スマホを使い始めました 青きユリって?
まだ、新しいスマホになじめない。
最初の画面からして情報が多すぎるし、今度のスマホはスワイプ操作が中心だ。画面に操作用のボタンを表示させる設定もあるらしいけれど、それを使ったら、なんだか負けたような気がする。
「もう少しだけ、このままで頑張ってみよう」
誰と勝負しているのか自分でもわからないけれど、しばらくはやせ我慢をすることにした。
もちろん、努力もしている。YouTubeで「Androidスマホの基本操作」という初心者向けの動画を、メモを取りながら真剣に見ている。
動画の内容を文章にまとめてくれる機能もあるらしいが、わたしは自分でメモを取る。
そして、シャーペンを持ったまま、うっかりペンタブレットをつんつんしてしまう。
気をつけよう。
しかし、そんな研究の甲斐もなく――恥ずかしながら、最初は電話に出ることさえできなかった。
主人に頼んで、電話をかけてもらう。
「じゃあ、かけるよ」
「うん」
すぐに着信音が鳴り、画面に応答のマークが表示された。
「あ、これね」
自信満々にマークを押す。けれど、電話はつながらない。
「あれ?」
「押した?」
「押したわよ」
「もう一回、かけようか」
再び着信音が鳴る。今度はしっかりと押した。それでも、うんともすんともいわない。
「どうして……?」
二人で首をかしげながら、じっと画面を見つめる。
今ならわかる。
押すのではなく、マークをスライドさせるのだ。
「こんなこともわからないなんて」
自分でも苦笑してしまうが、説明されなければ本当にわからない。画面を「押すもの」と思い込んでいる人間を、スマホは優しく導いてはくれないのだ。
そういえば、今の操作は「押す」ではなく「タップ」というのだったわ――と思い出す始末である。
おまけに、もたもたしていると、すぐに留守番電話へ切り替わってしまう。
「待って、今出るから」
画面に向かって頼んだところで、スマホが待ってくれるはずもない。これも、留守番電話に切り替わるまでの時間を延ばせないか、あとで調べなければ。
文字入力にも、まだ戸惑っている。
これまで使っていたiPhoneでは、「あ」を押すと、その周りに「い・う・え・お」が花のようにパッと広がった。ところが、新しいスマホでは、文字を動かす方向が上に表示される。
ちゃんと指を動かす方向が画面に出ているのに、ワンテンポ考えてからでないと指を動かせない。
ほんのわずかな違いなのに、そのたびに頭の中で変換作業が入る。以前より一段階多く脳みそを使っているようで、妙に疲れてしまう。
ただし、ありがたいところもある。
文章を直すとき、カーソルの位置を動かしやすいのだ。
わたしは「小説家になろう」に予約投稿した文章を、あとからスマホで読み返すことがある。誤字を見つけて直そうとしても、以前のiPhoneでは、狙った場所になかなかカーソルが合わなかった。
「そこじゃない。その一つ前!」
指でタップすると行きすぎる。
「ああ、今度は後ろに行った!」
戻そうとすると、また行きすぎる。
たった一文字を直したいだけなのに、カーソルは目的の場所を通り過ぎて、前へ後ろへ行ったり来たり。あれはかなりのストレスだった。
それに比べて、新しいスマホは、矢印でカーソルを動かせる。
こればかりは本当にありがたい。
全部が使いにくいわけではないのだと、少しずつ新しい相棒の良いところも見えてきた。
そういえば、もう一つ、これは間違えていると言いたい。
着信音を設定しているとき、一覧の中に「青きユリ」という名前を見つけた。
「青きユリ? きれいな名前ね。どんな曲かしら」
試しに再生してみると、流れてきたのは、誰もが知っている超有名なクラシック曲だった。
なぜ、この曲の名前が「青きユリ」なのだろう。
とりあえず、この投稿をアップしたら、あれこれツッコミを入れながら着信音を決めようと思う。
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