2回目 いや誰ですか?
「こんにちわぁ!
あ、えと…ここ、懶さんのお部屋であってるぅぅじゃなくて!
…あってますか?」
カーテンを閉めた。
寝ぼけているのだろうか。
昨日見た深夜アニメをいまだ引きずっているのだろうか。
頭が真っ白だ。
壁にべったりと張り付いた姿勢で悶々と考える。
てか誰なんだ今の子。
絶対知らない子だぞ。
見たこともない。
ていうか…
「…超かわ「あっすいません、お邪魔します」
「うあああぉっ!!!!」
突然耳元で囁かれた声に驚き、つい大声をあげてしまう。
ずるずると壁に背をもたれながら床にへたり込み、半ば硬直した状態で声の主を見る。
どうやら声をかけてきたのはさっきの美少女ではなく、今まさになにやら大きなカバンを手に、私の部屋に入ろうとしている茶髪の男のようだ。
えっ。まてまて。
なに勝手に人の部屋に入って…
「ちょっと待っててくださぁい…時間かかるみたい、です」
「うっわ」
今度は左から声が。
さっきの美少女だ。
私の隣でちょこんと体育座りをしている。
私が「うっわ」といったせいか、少ししょんぼりしてしまった。
腕に顔をうずめたと思ったら隙間から私のことを見上げている。
こちらをジーッと見つめる大きな瞳は眺めているとこちらが吸い込まれてしまいそうだ。
羨ましい。
「この辺荷物置けないですねー…」
と、今度は部屋の中央でさっきの男が荷物を広げようとしている。
こちらの姿を再度確認するとカバンのポケットから黒い板のような四角いタブレットを取り出し、手でさらさらとタップする。
なにやってんだろ。
はっとした顔をすると、こちらを向いて頭を下げた。
「挨拶が遅れましたっ、突然の訪問すみません!
えっと私は一応この子の担当といいますか、お世話係なんですけど…」
なんだか申し訳なさそうに私の隣に座る少女を見る。
美少女は私が見るとニコっと笑顔を向けてくる。
見続ける私に「?」と首をかしげる彼女の長いピンク色の髪がふわりと揺れる。
柔らかそうだ。
少し触ってみようかと手を伸ばしたとき、後ろから「ちょっとこの辺片付けていいですか?」と男の声が聞こえてきた。
なんか危なかったな…。
とりあえず見られてまずいものはないだろうし「あ、どぞ」とだけ答えておいた。
…*
「いやぁバタバタしててすみません、改めて紹介させて頂きます。
この女の子の担当、神谷と申します。」
「はぁ…」
彼は部屋を一通り(めっちゃ綺麗に)掃除したあと、改めて部屋の中央で向かい合う形で自己紹介をした。
神谷と名乗ったスーツ姿の男は、見た感じ20代でやせ型の高身長、顔もまぁまぁと結構モテる要素が詰まっている。
くそ、こいつら顔面のクオリティ高いな。
「そして、こちらの女の子なんですけど、」
「あの」
神谷が美少女を紹介しようとしたところで割って入った。
「どうされましたか?」
神谷が答える。
私はさっきからあの美少女が気になっていた。
なぜか2mほど離れた壁にもたれた状態で、寝ているのだろうか。動かない。
「あの子どうしたんですか」
調子でも悪いのなら寝かせればいいのにと思っていたが、彼の口からは予想だにしない言葉が返ってきた。
「ああ、ちょうど今言おうとしていたのですが…あのこ、
アンドロイドなんですよ。」