第三十四話 異なる闇
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光が止んだそこには先程の澱んだ闇ではなく、純粋な黒。
深い深淵が口を開いた様な闇、それは今まで戦った中にいた闇の存在にはいなかった。
「これは・・・」
鬼の様な形相には先程の刺す様な鋭さはなく、どこか安心する様に包み込む暖かみがあった。
『我は・・・彼奴の術中に嵌ってしまっていた様だ。我を彼奴の闇から解放した事に礼を言おう』
「え・・・いや・・・」
ルーが言い澱むと闇の王は豪快に笑った。
『はっはっはっは・・・操られていたとはいえ、我を倒す実力を持ったお前達だ。決して弱
者ではない筈だ・・・しかし、まだそれでも足りぬ』
「足りない?何が足りないんです?」
『聡明なる人の子よ、主は・・・いや、これは我から言う事ではないな。姫の記憶が完全に覚醒した時に姫から直接聞くとよい・・・お前の存在が何たるかを』
「・・・質問に答えてください」
『知識は勿論、力も結束力も足りぬ。しかし、結束力は辛うじて及第点と言った所か』
「「「「「・・・」」」」」
半分笑いながら言っていた彼は、突然真剣な空気を帯びた。
『元来、闇は生き物全て・・・いや、世界に安寧と恐怖等しく与える物であった。しかし、
そこに異端の人と言う存在が生まれた。他が持たぬ知恵を持ち、他が持たぬ感情・・・嫉妬、憎悪そう言った邪な力が彼奴を生んだ・・・彼奴は、その力を糧として成長し本来存在しない歪みを作り出した。それこそがお前達の相手しようとしている存在だ・・・我が名はゾーン、闇を統べる精霊の王なり。行け人の子よ、闇は決して悪ではないが、闇を照らす光があって初めて生まれる。人の文明の栄えに反して歪みを増やしいつしか引き返す事の出来ない所まで来てしまった。人の手によって作られた歪みは人の手で正さねばならん』
「・・・わかった」
ルーが真剣な顔で言う。
「ルー」
「うん、俺達は・・・負けない」
『お前の決意・・・しかと受け止めた。持って行け』
そう言いながら片手を空に翳すと、手から闇が生まれルーの剣に吸い込まれていった。
純白の鞘に漆黒が混じり、見事な細工が浮かび上がる。
模様には見えない、文字の様な何かが刻まれると光と闇が混じった様に見えた。
黙って抜いた刀身には絶えず光と闇が鬩ぎ合い、留まる所を知らず欠片の様に空に舞い上がり消えていく。
「・・・ありがとう」
『礼には及ばん、その剣の闇は我の闇。使い方を誤って歪んだ闇を生まない様に気をつける事だ』
そう言って闇に溶けた精霊王を尻目に俺達は出口に向かった。
「もう直ぐだ・・・もう直ぐ、この手に・・・」
闇が迫るのに気づいた者は・・・一人もいなかった。