第三十二話 絶海の孤島
―――――闇の精霊王がいる闇の神殿は、三国がある大陸の間、暗底海・・・この世で一番大きな海洋の中心から東に少しずれた所にある孤島にあります。
「って事だったけど・・・この小島に神殿なんかあるのかな?」
そう、精霊王たちの言った事を信じて向かったのは暗底海に浮かぶ小さな孤島。
地図にも載らない、小さな小さな島。
歩いて三分もしない内に島を横断できる。
島の中心には小さな林があってその林の中に小さな墓標がポツンと立っていた。
「何だこのボロボロの墓は?」
「何て書いてるんだ?」
「私には読めませんねぇ」
「フレッドには読めるんじゃない?」
一同が話すとフレッドは墓の前にしゃがみ込み読み始めた。
「これは相当古い墓だな・・・何々・・・我々四人、及び精霊王の愛し慕い求めた女性ユハニ・モンテール・ラ・ロルド姫ここに眠る。・・・そして、姫の最後の願いに従い三国の世を作り我々の子々孫々に渡るまで未来永劫姫に忠誠を誓うとここに宣言する。・・・ロアンダール暦十一年、大国ロルドもこの時をもって事実上の崩壊を宣言する」
「これは・・・今までの歴史を覆す歴史的にも大きな遺産だ!」
「どういう意味だ?」
「分からないのか?これは、ロルドの崩壊と三国の出来た理由が書かれている」
「今まで知りえなかった知識ですね」
フレッドとリヒターは感心して頷き合っている。
「で?どうやって入るの?」
「・・・さぁ?」
呆れてユニが墓標に触れると、墓標は意思を持っているように横に動きそこにはポッカリと階段に続く穴が開いていた。
「・・・行きましょうか?」
「・・・はぁ・・・うん」
闇に向かって、一歩踏み込んだ。
コツコツコツ――――――――――
あれから階段を延々と下り続けている私達は、暗く冷たい地の底へと一歩一歩足を進めていた。
「なぁ、この階段どこまで続いているんだ?」
誰に言ったのか分からないけど、ルーが言った。
「「「「・・・」」」」
誰にも分からないことを聞いてきたので誰一人として答えようとはしない。
「って、何で誰も答えないんだよっ!」
「五月蠅いですね・・・少し黙っている事は出来ないんですか?」
「・・・っち」
「やれやれ・・・一国の王子殿下がそのような態度を取るとは・・・国の行く末が決まって
いるようなものですね」
二人の会話を他所に階段を下りていると開けた場所に出てきた。
そこは、天井は全く見えないほど高く、今まで下りてきた階段ほどの高さがあると思われる。
広さも大きく、奥には巨大な像が見えた。
「あの像は?」
「暗くてよく見えないな」
「任せろ」
ルーが前に進み出て、剣を鞘から引き抜いた。
「光の精霊達よ・・・はぁ!」
ルーは光の精霊を使って、部屋を明るく照らし出した。
その像は、どうやって作ったのか分からないが岩で出来ているのに繋ぎ合わせた様子はなく、それでも削った様には見えない美しい曲線を描いている。
長い髪は、膝辺りまであって全身を包み込むヴェールの様にフワッと広がり、すらっとした立ち姿。
その表情は、柔らかく慈愛に満ちている。
「この像・・・どこかで見たことがあるような・・・」
「ああ、どこか近くで見た気がするな・・・」
「これは・・・ユニか?」
「ええ、お嬢様そっくりですね」
「えっ!?私こんなに綺麗な顔してないよ!」
「「「「・・・」」」」
今度は、男性全員が黙ってしまった。
ユニは自分の容姿を全く理解しておらず、万人が認める美しい姿をしているのに鈍感で天然なために理解できないので自分の事を低く見がちである。
「まあ、考えていても始まらない、奥に進もう」