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第7話 最後の会話は

さおりとイハクは、ソファに座り、くつろいでいた。

「ねえ、イハク。1つ聞き忘れてたんだけど。」

「何でしょうか?さおりお嬢様。」

イハクはさおりの方に向き直って、にっこりと微笑んだ。

「あのね、ここに住み着くと、自殺扱いになるって言っていたじゃない?あれってどういうことなの?」

「ああ、そういえば、その説明をしようとして話がそれたまま終わっていましたね。」

「ええ。それどころじゃなくなって、忘れかけていたからね。で、どういうことなの?」

「ああ、それはですね、ここに来た時点で、現世とこちらで肉体を2つ持つことになってしまうのですが、そのままではいけないため、片方の肉体を処分する必要があるためです。」

さおりは、えっと声を上げた。

「どうして2つあってはいけないの?」

「それはですね、肉体と魂の数が合わないためです。先ほども言いましたが、魂は作りだすことができません。そして、肉体が年を取るには魂が入っていなければできません。だって、そうでしょう?一般的に死んだと言われる魂の抜けた人間は、体が腐るばかりで老けませんから。」

「な、なるほど…。」

「しかも、寿命を迎える前に、こちらから魂だけをお呼びした場合、肉体を再び使うことになる可能性も考え、腐敗しないようになっております。ですから、適切な処置を施す限り、永遠に、年を取ることなく、生き続けるのです。」

「不老不死って、実現可能なのね…。」

さおりは唖然としていた。

「ええ。そうでございますよ。」

イハクはにっこり微笑んでいた。


「って、それはいいんだけど、ここに居つく人は、肉体をどういうタイミングで殺してしまうの?急死してしまっても不自然にはならないの?」

「ああ、さきほども言いましたが、肉体を”殺す”ことはできません。」

「え?じゃあ尚更どうするのよ。」

「それはですね、肉体を消去しているのです。」

「消去?」

さおりは唖然としていた。

「ええ。急に目が覚めたように繕い、1人で自殺の名所と呼ばれるところや大きな滝があるところに向かわせ、飛び込ませるのです。そこでなら、死体が見つからなくとも、不自然ではありませんから。」

「な、なるほど…。肉体を作ったり消したり、便利なものね。」

「ええ。魂が入っていない物であれば、何だって作れます。」

さおりは、へえ、と感心しながらも、疑問が頭に浮かんだ。

「ねえ、じゃあさ、精神って、どういう扱いになるの?」

「精神、でございますか。それは、魂の中にあるものになりますので、こちらから手を加えることはできません。」

「ああ、やっぱりそういう扱いなのね。」

さおりは、ふふっと微笑んだ。

「え、何でございますか?」

急に笑ったさおりを見て、イハクが少し驚いたようだ。

「いや、イハクって、たまに突拍子もないことするでしょう?だから、自分の心も上手く制御できていないこともあるんだなあって。そういうところは、人も悪魔も変わらないんだなあって。」

そう言うと、さおりはまた笑った。

「え、私、突拍子もないことしましたか?ええ?」

イハクはおろおろしていた。

「ふふ、まあ、イコラからちょっと別のことも聞いちゃったから、余計に、かな。」

そう言って、さおりはさらに笑った。

「イコラから、一体何をお聞きになったのですか!?」

イハクはとてもびっくりしたようで、少し大きな声でそう言った。

「うーん、そうね、とても大事なこと。何というか、私がここに連れてこられた理由が何となく分かったっていうか。」

「え?ええ?」

「で、聞いて思ったことがあるの。聞いてもらえる?」

さおりはにっこり笑ってイハクに聞いた。

「何なりと。」

イハクも笑ってそれに答えた。

それを見て、さおりはすっと姿勢を正し、真剣な顔でイハクに言った。


「あのね、分かりにくいことしないで。気持ちはきちんと伝えないと分からないわよ。急にここに連れてくるっていうのは、相手のことを思いやれていないでしょう?連れてきたいなら、きちんと私に承諾を取ってからにして。」

イハクは、一瞬何のことを言われているのか分からなかったらしい。少し固まっていた。

しかしその後理解できたらしく、段々と顔が真っ赤になっていった。

「あ、あの、さおりお嬢様、イコラからは何とお聞きに…?」

「ああ、悪魔は恋愛感情を持った相手にしか、自分の名前は教えないって。普通はミドルネームで呼び合うものだって聞いたわ。」

イハクは、顔を真っ赤にしたままうつむいてしまった。

「誰かを好きになるのは良いことだと思うし、私だって誰かに好かれるのは嬉しいと思うわ。」

そう言うと、イハクはぱっと顔を上げた。

「でもね、気持ちが暴走しすぎて相手を困らせてしまうのであれば、そのせっかくの思いも、ただの迷惑になってしまうの。」

イハクは再び下を向いた。

「だからね、まずは相手を知るところから。私もイハクも、まだ全然お互いのこと知らないもの。もっときちんと話すようにしましょう?」

そう言うと、イハクは顔をゆっくりと上げた。

「いいのですか?」

「ええ。でも、私は現世に帰るから、話せるのは夢の中だけ、かしらね。」

そう言うと、さおりは、ふふっと笑った。

「それじゃあ寂しいです。もっと話したいです。」

イハクは少し泣きそうな顔でさおりを見た。

「ばか。もう会えなくなるわけじゃあないんでしょ?また前みたいに、イハクが私に会いに来てよ。私からは会いに行けないけど。」

「は、はい、そうですよね。必ず、必ず会いに行きますから!」

イハクは、泣き笑いのような顔を浮かべていた。

それを見て、さおりも少しだけ、泣きそうになった。


「おーい、できたぞー。」

そこへ、イコラが帰ってきた。ドアを、乱暴にばーんと開け、ずかずかと中に入って来た。

「ありがとう、イコラ。じゃあ、私は帰るね。」

さおりがそう言って立ち上がり、イハクに背を向けると、後ろからイハクに抱きしめられた。

「待っていてくださいね、さおりお嬢様。すぐに会いに行きます。」

「うん。待っているから、もう泣かないで。」

さおりは、ふふっと笑ってイハクの涙をそっと手で拭った。

「じゃあ、さおりちゃんこっちこっち。」

イコラが手招きしている。

「まあまあ楽しかったわ。また会いましょう。」

さおりはそう言うと、イコラが示したドアの中へ入っていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さおりはゆっくりと目を覚ました。

最初に目に飛び込んできたのは、心配そうな顔で見守る母の顔。次に見たのは、腕に刺されたいくつかのチューブ。

さおりは、ああ、私帰って来たんだなあ、としみじみ思っていた。

「ああ、ああよかった。目を覚まして。一時はどうなることかと。ああ。」

母は、さおりを見て涙を流して喜んでいた。

「ごめんね、お母さん。ごめんね。」

さおりは謝りながら、母と一緒に涙を流した。

「さおり、あんたにいろんな人からメッセージ届いているのよ。見てあげて。」

母はそう言って、さおりのスマホを持たせた。

中を見ると、LINEやメール、電話がものすごい量届いていた。送り主は、友達や職場の同僚、上司、幼馴染、などで、皆、さおりを心配しているようだった。

「みんな…。」

「もう、仕事は復帰できないかもしれないけど、それも問題ないだろうし、少しのんびりしたら?忙しすぎて体が限界だったのよ、きっと。」

母にそう言われて、さおりははっとした。

そういえば、現世に帰ってからも問題ないように手配してもらっているはずだ。一体どうなったのだろう?

「えっと、私これからどうするんだったっけ?」

母に聞くと、母はきょとんとした。


「あんた何言っているのよ。まさか、記憶喪失?彼氏と同棲するんでしょ?その予定が、丁度明日からで、もう家は借りてあって、家具も全部運んであるんじゃない。彼氏は今、海外出張中だったわよね?連絡はまだ取れていないけど、明日の朝一でこっちに着くんでしょ?で、あんたは先に新居に入っていることになっているって言っていたじゃないの。」

さおりは思わず、えっと声を上げた。

「もう、これじゃあ幸先が思いやられるわね…。お医者さんは頭も異常なしって言っていたけど、大丈夫かしら。」

「あ、だ、大丈夫大丈夫!そうそう、そうだったわね!」

さおりは思わず取り繕った。

「そう?ならいいんだけど。丁度この近くのマンションでしょ?送って行ってあげるから。」

「ありがとう。」

さおりは母に送ってもらい、その同棲するというマンションまで来た。

「じゃあ、体に気を付けるのよ。」

「お母さんも、気を付けてね。」

そう言って別れた後、さおりは1人考えていた。

同棲?誰と?元彼、は職場が県外だし、そういう嘘なのかしら?だとしたら、少し気分が悪いわ、と思いつつも、割と良いマンションで、のびのびとくつろぎながら、いつの間にか眠ってしまった。


次の日の朝、さおりは少し寝覚めが悪かった。

「イハク、久々に夢で見なかったわね。」

そう、イハクは夢に現れなかった。

あの時のことは全部演技?私騙されたのかしら、と思いつつ朝ご飯を済ませていると、ピンポーンと、軽やかにチャイムが鳴った。

「誰かしら。」

そう呟きながら、さおりがドアを開けると、目の前にイハクが立っていた。

「は!?!?」

さおりは思わず大きな声を上げた。

「さおりお嬢様、玄関先でそんなに大きな声を出されては近隣の方の迷惑になってしまいます。ですから、早く中に入れてください。」

イハクはにっこりと笑っていた。

「同棲する彼氏って、まさか、まさか…。」

「ええ、私でございます。さおりお嬢様の言う通り、気持ちは伝えなければいけませんものね。それに、もっと良く話さなければいけませんし。一番良い方法かと。」

イハクは本当に嬉しそうに笑っていた。

「愛しています、さおりお嬢様。それでは、これからよろしくお願いします。」

さおりは、ふうっと肩の力が抜け、ふふっと笑った。

「ええ、よろしくお願いするわ。イハク。」

いかがでしたでしょうか。

ファンタジー初作品となっております。

つたない部分も多いかと思いますが、評価、アドバイス、感想など、何かありましたらぜひよろしくお願いします。

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