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第三十六話 悲劇

















「――――――ニ・・・ユニ!」


「ん・・・」


目が覚めると、周りでみんなも目が覚めていた。


「大丈夫か?」


「うん」


「目が覚めたようですね、大丈夫ですか?」


「大丈夫・・・空が・・・」


「空?」


仰ぎ見た空は、赤黒く澱んでいて光の神殿に入る前の清く澄んだ青空は見る影もなくなっていた。

黒い雲が浮く中、紫色の毒々しい太陽が中空に浮いている。


「・・・っ、これは!?」


「神殿に入っている間に、何かあったのは間違いなさそうだな」


「こんな空と、太陽の色は自然では絶対にありえない!」


「とりあえず、一度ウィルマーズ国に戻りましょう」


船に急いで乗り込んで、ウィンズムに向けて船を飛ばした。




















「父上!!」


「おお、お前達無事だったか!」


王の間に入ると、こちらに背を向ける様にして二人立っており、こちらに笑顔で声を掛けてくれた陛下はその向こうにいた。


「「父上(親父)!!」」


「おー、フレッド大丈夫か?」


「無事で何よりだ」


一国に国王三人が集まるというのは前代未聞の事態である。


「陛下、一体何があったのですか?」


「・・・アクオルマ・メテオルド両国が落ちた」


「な!?」


「今日の昼ごろ、突然両国に先日の様な魔物が多数襲来した。両国は兵を半数やられて、壊滅状態に陥ったため緊急用に張っていた移動用の魔法陣で国民全員をウィルマーズ国内の各領内に振り分けた。今のところウィルマーズ国内では被害は出ていない」


「そんな・・・」


「それに、暗底海の中心上空に正体不明の黒い城が現れた。恐らく魔物の根城だろう」


「その通りです」


『!?』


突然、声が聞こえたかと思うと国王三人とユニ達の間に黒い靄がかかり全身真っ黒な男が出てきた。

抜ける様な白い肌は病的なまでに白い。


「「お前は!」」


ルーとレイが前に出てそれぞれ、武器を抜いた。


「はて、どこかでお会いしましたか?」


「っ、今すぐに思い出させてやる!」


「ルー!」


切りかかったルーの剣を片手で掴むと手を顎に当てて何やら考えているようだ。


「ふむ、なかなか興味深い武器ですね。しかし・・・」


人差し指を腹にツンと突くと、ルーは壁にめり込んだ。


「使い手が悪いです」


「貴様!・・・来たれ、騒乱の嵐。吹き上がれ、青き水。巻き上がりし光が無常に包む!」


風水光の三属の合わさった術を使ったレイの攻撃は、まるで飲み込むかのように闇に取り込まれ霧散した。


「火力不足ですね」


掌を翳したと思うと、レイも同じ様に壁にめり込んでいた。

呆然とするユニにゆっくりと歩み寄る男は一度見たら忘れられない、水の神殿であったあの男。

ゆっくりと近付く男に抜き身の剣で切りかかったフレッドとリヒターも吹き飛ばされる。


「・・・やれやれ、姫の周りには大した者がいないのですね」


ハッとして腰のナイフを引き抜き首の頚動脈目掛けて投げたが、闇の盾に弾かれる。


「姫・・・さぁ・・・迎えに参りました・・・参りましょう」


「何を言っているの・・・?私はみんなを傷付けるような人について行ったりしない!」


二本目のナイフを引き抜いて投げようとした所で手首を掴まれた。

数十歩先にいた男はすぐ目の前に立ち手首を掴み上げる。

その痛みにナイフを落とすと男は耳元で囁くように言葉を発した。


「姫・・・暫し眠っていてください・・・次に目を開ける頃には私の城に着いている事でしょう・・・」


そう言った男の翳した手を見たとき、ユニの意識は刈り取られた。


「では、姫は貰って行きます」


影に飲み込まれて、翳む様に消えた男と男に抱き上げられたユニがいた所を暫く三人の王が注視していた。















「姫・・・ついに手に入れましたよ・・・貴女を手に入れるのを、どれほど待ち望んだ事か・・・」


真っ白の天蓋付きの大きなベッドに腰掛け、ユニの頬を撫でる男の顔には安堵とも取れる様な微笑が張り付いていた。






















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