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惚物語〈ボケモノガタリ〉

作者: 斎藤一樹


むかしむかし、あるところに、お爺さんとお婆さんが居ました。

ある日お爺さんは山に鹿狩りに、お婆さんは川に探索に行きました。お爺さんは猟師、お婆さんはトレジャーハンターだったのです。年寄りの割には活動的ですね。と言うか探索って何を探索するつもりなんでしょうか。

まあ、閑話休題。その日、お爺さんは山で光り輝く竹を見つけました。お爺さんはそれを化け物だと思ったので、手に持っていたライフルで撃ち抜きました。同じ頃、川ではお婆さんがとても大きな桃が流れてきたのを見ました。見ましたが、あまりにその桃が大きかったのでそのまま見送りました。

その日の昼過ぎ。お爺さんは山から、お婆さんは川から家に帰ってきて、今は縁側でお茶を飲んでのんびりとしています。

「そういえば爺さんや」

 ずずっ。

「何じゃい、婆さんや」

 ずずっ。

「先ほど川で、旧日本軍の不発弾を見つけたのですがね」

 何見つけちゃってますかねこの人は。

「ふむふむ」

 ずずっ。

 あんたももっと驚けよ。

「まあそういう事もあるじゃろう」

 え、コメントそれだけ?

「そういえば婆さんや」

 ずずっ。

「何ですか、爺さんや」

「今度、ガトリングガン、と言うものを買ってみたいのじゃが、のう?」

 おねだりするお爺さん、腰が低いです。

「やめときなされ、アレは反動が強すぎるであかん」

 ずずっ。

 いや、そういう問題じゃ無いでしょうに。

「そ、そうかのう?」

 ずずっ。

「どうせ買うならサブマシンガンぐらいにしときなされ」

 サブマシンガンならいいのか。

「しかし、今日も平和じゃのう」

 会話は物騒ですけどね。

「今日もお茶がおいしいですねぇ」

 ずずっ。

「そうじゃのう」

 ずずっ。

「…………‥─────!」

「婆さん、魂が抜けておるぞ!」

 口から抜けていきましたね。

「はっ、あぶなかった……」

「だ、大丈夫かの……?」

「お花畑が見えましたよ、爺さんや」

「死にかけとる!」

「そういえば向こうに、大きな川もありましたね」

 それ、三途の川!

「ほれ、これでも飲みなされ」

 ずずっ。

「おいしいコーヒーじゃのう、爺さんや」

「婆さんが惚けた!」

 それ、緑茶です。

「分かってますよ、わざとですよ、わ・ざ・と☆」

「そ、そうか…。ならいいのじゃが……」

「これはココアですよね」

「もうお仕舞いじゃあッ!」

 もう一度言いますが、それ、緑茶です。

「? どうしたんです、爺さんや」

「婆さんや、病院行こう、な」

「病院?ああ、あの髪の毛を切りに行く、」

「それは美容院じゃ!」

「はて?」

「惚けとボケが交ざっとる!」

 何やってるんでしょうね。

「ふう、お茶がおいしいですねぇ」

 ずずっ。

「婆さんが戻った!」

「やはり紅茶はウバ茶ですねえ」

 ずずっ。

「やっぱりダメじゃった!」

 繰り返しますが、緑茶ですからね。

「どうしたんです、爺さんや」

「やっぱり病院行こう、婆さんや」


 その後の彼らを知る者は、誰も居ないと言う……。

    〜Fin〜


 どうも、斎藤一樹です。今回は〈Daily〉はお休みで、以前書いた話をコピペして掲載することになりました。それもこれも皆全て宿題が(ry


 さて、この短編の制作裏話と言うか発端がありまして。今から大体一年ほど前、文芸芸術同好会(以下、文芸)の顧問の先生が「何かテーマを出すのでそれに沿った短編を一本」という課題を出してきまして。そして先生はおもむろに近くを通り掛かった先輩を呼び止めて、「キミは今何を考えていますか?」という質問を投げ掛けました。先輩、最初は突然の事に面食らって鳩が豆鉄砲喰らったような顔をなさってましたが、どうにか気を取り直したのか、怖ず怖ずと「……ええと、…お茶です……」と答えました。喉が渇いていたんでしょうか。この切り替えの早さは素晴らしいと思います、私だったらワンテンポ遅れて「…………は?」みたいなリアクションを返していた事でしょう。

 兎も角、こうして、この作品のテーマが決定されました、まる。

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