だと見破られ、しまいにはどういうわけか謎のセクハラ発言をされてしまう。
「やかましい!そんなデカイ巨乳ブラ下げて誘惑してくんのがいけねぇんだよ!オレの下半身の警察官マグナムがトップギアじゃねえか!?ガタガタ言ってっと取り調べ室で拷問したる…ぶぼらぁ!?」
「……ッ!!」
「…へ?」
警察にあるまじき脅迫罪待ったなしな最低の問題発言を言い切る前に意識を刈り取られて考えることを強制的にやめさせられてしまい、気づけば警察官は少年が突き刺さった自販機に頭から突っ込み同じ様に頭から突き刺さってしまっていた。どうやらサンディアの側に居た黒い布お化けに殴り飛ばされてしまったようだ。
「もしかして、助けてくれた…?」
「フー…フー…!!」
「そ、まぁ助かったわ…ん?」
布お化けが警察官を殴り飛ばした理由はどうやらサンディアがセクハラ発言を言われた事に対して怒ってるかららしく興奮が覚めないのか息遣いがまだ荒い、サンディアは一応の感謝の言葉を告げてそそくさと立ち去ろうとした瞬間…突然のそよ風により布お化けの布がペロンと捲られる
「…!?」
…その素顔が白日の下に晒される。
静かな情熱の宿る深紅の瞳、前髪がワインレッドに染まっている金糸の如き黄金のロングヘアーをした儚げな雰囲気の少女…彼女の顔を見た瞬間に周囲が一斉にザワついた。それもそのはず、何故ならば…。
「え!?う、嘘ォオオオオオオッ!?あれ、クオンちゃんじゃない!?」
「は!?う、うぉおおおお!!?マジかよォオオオオオオッ!!本物だァアアアアアアッ!!」
「キャアアアア!!クオンちゃん!!」
(………ど、どうしよう…顔、が…)
「…え、誰?なに?なんなの?この周りの反応は…?私、もしかして今…マズイ状況下に居たりする?」
この布お化けの正体が人気絶頂のアイドル・クオンであったからだ。周囲のギャラリー達がクオンの顔を見るや否や餓えた獣の如く目をギラギラ光らせ涎を垂れ流しながらにじり寄ってきた…クオン、というよりも人間界のアイドルそのものを知らないサンディアもギャラリーという名の獣達の放つこの異様殺気に似た雰囲気に戸惑い、自分が猛獣の檻の中に居るに等しい状況であることを冷や汗を流しながら漸く理解した。
「ゲヘヘヘ…クオンちゃーん!サインと握手プリーズ!!あとパンツ頂戴ィイイイ!!」
「オケケケケッ!!髪の毛サラッサラァアアア!!記念に束で欲しいわァアアア!!」
「お願いします!お願いします!そのおっきなおっぱい揉ませてェーーーーッ!!」
「…ッ!!?」
ファンという名の獣畜生共はさながら悪魔にでも取り憑かれたかの様に涎を汚く撒き散らしブリッジした状態で手足を器用にシャカシャカ動かして接近したり、背中を思い切り反らし天を仰ぎ両手でサムズアップしながら疾走したり、歯をガチガチ鳴らし何故か足を使わずに手を使って逆さまの状態で一輪車に乗ったり…奇行に奇行を重ねた移動方でクオンに一斉に迫り、彼女に対して己の欲望を爆発させたのであった。
「ア゛ァア゛アアアアアアアッ!!?ギャアアアッ!!ギャアアアーーーーッ!!ギャアアアアアアーーーーッ!!」
「此処は変態共の魔窟かァアアアアアア!!?って、アンタァアアア!!?ナニ勝手に人の手掴んで…っつーか私を巻き込むなァアアア!!んあぁああああ!!やっぱりちゃんと見舞いに行ってれば今頃こんなことにはァアアアーーーーッ!!」
普段ライブなどの仕事場で歌う以外では絶対喋らない事を方針としているクオンも流石にこのイカレた珍獣共に身の危険を感じ、思わずチンパンジーの鳴き声みたいな悲鳴を上げざるを得なくなった。そして何故かこの異常事態に完全に巻き込まれてしまったサンディアの手をガッチリと掴み、強引に引き摺る形での逃走劇を繰り広げる羽目になってしまい、サンディアは今更ながら蒼牙の見舞いに行かなかった事を激しく後悔した…。
「「「マテーーーーッ!!」」」
「ギャアアアアアアアアアッ!?マ゛ァアアアーーーー!!ア゛ァアアアーーーー!!」
「離せぇええええ!私が何したってのよォオオオオオオッ!?いやァアアア!もぉおおおお!?今日は厄日って奴なの!?あ゛ぁああああ!!こっち来んなァアアアーーーーッ!!」
(何ィイイイ!?おぉ!幸運…!なんたる僥倖…!よもや我が師の命令で動き回っていたら、なんというツキだ…!!)
熱狂的ファン達から逃れるクオンが凶運全開なサンディアを引っ張りながら全力疾走してる中、彼女達の知らぬ間に対照的に一人の擦れ違った男に大いなる吉をもたらした。
山伏姿のその男の背中をよくよく見れば…ギロチンの刃が突き刺さった三本角の禍々しい鬼の髑髏の紋章が。
そう…修羅の伏魔殿・獄門寺の道着を羽織っていた。この男はサンディアならびにリクスの抹殺を命じられた獄門寺・四咎天が一人・水凄天の美紅尼睡蓮が二人の内のどちらかの力量を測るべく刺客として放った彼女の『弟子』であった。
「シャシャシャッ…!我が師・美紅尼様には悪いが、あの者は拙僧が頂く…!!」
笠を目深に被った山伏姿の男は口を大きく開き、人間に有り得ないノコギリ状のギザギザの歯を剥き出しにし、不敵な笑みを浮かべる。
「…ッチクショウ!いててて…あの暴力女め!次に会ったら手錠かけてエロいことしてや…おいおい!そこのお坊様よぉ!今オレは気が立ってんだ!逮捕す…ぶげぉあっ!?」
「やかましい、社会のゴミが。」
自販機に突き刺さったものの漸く復活した警察官がサンディアにやられた事の憂さ晴らしとして山伏の男を意味も無く逮捕しようとしたが歯牙にもかけられず、錫杖の一撃にてダウンした。
「シャァアアアッ!!シャシャシャシャシャーッ!!」
山伏の男が歯をガチガチ鳴らしながら叫び、錫杖で地面を突くと同時に黒い水飛沫が飛散し、それを浴びていくとみるみるうちに人間の姿から『本来の姿』に変わる。
左掌に巨大な口を開いた黒い鮫の紋様を刻み、右手の五本の指全てにトベラの花を咲かせ、背中の両側面を突き破る形でエイの鰭、鋭利な毒針が付いた尾鰭を腰部に生やし、顔には両目の代わりに六つの目を彷彿とさせる形の暗い青色をした水飛沫型のトライバルパターンの紋様が走り、口の中にはノコギリ状の鋭利な歯を生やす全てを飲み込む暗闇の如き漆黒の身体をしたサメ型の魚人…飛鮫魔人族の男・牙鮫坊斬嶽は鰭を悪魔の翼の様に変形させ、クオンと共に走り去ったサンディアを追いかける様に空を飛ぶ。
一方、狂気の大騒動とは無縁の平和そのものな影沢診療所では…。
「そっか、来月にはまた学校行き始めるのか?二人共。」
「うん、ボクもマキ君も…それに響君も九月に入ったらすぐだね。」
「うへぇ~…ヤだな~…夏休みも今月で終わりか~…。」
「あぁ…気が滅入る…出来れば絵だけ描いて生きていたい。」
「ハハッ…そろそろそんな時期だもんな、仕方ないさ。」
他愛の無い世間話の話題として、小中高と学年が見事にバラバラな三人は夏休み終了後…来月の九月初め頃のほぼ同時期に再び学校に通い始める事を蒼牙に話す。しかし、牧志と響はやはり年頃の男子らしい反応というか…夏休みという長き休日が終わる事に対して大変憂鬱な気分になった。
サンディアが人間界に来たのは七月十日頃、リクスが来たのは七月十六日頃、蒼牙との出会いは更に十二日経過した後の七月二十八日…一ヶ月経つのは早いもので時期は既に八月七日、今月の八月三十一日…月末いっぱいを以って響・リューカ・牧志の夏休みは終わる。
「…?牧志はともかく、学校とやらはリューカや響少年は今でも行ってるではないのか?」
「んー?あれは休みの日でも部活動で行ってるだけ、今後は本格的に勉強とかしに行くために通いつめる事になるかなー?」
「僕はリューカさん程じゃないから行ってる内には入らないけど…はぁ、これからは嫌でも毎日行かなきゃいけないからなぁ、学校でダラダラ長々と過ごすなんて…」
「…!?ま、待て!二人がそうなるということは…ま、牧志も…!!?」
学校どころか教育機関などという概念すら存在しない魔界出身者であるリクスには普通の通学と夏休み期間に部活動へと自主的に参加するために学校へ行く事の区別などついてなくあまりピンとこなかったが、来月以降は学校に行くため家を長時間空けるようになるといった主旨の説明を受け、顔を青褪めさせ気づいてはいけないこと気づいてしまう…
『リューカや響がそうならば当然愛する牧志も例外では無いのでは?』と…
「リク姉、ごめん!本っ当に、ごめんっ…!先に謝るけど…オレも来月から学校行くから、決まった休日以外リク姉と過ごせる時間が大幅に減っちゃうんだ…!!」
「なんだとォオオオオオオッ!!?」
やはりというかなんというか…完全に当たり前なのだが、牧志からの突然の謝罪はそういう意味であると知り、片時も離れたくない程深く愛している牧志と共に過ごす時間が減りまくるという受け入れ難い現実のあまりに思わずリクスかららしくない絶叫が出てしまう。
「クッ…に、憎いっ…!おのれ、誰だ!?そんな面倒臭いモノを作った奴はッ!!殺してやりたい…!!」
「おい、言っとくが学校に直で押し掛けようとか思うなよ?牧志を困らせたくないなら…な?」
「んぬぬっ…!んぐぐぅううううっ…!!」
「確かにこの三人がオレ達と過ごせる時間が減るのはしょうがねぇーさ。魔族には無ェ人間社会の『義務教育』…って、奴だ。正確にはリューカはもうその対象じゃないから含まれないがな…」
「だ、だがっ…!牧志も響少年も学校とやらに行くのを渋っていたぞ!?何が悲しくてそんな面倒だと感じる所にわざわざ行かねばならんのだ!?蒼牙殿っ…!」
「善くも悪くも成長するために必要なものさ、何もしない怠け者よりも努力を重ねて変わろうとする奴の方が好感持てると思わないか?」
「そ…それ、は…。」
「リューカから聞いた話じゃ牧志はお前と出会って自分を変えたらしいな?いいじゃないか。自分の意志で自分を変えるなんて中々出来ないことだぞ?それが人間だろうと魔族達だろうと…な?」
「…蒼牙殿…!!」
実年齢10歳とは思えぬ貫禄を見せながら蒼牙は人間の若者達が学業に勤める意義についてを未だに納得出来ずに憤慨するリクスに牧志を例えに出して説いた。
以前の牧志は御世辞にもまともとは言い難い…というかタダのバカだったのだが、彼女との運命的な出会いの衝撃によりまるで別人の様に激変してしまった。それ以降、牧志はリクスに相応しい男を目指すべく今までの自分ならば絶対にやらなかった勉強に励んだりジョギングや筋トレなどのトレーニングといった研鑽をする様になったという。蒼牙も言うように人はキッカケの有る無しに関わらず自らの意志で自分を変えるのは簡単な様で難しい…それは魔族にも言える事だ。蒼牙もリクスも、そしていつか変わってくれる時が来るだろう…この場に居ないサンディアにも。
「…そうだな、私の我が儘で牧志達の成長を妨げてはいけない、すまないな皆…。」
「リク姉!大丈夫だよ!出来る限りリク姉との時間を作ってみせるから!ね?リューカ姉も蒼牙兄との時間を作りたいでしょ?」
「うん!ボクも蒼牙さんと一緒に居たい!退院したら何処か行こうよ!街にでも海や山にでも、皆で行ける場所なら何処だって!!」
「あぁ、勿論だ!リューカ!」
リクスと牧志、蒼牙とリューカ、自らの意志で自身とその運命を変え、何物にも変えがたい種を越えた関係を手にした者同士がまた一段と絆を深めた…ただ『一組』を除いて。
(…どうして皆はそんなに互いを想い合えるんだろう?解り合えるんだろうか?僕は、とても皆の様にはなれない…サンディアだってきっと同じさ。抱えてる『何か』を話してくれない限り…聞いたところで、どうせ拒まれるだけだろうし僕に何が出来るっていうんだ…。)
響は、ふと…ごく自然にこの場に居ないサンディアの事が思い浮かんだ。当初より多少はマシになったものの未だに他者を心から受け入れず、戦い方にも表れてる様に自分の事さえも省みず、生き急いでいる様に、投げやりな様にしか見えない彼女の心の内をどうやったら知ることが出来るのか…以前の他人の事などどうでもいいと簡単に吐き捨てられた冷たい自分ならば決して有り得ぬ自身の変化にも気づかずに無意識にサンディアの事を思っていた時…。
「「だぁああああああ!!」」
「「「「何事ォッ!!?」」」」
…病室の窓ガラスを盛大にブチ破り絶叫しながらサンディアと見知らぬ少女が豪快なダイブを決めてきた。
「ハァッ…ハァッ…!!や、やっと…撒けた…!しつこいったらありゃしない…!」
「ハァッ…ハァッ…う、ぐっ…」
「サンディア!?それと一緒に居るのは、ええと…?」
二人はあの後も狂ったファン達の魔の手から無我夢中に逃げ回っている内に知らぬ間に此処に来てしまったらしい。彼女の事を思っていた時にその本人が自分からやって来た事に内心ドキドキしつつも響のみはサンディアと一緒に居る少女には特に驚きはしなかったが他の者達はそうはいかなかった。
「え…!?も、もしかして…?クオン、ちゃん…!?はぁあああ!?意味解んねぇーよ!?どうしてクオンちゃんがサン姉と一緒に居るんだよ!?」
牧志は至極一般的なリアクションをしたがそりゃそうである…人気絶頂のアイドル・クオンがこの場に、それもサンディアと共に居た事が心底信じられないといった様子だが問題なのは彼女の大ファンである蒼牙であった。
「え!?嘘!?マ・ジ・か・!!どけ!サンディア!!邪魔だ!オラァッ!!」
「ぶべらぁっ!?」
「クオンちゃん!是非とも握手会とサイン会とライブを同時にィイイイイ!!」
「…ぴぃっ!?」
「蒼牙殿ォーーーッ!!?」
「びぇえええええん!!蒼牙さんのバカァアアアアーーーッ!!このドクズゥウウウウーーーッ!!うわぁあああああん!!」
唯一自分の見舞いに来なかった事に対する私怨混じりで蒼牙はサンディアの顔面をグーパンで殴り飛ばして押し退けるという最低な暴挙に走り、血走った眼で迫りながら超過密スケジュールのファンサービスを要求してクオンを怯えさせると同時に最愛のリューカを赤子の様にガチ泣きさせるという先程まで御立派な御託を抜かしていた者と同一人物だとは到底思えぬ、兄の凍牙とは違う方向性のタダのクズ野郎に自ら成り下がったのだ…これではコイツに引導を渡された彼もさぞや浮かばれぬ事だろう。
「そ、蒼牙殿…ハァッ…ハァッ…フフ、ウフフフフフッ…!!こんなタイミングでなんだが…その、とても下劣な事を聞くのだがな…?リューカが要らぬというなら私が貰っても構わぬか…構わないよな?な?な?というか、くれっ!!プリーズ!!」
「いいぞォーーーッ!!」
「良くない!この馬鹿ッ!!そしてリク姉もオレという者がいながらナニ言ってんだッ!?」
「んぁあああああ!!リューカ!リューカ!リューカァアアアア!!貴女がいけないんだ!貴女がそんなにも無防備で愛らしくて女の私をも狂わせる魅力があるからァアアアア!!」
「リ、リクスさん…?そ、その…せめて、優しく、して欲しい…。」
リューカを蔑ろにしてクオンに走る熱狂的ファンな蒼牙も蒼牙だが、リクスもリクスで息を荒げて血走った眼でリューカを見つめ彼女を貰っていいかどうかの確認を蒼牙にすると彼からいとも容易くOKが出てしまった瞬間、リクスは弾けた…親友となった日以降から芽生えつつあった友情という名の単なる劣情ダダ漏れで押し倒してより一層その友情を深めようとするとリューカも顔を赤らめながら何故か受け入れ体勢抜群だった。
「リューカ姉は女の子だからね!?もらったところで同性同士でナニをするつもり!?っていうか、リューカ姉もナニ満更でも無いって顔してんの!?完全にメスの顔じゃねぇか!!誰かーーーーーッ!!タスケテーーーーーッ!!まともな人がこの場に一人たりとも居ねぇーよォーーーッ!!何もかもが全部狂ってるーーーーーッ!!ゲホッ…ゴホッ…叫び過ぎて噎せた!オェッ…!!」
(…前言撤回、他人の事を思いやろうとか優しくした方がいいかとか、そういう事を少しでも考えた僕が馬鹿だった…人は皆、裏切るんだ…。)
クオンが来たことにより…なんか訳の解らない狂気に呑まれ、『本来ならば絶対にそんなことやらないだろ!お前ら!』と言いたくなるくらい暴走した三人へのツッコミに疲れ果てた牧志は来るはずの無い助けを求める絶叫を上げ、響は築き上げられた絆が完全に崩壊した瞬間、ならびにこのクズ共の醜い顛末を前にやはり他人に手など差し伸べたり理解し合うことなど愚かな行為でしかないという認識を強めてしまった。
「…ん?あれ?よく見たら…来栖さん、だよね?」
「…!?…!!」
「いや、違わないよ。眼鏡してないし髪型とかも全然違うけど…。」
「何ぃ!?おい!響!知ってるのか!?今尚誰もが知らないクオンちゃんの正体を!?」
…此処で響はクオンの顔をまじまじと見つめ、一目でその正体を看破してしまった挙げ句、必死に首を横にブンブン振って否定する彼女の秘密をひた隠しにしたいという気持ちをガン無視して誰もが知りたがっていた正体をこの場で暴露した。やはり響は人の心をつくづく持ってない冷たい機械らしい。
「うん、この子は僕の学校の同級生…いんっ!?」
「…うがぁああああああ!!」
「ぐぇえええええ…!!」
「げぇえええええ!!?クオンちゃんが響兄の首を絞めてるゥウウウウ!!?」
「なんて羨まし…じゃなかった!やめろォーーーッ!!リクスも引き剥がすの手伝えェーーーーッ!!」
「リューカァアアアア!!」
「リクスさん…♪ハァッ…ハァッ…♪」
「お前らぁああああ!?一体何がどうなってるんだぁああああ!!?どうしてリクスとリューカがエロい格好で乳繰り合ってんだぁああああ!?」
「全ての全てがアンタのせいだよ!!ア・ン・タ・の・ッ・!!」
「ピカソッ!?」
余程正体を知られたくないのだろう、クオン…もとい、来栖というらしい名前の少女は獣の様な咆哮を轟かせ、口封じのために響の首を絞めて抹殺しようというアイドルにあってはならない犯罪行為をやらかしたため、流石の蒼牙であってもファンだからといって見過ごす訳にいかずにリクスに声をかけて止めようとしたものの現在彼女は恋人の牧志とでさえその領域に到ってないというのにその姉であるリューカと共に衣服を淫らに乱しまくって十八禁待ったなしな行為に及んでおり、こうなった直接の原因である蒼牙の頭を一切の躊躇い無く花瓶で叩き割った。
※尚、これにより蒼牙の入院期間がちょっぴり延びたがどう見ても自業自得である。
なんやかんやあってクオンの殺人未遂を止めたその後…結局彼女の正体はこの場にいる全員に暴露されてしまった。
響によれば彼女の名は来栖奈緒乃といい、彼の通っている涅槃中学校在学の二年生にして同じ2-B組クラスの同級生とのこと。空手部所属という事以外に特筆すべき点など無い女子生徒であり、むしろ本来はアイドルなどという目立つ個性とは対照的な地味で目立たない大人しい少女らしい。ついでにいうと普段は眼鏡っ娘な上に髪の色や長さも、更には体型まで違うとのこと…恐らくアイドル・クオンを演じてる間のみ正体を隠す意味でも眼鏡を外し、独特な深紅の前髪混じりの金髪ロングヘアーや持ち前の巨乳もウィッグや胸パッドか何かで誤魔化しているといったところだろう。
「…と、こんな感じの子なんだよ。まさかアイドルやってたなんて驚きだよ、そして口封じで殺されそうになるとも思わなかった。」
「まさか響の身近にあのクオンちゃんが居たなんて!いやぁ持つべき者は友だな!ハハッ♪」
「ふざけるな、僕はアンタと友達になった覚えはない。」
「人の顔こんなにしておいてよくもまぁそんな事言えたこと…!!」
「いや蒼牙兄、反省してくれない!?そりゃあオレも男だから好きなアイドル目の前にしてテンション上がっちゃう気持ちは解るよ?『アイドルに現抜かすな』とは言わないけどリューカ姉の方を大切にして!マジで反省して、本当にもうッ!!いくら十歳児でも限度があるからねッ!?」
「ひっでぇ言われ様だなッ!?オレ、ちょっとショック!!」
クオン…否、来栖奈緒乃が響の同級生と知り、これにより蒼牙は他のファンを大きく引き離した真のファンになれた事に喜び響に感謝したがその代償に彼の株は大暴落したのは言うまでもない…。
「リク姉、リューカ姉、二人もマジに反省して。オレは今、とてつもなく怒ってる。心がズタズタに引き裂かれた気分だ。」
「ち、違うんだ!牧志!これはほんの出来心で…!!すまない!私達がどうかしていた!許してくれ!!断じてお前を裏切るつもりなどない…心から愛しているのはお前だけだ!!本当だッ!!信じてくれ…!!」
「マキ君ンンンンッ!!ごめんなさいィイイイイ!!どうしてこうなったのか全然サッパリだけどリクスさんや蒼牙さんの事が好きになった今でも愛してるのは変わらないからァアアアア!!」
「あ゛ぁ゛んッ?」
「「ひっ…!?」」
御説教の御時間はまだまだ終わらない、牧志の矛先は蒼牙から先程までよろしくヤっていたリクスとリューカへと移る…彼の視線に気づいたガチ○ズ二人は顔を青褪めさせて身体を奮わせながら浮気者特有の如何にもな見苦しい言い訳をして許しを乞うが当然ながら今の怒り心頭な牧志には通用することも許される事も無く、今まで見たことも無い様なドス黒い憤怒に満ち、嫉妬に狂った怒りの形相と異様なまでに低い声で二人を一瞥し、黙らせる。
「そりゃあ二人が友達になれて本当に良かったと思うけどさぁ…それとこれとは話は別だからね!?誰がそこまでの仲になれなんて言った!?恋人がオレの姉と×××してましたとか、ナニソレ!?どういう状況!?リク姉が浮気したの?それともリューカ姉が寝取ったの?」
「う、浮気…!?」
「ね、寝取り…!?」
「どっちにしろオレは今後どういう顔して二人と接すればいいんだよ!?下手したら一生モンのトラウマだろうがァアアアア!!」
「「返す言葉も無いです…。」」
「リューカ姉!リューカ姉の蒼牙兄に対する想いはその程度ッ!?余所の女に目を向ける様なことされたくらいでビービー泣くんじゃねぇよ!!ブン殴ってでも無理矢理振り向かせろ!!『この人は自分のものだ!誰にも渡さない!』と主張しろォオオオオオ!!っつーか、リク姉は『オレのもの』でこの世で最も愛する人だ!!例え姉である変態リューカ姉でもリク姉までは渡させねぇーよ!!」
「変、態…ッ!?ゴフッ…!!」
「リューカーーーッ!!?大丈夫か!?傷は浅いぞッ!!」
「リク姉!仮にもリューカ姉はオレの実の姉だから!友達として接するならともかく、人様の姉をそういう目で見るのはマジ勘弁してッ!!ましてや未遂とはいえ×××な行為に走んないでくれない!?弟であるオレの眼前でさぁ!そういうことは今は無理でもいつかきっと必ずオレとする約束だったでしょォオオオオオ!?」
「…そ、それはその…うぅ…先約を忘れてしまってすまない…魔海より深く反省している!だから私の事やリューカの事を嫌いにならないでくれ!牧志ィイイイイ!!」
自分の姉であるリューカが実はドルヲタだった蒼牙にほったらかしにされた悲しみにつけ込み、自分の恋人であるリクスが前々から芽生えていた劣情をぶつけてそのままより仲を性的な意味で深めようとしたという背徳行為を許せる訳が無く、牧志の怒濤の御説教は容赦無く二人の心を深く抉り、リューカに至っては未だにブラコン気質な所が治ってないため特に効き目が抜群だったらしく牧志に変態と罵られたショックのあまり吐血し、リクスは牧志と将来的にはセッ…ではなく、口づけより先のステージである『先約』を忘れ、あのような淫らな過ちに走った事を反省し今にも泣き出しそうな顔で彼の足元にすがり付き許しを乞う。
無論、牧志も二人が憎くてこんな説教をしたわけではない…怒りと嫉妬はすれども本気で嫌ってるわけではないので悪しからず。
「え。牧志とリクスってそういう関係だったの???最近の人間の子供って進んでるな~。」
「その人間の子供より一歳年下のアンタも大概だよ…そこの10歳児。」
反省してるかどうか怪しい蒼牙はリクスと牧志の深い深い絆と小学生の彼には些か早過ぎる恋愛関係を此処で初めて知り、思わず感心する側で響が突っ込む様に忘れてはならない…この男の実年齢が十歳だということを。
(な、なんだ?この感情は…牧志に、怒られ…危うく、嫌われるかもしれなかったというのに…ッ…!私は…何故、興奮しているんだ…?ハァ…ハァ…あぁ、牧志…。)
ちなみにリクスは顔を赤らめながら息を荒くしながら身悶えし、牧志から初めて怒られ、罵られたという事実を最初こそ悲しみ、自分の一時の過ちを死ぬほど後悔していたものの…その実、内心かなり興奮していた…どうやらMの気もあったようだ。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!バッカじゃないのコイツらー!?ガチギレしたガキんちょに説教されてるわー!!あははははははは!!ヒー!ヒー!ヒー!ヒー!」
((((コイツ、一度死ぬ程ヒドイ目に遭えばいいのに。))))
サンディアは空気を読まず牧志に説教された蒼牙・リューカ・リクスの失態を腹を抱えて女を捨ててる下品なバカ笑いを轟かせた。当然ながら響達四人からの反感を買ったのは言うまでもない…と、そんな時。
「…ふぇえええええん!!もう嫌だァアアアア!!ファンの人は怖いし、逃げ込んだ先で正体バレちゃうし、
私が原因で人間関係が崩壊しちゃってるし!うぁあああああああん!!私はただ偶然『サンディアちゃん』と数百年振りに会っただけなのに…『久し振り、元気?』とか『人間界で何をしてるの?』とか、お話したかっただけなのに、どうしてこうなるのォーーーッ!?ヒイィイイイイン!!」
「「「「「…へ?」」」」」
これまで方針上、仕事の場以外で素の声を出さないと言われていたあのクオンが…歌声でも汚い悲鳴でもない『本来の声』を上げたのだ。
狂信者に追い回され、故意では無いとはいえ目の前の見ず知らずの人達の固い絆を粉砕してしまった事の罪悪感に幼女の様にビービー泣き喚き、そしてどういうわけか名前を明かしてない筈のサンディアの名を出しながら、その『正体』を知らぬ間に晒してしまうという失態を犯してしまった。
悲しそうに泣きじゃくり、無意識の内に赤い薔薇の花弁を撒き散らしながら現れたその姿…身長は150未満の低身長から倍の170㎝程に伸び、黄金の髪には大量の茨に覆われ至る所が深紅の薔薇の花畑と化し、頭部から蝙蝠の羽根がピョコッ飛び出す。口からは可愛らしい八重歯が生えており、細い首から胸元にかけては逆十字を背負った蝙蝠の紋様を刻み、デカ過ぎる胸や無防備な背中、尻などが見えまくってる全体的に露出度の高い血管の様な赤いライン入りの黒のゴスロリファッションとレオタードを組み合わせた様な独特の形状をした衣装、華やかな胴体とは対照的に両腕と両足は赤い逆十字の紋章を入れた武骨な黒い騎士甲冑の装甲に覆われているというとんでもないいでたちの人外の少女の姿になる…。
「え、クオンちゃんってもしかして…魔…」
「誰だ!テメェはァアアアア!?フザケンナ!ゴラァッ!!クオンちゃんを出せ!っつーか戻せェエエエエエ!!」
「ぐへぇええええええ!!?」
「蒼牙さんンンンンンッ!?」
「蒼牙殿!止すんだ!これ以上、御自身の株を下げてはいけない!!」
「収拾つかないよ、もう…どうするのコレ?」
牧志が言いかけたが、クオンこと来栖奈緒乃の正体が魔族…そうだと知った途端、あれだけ大ファンであることをアピールしていたというのに掌返し甚だしい事に蒼牙は怒り狂った様子でなんとクオンの首をチョークスリーパーで締め上げ、全員から止められるという見苦しい醜態を晒してしまう…ただでさえ尽きかけている信頼がますます底を尽いた。
(…う、そ…なん、で…?なんで『アンタ』が此処に居るの…!?)
一方、蒼牙の暴走を止める一同を余所にサンディアはクオンの真の姿を見て激しく動揺していた…。
それはまだ、故郷の魔熔山が比較的平和だった頃…数百年前のまだひ弱で無力な甘ったれだった幼少期の事だった…。
「いやいや、まさかアンタらと同盟を結べるとは夢にも思わなかったぜ♪」
「あぁ、おかげで我々の戦力も強化された。何かあれば何時でも我らオルテンダークの一族が駆けつける。」
「グワッハッハッハッ!これで頼もしい味方が増えた事だし、めでてぇ話だぜ!これから、よろしくな!!」
自分の住んでいた小城にて、魔熔山では見慣れないとある種族の来客が来ていた。父のザウガス・オルテンダークと母のサンドレア・オルテンダークが重厚な騎士甲冑に身を包み口元を鋼鉄製のマスクで覆い豪快に笑い飛ばす男が何やら難しい話をしていた。
その男の傍らには自分と同じくらいだろう年齢か?薔薇付きの茨が絡み付く美しい金色の髪に男と同じく鋼鉄製のマスクで口元を隠し、宝石の様にキラキラと輝く深紅の瞳とは対照的に…暗く陰鬱そうな雰囲気をし、幼い少女が居た。
「…あ…。」
「………。」
気づけば視線が合ってしまった。しかし、相手の少女は静かな呼吸音を漏らすだけで一言も発しなかった。
「ん?よく見りゃオメェーらも子供居たのか?ま、可愛さ的にはウチの娘の方が勝ってるけどな♪ガハハハハッ!!」
「あ"?寝言は寝て言えよ?このクソ親父!テメェ、この野郎っ…!!ウチのサンディアが可愛くないだと!?前言撤回、さっきの同盟の話は無しだ!オラァアアアアアア!!」
「はぁっ!?いや待て!落ち着け!?そんな事、一言も…!むしろテメェの方がヒデェ事言ってんじゃねぇか…って、ぶげぁあああああ!!?」
「野郎!ブッ殺してやぁああああるッ!!」
「この大バカ者ォオオオオオ!!くだらん事で同盟の話をパーにするどころか×××の魔族全員を敵に回すつもりかァアアアア!!?」
「ぎょへぇええええ!!?姐さん!堪忍してェエエエエエ!!」
…何故か親が醜い争いしていたが気にしてはいけない気がしたためそれ以上思い出したくない。
「大体にして貴様ら!こんなアホな争い自体が互いの娘の教育によろしくないと何故気づかないんだ!?バカ共がぁああああ!!ましてや子供に優劣などあってたまるか!仮にも人の親ならば例え我が子でなくとも子供というものは等しく愛らしい存在だということが何故解らん!?」
「ヒィイイイイ!!姐さん、お許しをォオオオオオ!!」
「…オメェのところのカミさん、めっちゃ怖ェのな…」
母に怒られている親バカならぬバカ親な父と余所の少女の父親の情けない部分はさておき…
「私、サンディア・オルテンダーク。貴女は…?」
「…私、は………。」
…と、幼き日の思い出の断片を記憶から引き出している最中だった。
「ぐふっ…ゲホッ…オェェエエエエエ…!!うぇえええん…!殺しゃれるゥウウウ!!私、殺されちゃうよォオオオオ!!びぇええええ!!」
「あぁ!今すぐブッ殺したらぁ!!このニセモノ野郎!よくもオレを騙してくれたな!?オイィイイイイ!!非難覚悟でバイト先で居やしない架空の親戚一同の葬式だなんて嘘ついてまでライブとか行ったり、CDとか買ってたオレの労力を返せェエエエエエ!!」
「リューカ姉、蒼牙兄の事、考え直した方がいいよ?割とマジで。」
「情けなさ過ぎて、もう止める気も涙も出ないよ…。」
「リューカ、此処はやはり…私と、ハァ…ハァ…♪」
「魔族って揃いも揃ってクズだね。」
(雰囲気ブチ壊しィイイイイ!!そして腹立だしいことに全然否定出来ないィイイイイ!!)
…とてもじゃなかったが感傷に浸れる様な状況下ではなかった上に、響から容赦無い辛辣な評価が下った。他の奴等はともかく自分の事まで一緒くたで馬鹿にされたサンディアは普段ならばブチ切れて確実に彼に食って掛かるところながらも今回ばかりは珍しく反論が一切出来なかった。
「大丈夫、蒼牙も本気じゃないって。それにしてもまさか来栖さんが魔族だったなんて意外…」
「違う…違う…ぐすっ…ひっく…私は、ナオノじゃない…怒られる、どうしよう…どうしよう…うぅ~…『本物』に…うぅ、報告するの、やだぁ…」
「ん?『本物』…?」
響はアイドルのクオンであると同時に自分のクラスメイトである来栖奈緒乃の正体が魔族だと思っていた…だが、この魔族の少女は自分はクオンどころか本物の来栖奈緒乃ではないと否定し、スマホを取り出して嫌々ながらも何処かへと連絡した…。
「…もしもーし…あ、あの私…なんだけど…えへ、えへへ…ぐすんっ…」
「…はい?どうしました?というか泣いてます?何かあったんですか?」
「泣いてないもんッ!あの、その…実は…い、言いにくいん、でしゅけど…ぐすっ…ごめんなさいィイイイイ!!正体バレちゃったァアアアア!うわぁああああん!!しかもナオノの事知ってるっぽい男の子と他数名にィイイイイ!!」
「は?どういうことですか?説明、してください…私は今、とても冷静さを欠いています…」
「ひっ!?」
魔族の少女は連絡先の相手に自分の正体が一般人にバレてしまった事を正直に打ち明けたがそれが相手の逆鱗に触れてしまったらしく、その声から静かな怒気が沸き上がってる事を感じ取り、魔族の少女は顔を青褪めさせてビクビクと怯えつつも何がどうしてそうなったのか今でもよく解らないアホな事の顛末を全て包み隠さず話した…。
「何、シクってるんですか?この、役立たず。」
「ヒドイッ!?」
「今、何処に居ますか?」
「あ、えぇと…影沢診療所ってところで…って、よく見たら近所!?今の無し!本当は違うとこ…!!」
「其処を動くな。」
「ま、待ってェエエエエエ!!お願いィイイイイ!!許してェエエエエエ!!いやぁああああ!!」
「コ・ロ・シ・テ・ヤ・ル。」
電話の相手はバッサリと切り捨てる様に魔族の少女に冷たい罵倒を浴びせ、淡々と彼女の現在の居場所を聞いては不吉な死刑宣告を言い残してスマホを通話を切る…魔族の少女はスマホを落とした事にさえ気づかずに全身をカタカタと震わせる。
「殺されるゥウウウーーーーッ!!ナオノに…!本物の『クオン』に抹殺されるゥウウウーーーッ!!お願い!私はもう此処には居ないって、言っ…!?」
魔族の少女は自身の生命の危機を感じたのだろうか、犯行が見つかった間抜けな泥棒よろしく診療所の窓から外へと這い出て逃げ去ろうとしたが時既に遅し…。
「はぁああああ…ほぁああああッ!!」
「でぇえええええええ!!?」
「総員!退避ィイイイイ!!」
「「「「どわぁああああーッ!?」」」」
外に居た目深に被ったフードから覗かれる浅黄色のショートボブに肩まで届く墨色をしたもみあげが突き出ており、眼には縁の無いタイプの満月の如き丸眼鏡、フード付きのノースリーブのパーカーに青いジーンズ生地のショートパンツからは華奢ながらも鍛え上げられ引き締まっている両腕と両足が惜しみなく見えており、素足にスポーツシューズを直履きしている身長は150㎝も無いくらい小柄な少女が診療所近くに立っていた電柱に後ろを向いた状態で強烈な回し蹴りを叩き込み、何故か天を指差す様に右手の人差し指を翳すと同時に信じられない事に電柱が棒倒しの棒の様にあっさりと倒れてきたため、中に居た者は魔族の少女以外全員診療所から緊急脱出した。
「ぐぇえええええ…!!」
「おーい?大丈夫?っていうか、大丈夫だな。うん。魔族はこの程度じゃ死なないか?あー…叔父さんになんて説明しよ…」
「冷静だね!?響君!!もっと驚けよ!電柱倒れて来たんだよ!?叔父さんの診療所一部倒壊したんだよ!?」
「いつも思うけどコイツ、本当に人間?」
「サン姉、響兄は人の心を持たない悲しいロボットロボ太郎だよ。」
逃げ遅れ、電柱に押し潰されガマガエルの鳴き声みたいな汚い声を絞り出してる少女の悲惨な状況よりも響はむしろ診療所が電柱に押し潰されてメチャクチャになったという事実を影沢にどう説明すればいいのかに悩んでるという驚くほど薄情な感想しか述べておらず、そんなんだから周囲からロボット扱いされるのだという事にまるで気づいてなかった。
「ま、アンタが非人間なのはさておき。」
「さておくな、サンディア。僕は人間だ。」
「こんなものを蹴り倒すとか、アイツも本当に人間…???」
「アイツ『も』とか、含める様な区切り方するな…むしろ一緒にするな。あんなバケモノと。」
魔族ならともかく、人間が素の力のみで電柱を蹴り倒すなどという人間技じゃない行為をした眼鏡の少女の恐ろしい力に困惑したがサンディアがそう思うのも無理はなかった。
「人間だよ、一応。あの子は空手部を何度も優勝に導いてるくらい強い上に道場の娘だから…ね?来栖さん?」
「確か久我山君、でしたか?詳しい御説明ありがとうございます…さて、どうも皆さん、この度はそこのおバカの失態を罰するためとはいえ、この様な蛮行に及びまして大変申し訳ありません…私は来栖奈緒乃…つまり、『本物のクオン』です。」
「「「えぇええええええええ!!?」」」
眼鏡の少女…否、来栖奈緒乃は眼鏡をクイッと位置調整する仕草を取りながら、これ以上隠しても無駄であろうと判断したのだろうか?自分こそが深紅の歌姫・クオン本人だという事を呆気なくカミングアウトし、蒼牙・リューカ・牧志の三人を驚愕させた中…。
「その、あの…久し振り、サンディアちゃん…私の事、覚えてる…?私だよ?エターナ。エターナ・ザ・ヴァンプロード。昔、ヴァイドレッド父様とも会ったことあるでしょ?」
(…忘れ、られる訳…無いじゃない…)
「また会えて、良かった…」
(…だけど、今の私には…過去に甘える資格なんて…)
クオン…来栖奈緒乃に成り済ましていた魔族の少女…吸血鬼族のエターナ・ザ・ヴァンプロードはサンディアに…生まれて初めて出来た『親友』に近寄り、優しく抱き締めながら、数百年ぶりの予期せぬ再会の歓喜に身体を震わせて涙したのとは対照的にサンディアは何も答えることが出来ず、大きな葛藤と不安を抱いていた…
(私は、どうしたら…)
ただでさえ他の連中と居ることの安心感に浸って生温くなった自分がエターナと出会った事で更に弱く、脆い存在に変わり果ててしまうのでは?と。
どうも皆様、作者です。特にスランプというわけではないですが明らかに投稿ペース落ちててかなり凹んでます(泣)。終わり方もちょっと尻切れトンボ感が否めないのに加え、本編どころか後書きの書き方すら忘れてしまってるため長くなってます、すみません…(汗)
私はどうも蒼牙の時の話の様なシリアス続きが終わると唐突にギャグに走りたくなるという悪癖がありまして、今回は蒼牙ならびにリクスのキャラ崩壊が甚だしく大変申し訳ありませんでした…絆と愛が音を立てて崩れてそうですが、まぁ次あたりで自動的に元通りの関係に修復されますのでお気になさらずに(←出来るか!)。
魔族は必ずしも見た目と実年齢がいっちしてるわけではありません。今回、蒼牙に明かされた驚愕の事実がまさにソレです。作中で更に言えば今年でジャスト1000になったばかり、ついこないだまで999歳、人間の年齢に換算すると9歳だったという…こんな一桁の奴、絶対いないわ(汗)
そして前回リューカと結ばれたにも関わらずアイドル・クオンに現抜かし、挙げ句の果てに本人を目の前にして暴走してしまい、そのクオンがエターナの化けてた偽者と解った途端殺しにかかる暴挙に…彼はまだほんの10歳児なので大目に見てあげてください(汗)
デレの要素さえも殆ど見せないどころかナンパが鬱陶しいとはいえ一般人に暴力振るってケラケラ笑ってるわ、蒼牙の見舞いには顔を出さないわなど主役とは思えぬ性格のサンディア、無論最初からこんな性格な訳ではなく幼少期は素直なよいこでした。かつてのお友達…エターナとの馴れ初めに関しては次回にて語ります。
蒼牙に便乗するかの様に酷いキャラ崩壊を起こしたリクス…レ○の気だけでなく、牧志に怒られてMの気を発症させるとは何事か…(←おい作者)、リューカに対する気持ちは友情と信頼が約80%で残り全てが劣情と性欲ですが…ギャグの時は反転し、劣情と性欲は驚異の95%に跳ね上がってますがすぐさま元の友人関係に戻ります。蒼牙と違いこちらは大目に見れませんな(←当たり前だ)
どういうわけかクオン…来栖奈緒乃の振りをしてアイドル活動をしていたエターナ・ザ・ヴァンプロード、前回の話にて烈鬼坊総師範に焼き殺されたヴァイドレッド・ザ・ヴァンプロードの実の娘でもありますがとにかく今回はファンやら蒼牙やら奈緒乃やらに殺されかけたりと何かと扱いが酷い…(汗)
一方、本物のクオン(紛らわしいな、オイ)であり、あの心無い機械である響と珍しく面識のある数少ない同級生・来栖奈緒乃…空手ってなんだっけ?電柱蹴り倒せる女子中学生がいてたまるか、どう考えてもアイドルと結びつきそうにない子な上に魔族相手にも臆さないという度胸…君は本当に人間かね?(汗)
次回はエターナのサンディアと奈緒乃との関係性の掘り下げ、牙鮫坊との戦いに入る予定ですのでお楽しみに、それではまた…槌鋸鮫でした。
・エターナ・ザ・ヴァンプロード/吸血鬼族(イメージCV:雨宮天)
どう考えてもぼっちとしか思えない性格最悪なサンディア(←言い過ぎだろ!)のかつての友人、声のイメージは某火星の女王の雨宮さん、性格的にはどこぞの水の駄女神をイメージしています…見た目は声が違う人のドM騎士に近いですが(汗)。
咲いている植物は父親のヴァイドレッドと同じく薔薇(赤)、花言葉は『情熱』など
・来栖奈緒乃(イメージCV:高橋李依)
本来のアイドル・クオン御本人にして中々にバイオレンスな初登場をした響の同級生である眼鏡っ娘。声のイメージは高橋李依さん、爆裂的な威力の蹴りは使えても爆裂魔法は使えませんしデカイ盾を振り回す後輩キャラでもないです(←なんのこっちゃ)。
尚、彼女は間違いなく人間です…電柱蹴り倒してますけど、本当に人間です。
・牙鮫坊斬嶽/飛鮫魔人族(イメージCV:杉田智和)
ゲスト枠の敵魔族にして美紅尼睡蓮の弟子の一人、種族の元ネタはソロモン72柱の一柱である巨大な海の怪物の姿をした悪魔・フォルネウスから。その容姿のイメージから創作ではしばしばサメやらエイやらの姿にされてます…ですが、海の者が山の者の格好をするという矛盾…(汗)山伏姿はお気になさらずに、単にそういうファッションです。今回は活躍させられなかったが次回から活躍させます(←というかさせろ)。
声のイメージは杉田さん、特撮的に某蝙蝠や常に怒ってる赤唐辛子くんや銀河からの来訪者、アニメ的には銀色の魂を持つ侍…と、イメージCV的にどんなキャラになるかは御察しください…(汗)
咲いている植物はトベラ、花言葉は『飛躍』『偏愛』など




