狷介恋慕( けんかいれんぼ)
古本をたまたま買ったら、本にとあるゲームのカードが挟まってました。
それを見た瞬間、溢れ出すイメージに書かずにはいられなくなって、書き始めてしまいました……。
誤字、脱字などありましたら申し訳ありません。
僕の現実は、中学最後の冬、無情にも土足で踏みにじられた。
全ては、中学二年の春、赤城 朱華と出会った時から始まっていたのかもしれない……。
それは偶然だったのか、必然だったのか、僕にはわからないけど……放課後、読み終わった本を図書室に返しに行った時の出来事。
本棚の前で本を読む女の子に僕は一目惚れした。
ショートカットで右側だけピンで押さえ、耳を出した髪型、眼鏡をかけていて、その下から覗く少したれた瞳が実年齢より幼く見える。
「……なに?」
どのくらい彼女に見とれていたのか?
僕の視線に気付いた彼女が尋ねてくる。
「えっ!? あっ!? いや、わっ! とっとっ……」
我に帰り、あまりの気恥ずかしさに慌てた僕は、本を落としそうになり、お手玉した結果なんとか無事キャッチ。
「ぷっ、あははは……」
そんな僕の姿に、読んでいた本を抱き抱えるようにして、彼女はお腹を押さえて笑った。
「あっ、えっと、失礼しました……」
更なる恥ずかしさに、逃げ出したくなった僕は軽く頭を下げその場を立ち去ろうとする。
「あっ!? 待って!」
制止の声に振り向くと、彼女は眼鏡をずらし涙を拭っていた。
そこまで……。
逃げたしたいのに……なぜか、僕は彼女から目が離せない。
「……笑っちゃってごめんね……上城朱俊君」
いまだ、笑いを引きずりながら謝られても……えっ!?
名前を呼ばれて僕は驚いた。
「……ぷっ、くくくっ」
よほど驚いた顔をしたのだろう、彼女は押し殺したようにまた笑い出した。
「どうして……?」
彼女の笑た顔が魅力的なのと、恥ずかしさで、頭が混乱した。
冷静に考えれば答えは簡単だったのに、その時の僕にはそう答えるのがやっとだった。
「上城君、いつも火曜日来るよね、私の方が今日だけ曜日変えてもらっちゃった……私、図書委員なんだ」
彼女は僕の持つ本を指差し、いたずらっ子のように笑った。
「えっ? えっ?」
いまだに混乱したままの僕には理解出来なかった。
「……職権濫用、あのパソコンで上城君の借りた本も全部知ってる」
僕の反応につまらなそうに彼女はそう暴露した。
「あっ!? パソコンの貸し出しデータ……あれ? でも、それだと顔はわからないんじゃ?」
「名前、上城 朱俊って珍しいよね? 私、赤城 朱華っていう名前なんだけど、データ管理していたら同じ字が2つも入っていたから、気になっちゃって……だから調たの……」
赤城さんは困ったように、どこか恥ずかしそうに答えた。
それが朱華との出会いだった。
読む本の趣味が近くて、僕と朱華はすぐ仲良くなり、一緒にいることが多くなった。
時の経つのが早く感じるくらい、楽しい日々はあっという間に過ぎていく。
出会ってから1年と7ヶ月が経った11月。
思えばあの時、朱華の様子がおかしかった事に気が付いてあげられたら、何か変わっていたのだろうか?
朱華が図書委員の当番の時は、終わるのを待って一緒に帰るのがいつの間にか習慣になっていた。
その日もそのつもりだった……。
「朱華お疲れ、帰ろう」
仕事が終わった朱華に話しかけても、どこか上の空。
「疲れた? それとも体調悪い?」
「えっ!? 朱俊……いつの間に?」
ようやく僕の存在を認識した朱華が驚く。
「さっきからいたけど、大丈夫? 何かあった?」
「そうなんだ、ごめんね。ちょっと考え事してた」
そういって、朱華はいつもの笑顔を見せると鞄を手に取った。
「そっか、じゃあ帰ろう」
「……ごめんなさい、待っててもらったのに、今日は急に用事が入って寄るところがあるの……先に帰ってもらえる?」
申し訳なさそうに……今にも泣き出しそうな顔で朱華は頭を下げた。
「そうなんだ、気にしないで、急に用事が入ったならしょうがないよ、じゃあ、先に帰るけど気を付けてね」
「……ありがとう……後、これ……読んで欲しいなって思って持ってきたんだけど……」
手にした鞄から本を取り出し、朱華は不安げに差し出してくる。
「やった、朱華のお勧めは面白いから大歓迎だよ、ありがとう」
笑顔で本を受け取ると朱華が聞き取れないくらいの小さな声で呟いた。
「……ごめんね」
「えっ? 何?」
「ありがとうって、いったの」
そういって朱華は笑顔を見せた。
「じゃあ、帰って読ませてもらうよ」
「うん、じゃあね……」
このやり取りの後、朱華は僕の前から姿を消した……。
そんな未来など知るはずもない僕は、帰ってすぐ朱華の本を読み始めた。
内容は、結ばれない2人が恋に落ちる恋愛物。
正直、この時の僕には大人な内容だった……。
読み進めていくと、最後の方にカードが一枚挟んである。
何のカードだかよくわからないけど……『希望のスライム』と書かれた文字と虹色の何とも言えないスライムの絵だけはわかった。
不思議に思いながら、栞の変わりにしていた可能性があるので、下手にいじらずそのままにしておく。
ただ、そのページの台詞が、なぜか心をざわつかせた。
「私の人生は人形……では私の心は誰のもの? 貴方はもう信じてくれないでしょうが、心は唯一私のもの。貴方に恋し貴方を愛したこの心は嘘じゃない、許されるのなら貴方のそばにずっといたかった……貴方を抱き締め囁くの、愛してると……」
良く見ると、点々と水が乾いた後があるのに気が付いた……涙?
朱華はこれを読んで涙したのだろうか?
心が締め付けられる……。
僕は不安にかられ慌てて彼女にメールをした。
返信はなく、翌日学校に行って信じられない現実を突き付けられる。
学校に来ても彼女の姿を見付けられず、彼女のクラスメイトに話を聞いたら、彼女は親の都合で急遽海外に引っ越して行ったと聞かされた。
世界が音を立てて崩れていく気がした。
そこからの記憶は曖昧だ……。
学校に行って帰ってきては、何もする気が起きず、ただベッドに横たわり朱華の本を眺めて1日を終わらせる、そんな日々だった気がする……。
そして、運命の日が訪れる。
いつも通りベッドに横たっていると、ドアのチャイムが鳴った。
出る気はないので無視していると、強烈な耳鳴りに襲われ、次の瞬間玄関で凄い物音がした。
さすがに気になった僕は、急いで玄関に向かうと、とんでもない光景を目の当たりにする。
玄関のドアノブが鍵ごと壊され、無理矢理ドアが開かれていた。
さらに玄関から土足で上がって来る人物に驚く。
「朱華!?」
そこには海外に引っ越したはずの朱華が立っていた。
僕の声に視線をこちらに向けた朱華は微笑む。
何か違和感を感じた。
「いるなら、出ろよ。無駄に力を使っただろ……」
「……君は朱華じゃないな、誰だ!?」
姿はそっくりなのに、仕草やしゃべり方はまるで違う別人。
その別人がうっすらと笑った気がした、次の瞬間、鼻に強烈な衝撃を受け僕は後ろの壁まで吹き飛ばされていた。
「あんなくそ女と一緒にするなっ!」
何が起きたのか理解出来ずに鼻を押さえ呻く僕を、彼女は見下ろし怒りをあらわにする。
「おい、あの女から預かった物を渡しな、あの女は死んだからもう持ってる必要もないぞ」
襟首を掴み僕を引き起こすと、彼女は顔を覗き込むように続けた。
死んだ……朱華がか……。
鼻から暖かいものが流れ呻く事しか出来ない僕は、彼女の望む答えを瞬時に考えられなかった。
「……チッ、早く、答えろよ!」
ゴツッ!
「えぇ!」
ガツッ!
「どうした!」
ガコッ!
「聞こえてんのか?」
僕の答えが返ってこない事に苛立った彼女は、ヒステリックに僕の頭を壁に何度も叩き付ける。
「くそっ、壊れてんじゃねぇ、くそっ!」
意識を失いかけ、体の力が抜けていく僕を今度は執拗に蹴り続ける。
「そこまでだ!! 紫!!」
意識が途切れる間近で、玄関から誰かが飛び込んで来たのがうっすら見えた。
「チッ、もう見付かったか! てめぇが早く渡さねぇから!」
紫と呼ばれた彼女は最後に僕の額を力いっぱい踏みつけると、全力で窓を突き破り逃走する。
「紫が窓から逃走、B班行ったぞ!」
「捕まえられますかね?」
「厳しいだろうな、あいつにはあのカードがあるから……しかし、なぜ一般人にここまで……」
「なんらかの関係者と言うことです、手当てして聞きましょう」
「……間に合うか?」
「一欠片の情報だとしても、必要なのですから間に合わせます」
こうして、僕が次に意識を取り戻したのは病院のベッドの上だった。
額に傷が残るみたいだが命に別状はないらしい……ただ、なぜこんな怪我をしたのか記憶がない……。
親からの説明だと暴漢が家に押し入り、執拗に暴力を振るったという……。
全く覚えていなかった。
無事病院を退院し、なんとか受験もクリアした僕は、新しい生活を始める事になる。
親があんな事件が起きたので家を引っ越し、さらには父親が少しは体を鍛えろとボクシングを始めさせられた、父親が昔やっていたらしい……。
最初は乗り気しなかったのだけど、あの事件以降、僕は本を読めなくなったから、代わりとしてはちょうどよかったのかもしれない。
本を読もうとしても、体が拒否反応をお越し頭痛に襲われたり、手が震えたりする。
医者は精神的なものだから時期に治るだろうと言っていたが……なぜか、ただ1つの本だけは読むことが出来る……妙なカードが挟んである本……。
その本に触れるたび思い浮かぶ、顔がぼやけて確認出来ない少女……。
君は誰……?
忘れてはいけない大切な人なのだろうか……いつも気が付くと涙が流れていた……。
2つも書き始めてしまった……大丈夫だろうか?
更新が遅いですが頑張ります。
ジャンルとか項目の付け方がいまいちわからないので、間違ってたら申し訳ありません。




