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第十五片-戦華無双-凄絶なる炎の鬼--

例によって内容のみならず今回は後書きまで果てしなく長くなっておりますのでお読みになられる際はくれぐれも御注意を(汗)

此処は魔界(ヘルブラッディア)…森林地帯と草原地帯の複合地域・魔樹原(ヘルフォレスト)、かつてリクス達ヴァジュルトリア家の一族が治めていた『帰らずの森』のある森林地帯から遠く離れた草原地帯・シェオル草原の果て、とある古城にて…


色彩豊か且つ雅な和装をした顔から肩までにかけて細かい虫の複眼が大量に付いた人間大サイズの白い芋虫…カイコに似た姿をした蚕妖蟲(オシラ)族、血の様に赤い全身に釣り針の返しみたいなものが付いた鋭いトゲが背中全体にビッシリ生えてるトゲアリ型の虫人間・蟻獄人(アスカトル)族、全体的に細長い樹木の様な姿をしているがよくよく見れば葉っぱが生えた枝に見せかけてる手足を持つナナフシに似た外見をしている樹霊(ドリアード)族…複数人、それも様々な種族の(むし)型魔族達が生気を既に宿していない白い目と大きな口を見開き唾液をだらしなく垂れ流し凄まじい苦悶の形相のまま首を両手で押さえる状態でその辺に打ち棄てられてる様に転がり、絶命していた…。


彼らは魔樹原を滅ぼした『不死鳥(フェニックス)軍勢(レギオンズ)』の脅威から運良く逃げ延びた数少ない生還者であり、それ以降、誰からも見つからずに今までひっそりと暮らしていたがその平和は長くは続かず、呆気なく終わった。


「はぁー…!はぁー…!!ゲホッ…ゴホッ…!」


「姉上!しっかりしてくだ…うぐっ…!?うぅ…カハッ…!!」


「そ、そんな…!!アタシ達の下僕(しもべ)達が…!?お、おのれぇええええ…!!」


見た目は人間の女性に似てるが、虫の触覚と獣の耳が生えた頭、紫の髪が所々入り混ざりムカデの胴体が絡みつく黒のロングヘアー、両手首に蠍の針が生えた腕…腰から蜂の羽とトゲがある玉状の先端部分のある尾を生やし、巨乳を通り越して爆乳の領域にあるはち切れんばかりの大きな胸の谷間を強調させるようにパックリと穴が空いてる胸元部分が特徴的な露出度の高い毒々しい紫と黒のボンテージファッションに身を包み、腹には蠍の尾や虫の手足を生やした虎ともライオンともいえぬ異形の獣の紋様を刻み、極めて瓜二つな外見をしている三人組のありとあらゆる毒虫と獣人のハーフじみた姿をした魔族の女性…蠱獣類(マンティコア)族のマトリオン三姉妹が眷属である蟲型魔族達の無惨な姿を目の当たりにし、屈辱でハラワタが煮え繰り返る思いに駆られ、憎々しげにこの残酷な仕打ちをした上に自分達をボロボロになるまで追い詰めた相手を睨みつけた。


「この辺境で貴女達姉妹が一番の実力者と聞いてやって来ましたがどうやら私の見込み違いだったようですね。もう結構です。それでは。」


流れる様に靡く地面に着く程に長い美しい紅の髪、背中にギロチンが突き刺さった三本角の黒い鬼の髑髏が刻印された黒い何かの道着を尼僧服の上から羽織り、耳の代わりに魚の鰭が生えており、紅の鱗に覆われてる両腕や両足は鮮やかな鋭利な刃物状になってる鰭、腰には長い尾鰭が生えてる人間の女性に似た姿をした右足の太股に黒い泡と人魚の刻印を刻み、首にヤマザクラの花を生やした人魚(マーメイド)族は先程まで戦って勝利していたらしいマトリオン姉妹達に対して敗者には興味が無いと言わんばかりの態度で背を向けて立ち去ろうとしていた。


「待て!!妾達にこんな舐めた真似してくれてタダで済むと思ってるのか!?」


「どこの誰だか知らないけどこんなことされた以上、生きて帰す訳が無いでしょうがァッ!あぁっ!?」


前髪で左目を隠して左手首にヒースの花を咲かせている次女・ヴェラ・マトリオン、反対に前髪で右目を隠して右手首にセナと同じくヒースの花を咲かせている三女・ヴェル・マトリオンが毒液を滴らせた手首の毒針と爪を人魚族に対して殺意と共に向け、『まだ負けてない』という抵抗の意志を見せた。


「…それ以前に、この眷属()達まで殺す必要あったの…?私達が目的ならはじめっから私達だけ狙えばいいじゃないッ…!」


「私は本来、無駄な殺しはしない主義です。貴女達だけを倒したら速やかに立ち去るつもりでしたがその直後にいきり立って襲ってきた彼らに『無駄な行為は止めた方がいい』と、最初に私は忠告しました。ですがそれにも関わらず彼らは向かってきました。これ以上は何を言っても無意味と判断し、止むを得ずこの様に対処しました。」


前髪で両目を隠して両手首にヒースの花を生やした長女・ヴェノ・マトリオンは蚕妖蟲族の内の一人の遺体を抱き締め死んでる彼の顔に大粒の涙を溢した。悲しみに打ち震えながら彼らを巻き込んだ挙げ句皆殺しにする必要性の無さを訴えた…人魚族としては大変不本意な殺戮だったらしく、マトリオン三姉妹を倒した時点で既に目的は達成されたものの支えるべき主君を倒されて怒りを露わにしない者などいない…一応忠告はしたものの聞く耳持たず、蟲型魔族の眷属達が一斉に襲いかかったが健闘虚しく全員御覧の有り様である。


「ハッキリと解りました。所詮この程度だと、私がわざわざ遠征して殺す必要どころか…その価値すらないただの虫けらに過ぎなかった…と、貴女達三人も、そこで転がってる眷属の方々達も。とても残念な結果ですね、得るべきものが何一つありませんでした。」


「貴っ様ァーーーッ!!撤回しろ!その言葉ァアアアア!!我々への侮辱は断じて許さない!!」


「アッタマ来た…!!その気に食わない面ァ今すぐジュクジュクに腐った果実みたいにしてやらァアアアアッ!!」


「ヴェラッ…!?ヴェルッ…!?だ、駄目ッ…!!貴女達だけでソイツは…!!」


人魚族の傲岸不遜な態度と侮辱の言葉の数々に次女(ヴェラ)三女(ヴェル)は獣じみた憤怒の形相で毒針の付いた手首を振り上げながら飛び掛かる。完全に血が昇ってしまってるため今の二人には長女(ヴェノ)の制止さえも届かない。


「はぁ…殺すつもりも無ければ必要以上に相手をなぶる趣味も無いのですが、どうやら死ななければ解って貰えないようですね?」


マトリオン姉妹を無視して立ち去るつもりだったが、人魚族は彼女達のしつこさに辟易したのか?呆れ果てた表情で溜め息をつき、その瞬間…。


「…シャアッ!!」


「何ィイ…!?ガハァッ!!」


「…んぐふぅうッ!?」


腕を掴まれたかと思いきや…気づけば二人はいつの間にか地面にキスする羽目になってしまった。叩きつけられ腹這いになったヴェラとヴェルは自分達に一体何が起きたのか理解出来ず動揺する。


「はぁッ!!」


「ギィッ…放、せ…あがぁあああああ!!?」


「腕が!アタシの腕がァアアアア!!?」


「ヴェラ!?ヴェル!!」


人魚族の女は俯せの二人の背中に足を置き、ヴェラの左腕とヴェルの右腕の肘関節を限界まで伸ばし、力任せに二人の腕を引き千切ってしまった。


「ひ、ぐっ…ぅあっ…!!」


「はぁ、はぁ…ぐぅうう~…!!」


引き千切られたそれぞれの腕の激痛と屈辱に堪えるかの様にヴェラとヴェルは涙をボロボロ流しながらも歯を食いしばり、戦う意志がまだ死んでない目を向けるも人魚族は二人の髪を乱暴に掴んで持ち上げ、耳元で表情を一切変えず実に恐ろしい事を言い放つ…。


「まだ…もう片方の腕、それと…両足がありますよね?」


「「…ひッ!!?」」


その後…。


「痛ぎゃああああ!!あがっ…あっがぁあああああ!!死なせて、死な…せ、て…!!」


「殺、じ…ごろじでぇええええ!!今ずぐゥウウウウ!!」


両腕と両足をもがれ肉の達磨と化したヴェラとヴェル、情けない悲鳴を上げては血を撒き散らしながらのたうち回り、最初の時と打って変わって最早戦う意志など消え失せ、逆に『殺してくれ』と懇願し、まるで子供の様に泣き喚く。


「やめっ、やめ、て…これ、以上っ…二人に手を出さな…ふぎっ!!?」


「貴女だけは抵抗してこなかった。実に賢明な判断です…が、あの愚かな妹達の様に抵抗してくる可能性が非常に高い、故に…心を折っておきます。今、此処で。」


既に戦えぬ身体にされた二人を庇おうと両腕を広げ、顔が涙でグチャグチャになったヴェノだが彼女の頬に容赦無く鋭い平手打ちを叩き込んだ人魚族は更なる追い打ちをかけるべく、事実上の処刑宣告が言い放たれた。


「知ってますか?生き物をアッサリ、簡単に殺せる凶器を…それはズバリ、『水』です。ほら、こんな感じに…。」


「あぐっ、ゲッ…ガボッ…ぐ、ぐるじ、い…!!」


「息、息が…出、来な…ぶばッ!がごげッ…ご…!!?」


人魚族はそう言うと指を軽くピンッと弾くと同時に水滴を飛ばし、ヴェラとヴェルの口に放り込む…途端に二人は口を大きく開き、涎をだらしなく垂らし苦悶の表情を浮かべながら喉を押さえようとしたものの両腕が無いため苦しみから逃れられずにいた。


「やめてぇええええ!!お願い!お願いだから二人をこれ以上苦しめないでぇえええ!!私が!私が代わりに…もがっ!?」


「それじゃあ意味が無いじゃあありませんか?言いましたよね?『貴女の心を折る』と、そこで黙って見ていて下さい。」


ヴェノは拷問される二人を助けようと飛び出そうとしたが人魚族はそれすら許さずに指を弾いて彼女を黙らせるための口枷代わりに口に水を張りつけ、更には両手・両足にも同様に水の枷を付けて拘束する。


「さあ、これで仕上げです。」


「あ、姉、上…ずまな、い…か、はっ…!」


「アタシ、達、もう…コッ…ゲボッ…!!」


「うっ!?んぅっ!!んんーーーーっ!!?んんーーーーーっ!!」


最初こそはほんの一滴程度が二人の体内の肺に入ったが人魚族のパチンと鳴らされた指の音と同時にそれが一気に大量に増水し、肺全体に水が満たされてしまい…やがて二人は白目を剥いて口から泡を吹き出し窒息死してしまう。


もし水が喉の中の喉頭或いは声帯に入れば、気管が凝縮して、その侵入を拒む。肺というものには普段、水の侵入を防ぐ云わば防衛機能の様なものが働くが…何かの間違いで一度でも水が肺の中に入ってしまえばこの機能は途端に無意味になり、酸素欠乏のため徐々に意識は無くなり、やがて心肺停止…死に至る。今の二人の状態がまさにソレだった。


「魔界では魔界樹が生命の源ですが人間界…とやらではこの水が生命の源と呼ばれてるそうですよ?命を生むものが命を殺す、面白いとは思いませんか?っと、おやおや?どうやら最早何も聞こえてはいませんね…ではこれにて失礼…。」


「…………。」


ヴェラとヴェルの死と唯一生かされたものの何もすることも出来ないまま妹二人を目の前で殺されたせいで目が虚ろになり放心状態なヴェノの心の折れた様子を確認し、人魚族は水の枷を解除、自身の身体を泡に変えて消え去りその場を立ち去った…。


時同じく、場所は代わり魔界の密林地帯・魔密林(ヘルジャングル)。狂暴且つ野蛮な原住民たる蛮族達や魔獣が住まいし暗き野生と獣性の王国。だが此処でも…。


「ぷー!クスクス…♪あれれー?もう終わりー?」


人魚族の女性と同じくギロチンが突き刺さった鬼の髑髏が刻印された黒い道着姿をしている一人の魔族…機械的且つ流線型なメタリックボディ、両腕と一体化している鋼鉄製の翼を生やし、全身は常に紫色の高圧電流が流れており、背中には黒い雷と鷲の刻印を入れ、額にアマリリスの花を生やしてる小柄な戦闘機と鳥を組み合わせた様な外見をした金属生命体の雷禍鳥(サンダーバード)族の子供が魔密林の木々を掻い潜りながら飛翔し、地上に転がる元の原型(おもかげ)が何だったのか解らなくなるほど黒焦げになった蛮樹精(キジムナー)族、羽民(イュイミン)族、双剣牙獣(デモゴルゴン)族といった現地の蛮族たる魔族達の死体を見下ろしながら悪戯っぽくクスクスと笑い出す。


「やってくれたな…このクソガキがァアアアア!!どうしてくれんだ!?オイ!!おかげでオレが築き上げた全てがパーだろうが!ゴォラァアアアア!!」


3mはあろう大柄な体躯、深緑色の重厚な鱗の鎧に包まれ、顎の下にシャガの花を咲かせ、大きく開かれたワニの口の意匠の籠手を嵌めた腕、頭に色とりどりの羽飾りを付け、派手な模様の腰布を巻き、太く長い尾には黒いワニの刻印を入れ、背中に巨大な二本の鉈をマウントさせてるワニ型の獣人・鰐獣精(グランガチ)族のガドウ・ゾアが侵入者(よそもの)…それも子供である雷禍鳥族によって縄張りを荒らされ好き放題された事に対し怒号を発し、ドスドスと地震か何かと間違えそうな足音を轟かせて相手を追いかけ始めた。


「ウダラァアアアア!!さっさと降りてこいやァアアアア!!テメェエエエエエ!!」


「ちょっ!?あっぶなっ!!何、あのオッサン!?おぉ、こっわッ…マジギレじゃん!!こりゃ煽り過ぎたかな~?キャハハハッ♪」


「あぁ!?避けてんじゃねぇ!!ブチ殺すぞ!!」


ガドウはその辺に生えていた木を引っこ抜いては上空を飛び回っている雷禍鳥族目掛けて次々に投げつるという脳味噌筋肉な頭の悪い戦法をやらかしてきたがこんなものがホイホイと当たる程甘くはなく軽々と避けられてしまい、逆にその沸点の低さを嘲笑われてしまう。


(このまま飛んでてもいいけどあのオッサンしつこく木を投げまくってくるからな~そろそろ反撃といきますか♪)


雷禍鳥族は自分を追いながら木を放り投げてくるガドウをおちょくりつつも今度はこちらから攻撃を仕掛けようと降下しながら急速接近した。


「ケッ…ようやく観念して殺されに来たかァッ?こンのシャバ憎がァアアアアッ…上っ等だよ!ゴラァアアアア!!返り討ちにしてやんよ!!ッラァアアアア!!」


「うわわっ!?何処から出したのソレー!?本当になんなんだ!このオッサン!?」


雷禍鳥が攻撃のためにこちらに向かって来たため、青筋を立てまくった怒り心頭な形相をしたガドウはというといつの間にか複数の迫撃砲を設置しており、更にはどこからともなく取り出したロケットランチャーを構えて一斉に砲弾を発射した。


「だ・け・ど…残念でしたー!当ったりませんよーだ♪キャハハハッ♪」


しかし、これだけの数の対空射撃をもいとも容易く高速で回避してしまう。雷禍鳥族は全身に纏わせた電流を更に激しく発生させガドウ目掛けて突進してくる…だが。


「ヌハハハハハァ…バカがァ…オレがテメェを追いかけて来たのは『この場所』に来るためだよ…殺れ!!タタリィイイイイイイ!!」


「ひゃあっ!?な、なんだコレ!!引っ張られるゥウウウウ!!」


ガドウがニヤリと笑った次の瞬間、突如無数の触手が真横から伸びて雷禍鳥族を絡み取ってしまい、近くの沼に引きずり込んでしまった。


「うげぇええ!?なんだよ、このバケモンはァアアアア!!」


「ゴバッ…ゴァッ…ゴボボッ…」


「ゴポォッ…ゴブゴブ…!」


「ゴップ…ゴパァ…ボゴボゴボゴ…」


沼から現れたのはまるで詰まった水道管から聞こえてくる様な汚い不快音に似た唸り声を発する全身が黒く顔はツルンとしたのっぺらぼう、胸部には巨大な独眼、両腕は無数のヒルの口の様なウネウネと蠢く触手状になっており、下半身はミミズ…しかも人間でいうところの尻にあたる部分からブバルディアの花が生えてるという魔界の住人の中でも群を抜いたなんとも形容詞し難い異形の姿を持つ複数人の魔族…禍津日(マガツヒ)族、彼らもまたガドウが手下として従えている種族であり、ガドウはその内の一人…顔に深々と三本の引っ掻き傷が横一直線に刻まれている者に『タタリ』という名を与え、そう呼んでいた。


「うがぁあああ!!離せぇええええ!!」


「ヌゥハハハハハッ!!ガキのクセにさっきはよくもまぁあんなにイキッてくれたなァアアアア!!えぇ!?おい!!暴れても無駄だからな!そいつら…禍津日(マガツヒ)族は獲物を絡め取った以上、沼に引きずり込んで全身から生き血を啜り尽くすまで離さねぇんだよ!解ったか!?ボゲェッ!!」


「た、助け…ゴホゴボゴボッ!!」


まんまとガドウの罠に嵌まりタタリ達禍津日族の住み処である沼まで誘われた結果、引きずり込まれてしまう。抜け出そうにも触手の拘束は思いの外厳重のため脱出は困難を極め、やがて全身が沈み始める…ガドウの言うように調子に乗り過ぎた天罰が下ったのか?雷禍鳥族はこのまま為す術が無ければ全身の血を啜られ沼の肥やしと化すだろう。


「「「ゴパッ…ゴゲッ…ゴップ、ゴップ…!!」」」


「ヌガァーッハッハッハッハッハー!!久々の獲物は美味いかァッ!?タタリィイイイイイイ!!」


「ゴッボォ…ゴボバッ…バゴッ…ブァッ…!!」


「ヌッハッハッハッ!!そうかそうか!…ケッ…全くザマァねぇなぁ!ガキィッ!!大人を舐めた罰だ!!それにこの沼は底無しよ、カラカラのミイラになって永久に沈んでろッ!!」


タタリをはじめ禍津日族達は永らく食して無かった新鮮な獲物(エサ)の生き血にありつけられたこともあってか絶対に逃げられない様に全員が雷禍鳥族を触手で拘束した状態で更に住み処である底無し沼の深い所へと引きずり込む…こうなっては最後、如何なる魔族とて死体も上がる事無く死ぬだろう、そう思われていたが…。





(なーーーーんちゃって♪キャッハハハハッ♪)





「今の音は一体…うぉっ!?」


魔密林全体に響き渡る様な謎の轟音が沼から聞こえ、その場から立ち去ろうとしたガドウが何事かと振り向いたのが不味かった。沼全体から直視も出来ぬ程に眩い紫の雷光が放出されており、ガドウはその眩しさのあまり思わず目を背けてしまった。


「痛ッ…なんだこりゃ?って、げぇっ!?タ、タタリ…嘘ーーーーんッ!?」


その時、背中に何かを投げつけられ、自分にぶつかったソレを恐る恐る確認して見ると地面に転がっていたもの…ただでさえ元から黒かったのが更に黒焦げになっているタタリ達禍津日族全員分の首だった。沼の中ならば敵う者が誰一人居ない彼らが殺られるとは思っても見なかったかガドウは仰天し、腰を抜かしてしまう。


「もしかしてコイツらがオッサンの切り札だった?試しに遊んでみたけどコイツら弱過ぎっしょー♪で?オッサン、アンタもう戦わないのー?キャハハハハ♪」


「…ンギィイイイイイ!!うるっせェエエエッ!こんな連中に頼らなくてもオレはなァアアアア!!」


どうやら雷禍鳥族はワザと捕まったフリをして敢えて相手(タタリ)にとって有利な沼の中で戦っていたが雷禍鳥族にとって思いの外に弱過ぎたらしく拍子抜けしてしまったようだ。頼みの綱を殺られその事実を受け入れられず自棄気味にガドウは背中の鉈を抜き、雷禍鳥の脳天目掛けて振り下ろす。


「キャハッ♪そんな解りやすい攻撃が当たるかってんだよっ!!ドリャアァアアアアアアアアアア!!」


「だばっ!?うごぉっ!?ばはぁあああっ!!」


無論、雷禍鳥にはその程度の攻撃が当たるはずもなく、瞬時にバックステップで回避した後、ガドウの懐に飛び込み目にも留まらぬ早さで左右の死角から交互に高圧電流を纏わせた掌底や手刀を繰り出して上空高くへと打ち上げ、電流を全身に纏わせるとガドウ目掛けて飛翔、過剰なまでに幾度も突進攻撃を仕掛け下の沼へと叩き落とした。


「ゴボゴボゴボゴボ…」


「キャハハハハ♪なーんだ?結局アンタも弱いじゃーん?ま、程々に楽しめたから良いけどさ…じゃーねー♪永久にサヨナラー♪キャハハハハッ♪」


全身真っ黒焦げと化したガドウは白目を剥きながら頭から底無し沼へと真っ逆さまに落下し、足をV字状に硬直させたマヌケな体勢のまま沈んでしまったのを確認し、雷禍鳥はケラケラと癪に障るような笑いながら飛行し、魔密林から消え去る…。


三度場所は変わり、魔海(ヘルディープ)のとある名も無き島…この島の平原の大地には夥しい数の刀剣や矢、槍などの武器が突き刺さり、硝煙が漂い過ぎて島全体が黒々と淀んで見える中、至る所に様々な種族の魔族達の死体が無惨に転がっていた。この異様な景色が見えるようになってしまったのは此処が知るものぞ知る魔界屈指の無法地帯であるからだ。


この戦が何時から始まり、何故終わらないのか…解ってる限りでは数百年前に島民同士の種族間の縄張り争いをしている最中、タイミングが悪いことに外来してきた余所の地域の魔族が侵略行為の拠点作りにやって来た…これを返り討ちにしたところ、身内が殺られた事に腹を立て本格的な軍を指揮しながらその魔族達がこれまたタイミングが悪いことに敵対している諸国の魔族達と共に雪崩れ込み、島民達との血で血を洗う激しい争いに発展し、何時しか此処は闘争心と殺戮本能剥き出しの血気盛んな魔族達がただただ殺し合いをするためだけに集まる戦場と化した。


数多の戦いを勝ち抜き、最後まで生き延びて屍の山を築いてきた事により現在この島での覇者候補は以下の二強に絞られていた。


「ガルルルッ…ヴォアアアアアアアアア!!」


「「「ギジャアアアアアアア!!」」」


戦国時代の甲冑を纏ったカニ型の魔族・平家蟹(ヘイケガニ)族達などをはじめ様々な種族の家来達を率いながら、頭部に生えたリアトリスの花が露出した兜を全身には鋼鉄の鱗を張りつけた甲冑を纏い背中には三ツ又の槍をマウントさせ、四本腕を生やし顔から首にかけて縦一列に複数の目がある10m以上あるだろう天を衝かんばかりに巨大な恐竜じみた怪獣…軍神として名高い毘沙門(ビシャモン)族の剣辰天荼紋(けんしんてん・ダモン)の『荼紋(ダモン)軍』。


「クックックックッ…全軍、突撃しろッ!!今日こそ決着つけてやんよォオオオオ!!」


「「「ア゛ァ~…ア゛ァアアアア~!!」」」


髑髏やホッケーマスクなどの不気味な意匠を顔代わりに掘っている墓石と同化している胴体を持つゾンビじみた外見の墓標屍人(レヴナント)族をはじめとした不死魔族(アンデッド)達などの種族を兵士として従え、巨大な蝙蝠型の魔獣・大蝙蝠(ジャイアントバット)の背に乗りながら、蝙蝠の羽根を付けたシルクハットを被り漆黒のマントを付けた西洋風の騎士甲冑を全身に纏い口元を自身の凶暴性を抑えるために鋭い牙が並ぶようなデザインをした鋼鉄製のマスクで覆い隠している吸血鬼(ヴァンパイア)族が誇る闇の盟主…ヴァイドレッド・ザ・ヴァンプロードが率いる『鮮血十字軍(ブラッド・クルセイダー)』。


拮抗し、双方共に何時終わるか解らぬ戦に明け暮れていた日々を送ってきた。だが…ある日、それは唐突に終わりを告げることになる。




『鮮血十字軍』陣営にて。




「ハァアアアア~…ウォオオオオオオオオオオ…ァアアアアアアアアアーーーーッ!!」


「ひ、ひぃいいいい~!?」


まるで聖火の激しく燃え盛る緑色の炎が妖しく灯る頭部には先端部分に火が点いてる黒い三本の角が生え、顔の部分は幾重にも交差させた薄っすらと黒く焼け焦げた薪木の隙間からは隻眼なのか右眼にあたる場所のみに頭部のものとは色違いの真紅の炎が燃え盛り、両肩には何本も束ねた松明がくっつき、胴体も頭部と同じく交差させて組み上げた薪木で出来ており隙間から緑色の炎が常に溢れ出し、耐熱性のある黒い道着を纏い、胸元には燃え盛る炎に包まれた鬼の顔を思わせる黒い紋様、燃えるノコギリソウを両腕の肘と両足の踵部分に生やした魔族の男…燈台鬼(トウダイキ)族と呼ばれる種族の『炎の鬼』の僧兵が黒く焼け焦げた夥しい数の『鮮血十字軍』所属の魔族の屍の中心部に立ち、天を仰ぐ様な咆哮し、その姿を見て腰を抜かし尻餅をついていたヴァイドレッドは部下達の無惨な姿を見て顔を青褪めさせていた。


「テ、テメェ…その黒道着は獄門寺の…!!武術の稽古なら他でやれや!クソッタレがァアアアア!!」


炎の鬼が着ている背中にはあのギロチンの刃が突き刺さった黒い鬼の髑髏が刻印された黒い道着…これは魔界随一の有りとあらゆる殺しの技術を磨くことに特化した殺人武術を授かる事が出来る拳法寺『獄門寺』のものであると同時に炎の鬼がやらかしたこの暴挙が無関係な『鮮血十字軍』を巻き込み、ヴァイドレッド一人を残して全滅させる程の『稽古』に過ぎない事を見抜き、激昂する。


「弱い、弱いな…神嵐(シェンラン)様が魔界の大半を手中に治めた今…この魔界において数少ない(まこと)の強者達と戦いに満ちた場所であると聞いてやって来たが、なんだこの体たらくは?ド素人がはしゃいでるだけの遊び場に過ぎんとは…とんだ期待外れよな、(から)の宝箱にも程がある。」


今現在の魔界の魔族の大半が日増しにその戦力を増強させていく『不死鳥の軍勢』の脅威を目の当たりにし、反逆は無意味と知り彼らが事実上の支配者であるを大人しく受け入れ軍門に下るか、或いは無駄と解りつつも逆らって死ぬかの二択しかない。そんな魔界でも神嵐の事など御構い無しにヴァイドレッドや荼紋みたいに知る者ぞ知る名所で派手な殺し合いに興じていたり、マトリオン三姉妹やガドウの様に実力を有してながらも誰にも見つからずヒッソリ隠れて暮らしている者も居たが炎の鬼にとっては終わり無き闘争を繰り広げている魔族達が修行相手にもならないくらい期待外れだった事を知り、火柱に包まれて姿を消し、何処かへと行ってしまう…


「燐…神嵐、だと…?あの噂の…支配者気取りのプッツン女のせいかァアアアア!!あんな野郎を差し向けて何のつもりだ!?オレと荼紋の戦いを邪魔しやがっ…んなぁっ!?」


「…今、なんと言った…貴様?殺すつもりは無かったが、我が王を愚弄するとなれば話は別よ…」


「テメェ!?消え失せたはずじゃ…!それ以前に自分から突っ掛かって来て何抜かしてやがる!?戦闘狂(イカレ)野郎が!!」


「立て、()く立て。そして来い。骨一つ…否、塵一つ残さず焼き尽くしてやろうぞ。」


…なんという地獄耳か、立ち去ったはずの炎の鬼はヴァイドレッドがこの場にいない神嵐へ吐いた暴言を聞いて瞬時に戻ってきたのだ。『主君への侮辱は己への侮辱』という意味合いで受け取ったのだろうか?我が事の様に沸々と静かに怒りを募らせながらヴァイドレッドに『来い』と言わんばかりに掌をクイッと動かし挑発する。


「は、はははは…あぁー!そうかよ!?テメェが自殺志願者なのは、よーく解ったッ!!『コレ』だけはしたくなかったがテメェは許さんッ!!やれるもんならやってみろ!その言葉、後悔させてやるからよォオオオオオ!!ギィイ゛イイイイ゛イイイイ゛イイイイイイイッ!!」


気に入らないのは此方とて同じ事…ガチギレ状態となり最早我慢ならなくなったヴァイドレッドは自身の口元のマスクを取り外すと同時に両眼が充血して血に染まった様な赤黒い色になると赤い薔薇を咲かせたイバラが生えた口から獣の咆哮を上げ、その肉体が恐るべき『変化』を始めていく。


「ギギ、ギキッ…キキキキッ…キィイイイイイ゛イイイイイ゛イイイイイイッ!!」


額に巨大な赤い目が見開かれ、それだけに留まらず目はその数を増やし顔から首にかけてボコボコと複数突き出しはじめ、釘の様な牙が乱雑に並んだ裂け口から大気をも震わせる超音波混じりの奇声を発し、腹部がバックリと裂けるともう一つの巨大な口と化した上に赤い薔薇が生えたイバラが全身の至る所全てに侵食していく…。


「コノ姿ニナッタ…オレ、ハ…モウ誰ニモ止メラレンゾォオオオオオ!!ギィイイ゛イイイェエ゛エエエ゛エエッ!!」


両腕も枝分かれするかの様に裂けると肥大化して十枚の羽根に変わり、トゲだらけの背中には逆さまの十字架…アンチクロスと蝙蝠の紋様が不気味な赤い発光を放つとヴァイドレッドは蝙蝠型の異形の怪物へと変貌してしまった。


吸血鬼(ヴァンパイア)族という種族は元々生まれながらにして理知の欠片も無く、目に留まった者は誰彼構わず襲い掛かり生き血を吸い尽くす事しか頭に無い獣畜生同然の下品で野蛮な種族であったという。その愚かしい本能を恥じ、忌み嫌う吸血鬼族達はいつしか口元に抑制装置の役割を担う鋼鉄製のマスクを着用する様になっていき、現在では彼らの一族は生まれたばかりの赤ん坊の時からもう既にそのマスクを嵌めて生活するようになっていった。だがもし何かの間違いでこのマスクを外してしまうと途端に自分達の中の内なる狂暴性(ケモノ)が目覚めて理性が完全に消し飛び、魔獣じみた異形となり暴走してしまう…。


「ギャアアアアアア!!ギキキィイイイイイイ!!」


蝙蝠型の怪物と化したヴァイドレッドは天高く舞い上がり、頭部と腹部…両方の口から二重に超音波を放ち、炎の鬼へと襲い掛かってきた。


五月蝿(うるさ)い羽虫めが。」


だが炎の鬼は超音波を避けるどころか腕を組みながら堂々と仁王立ちしたまま一切動かず、正面からモロに受けてしまう、だが…。


「ギッ…ギッキキキキキキ…!!ギャギャギャギャアアアアアアア!!」


「普通の魔族ならばとっくに難聴に、最悪頭が木っ端微塵に消し飛んでいたところだろうよ。『普通の魔族』ならば、な…。」


全身を包む炎がほんの少し揺れた程度でビクともしなかったのだ。人型でこそあるもののこの燈台鬼族という種族である炎の鬼は炎の化身…否、最早『炎そのもの』といっていい程の特殊な存在であり、魔界に於いて最も数の多い人型であることに加えて動植物の特質を持つ獣人種、金属的なボディを持った金属生命体、最大級の巨体を持つ巨人種、悪魔じみた異形の外見を持つ魔人種、死して尚足掻くように蠢く不死魔族(アンデッド)などの生物型魔族では無い、その正体は近年徐々にその数を増やしつつある『非生物型魔族』である。


例としては生きた人形型魔族・呪詛人形(リビングドール)族、騎士甲冑に命が宿った幽鬼甲冑(リビングアーマー)族、魔族達の手で生み出された機械型の人造魔族・重機兵(ゴーレム)などがいる。炎の鬼もまたそういった非生物型魔族の内の一人であり彼の場合は蒼鬼焔(ウィスプ)族と呼ばれる生きた炎型の魔族、燭魔(ウコバク)族などの様に蝋燭など炎を宿す事が出来る物質に文字通りの生命の炎が乗り移った魔族に近いタイプであった。


彼ら非生物型魔族は生物型魔族と違い聴覚や視覚など感覚を司る器官を攻撃されても殆ど影響を受けにくく、また、痛覚なども持ち合わせてないためいくらその手の器官を破壊する様な攻撃を受けてもなんら支障も無い、故に戦いに関しては最も恐れも痛みを知らず半永久的に戦い続けられる種族でもあった。


「ギェエエエエエエエ!!キィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


超音波攻撃に効果が無いと知るや否やヴァイドレッドは即座に別の攻撃方法に切り替え、滑空しながら二つの口に生えた牙をマシンガンの弾丸の如く乱射して放つ…だがこれも無意味だった。


「今、何かしたのか?フンッ!!」


「ギキャアアアアア!!?アギャアアアアアーッ!!ヴォオオオオオ!!」


あろうことか炎の鬼は自身目掛けて飛ばされてきた牙のいくつかを目にも留まらぬ早さで指の間に挟む形でキャッチしており、それら全てをカウンターとしてヴァイドレッドの顔面の目や喉に投げつけ空から赤い雨を降り注がせた。


「ギガッ…!?ギャギャギャ…!!ギィイイイイイャアアアアアアーーーッ!!」


「この卑しい獣畜生めが…力任せに暴れるだけで勝てるなら苦労はせんぞ…っと、今の貴様に言っても無駄だった…なァアアアア!!」


両眼を潰されたものの額の目をはじめ顔中の潰れてない生き残りの目を総動員させ辛うじて視覚を確保したヴァイドレッドは十枚の羽根から赤い光弾を絶えず発射しまくるが炎の鬼はこれらさえも悉く素手で弾き返して受け流してしまった。そして流石に防御に徹することに飽きたのだろう、今度は炎の鬼の方から攻撃に出向くために地を蹴って宙空を舞った。


「ハイィイイイーッ!!」


「ギャバッ!?ギキッ!?アバババババッ…!!」


「ハイーッ!!ハイハイハイッ!!ハイィイイイイーーーッ!!」


「シギャアアアアア!!?」


「…イィイイイイイヤァアアアアッ!!」


「ガビッ!?ギョアアアアアアーーーッ!?」


炎の鬼は炎を纏った足による踵落としを空中のヴァイドレッドの脳天に叩き込み、その激痛を感じさせる暇も与えるつもりもないのか?今度は燃え盛る拳で顔面をとにかく殴打、連打、殴打、連打…暴力の雨嵐、そして最後に頭部の体毛を乱暴に掴み柔道の一本背負いの形で強引に投げ飛ばし地面へと叩き落とした。


「フゥー…ハァアアアッ…!!ハイィイイイィイイイイヤァアアアアアアーーーーーッ!!」


「ギッ。」


炎の鬼は力強く地面を踏み締める様に着地したと同時に深呼吸をした後、炎の腕で豪速の正拳突きを胸部に叩き込んだ次の瞬間、ヴァイドレッドの背中を突き破りナニカ…否、彼の心臓が飛び出して行き、その辺の岩場に叩きつけられ風船の破裂音に似た音と共に赤い汚水をブチ撒けた上に、拳を振るった時の風圧のあまり十枚の羽根はバラバラに引き千切れてしまいタダの肉片と化した。


「ガッ…ゴッ…ゲッ…!?」


「もう少し長く楽しめると思ったが、どうということも無かったか…貴様はもう用済みだ。ヴァイドレッド・ザ・ヴァンプロード…敗者は潔く死ね。ハイヤァアアアアアッ!!」


「ギィイイイイイィイイイイャアアアアアアーーーーーッ!!?」


ほんの一瞬の出来事故か…ヴァイドレッドの脳と身体は未だ自らの死を認識出来て無かったようであり、心臓が欠けた状態だというのに未練がましい悪足掻きのために前へと進もうとしたがその様子を見苦しく思ったのか?炎の鬼は介錯のつもりでトドメに地面目掛けて拳を豪快に叩きつけて巨大な火柱を巻き起こしてヴァイドレッドの全身を焼き尽くしての火炙りの刑に処し、戦う前の宣言通り塵一つ残さず完全に消滅させてしまった…。


「…足りん、足りん、足りん、足りん、足りん…足りんッ!!まだ足り得ぬ…!!まだ戦い足りぬ…!!不完全燃焼もいいところだ…!!もう何処にも()らんのかァアアアアッ!?拙僧の飽く無き闘争の炎をもっと燃やす事の出来る『贄』はァアアアアッ!?」


ほぼ一方的とはいえ、あれほどの戦いを終えて尚も戦い足らないのか?『鮮血十字軍』は余程役不足な相手だったらしく炎の鬼は不満全開で怒号を発しながら大量の火柱を巻き起こし、八つ当たり気味にこの場に転がる全ての屍を一つ残さず先程のヴァイドレッドの様に焼却処分した。


「例えこの世界の魔族全員焼き尽くしたとしても飽き足らぬッ!!もっとだァッ!!もっと拙僧の闘争心(ほのお)にその命を()べろォオオオオオオオオーーーーッ!!命を以って拙僧に全て…!捧げ尽くせェエエエエエエーーーーーッ!!」


彼にとって戦いとは呼吸と同じ、続けていなければ生きていけない…また、戦う相手の命とは持って生まれた闘争の炎を更に激しく、絶えず燃え続けさせるための燃料…そして永劫に満たされぬ渇望の魂に捧げる生け贄であり必要不可欠な糧である。


しかし、生まれてこのかた彼の口から一度たりとて『満足』という言葉は出たことは無く、例え勝利を得たとしても絶頂に到る事は無く、常に苛立っていた…『こんなものか?』『この程度なのか?』『何時になったら自分は満たされるのだ?』と、今日もそれが達成出来ず苛立ちがピークに達し、島一面を焦土と化しかねない程の炎の竜巻までも起こして島の大地を焼き払い火の海にしてしまった。


「グワッハッハッハ!!荒れとるのう!若!!いやいや、その気持ちはワシもよう解るぞォッ!」


「…ハッ!?なんだ、お前か…また、やってしまっていたのか?拙僧は?いや、済まぬ…見苦しいところを見られたな。」


そこに突如、豪快な笑い声が轟き何事かと振り返るとそこに居たのは全長5m以上はあろうまるで動く山と言わんばかりの規格外の巨体、頭部は雄々しい鹿の角が生えたヒグマの頭、背中には大鷲の翼を持ち両腕は大猿、しめ縄を巻いた下半身は人馬(ケンタウロス)型の四肢であり腰から牙が突き出た猪の足、両肩にグロリオサの花を咲かせている特大サイズの獄門寺の黒道着を着た山津見(ヤマツミ)族と呼ばれる巨大な魔族が自分に近づいていた。炎の鬼はその事に気づき、いくら知人の前だとしても不機嫌な時に必ずといって良いほど荒みきって最終的に周りに火を放ち辺り一面を焼け野原に変えてしまう自身の醜態・悪癖を恥じて瞬時にストップした。


「ガッハッハッハッ!!良い良い!ワシの方も全く手応え無い奴等ばかりで腕が鈍る一方じゃったわい!」


「どうやら荼紋の方は終わったようだな?」


「応ッ!!この通りじゃあァッ!!」


山津見族の巨漢は炎の鬼とは付き合いが長く気心の知れた相手のためかその悪癖の事も知ってるのでいつもの事だと笑い飛ばすと肩にこの島のもう一人の実力者…剣辰天荼紋の巨大な生首を突き出した。どうやらこの山津見族は荼紋軍の陣営で炎の鬼同様に稽古と称した殺戮を繰り広げ、今しがた荼紋の首を手土産として帰還してきた様だ。


「全く、百戦錬磨の(つわもの)共が集う戦いと血の歴史に塗れた島と聞いてちっとは期待はしておったがまるで弱いのぅ!若が常言うとる『空の宝箱』とはまさにこのことじゃわい!!」


「仕方あるまい、今の魔界には神嵐様やマウザー殿、ザイオン殿の御三方はおろか拙僧らを含めた我らにすら匹敵する強者など求める方が酷と言えよう。さて…そろそろあの二人も終わらせてる頃だろう、本日を以って『修練』は全て終了だ…落ち合う場所は確か魔深淵だったはずだ、行くぞ。」


「応よッ!!」


標的であるヴァイドレッドならびに荼紋、両軍のトップの(クビ)を獲った事により彼らの殺戮という名の『修練』は終了した模様であり、炎の鬼は火柱に、山津見族は砂利や岩石混じりの土の柱を巻き起こし、まるで悲鳴を上げているように激しく燃え盛る業火に焼かれる島からその姿を消した…。




魔深淵(ヘルアビス)、旧・魔界上層部本拠地であるジャハンナム宮殿の門前にて…。


「なんだ!なんだ!?お前らはよぉ!此処が『不死鳥の軍勢』の本拠だって知ってて中に入れろっつってんのかァ!?」


「そ、そうだよ!だって此処はオレ達も入れるはずだって…!!」


「あぁーん!?ダメに決まってんだろうが!?デタラメ抜かしてるとブチ殺すぞ!クソガキがァ!!」


ガドウを討ち取った雷禍鳥族の子供が宮殿の門番を勤めてる魔族…頭部は黒猫だが異様に鱗が付いた長い首と腕だけ付いた蛇の胴体に蝙蝠の羽根を持つという奇怪な特徴を持つ大柄な魔族・爬魔猫(ストレンヴルム)族の兵士達と揉め合いになっていた。どうやら彼は宮殿内に入りたいらしいが当然ながら何処の誰かも解らぬ子供を門番が…ましてや魔界最大勢力である『不死鳥の軍勢』に所属している彼らが通す訳も無かった。


「通行許可ならば私達の上の者が既に話を通し、得ているはずですが?」


「はぁーん?知らねぇったら、知らねぇっつーの!オメェらみてぇなボロ着た田舎者なんざよ!」


「いや、待てよ…おい!ネェちゃん、なんならオレらと一発ヤるかァ?そうしたら考えてやってもイイぜぇー?うひょひょひょひょ!!」


「ゲヒャヒャヒャ!!そりゃあイイぜ!!うひょー!!ボロいの着てるが身体は悪かねぇなぁー!この女ァーーーッ!!たまんねぇーーーーーッ!!」


「フザケンナ!テメェら、その人に汚い手で触るんじゃ…!!」


マトリオン姉妹に勝利した人魚族の女性が爬魔猫族の兵士達には通行の許可は得てると言ったものの、そんな言葉などよりも人魚族の美しい顔と羽織った道着の上からでも解る豊満な肢体にしか目が行ってないこの脳内性欲まみれなお下劣猫もどき共はニヤニヤ・ニャーニャーと下卑た笑みを浮かべながら彼女の胸や尻をいきなり揉みしだくわ、顔をベロベロ舐めるわ…気安くベタベタ触るわしておきながら更にその上の段階の然るべき行為まで要求してきたのだ。あからさまな性的嫌がらせを受けつつも人魚族は表情を変えず一切動じなかったが爬魔猫族の兵士達の暴挙にキレた雷禍鳥族の子供が我慢ならずに拳を振るおうとした時…。


「何がたまんねんだ?」


「若様…!?それにおっちゃんも!!」


「おや、お戻りになられましたか?二人共。」


「応!今帰ったぞぉっ!!グワッハッハッハッハッ!!」


遅れて到着した炎の鬼と山津見族の巨漢が現れ、雷禍鳥族の子供と人魚族の女性はそちらに振り向く。


「チッ…まーた余所者かよ?失せろや!ボゲェッ!!」


「今度はなんだ?燃えてるヤツとデカブツかぁ?舐めた姿しやがって!」


「ほほー?随分と威勢のえぇ奴等じゃのぉ?」


「なんだ?貴様ら、拙僧等の事をマウザー殿辺りから聞いておらんのか?」


「頭は確かか!?こんの田舎モン共がァアアアア!!フザケた妄想タレ流してっとその寝惚けた頭の火ィ消すぞッ!オッラァッ!!」


猫と蛇と蝙蝠というごちゃ混ぜな自分達のふざけた容姿を完全に棚に上げて二人の容姿を侮辱したが炎の鬼はそれを特に気にせずに組織の最高幹部の一人であるマウザーの名を出して此処を通ろうとしたもののそれでも爬魔猫族の門番共は意地でも通さなかった。


「貴様ら、一体なんの騒ぎだ!?宮殿の中にまで聞こえてきたぞ!!」


「あ?ダラム隊長~。なんなんスか?コイツら?」


「この余所者共が宮殿に入れろだのマウザー様に会わせろだのと戯言を…」


「余所者…?ん?んん~…ンゲェーーーーーーッ!?いーーーやーーーーーーーッ!!?貴方様方はァーーーッ!!ア゛ァーーーーーーッ!!?」


何事かと外での騒ぎを聞きつけ、宮殿内から現れた強固な鋼鉄製の鎧を着込み、右腕に鋼鉄製の鈎爪を装着し、左腕にモーニングスターを持つオシロイバナの花が頭の角に絡みついているトリケラトプスに似た姿の魔族…宮殿の守備隊隊長を務める鋼角竜(リントヴルム)族のダラム・ゼラプスは部下達である爬魔猫族達が言う『不審な余所者』だという炎の鬼達の姿をまじまじと見て何かに気づくや否や、顔を青褪めさせて思わず汚い悲鳴を上げてしまった。


「ダラム隊長!?いきなりなんですか!?そんな汚い悲鳴出して?それよりこの無礼者共、どうしたら…って、ぶにゃああああ!!?」


「ホァアアアアアアアァアアアアァーーーーーーッ!?」


「たっ…隊長、アンタ!?いきなり何しやが…にゃおぁああああ!!?」


「こっ…このゲリ便クソ共がァアアアアア!!戯言を抜かしてる無礼者は貴様らの方だ!!マヌケェエエエエエ!!」


「「「ぎにゃあああああすッ!!?」」」


直後、ダラムは部下達が『彼ら』に対してとんでもない無礼を働いてしまったのかと瞬時に悟り、汚い奇声を上げて手にしていたモーニングスターで一人残らずその場で全員を撲殺した。


「ア゛ァーーー!!申し訳ありませんでしたァーーー!!ア゛ァーーー!!!コイツらは魔熔山以外の地域から流れて来た投降者…云わば負け犬共でしてーーーーーッ!!ア゛ーーーーーッ!!永らく魔熔山を離れていた最高幹部である貴方様の事を存じ上げておりませぬ!どうか怒りをお納めくださいませ!!ア゛ーーーーー!!ア゛ーーーーー!!ア゛ァアアアアアーーーーー!!」


「落ち着け、あの程度の囀り如きで激昂する拙僧等ではないことは貴様も解ってるであろう?ダラム…全く、久々に会ったと思えば相変わらず肝の小さいヤツだな。」


ダラムは甲高くも汚い奇声を発しまくり即座に両手を地にめり込む勢いで突き刺し、額が割れて血塗れになるのさえも気にせずに地面にガスガスと頭を叩きつけ、炎の鬼達に対する謝罪の土下座を繰り出し最終的には頭丸ごと地面に埋まってしまうが炎の鬼は逆になんとも思っておらずむしろ久し振りに再会した部下・ダラムのそのネガティブぶりに呆れていた。


「ぐぇっ!?」


「フハハハハハハッ!!ようやく戻って来たか!燼焔ッ!!」


「…マウザー殿ッ!!」


「「「…ッ!!」」」


地面に自ら埋まる阿呆(ダラム)の身体を踏みつけながら高笑いを響かせ、宮殿内から全身が刃で出来た炎の剣たる魔人にして『不死鳥の軍勢』の女帝・燐神嵐直属の側近たる最高幹部の一人…煉獄剣(スルト)族のマウザー・インフェルテインが現れたのを視認するや否や『燼焔』と呼ばれた炎の鬼は自身の拳と掌をカチ合わせ、他の三人もそれに倣い同じ事をする。


火凄天(かせいてん)・烈鬼坊燼焔。」


四人の中でもリーダー格たる炎の鬼…燈台鬼(トウダイキ)族の烈鬼坊燼焔(れっきぼう・ジンエン)


土凄天(どせいてん)・不動坊震山。」


山津見(ヤマツミ)族の巨漢の僧兵・不動坊震山(ふどうぼう・シンザン)


水凄天(すいせいてん)・美紅尼睡蓮。」


紅一点である人魚(マーメイド)族の尼僧兵・美紅尼睡蓮(びくに・スイレン)


金凄天(きんせいてん)・雷鷲坊閃翼。」


この中では最年少の雷禍鳥(サンダーバード)族の少年・雷鷲坊閃翼(らいしゅうぼう・センヨク)


「「「「我等、獄門寺・四咎天、只今帰還致しました。」」」」


烈鬼坊を頂点とした四人の武僧兵…『獄門寺(ごくもんじ)四咎天(しこうてん)』がマウザーへ帰還の報告を告げると同時に気づけばいつの間にか彼らの着ている物と同じ道着姿をした異形達がどこからともなく気配を殺して現れる。


「「「ぬぐぁあああああああ!!お帰りなさいませ!!烈鬼坊総師範ッ!!」」」


この世の全てに向けたようなドス黒い憤怒に満ちた形相の鬼の仮面に六本の多腕を持つ屈強な肉体を持つ鬼人・阿修羅(アスラ)


「「「キョシシシシシシシシッ!!お待ちしておりました!不動坊様ァアアアア!!」」」


鬼の仮面を被り雷を模したボディーペイントを施してる黒い素肌に地面に触れる程の長い赤髪を持つ鬼人・羅刹(ラクシャサ)族。


「「「ンケケケケケケーーーッ!!相変わらずお美しいですわ!美紅尼様ァアアアア!!」」」


顔の左半分を覆ってる恐ろしい造形の鬼の仮面を着け露出度の高い鎧武者の甲冑姿をした鬼女・般若(ハンニャ)


「「「ウォオオオオオオオオ!!雷鷲坊ォオオオ!!よく帰ってきたァアアアア!!」」」


赤・青・緑…様々な色の肌をしており一本角や二本角を生やした大柄な東洋風の鬼…人鬼(オーガ)族といった鬼の一族を中心に多種多彩な魔族で構成された獄門寺の主戦力たる烈鬼坊達の弟子一同が彼らの帰還を迎え入れるためにこの場に集結しており、道着の背面に刻印されたものと同じギロチンが突き刺さった鬼の髑髏と『GOKUMON-JI TEMPLE』の名が刻まれているボロボロに擦り切れ、所々に永きに渡る血塗られた歴史を感じさせるかの様に返り血で染まった赤黒い旗を掲げながら威風堂々と仁王立ちしていた。


(ご、獄門寺…!!狂ってるを通り越してどいつもこいつも『ブッ壊れてる』血に餓えた悪鬼羅刹…修羅外道の猛者達が集う殺人武道家達!な、何年ぶりになるのだろうか…?烈鬼坊様をはじめとした彼らが我々の下に戻ってくるのは…?)


地面に埋まっていたダラムが復活して顔を見上げ、彼ら獄門寺の魔族の面々を見てガクガクと震え上がった…しかし、それも無理はない。


『獄門寺』とは麒麟(キリン)族のマスター・チーリンを開祖とした魔山脈(ヘルマウンテン)に総本山を置く武術寺、そこでは拳法をはじめ剣術などありとあらゆる殺しに特化した武術を授け数多くの殺人武道家を世に輩出する事を目的としている血の歴史に彩られた修羅達の伏魔殿でもあると同時に現在では『不死鳥の軍勢』の最高幹部・烈鬼坊が総師範の座になったことで組織に所属している下部組織の中では最大規模の勢力でもあった。


「お久し振りで御座います。マウザー殿、長年の不在に関しましては御容赦を。何分我々は強者との戦いに餓えてる身故…取り零してるだけでまだ見ぬ隠れた強者が居るやも知れぬと淡い期待を抱いてただただひたすらに…自らの足で赴き、自らの目で見て、自らの手で殺してきました。それも魔界全土を隈無く探していては時間がいくら有っても足りませぬ。」


「無論、承知済みよ…よもや貴様、我が貴様の性分が理解出来ぬ程の浅い付き合いだとでも?」


「ハハッ!滅相も御座いませぬッ!むしろマウザー殿にとってそれだけ拙僧が気心の知れた相手であることに安心致しました!」


烈鬼坊率いる獄門寺・四咎天の面々は各地を転々とし、マトリオン三姉妹、ガドウ、『鮮血十字軍』のヴァイドレッドや『荼紋軍』の荼紋…そして彼らのみならず『修行』と称してあらゆる魔族の元へ殴り込んでは殺害して己を磨き上げる鍛練をしていたとの事だが早い話が人間で言うところの道場破り、或いはタチの悪い辻斬りの様なものだった。より強く、より燃え上がらせ、より高みに至るための相手と戦いを追求し過ぎるあまり時間の経過さえ忘れていたがマウザーは余程彼の人格を把握していたのか笑って許し、烈鬼坊もまた彼との再会が嬉しいのであろう…ヴァイドレッド戦での不完全燃焼(ふきげん)さえ忘れるほど上機嫌だった。


「おぉ~…?さっきまで不満タレておった若の機嫌がすっかり直っとる…?」


「平時の若様、特にマウザー様達と共に居る時はいつもあんな感じですよ、不動坊。」


「仲が良い友達とか通り越してもう兄弟って感じだね~♪」


「そこな小僧!中々に嬉しい事を言ってくれるな!我は今、非常に機嫌が良い…くれてやる!受け取れィッ!!」


普段の戦闘狂且つ破壊兵鬼ぶりの印象の方が余程深いためか今の上機嫌な烈鬼坊に違和感を覚える不動坊だったが美紅尼曰く戦い以外では親しみやすい男らしく、千年以上もの付き合いの同僚であるマウザーとは歳の離れた友人…否、雷鷲坊の言う様に最早義兄弟の域に到達してる…と、言われた事に対しますます御機嫌になった兄貴分(マウザー)は弟分たる烈鬼坊の仲間・雷鷲坊に向かってその褒美として何かを投げ渡す。


「え?わっ!?なんだ!なんだ!?…って、カギ?」


「宮殿にある倉庫の内のカギの一つだ。酒でも食料でも好きにかっ喰らうが良い!ハハハハハハッ!!」


「ヒャッホーーーッ!!ありがとう!マウザー様ァアアアア!!」


「おぉッ!!?酒が呑めるじゃとぉ!?ぐわっはっはっはっは!!今日は酒盛りじゃーーーーー!!料理(ツマミ)の方は任せたぞ!美紅尼!」


「フフッ…♪数百年振りに腕を振るえますね…♪」


マウザーが渡したのは倉庫のカギ、それに加えて倉庫丸々一つ分の酒や食料をくれてやるという太っ腹ぶりと宴会が出来る事に歓喜する雷鷲坊と不動坊、そして倉庫内の大量の食料がふんだんに使えると知ると常にポーカーフェイスである美紅尼も修行に入って以降中々出来なかった趣味である料理を久々に出来る事にほんの少しだけだが嬉しそうに口元を緩ませ静かに微笑んだ。


「ねぇねぇ!若様も早く…って、あっ…!?ご、ごめん…『忘れて』た…」


「気にするな、お前らだけで楽しめばいいさ。」


「…うん…」


「お、おう、すまんのぉ…」


「…では、御言葉に甘えまして…」


雷鷲坊は当然ながら総師範(トップ)であり自身にとっても頼もしい兄貴分として見ている烈鬼坊にも宴会の御誘いをしたが瞬時に自分の口から出た迂闊な一言に対し激しい罪悪感を抱きすぐさま謝った。無論、烈鬼坊は気にせずいたがそれでも雷鷲坊は不動坊や美紅尼と共にばつの悪そうな顔をし、トボトボと宮殿内へと入って行った。


「飲み食いの必要の無い身体、か…それ以前に味覚を持ち合わせてないとはまた難儀よな。」


「元より必要無い身故、御気遣い無く…して、マウザー殿、神嵐様とザイオン殿の御様子は如何でしょうか?」


非生物型魔族の特質故か飲食の必要性が特に無い上に味覚が一切無い事を三人から気遣われた烈鬼坊だったが些か暗くなってきた雰囲気を察し、自発的に変えようとしてマウザーに別の話題として神嵐とザイオンが今どうしているのかを訪ねた。


「む?折角戻って来たというのにタイミングが悪かったな…すまんが神嵐様は今、深い眠りについておられる。解っておるだろうが挨拶しに行こうとか考えるなよ?変に起こして不興を買えば最後、貴様とて無事では済むまい。あの方の怒りの沸点の低さに限ってはお前と同じかそれ以上だからな。」


「え。」


神嵐は基本的にテンションはかなり低くく常に眠たげであるが時にそのテンションの低さは深い眠り陥るに到る時がある。しかも無理矢理起こされるのが大嫌いときた…それを知らずに普通に起こしに来たためにこんがりと焼かれた部下達は後を絶たなかった。側近である烈鬼坊も神嵐の悪癖や癇癪については承知済みだったものの余程心外な事をマウザーに言われたために思わず動揺してしまう。


「拙僧はそれほどまでに激情に駆られやすく見えるのですかッ!?」


「よもや無自覚とは…あぁ、あとはザイオンだったか?あの阿呆犬ならば親衛隊の二人と何処かへ遊びに行った。暫く戻って来ないだろうよ、下手すれば貴様以上にな。」


「あの二人とか…まぁ、それだけ仲が良いのも無理は無いでしょう。なにせ立場上は部下でもザイオン殿にとって彼奴等(きゃつら)は『生みの親』同然…と、時にマウザー殿、貴方の方の親衛隊二人は…?」


「よ、()さぬか!貴様!!冗談でも奴等の話題など出すでないわ!おぞましいッ!!」


この場に居ないもう一人の最高幹部であるザイオン・ザッシュは部下兼補佐役たる親衛隊と呼ばれた二人組の魔族と遊びに行って不在、それも何時戻るかも解らぬ程永い期間かもしれないとのこと。尚、最高幹部であるザイオンもそうだがマウザーにも同じく補佐役として親衛隊の魔族が二人程要るが彼にとっては話題にすらしたくない程扱いに困る存在であったようで…烈鬼坊から彼らの話を振り出された瞬間に鳥肌を立たせて身震いしてしまった。


「…ったく、何時からそんなに冗談が上手くなった?燼焔よ、貴様でなければ今頃この場で斬り捨てていたぞ?タワケ者がァ…そんなことより、貴様に話がある。」


「ハッ!拙僧に出来る事ならば何なりとッ!!」


『久方振りに会った同僚はこんな奴だったのか?』と頭を痛めながらもマウザーは烈鬼坊にある指令を下した。


「戻って来たばかりですまぬが貴様には人間界に行ってもらう。」


「人間界?は、はぁ…?我らが住まう魔界とは別の次元世界の…あの、人間界でしょうか?」


「そうだ。其処には我ら『不死鳥の軍勢』として捨て置く訳にはいかぬ者達が居ってな…此度の件は貴様でなければ始末出来ぬと判断した。」


「…なんと!?フフッ…ハッハッハッハッ!!マウザー殿ォッ!貴方もヒトが悪い方だ!拙僧にとっては飲食出来ぬ酒や食い物なぞよりよっぽど満たされるかもしれぬ獲物があるではないですかァッ!!ハーハッハッハッハッ!!その話、詳しくお聞かせ願いましょうッ!!」


(やはり食いついたか、目の色変えおってからに…燼焔、貴様どんだけ戦いに餓えておるのだ???)


烈鬼坊は歓喜に震え、笑いが止まらなくなり、気の利いたプレゼントを用意してくれたマウザーに感謝していた。まさか帰ってきて早々に新たな戦いの相手と舞台という自分好みの贈り物が用意されるとは…烈鬼坊の生まれながらの戦闘狂ぶりは理解はしているもののマウザーもこの激しいがっつきようには少しばかり引いていた。


「燼焔、時に貴様は凍牙・ヴォルフなる殺し屋を知っておるか?」


「…は?あの口の減らぬ、薄汚い犬畜生の事、ですかッ…!!?」


マウザーの口から狂狼…凍牙・ヴォルフの名前が出た瞬間、それまで上機嫌だった烈鬼坊は露骨なまでに嫌悪感剥き出しの不機嫌面と化した。どうやら凍牙とは既に面識が合ったらしい。未知なる強者を求める獄門寺総師範の身として彼の情報も知っていたため直接戦いに行ったものの…初対面時の凍牙はというと…。




『あ?誰、テメ?このキャンプファイヤー野郎、なんでテメーなんかと一文の得にもなんねぇタイマンなんかしなきゃなんねーんだっつーの?頼んでねぇっつーの。バッカじゃねーの?頭どころか全身燃えてるからか?暑苦しいんだよ!今時そんな熱血系なんざ流行んねーんだよ!バーカッ!!ブヒャッハッハッハッ!!ってか、格闘技だの拳法とかマジだっせぇーんスけど!?本当に強い奴はンなもん必要無いんだよ!ヒャッハッハッハッ♪』


『そこになおれ!貴様ァアアア!!獄門寺拳法の真髄全て味あわせてやるわァアアアッ!!おい、ちょっと待て?き、貴様ッ…!?全力疾走で逃げるなァアアア!!臆したか!?凍牙・ヴォルフゥウウウウウウウウーッ!!』




※回想ならびにその時の会話そのまま。




「おのれ、おのれ、おのれぇ…無礼千万の野良犬風情がッ!!拙僧に恐れをなして逃げたのか!?単に拙僧をおちょくりたかっただけなのか…!?今思い出しただけでも腹が立つ…!!」


「キレるな、キレるな。我もアイツの横柄な態度にはイラつかされたから気持ちは解らんでもないがそんな嫌そうな顔をするでない…適当に報酬(かね)を握らせて奴にとある魔族達を抹殺を依頼したのだが…」


「正気ですか!?あんなクズの野良犬に頼むくらいならば拙僧らを無理矢理にでも連れ戻してくだされッ!!貴方様の御命令ならば何処へでも飛んでい…!!」


「だから落ち着けェーッ!?話が進まんだろうがァアアアッ!!」


死して尚、他者に迷惑をかける凍牙の名と顔を思い出しただけで無いはずのハラワタが煮えくり返るばかりか自分よりもあんな狂犬なんぞに殺しの依頼をしたなどと依頼人であったマウザー本人の口から聞かされ屈辱この上ない思いをする羽目になる烈鬼坊。既に凍牙の被害者の一人であった同僚の怒りをマウザーが治めるのに暫く時間を要したのは無理もなかった…。


「…奴は死んだ。信じ難い事にな…。」


「あの手の奴は碌な死に方せんだろうとは思っておりましたが、まさか拙僧が居ぬ間に…?認めたくは無いのですが彼奴(きゃつ)はそれなりに実力だけはありました…実力・だ・け・は!!」


「何があったかは知らぬが余程根に持っておるな?まあ良い…問題は奴が倒されたことではない。奴を倒した者達に問題があるのだ。」


「む?」


「凍牙・ヴォルフを倒した者達…報告によればその中の一人に火精蜥蜴(サラマンダー)族が居たらしい。」


「な!?ば、馬鹿なッ!?あの一族は我々が既に根絶やしにしたはずでは…!?」


烈鬼坊をして忌み嫌うもののタチが悪いことに実力だけは本物という凍牙が殺された…それを為した者の中には彼ら最高幹部二人にとって信じられない事だが、彼らの手で皆殺しにし、魔界の生態系からその名と姿を消したはずの火精蜥蜴(サラマンダー)族の名前が出た事に烈鬼坊は動揺を隠せないでいた。


「神嵐様は些事など一々覚えておらぬだろうから記憶力に関してはアテにならん、阿呆犬(ザイオン)も同様だ。だから燼焔、貴様に今一度問おう…神嵐様が魔熔山を手中に納めるべく、我らが最初にやった事…当時の魔熔山の広大な領地の大半を治めていたザウガス・オルテンダークならびにサンドレア・オルテンダーク、二人の魔界将軍達をはじめとした火精蜥蜴族ならびに奴等に与するその眷属達の抹殺だ。ここまでは無論、覚えてるな?」


「忘れもしませぬ、あれこそ我等『不死鳥の軍勢』の始まりの日でもありましたからな…。」


「そしてあの日、貴様と神嵐様はザウガスとサンドレア達を、我とザイオンは他の雑魚共を担当した。我の記憶では此方は間違いなく一人残らず…女子供・老人、果ては赤子に至るまで殺しに殺しまくった。神嵐様はサンドレア、そして貴様はその夫であるザウガスや奴等の部下達である雑兵を殺した…と、報告したよな?間違いはないか?本当に誰一人として取り零しておらぬのか?正直に申せ。」




「いえ、それは有り得ませぬ!拙僧は間違いなく…確かにザウガスや雑兵共をこの手で殺しました!そして神嵐様は拙僧が来た頃には既にサンドレアを始末し終えており、周りは屍の山有るのみでしたッ!!」


(…当たり前だが嘘をついている様子は無い、そもそもコイツは嘘などつくタイプではない事を忘れていた。ならば一体…!?我らの猛攻をどうやって切り抜け、生き延びたと言うのだ!?サンディア・オルテンダークッ!!)




『不死鳥の軍勢』最高幹部にして獄門寺・総師範たる炎の鬼…烈鬼坊燼焔、彼こそがこの場に居ないサンディアの故郷である魔熔山(ヘルラーヴァ)の領地を襲った挙げ句、火精蜥蜴族を彼女一人残して絶滅に追いやり忌まわしい記憶(ゆめ)に今尚残り苛ませている要因の『四つの炎』の内の一人、そして同時に父親であるザウガス・オルテンダークの命を奪った張本人でもあった…。


ジャハンナム宮殿・倉庫内にて…。


「あひゃひゃひゃひゃ!!お酒おーいしー!!」


「ぐわっはっはっは!!良い呑みっぷりじゃのぉ!雷坊!」


烈鬼坊の御言葉に甘えて酒盛りを始めていた四咎天の三人、子供の癖に雷鷲坊は平気で酒を呑んですっかり出来上がっており、不動坊はその様子をガハハと笑い飛ばしながら酒が入った3mはある巨大な瓶をジョッキ代わりに片手に酒を浴びる様に一気呑みしていた。


「お待たせしました♪追加の料理も出来ましたよ♪閃翼君の好きな鬼蜘蛛(オニグモ)のハラワタ煮込みスープ、味付けは王毒蛇(キングコブラ)の血酒です♪」


「うわーい!あんがとー♪睡蓮さーん♪」


「ほほう?相変わらず魔獣の血肉で美味そうなもんよう作れるもんじゃのぉ!酒もそうじゃが、お蓮の料理食えるのも何年ぶりになるかのぉ!ガッハッハッハッハッ!!」


其処へ完全なるオフの時間故にか…無表情且つ冷静沈着な普段の自分を置き去りにし御機嫌な美紅尼が魔密林原産の蜘蛛型魔獣・鬼蜘蛛(オニグモ)魔熱砂(ヘルディザート)の毒蛇型魔獣・王毒蛇(キングコブラ)の血酒を味付けのベースにして煮込んだ驚きの赤一色なハラワタスープを二人の前に置いた。美紅尼の魔獣料理の腕前は旧知の仲である雷鷲坊と不動坊にはもとより、獄門寺に数多在籍している弟子達にも評判が良く料理をする事自体を数少ない趣味としているためその時の彼女は常に上機嫌であり無自覚ながらも穏やかな笑みを浮かべる姿に魅せられた者達の人気者でもあった。


(はぁ~…やっぱり、睡蓮さん、素敵だ…結婚してほし…い、って!何言ってんだ俺は!?あ、あの睡蓮さんが俺なんかと付き合ってくれるわけ…うわあああああ!!)


「…?」


(全く、雷坊の奴は何時になったらお蓮とくっつくんじゃい?見てて焦れったいのぉ!!)


因みに雷鷲坊は特に美紅尼の熱烈なファンであり、種族は違えど実の姉の様に接してくれる彼女の事を愛していたもののそれを打ち明ける勇気が無くはや数百年…未だに告白する素振りすら見せない臆病者(チキン)野郎なため、そういった事に最も疎そうな見た目と性格に反して真っ先に気づいていた不動坊からは呆れられていた。


「酒盛りの最中悪いな!お前達!話良い報せが…っと、失礼した。それを食ってからで構わんからな?」


「「「わ、若…???」」」


宴という名の束の間の休息は呆気なく終わった…烈鬼坊は今すぐにでも人間界に行きたい気持ちはあるものの、流石に美紅尼の用意してくれた料理やそれらをこれから楽しもうとしていた雷鷲坊と不動坊の邪魔をする程空気が読めないわけでは無かったので暫くの間、食事が終わるまで壁にもたれ掛かる形で待っていた。


戦闘狂な総師範殿の乱入により、酒盛り強制終了した後…烈鬼坊はマウザーから受けた新たな主命の内容が語られた。それは最早誰一人真っ正面から喧嘩を売ろうなどと考える不敬者は魔界中には既に居ないだろうと思われるが、念には念を…旧魔界上層部の息がかかった人間界の調査任務に就いていた先遣隊の元隊長のサンディア・オルテンダークならびにヴァジュルトリア家第十四代目当主のリクス・ヴァジュルトリア、そして『不死鳥の軍勢』に与する事無く魔界から逃げ延びた魔族達…今後の組織の反乱分子になりかねない者達の抹殺であった。彼らは早速、マウザーからもらった此処とは別の倉庫のカギを使い、中にあった人間界に繋がる魔界門(ヘルズゲート)を通過する。


(何故、どうやって生き延びたか解せぬが…つまりはそれだけ強いという事か、その火精蜥蜴の小娘とやらは!!まだ見ぬ貴様は果たして拙僧の闘争心を焚き付け絶頂に到らせる事の出来る強者か?はたまたいつもの弱者か?楽しみだ…楽しみよォッ!!ハッハッハッハッハッ!!)


絶滅させたはずの魔族の生き残りが何故今になって?という懸念もあったものの、凍牙をはじめとした魔族と戦い勝利したサンディアとの戦いを今か今かと待ちきれず荒ぶる闘争の炎の激しさを抑えられない烈鬼坊、と…考えながら移動する最中…。


「ねーねー♪人間界に先に着いた奴から先にソイツらと挑めるってのはどう?」


「…は?いや、待て…雷、お前何を勝手言っ…ってか、早…え?えぇ…?」


「ぐわっはっはっはっは!!そいつぁ面白い!どれ、一丁競争したろうか!」


「不動坊!?貴様まで…デカイくせして早いな!?オイ!あ、待て待て待て…美紅尼ィッ!?まさか貴様も…!!」


「食事後の運動に丁度良いかもしれませんね、では若…私も彼らの後を追います故…。」


「おのれ!貴様らァアアア!!図ったなァアアア!!?ってか、美紅尼!貴様も早いな!?オイィイイイイイ!!えぇい!一番乗りは拙僧よォオオオオオオッ!!」


突然、雷鷲坊が人間界に一番早く着いた者達から順番にサンディア達に挑めるという思いつきをし、状況を飲み込めない烈鬼坊を置き去りにしたまま雷鷲坊に続き不動坊も美紅尼も信じられないくらいの速さで移動し、乗り遅れた烈鬼坊もそれに続き慌てて追いかけた…




そして、人間界・到着後…豪雨が降り頻る禍津(まがつ)町の隣町たる根之国(ねのくに)町・斬首(きりくび)神社にて、決まった順番は以下の様になった。




「一番手は私で決定ですね?」


「いぇーい!俺、二番ー♪」


「ガッハッハッハッ!!ワシが三番…ん?ちゅう事ァ?まさか若…お前さん…?」


キリッと凛々しいながらもどこかドヤ顔にも見える腹の立つポーカーフェイスを見せながら一番乗りの嬉しさにガッツポーズをする美紅尼と二着ではあるが敬愛する彼女の後という事もありそれでも喜ぶ雷鷲坊、三着と遅めの順位だが特に気にせずガハハと豪快に笑う不動坊…そして、残りの最下位(ドベ)な愚図野郎はというと…。





「認めん、拙僧が…拙僧が最後だとォッ…!!?な、生殺しにも程があろう…誰か!誰か代わってくれェエエエエエ!!」


「嫌です」


「ヤダ」


「駄目じゃ」


「う、裏切り者の鬼畜生共がァアアア!!」




…烈鬼坊であった事は言うまでもなかった。

どうも作者です。やはり書く度ドンドン長くなる、そういう呪いにでもかかってるんでしょうか?(←知らぬ)尚、後書きに関しても長ーくなりました(泣)


三人居る『不死鳥の軍勢』の最後の一人を出せました。しかし、なんか世界観やノリが明らかに違うというか…(汗)どっかの格闘技漫画や格ゲーの世界から抜け出して来たかのような、そんな彼…前回の最後にちょっとだけ登場した『炎の鬼』(仮名)こと烈鬼坊燼焔、凍牙とはまた違うベクトルで狂っている生まれながらの戦闘狂、そんな彼を含めた他三人による『獄門寺・四咎天』達、一昔前の特撮やバトル漫画などによく居る『○○四天王』や『○○何人衆』的なノリの奴等でして何時かこういうのを出してみたいなと思ってたのを遂に実現、目標の内の一つを達成に至りました。


戦いのためならば他の何を犠牲にしても構わない程の餓えた修羅、非生物型という特殊な魔族であり肉体的(?)にも傷つく痛みも死さえも恐るに足らない本物の怪物…と、思いきや、オフの時は結構気さくで接しやすく、多少のユーモアも解する…という、親戚に一人は居そうなお兄さん系なキャラ(←どんな奴だよ)を意識した感じにしておりますが読者の皆様、忘れてはいけませんよ?同時にコイツがヒロインであるサンディアの父親のザウガス・オルテンダークを殺した張本人にして一族の仇の一人であることを…。


彼が総師範として率いている組織傘下の下部組織の内の一つでもある『獄門寺』、名前自体は既に出ておりまして、三話や四話に登場し、サンディアが隊長として所属していた先遣隊の部下・烏眼坊法幻(うがんぼう・ホウン)も其処に籍を置いていた門下生の一人す。これに関しても今後の話で少し触れるかもしれません。所属している魔族は鬼が大半ですが全員が全員そうでもなく普通に他の種族もいますので悪しからず。


烈鬼坊が四咎天を引き連れ今まで不在だったのは修行という名の殺戮行為のため、四人共に凌ぎを削る至高の戦いを追い求めてはや数百年…やり方がやり方なだけに本人達が無自覚なだけで快楽殺人の域にまで達してる程の暴虐ぶり、作中でも言われてしまっておりますが最早狂ってるを通り越してブッ壊れてます。


マウザーの指令の元、サンディアやリクスの抹殺任務を新たに請け負った烈鬼坊達、が…駄目っ…!!初っ端から躓くっ…!思いつきに乗り遅れた結果、烈鬼坊は順番的に最後に回される事に、君に順番の変更は無い、いいね?(←残酷)


次回は信じられない事にサンディアにお友達(?)が…本当に信じられない事にですが(汗)それではまた、槌鋸鮫でした!


・今回のゲストの皆様の紹介、人数が人数のため過去最多の妄想過多ですみません(汗)


烈鬼坊燼焔(れっきぼう・ジンエン)/燈台鬼(トウダイキ)族(イメージCV:小西克幸):今回の話の主役と同時に最高幹部の一人、獄門寺総師範にして四咎天のリーダー、更にはサンディアの父親の仇って肩書きや設定の過剰搭載にも程がある…(汗)外見イメージ的には角と手足を生やしたキャンプファイヤーをイメージしてくれれば大体合ってます(オイ)、声のイメージは小西克幸さん、某最高の兄貴分や内藤君だったりとヒーローチックなキャラもしたり、現在では時を吹き飛ばすギャングのボスだったりと悪役もこなせる御方です。


咲いてる植物はノコギリソウ、花言葉は『戦い』


美紅尼睡蓮(びくに・スイレン)/人魚(マーメイド)族(イメージCV:浅川悠):常にポーカーフェイスを崩すことの無いクールビューティーにして獄門寺・四咎天の紅一点。普段は感情無いんじゃないか?というくらい淡々とした態度でありそれが癪に触り敵を作りやすいタイプではあるが唯一の趣味である料理に没頭してる時は無意識に素敵な笑顔を浮かべてます。名前の由来は人魚の肉を食って不老不死になった尼僧・八百比丘尼(やおびくに)から。声のイメージは個人的にお姉さんキャラの印象が特に強い浅川さん、某ギリシャ出身の末っ子キャラではない。


咲いてる植物はヤマザクラ、花言葉は『高尚』『淡白』『美麗』など


雷鷲坊閃翼(らいしゅうぼう・センヨク)/雷禍鳥(サンダーバード)族(イメージCV:保志総一郎):獄門寺・四咎天最年少の小生意気な少年キャラ。美紅尼に弟のようになついており美紅尼もまた本当の弟の様に可愛がっていますが次はその上を目指したいというウブな少年。種族の元ネタはアメリカの部族の神鳥・サンダーバード。声のイメージは保志総一郎さん、自由の翼を駆るパイロットだったり探偵だったり幅広い性格の少年役をこなすこの御方が浮かびました。


咲いてる植物はアマリリス、花言葉は『おしゃべり』など


不動坊震山(ふどうぼう・シンザン)/山津見(ヤマツミ)族(イメージCV:梁田清之):獄門寺・四咎天の最年長、豪放磊落にして見た目も器もデカイ皆の親父的存在、性格は細かいことなんて気にしないガサツ且つ少しばかりお節介な所もあるがなんやかんやで愛されるナイスおっさん。種族の元ネタは日本神話の山を司る神・大山津見神(オオヤマツミノカミ)。声のイメージは梁田清之さん、某ゴリラの人といえば大体通る御仁であり特撮では害悪な大臣をはじめ悪役もこなす渋くて素敵な方です。


咲いてる植物はグロリオサ、花言葉は『頑強』など


ヴェノ・マトリオン、ヴェラ・マトリオン、ヴェル・マトリオン/蠱獣類(マンティコア)族(イメージCV:真堂圭):美紅尼のターゲットにされてしまった悲劇の三姉妹、長女への仕打ちがオーバーキルにもほどがある(汗)唯一生き延びた長女に光あれ…。声のイメージは三人全員が大人から子供まで幅広い年代の女性ボイスが上手い真堂圭さん、某毒殺女帝やら耳のヒーローやらキャラの個性も激しい。


咲いてる植物はヒース(和名はエリカ)、花言葉は『孤独』。


尚、三人の区別としては前髪により両目メカクレなのが長女のヴェノ、内気且つ臆病な性格ながらも優しい性格故に妹二人からは愛されてる、一人称は『私』…凍牙はこの人の優しさの百分の一でも良いので分けてもらえ。


左目メカクレが次女のヴェラ、高圧的且つ態度や物言いがキツい女王様タイプではあるが意外にも姉妹間の仲は良い、一人称は『妾』。


右目メカクレが三女のヴェル、少々幼く子供っぽいところがあり明るい性格で姉二人を引っ張っていく元気娘、姉妹間の仲は勿論良い、一人称は『アタシ』。


ガドウ・ゾア/鰐獣精(グランガチ)族(イメージCV:大塚明夫):雷鷲坊のターゲットにされてしまった魔密林(ヘルジャングル)の蛮族達の元締め、キレやすい短気な性格と思いきや意外と策も考えられる決して侮れない男、種族の元ネタはオーストラリアの先住民の伝説に出てくるワニの姿をした川や海の精霊・グランガチ。声のイメージは大塚明夫さん、洋画では軍人キャラやおっさんキャラ、特撮だと某黒牛チャンピオンだったりするステキボイスの御方です。


咲いてる植物はシャガ、花言葉は『反抗』など


黄泉比良坂祟(よもつひらさかの・タタリ)/禍津日(マガツヒ)族(イメージCV:無し):異形中の異形の容姿を持ったグロい魔族、人語は一切話しませんが一応意思疏通は出来る模様。ガドウの知人らしき種族という以外特に語る点は無し。種族の元ネタは日本神話の災厄の神・禍津日神(マガツヒノカミ)。イメージCV…?ありませぬ(←!?)強いて言えば、作中の表現通りコイツの声は水道管の詰まった時に発生する汚い音を想像しながら読んでください(←正気か!)


咲いてる植物はブバルディア、花言葉は『ミステリアス』、ただし花は尻から生える。


ヴァイドレッド・ザ・ヴァンプロード/吸血鬼(ヴァンパイア)族(イメージCV:江川央生):烈鬼坊にターゲットにされてしまった『鮮血十字軍(ブラッド・クルセイダー)』のトップ。ガドウに負けず劣らず苛烈な性格でありマスクを外すと蝙蝠型の巨大魔獣じみた姿になるがそういう変身は死亡フラグ…(汗)声のイメージは特撮などでも荒々しい悪役などが似合う江川さんです。


咲いてる植物は薔薇(赤)、花言葉は『情熱』


剣辰天荼紋(けんしんてん・ダモン)/毘沙門(ビシャモン)族(イメージCV:無し):不動坊にターゲットにされた被害者でありヴァイドレッドの好敵手という点以外は特に語るべき点の無い怪獣野郎。種族の元ネタは上杉謙信が崇拝していた毘沙門天。タタリと同じくコイツにもイメージCVはありません、雄叫びだけだから仕方ないね(おい)


咲いてる植物はリアトリス、花言葉は『傲慢』など


ダラム・ゼラプス/鋼角竜(リントヴルム)族(イメージCV:赤羽根健治):『不死鳥の軍勢』守備隊隊長を務めるトリケラトプスみたいな姿の魔族だがとんでもない臆病な性格で失敗を力業で揉み消しては謝罪をしまくって許してもらおうとする悲しくなる程にネガティブなキャラ(おい!)、イメージCVは鉄の城のパイロットやアイドル事務所のPなどで知られる赤羽根さん、某仮面のヒーローのゲーム版などでシレッと代役ボイスやってたりしてます。


咲いてる植物はオシロイバナ、花言葉は『臆病』


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