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棟梁と弟子
棟梁:おまえ、ちょっと手数だが この帳面に 猫 かいてみてくれ。
弟子:へえ、自分は「ね こ」とみみずがのたくったような字なら得意ですが
描くとなると より悪筆になります。
棟梁:おまえ、絵も下手で字まで下手ときたか・・・何重苦だいいったい。
弟子:へえ、いつも自分は 字書かされる病院や役所なんかは嫁に付き添ってもらって
代わりにやってもらっております。
棟梁:そりゃ 不甲斐ない
弟子:へえ でも自分は仕事仲間内では やんごとなき御仁の如く
「この書を 読めないなんてなんて無学で不調法なのかねぇ」
と やれやれ顔を拵え 場をやり過ごします。
棟梁:ほう。草書体を おまえは気取るわけだな。
弟子:へえ 仲間内でバカにしてくる奴がいたら 知ってる限りの 『禅語』をまくしたて
奴らを 煙に巻きます。
棟梁:なるほど、おまえ学歴どの程度だ。
弟子:へえ 工業高校卒です。
棟梁:はっはっはっはっは(破顔一笑)
弟子:棟梁は どうなんですか?(鬼の形相)
棟梁:なあに おまえさんより ちぃと上よぉ。
普通科中退なっ!
弟子:(脱力)