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第一片-焔の鳳仙花-

作者、新作っ…!投稿っ…!!他のがあるのに、またやったっ…!!作者、猛省っ…!!

我々人間の世界とは別の次元に存在する主に人々からは冥府や黄泉、地獄などと呼ばれ現代までに語り継がれているその世界の名は『魔界(ヘルブラッディア)』。


永年に渡り魔界の住人達は人間の世界を静観しつつあったがその魔の手が遂に我々の世界にまで及ぶことになる…のかもしれない。




禍津(まがつ)町・不浄山(ふじょうざん)の頂上の寂れた廃墟と化した神社にて…。


「フーンッ…此処が、人間界ねぇ…。」


神社の傍にあった古い御神木に突如人が一人くらい入れそうな赤黒い瘴気を漂わせる巨大な穴…『魔界門(ヘルズゲート)』が展開され、中から這い出てきたのはエコーがかった男とも女とも判別つかない不気味な声で喋る全体的に燃え盛る赤黒い焔を纏った溶岩(マグマ)の様な鱗や体皮に覆われたスマートな体型、ギラギラと妖しく輝く暗い金色の眼、メラメラと燃える鳳仙花の花を先端に生やした長い尾を持つ蜥蜴を無理矢理人型にしたような異形の怪物…魔界の住人たる魔族の内の一種・火精蜥蜴(サラマンダー)だった。


「チッ…あのバカ!何処へ行った!?現地で落ち合う手筈なのにッ…!!」


魔界の魔族達はこの世界を恐怖と絶望の楽園である第二の魔界とするための完全なる支配を目的としており、来るべき日のため人間界の潜行調査と定期的な報告を任務として受けている先遣隊に所属する尖兵たるサラマンダーは先に人間界に来ているはずの部下の魔族と会う約束をしたものの肝心の本人の姿が何処にも見当たらず、怒りと苛立ちのあまり廃神社の壁に八つ当たりとして拳の一撃を叩き込み、盛大に巨大な穴を開けた時だった…。



「アハハハー。わーい、でっかいクワガタ~♪ん?なんの音だろー?」


(…人間…?見つかると面倒だ…ならばいっそのこと…。)


運が悪いことにサラマンダーの過剰過ぎた力による八つ当たりの破壊音(デメリット)を聞いて、今時珍しく山に虫を取るため外遊び(アウトドア)をエンジョイしまくっていた小学生くらいの頭頂部にアンテナの様に生やした二本の先端が丸まったアホ毛があるボサボサな短い髪型におよそ賢いとは言い難い口を開きっ放しなマヌケ面全開の幼い少年・鳴我牧志(なるが・マキシ)がクワガタムシを片手に近付いてきたため、サラマンダーは子供とはいえこの世界で初めて出会う人間の姿に内心焦りこそしたもののすぐさま冷静な判断を下した。それは…。




(…人間の子供なんて一人くらい、『消して』しまったって誰も騒がないでしょ…。)



証拠隠滅、サラマンダーは殺戮と破壊の権化たる血に餓えた魔族らしく牧志をこの世から物理的に消してしまおうと考え、即座に実行に移した。


「悪いけど、恨むなら自分の運の無さを恨んでねー?」


「ん?」


サラマンダーは右腕全体に焔を纏わせるとそれを巨大な燃える花をアチコチ生やした焔のツタ植物へと変化させ、自分の方へとやって来た牧志目掛けて躊躇いも無く焔のツタの鞭を振るう。これで面倒な目撃者は亡き者へ…。




…そう、その『ハズだった』。



「わはははー。トンネルがあるー。」


「え。」


「この『穴』はなんだろ?ほい。」


「。」


厳しい現代社会を幼くも逞しく生きる幼い小学生故に背が低い牧志はサラマンダーの上半身の部分が見えず、下半身の部分を目の前に突如現れた焔で出来た謎のトンネルという有り得ない不思議スポットという子供特有のファンタジー思考で誤認し、足早にサラマンダーの股下を潜り抜けてアッサリと斬撃をかわすや否や、尻尾と臀部の間の部分にある『穴』目掛け、あろうことかついさっき捕獲してきたばかりの新鮮なクワガタを勢い良くズドンッ!と突っ込んできたのだ。瞬間…サラマンダーは未知の衝撃のあまり自身に何が起きたのか全く理解出来ずに数秒間フリーズした後…。




「ギッ…!!?ぎぃいいいやぁあああああああああ!?痛ッギャアアアアアッー!!」


「んあ?」


「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイィイイイイイィイイイイイッ!!痛ッ、痛ッ…ン、ゴッ…痛ッ…ガガガガガガガガッ…!!」


「大丈夫?」


サラマンダーは山全体にこだまするんじゃないかというくらいの情けない絶叫の悲鳴を上げ、尻を抑えながら地面にゴロゴロと盛大に転げ回り、全身を痙攣させながら悶絶した。一方、牧志はというとこんな鬼畜生極まる所業を犯しておきながら、『大丈夫?』などと神経を逆撫でるような発言を平然とのたまってきやがったのだ。それも事態を全く理解していないような、そういう…のほほんとしたマヌケ面で…。


「こ、このガキッ…!自分でやっておきながら、なんだその台詞は!どの口でほざいてんの!?殺ッ…殺、ス…殺してやる!今、此処で…!!」


「うっうー!」


「メッギャアアアアアアッ!!?」


「これあげる。さっきの御詫び。」


金色の瞳を血走らせ、サラマンダーは魔界に居たときでさえ味わったことのない屈辱のあまり、殺意全開の憤怒の形相を浮かべながら両手を伸ばして牧志の首を絞めて殺そうとしたが…本日二回目の屈辱の洗礼としてクワガタを鼻の穴に突っ込まれて再び悲鳴を上げる羽目になった。尚、牧志としては謝罪の意を込めて自分の捕ったクワガタをサラマンダーにプレゼント・フォー・ユーを素でするつもりでこの様な行為をやっているだけであって本人的には悪意も無い極めて純粋な善意の贈り物をしてるだけというのがかえってタチが悪かった。


「ん?大丈夫?」


「うご、ががが…!!ご、ごれが大丈夫に見えるなら相当のサイコパスなんだげど…!!」


またもや同じ台詞を表情を一切変えずマヌケ面のままシレッとほざく牧志の顔を睨み付けながらサラマンダーは夥しい量の鼻血をボタボタと垂らしながら返答した時だった。


「アハッ!ごめん、ごめん!サラマンダー様ー!ほら、見てこのでっかいカブトムシ…って、えぇええええ!!?何事ォオオオオ!!?」


「い、今まで何処へ行っていた…!!キメラ…!!」


額に長い螺旋状の一本の角を生やし、軽装の鎧に身を包み背中に巨大な蒼白い半透明の鳥の翼を生やした蒼いロングへアーの女性…魔界に於いて同種族以外の異種族と結ばれることで生まれ落ちるとされている混合血種(キメラ)と呼ばれるタイプの魔族がカブトムシ片手に子供っぽくはしゃぎながらサラマンダーに近寄るも、鼻血を流しながら地面に突っ伏してる姿を見て驚愕した。現地で落ち合う予定だった部下(バカ)の遅い到着にサラマンダーの金色の瞳にドス黒い怒りの焔がジワジワと灯された。どうやらキメラは人間界に来て早々…あろうことか任務やサラマンダーの事を忘れて虫取りに興じていたようだ。


「え?え?どういうこと?まさかその人間の子供、に…?」


「?」


「うう…こんなクワガタ派の子供にサラマンダー様が…カブト派のアタシとしては信じられない…」


「永久に黙らされたいのか!?この馬鹿女!クワガタだのカブトだの訳の解らん事を抜かすな!マヌケェエエ…!!」


一角獣(ユニコーン)戦乙女(ヴァルキリー)の特徴を併せ持つユーフォリア・ヴァルキュイエムはオロオロと狼狽えつつもサラマンダーの身に起きただろう出来事をなんとか理解したものの、それをやってのけた牧志の賢さの数値ゼロな馬鹿面を見つめ、なにか違う意味で信じられないといった様子で頭を抱え、サラマンダーの怒りをますます増幅させるだけだった。


「クッ…おのれ、人間!よくもサラマンダー様を!正義のカブト派は悪のクワガタ派には屈しない!!覚悟しろォオオオオ!!」


ユーフォリアはそう言うと、その辺で拾ったと思われるダンボールを目にも止まらぬ速さで箱状に組み立て、黒のペンで円形を描き、そして…。




「行けェエエ!!私の愛すべきカブト!!仁王丸(ニオウマル)ゥウウウウ!!」


「わはははー♪負けるな、神名火草薙之命(カムナビクサナギノミコト)号ー♪」


「。」



…虫相撲で牧志との真剣勝負をしていた。しかもこいつら、ちゃっかり自分の手持ちのカブトムシとクワガタムシに無駄に立派な名前まで付けていた。この光景を見てサラマンダーが化石の様に固まったのは言うまでもない…。


「こンのッ…クソ馬鹿共がァアアアア!!」


「ひッ!!?」


「どけぇッ!こいつは私が直接殺すゥウウウウ!!」


「みぎゃああああああ!!サラマンダー様なんでェエエェエエ~~~!!?」


サラマンダーは恐らく自分自身でも信じられない程の我を忘れただろう激情の咆哮を轟かせながら、ユーフォリアの両足を掴み、勢い良くジャイアントスイングでブン回して彼女を遙か彼方まで放り投げた。ユーフォリアは自分の上司の理不尽な暴挙に理解が追い付けないまま、山の木々を何十本も薙ぎ倒しても尚投げられた勢いが止まず、そのまま不浄山を抜けて向こう隣にある穢山(けがれやま)の頂上の地面に頭から突き刺さってようやく止まったという…。


「フゥー!!フゥー!!これだけは使わないだろうと思ったが…もう、何もかもどうでもいい!死ね!!」


呼吸を荒げ、サラマンダーは認めたくはなかったが牧志が自分の手に負えぬ厄介極まる存在と認識を改めると一度眼を閉じ、再び見開くと…今までの妖しい輝きを放っていた金色は一変、血に染まった様な赤い不気味な色に変わり、元から生えていた尻尾は勿論のこと、両腕や両肩、両膝、胸元、腹部など全身に鳳仙花の花を生やして風船の様に肥大化させる…これはサラマンダーという種族独特の戦闘時の能力であり、この全ての鳳仙花の中には燃える種子の弾丸が大量に詰まっている。これら全ての鳳仙花が破裂したが最後、ショットガンの如く全ての種子が散弾として発射され、まともに喰らえば周り全ての者の命を無慈悲なまでに焼き貫き、皆殺しにする大変危険な殲滅兵器(エクスターミネイト・ウエポン)であった。


「おめめが真っ赤だけど乾燥したの?それじゃあ、そいっ。」


「眼がァアアアア!!眼がァアアアア!!」


牧志はというと自分の生命の危機が迫ってるにも関わらず、サラマンダーの眼を見て異常なまでに充血した眼精疲労だと思い、手持ちの目薬をポケットから取り出し、差すのではなく…『刺した』、思い切り、ブスリッ…と、『さす』の意味を完全に間違えた牧志の悪意無き善意の前にサラマンダーは眼を抑えながら背中を仰け反らせ、激痛のあまり地面に倒れてしまった。




数分後…。




「失明したらどうするの?」


「あい。」


「目の前がね?真っ暗になってな?この先ね?一生ね?何も見えなくなるの?解る?」


「あい。」


「そんなの私は嫌だし、アンタも嫌でしょ?ね?」


「あい。」


「よし、解った?解ったなら今持ってる凶器の類いを…クワガタムシや目薬を私に向けるのを止めて家にでも帰れ、そして私に会ったことを綺麗サッパリ忘れろ、いい?返事は?」


サラマンダーは未だに痛む眼を覆いながら自身もそうだが牧志もお正座させてお互いに向き合い、現在御説教をしていた。先程までの爆発した怒りは何処へやら…冷静になりながら牧志の目薬の突き刺しを『悪いこと』だと解りやすく、噛み砕きながら教え、完全に彼を殺すことを諦めた様でもうこのまま黙って帰すことにした。触らぬ馬鹿に祟り無し…そうでもしなければ今度は何をされてしまうことか…そういった得体の知れない恐怖を本能で悟ったからだ。


「フンガー!」


「フンガーって言った!今、フンガーって言った!?絶対さっきの話を理解していないだろ!?あぁああああああ!!もうヤダ!コイツ!!」


肯定の意でふざけた返事をした牧志を見てサラマンダーはとうとう壊れてしまったらしく、近くの木に自分の頭をガンガン叩きつけるという奇行に走り…。


「嗚呼、もう…ダメ…力が出ない…。」


今までのアホなやり取りで全力を出した疲れもあったせいか、そこで意識が完全にシャットアウトされてしまったらしく、そのままサラマンダーは失神してしまう…。


「Oh…。」


牧志は立ち上がる様子もなく倒れてるサラマンダーを暫く見つめた後、尻尾を掴んでズルズル引き摺り、何処かへと連れて行ってしまった…。




???


「ん?ん、ん…。」


何処かの民家の部屋の中のベッド、そこである人物が目を覚ます…。


「…ハッ!?し、しまった…戦闘形態が解けて…『本来の姿』に戻っている…!!」


部屋にあった鏡に映る自身の姿を見て凛々しく威厳のある透き通るような美しい声を出し、驚愕した…一見人間のようにも見える姿ながらも人間の耳や首周りに赤い花弁のようなものが生え、髪の至る場所や毛先が煤けた赤に染まってる灰色のショートカット、暗い金色の瞳、一糸纏わぬ生まれたままの華奢な体、巨乳レベルの豊満な胸元の素肌には焔の花弁を持つ鳳仙花を模した黒い紋様が描かれ、臀部には鳳仙花を生やした赤黒い蜥蜴の尻尾が生えた外見年齢としては十代後半にも二十代手前に差し掛かった辺りにも見える若い少女…その正体は先程までの赤黒い焔の花を生やした蜥蜴じみている人外の怪物の姿だったあのサラマンダーの本来の姿である。


(ここは何処?あの後の記憶が全くない…。)


見知らぬ場所で力を使い果たしたのか?極限の疲労状態に陥ったサラマンダーは人外の姿の魔族特有の戦闘形態が自動的に解除され、本来の少女の様な姿に戻ったまま深い眠りにつき、そして今目覚めた…といったところであろう。一部記憶が消えているが気にしてはならない。


「入るよー?」


(ヒッ!?そ、その声は…!!)


ドアのノック音と共に聞こえた声にサラマンダーは戦慄した。出会って早々に魔界においては先遣隊の尖兵達を率いるリーダーとして選ばれる程には実力のある自分をなんか訳の解らないノリとテンションだけで翻弄して苦戦させたあの人間の少年…鳴我牧志のものと知るや否や、全身の震えが止まらなくなり、すっかり怯えながら毛布で身体全体を覆い隠していた。どうやら此処は彼の居城(いえ)だったようだ。


「起きてるー?」


「ねぇ、マキ君?本当?大きいトカゲさんを拾ったって?」


「リューカ姉、本当、本当。」


(一人増えてる!?しかもアイツ!人を軽々しくトカゲ呼ばわりしやがって!しかも捨て犬感覚で拾っただぁー!?何様のつもりだ!ふっざけんなッ!!)


牧志は隣にいる高校生くらいの十代後半辺りのオレンジのセミロングの髪に頭頂部から牧志と同じく先端が丸まった二本のアホ毛を生やし、髪の両端が犬の耳のように跳ねた状態の少女…姉の鳴我流霞(なるが・リュウカ)と共に部屋に入る。どうやら牧志はリューカにはでかいトカゲを拾ったなどと正直(ストレート)過ぎる説明をしたらしい、その話のやり取りを聞いたサラマンダーは誇りある魔族である自身を明らかに舐め切った牧志に大してますます殺意を芽生えさせていった。


「わぁ、本当だー♪しかも珍しい種類の相当大きいトカゲさんだねー♪ボク、爬虫類大好きだから飼ってもいいよ♪っていうかボクも御世話したーい♪」


「バンザーイ!」


頭隠して尻隠さず…今のサラマンダーの状態は身体は確かに隠れてはいるがその長過ぎる尻尾だけはどうしても隠し切れなかったのだ。年若い少女なのに爬虫類が好きなどという恐ろしく変わった趣味嗜好の持ち主であるリューカはサラマンダーの長い尻尾を見て完全に飼う気満々であり、愚弟である牧志と共に大はしゃぎしていた。


(…終わった。私、コイツらに一生ペットとして飼い殺しにされるんだ…そしてあんなことやこんなことも…。)


サラマンダーの心は折れた。自分の力が何一つ通じない弟の牧志がアレならば恐らく姉のリューカも相当な危険人物なのは明らかだろう、誇り高き魔族が事もあろうに人間に捕まり今まさにペットという名の奴隷にされ、最悪の場合にはとてもとても口に出来ぬ×××な行為をされ…。最早これまで…この非情なる現実を受け入れてしまった彼女は絶望のあまり…。



「う、うぅ…ううゥウウウウ…!!」


「「え。」」


「ごめんなさい…ごめんなさい!!殺、さないで…なんでもするから痛いことしないでください…!!お願いです!お願いします!うわぁああああ…!!」


(あれれ~?)


(ど、どうなってんのこれ???)


泣いた。毛布から出てきて全裸姿のままで土下座をし、クソの役にも立たぬ魔族のプライドを全てかなぐり捨てて嗚咽を漏らし、慟哭した。野生化した新種の大トカゲを拾ったのだと思ったらトカゲの尻尾を生やしている見た目リューカと同世代と思われる全裸の少女が全裸土下座をしていた…何を言ってるのかサッパリだがこれは紛れもない事実のため、牧志もリューカも何がなんだかと言わんばかりに困惑した。




その後、鳴我家の居間にて…。



「グスッ…ひぐっ…うぐぅううう…えっ…えっ…」


「ご、ごめんなさい…ウチのマキ君がえぇと…サラマンダー、さん?にとんだ御迷惑を…ほんっとに!!すみませんでしたァアアアア!!」


「ごめんなさい。」


現在サラマンダーはリューカの物である適当なTシャツとスカートを借りて着て全裸状態はなんとかなったものの、未だに二人が怖くて泣きじゃくりながらリューカが御詫びの印として献上した手作りのアップルパイを頬張り、淹れたての紅茶を飲んでいた。一方、実弟の無礼を知ったリューカはというとガチで申し訳なさそうに冷や汗をダラダラ垂らしながら先程サラマンダーがしていたような土下座を不変のマヌケ面のままの牧志と共にし、盛大に謝罪した。


「ひっく、ひっく…このまま帰してくれる…?私を奴隷にして、いじめたり飼い殺しにしたりしない…?」


「断じてしませんッ!さっきの話は嘘!全てッ!!嘘ですッ!!」


「えー?本当にー?」


「『えー?』じゃありません!悪いけどマキ君、今は少し黙ってて!!」


「むべっ!」


最初の時の横暴で凶悪な魔族としての顔は何処へやら…今や単なる泣き虫と化したサラマンダーの気の毒になりそうな弱々しい懇願を聞いて罪悪感と良心の呵責という重石に潰されそうになったリューカは彼女が言うような非人道的な行為は一切しないことを約束したが牧志が要らんこと言って話をややこしくしかねないため、アップルパイを彼の口に突っ込んで黙らせた。


「マキ君…あー、ボクの弟はもう手遅れだけどボクはあなたに危害を加えたりしません。流石にあなたには驚いたけれどこんなにも弱った人を追い詰めるほどド外道なんかじゃないですから、だから安心してお帰りください。ね?」


「ありがとう…ありがとう…」


天使…弟を殺害未遂しようとしたにも関わらず優しさMAXな対応と気遣いをてくれたリューカに対して脳裏にそんな言葉が浮かんだサラマンダーはその場に崩れ落ち、溢れた涙を拭った。





彼女はまだこの時知らなかった…今のやり取りが更にサラマンダーの生涯を大きく左右させる程、自らの首を絞める行為になろうとは思いもしなかった…。



はじめましての方ははじめまして、御存知の方はすみません…前書きにも書いた通り、考え無しの新作投稿しちゃいまして反省しております(しかも連載…)。


この小説は現在連載してる別作品『魔界食糧生産期』の設定や世界を流用しています。あちらでは人間キャラは一切出ない魔界がメイン舞台なのに対して此方は人間界がメインなので魔族のみならず人間も普通に出ます。


今回はまだ単にサラマンダー表記ですが正式な個人名の本名は次の話で出す予定です。


それではまた次回、槌鋸鮫でした。

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