表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/43

第三十七話 後悔

祝七万アクセス・一万二千ユニーク!!



















sideルー


「くそっ!くそっ!!」


王の間の固い床に俺は握り締めた拳を何度も叩きつけた。


「落ち着け!そんな事をしてもユニは帰ってこないんだぞ!」


レイが俺の腕を掴んで止める。

俺は自分の殴っていた床に散った自分の血を呆然と見つめていた。

周りは騒然として王達は何やら話しこんでいるようで、リヒター・フレッドは武器を収めながら声を掛け合っていた。

ゆっくりとレイが腕を放すと立ち上がった。


「奴はユニを攫って行ったんだ、傷を付けられる事はない筈だ。だが、絶対と言う事はないかもしれない。早くユニを助けに行かなければ・・・」


「ええ、恐らく先の話の城にいると思われます」


「宙に浮いているというのならば・・・何か進入経路を探さねばならんだろう」


リヒターとフレッドが話に参加してきた。


「その事ならば、我々に任せろ」


「父上・・・」


王達がこちらに近付きながら、真剣な眼差しで話し始めた。


「我がアクオルマに伝わる魔力を隠す術で、お前達の魔力を先ず隠す」


「メテオルドの技術開発部で最近作られた新しい魔法陣でお前達を直接あの城の中に送り込

む」


「ウィルマーズは最近確立した個人の魔力を感じ取る新しい魔法でユニちゃんの場所を知る術を与える。恐らくお前達の力だけでは、勝つ事は出来ないだろう。まずは彼女を助ける事を最優先事項とする」


「「「はっ!」」」


「ルードリヒ・・・分かったか?」


「・・・分かった」

















sideユニ


「ん・・・ここは?」


目が覚めると、真っ白の天蓋付きのベッドの上にいて吃驚して跳ね起きた。

周りを見渡すと壁や天井はまるで蜘蛛の巣の様な物に覆われていて繭の様になっている。

真っ白なベッドが異質で浮いて見える。


「目が覚めたんですね・・・姫」


「!?」


バッと声のした方を向いて身構えると黒い男が立っていた。

ベッドの上をズルズルと後退りながら周囲に目をサッと巡らせて退路を探す。


「無駄ですよ・・・逃げ道はないです」


声に反応して視線を戻すと目と鼻の先に男は立っていた。

手首を掴まれてそれ以上逃げる事が出来ない、目の前にいる男に身体を固くして考えを巡らせる。


「なんで・・・なんで貴方はこんな事をするの?」


「姫・・・記憶を取り戻したと聞いていましたが、まだ完全に取り戻したわけではないので

すね・・・」


そう言って額に手を当てて黒い光が漏れる。


「止めて・・・!」


「思い出してください・・・あの事を・・・」


「嫌!」


そのまま意識は再び闇に飲まれていった。




















side out




「準備はよいか?」


「「「はい」」」


「ルードリヒ・・・後は頼んだぞ・・・」


「・・・」


「王子・・・娘を・・・ユニをお願いします」


「・・・分かった」


城の外の広場に複雑な魔方陣が描かれている。

その中心に並んだ四人に王達が準備を進めていた。

ルーに王とマーズの言葉がかかる。


「いいか・・・お前達、まずは彼女を探せ。彼女なくして今回の作戦は成し得ないだろう・・・後は任せたぞ」


三人の王とマーズが陣の中から出て行って詠唱を始めたようだ。

三重の魔法陣の中の複雑な文字が赤・青・緑の光を放ちながら交じり合い、中心にいる四人を包む。

目が眩むほどの白い光が辺りを包みその後に残ったのは自分に何もする事が出来ない事を悔いる四人の男と、色を失った魔法陣だけだった。












――――――――――姫・・・結婚してください!


白亜の宮殿の中心の緑豊かな庭に二人は立っていた。

女性の目の前に跪いて、黒い騎士の礼服を着た男が求婚している。


「ごめんなさい・・・私はこの世界に平穏を取り戻すために結婚をする事は出来ないのです


「分かっています。姫がこの大国が支配すると言う世がどれほど醜悪で民にとって悪い世か

・・・しかし!」


「ごめんなさい・・・私が結婚すれば、私の考えを良く思っていない者が生まれた子を取り上げ国を存続させようとするでしょう。それではいけないのです!」


胸の前で手を握り締め説得する女性に黒服の男が立ち上げって迫る。


「私はこの世がどうなろうと、貴女と共にありたい!」


「放してください!!」


無理に抱きしめる男を引き離そうと女性は胸を押すが、女性の力では大の男に力で勝つ事は出来ない。


「姫・・・姫!!」


その時、物凄い力で姫から男を引き離す者がいた。


「くっ・・・!」


『姫に手を出すか・・・余程命がいらないと見える』


「リフルタール!」


「・・・精霊王リフルタール、人の世に干渉するのは何時から精霊界で許可されるようにな

ったのだ?」


『精霊界の秩序は私だ。私の行動は精霊界の総意だ!』


全身から淡い光を放つ男の姿をした精霊王リフルタールが女性の前に立って男から守っている。


「うううううう・・・・」


「――――・・・?どうしたの――――!?」


「うあぁぁぁぁぁ!!」


周囲から男に黒い塊が飛んできて男の中に入っていく。


『まさか・・・この男の不の心に歪みが同調している!』


「キャア!!」


強い衝撃波が強風を伴って女性を襲う。

精霊王が間に入って防御している。

風が止むとそこには、服だけでなく気配までが黒くなった男が立っていた。


「姫、共に行きましょう」


『姫!一度引きましょう!』


手を伸ばす男から姫を守るように抱き寄せて精霊王は瞬間的にその場から消えた。


「姫ええぇぇぇ!!」


暗雲に覆われた空に向かって男の声が無常に響いた。

















翼を背中から生やした女性が空に浮き、男と対峙している。

空は黒く暗雲に覆われ時折あちこちで雷が鳴る。


『貴方をこのまま野放しにする事は出来ません。しかし、貴方をこのような状態にしてしまったのは私です。貴方の事は嫌いではありませんでした。悠久の時を眠りながらすごしてください。私は精霊達とこの世界を見守ります』


「姫ええぇぇぇ!!」


手を前に突き出すと女性の周りには八人の精霊王が現れ、暗底海の海底に突き落とした。

海は割れそこにゆっくりと落ちていく男は悲しそうな顔をしていた。

やがて、海は元に戻り巨大な魔法陣によって封印された。

女性の光は世界を包み、傷ついた生物を癒した。

精霊王は各地に散り、神殿に宿ることによって世界の中心である封印を守護するようになった。

残ったのは女性と精霊王リフルタールだけであった。


『貴方はどうしますか、リフルタール?』


『精霊界は此度の事によって崩壊しました。しかし、やがて世界中に精霊が満ち交わる事で

世界は安定するでしょう。私の役目は終わった。そろそろ世界に混じるのもいいかもしれない』


『私と共に行きますか?この世界の未来を見るために』


『そうしましょう。私は貴方が再び世界に現れる少し前にこの世界に戻り、貴方を守りまし

ょう』


「ありがとう、行きましょう」


翼を無くした女性は精霊王と共に世界に溶け込むように光の粒子になり霧散した。















この年、ロアンダール暦十一年。

世界の総人口は約半分以下になる大災害が起き、大国ロルドが滅びた。

三国を作った男達は一人の女性を崇め、女性と共に消えた精霊王がいた事を隠した。

四人の人と、一人の精霊王の手で世界は安寧を取り戻したのだった。






















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ