第二十六話 豪炎の龍
長い間、お待たせしました!
炎の神殿の続きです。
二人を見送った後、ユニは二人の居た所を見つめていた。
「ユニ・・・そろそろ、行こうぜ」
「・・・っぐす・・・うん!」
ルーが声を掛けると、ユニは袖でぐいっと涙を拭うと元気に返事をした。
その顔には、どこか決意のような物が表れていた。
「で?どこに進む道があるんだ?」
フレッドが言うと、レイが呟くように言った。
「双狼の悲しみを受け入れよ、さすれば道なき道を灼熱の中に見出すであろう・・・だっけ
?」
「えぇ、しかしこの場合灼熱とはこの台座の向こうのマグマの事でしょうか?」
リヒターの言葉にフレッドが言った。
「おい、このマグマの下薄っすらだが道みたいなものが見えないか?」
覗き込んでみると、確かに道の上をマグマが流れているようになっている。
「だが、このバリアはマグマは防げないんだろ?」
レイが言うと、ルーがスタスタと台座の前に歩いて行って台座を飛び越えた。
「「「「!?」」」」
全員バタバタと走って行ってマグマを覗き込むと、胸辺りまで マグマに浸かったルーが嬉しそうにこちらを向いて言った。
「大丈夫そうだぞ?」
「「「「ハァ・・・」」」」
こうして一行は神殿の更なる奥へ踏み込んだ。
暫らく歩くと、途轍もなく大きな空間に出た。
「自然に地震や火山活動によって出来た空間のようですね」
リヒターが冷静に言うが、その空間の大きさは半端ではなく、ダルダイル湖程もあった。
中心には、丁度ダルダイル湖にあった小島ぐらいの突き出た柱があり、そこまでは縄の吊り橋のような物が掛かっていた。
中心まで歩いてきた一同は周りを見渡す。
「ここ、これ以上先はないよね?」
ユニが確認するように言ったのに他のメンバーが頷く。
「精霊は何処に・・・・キャッ!!」
ゴゴゴゴ――――
地震のように地が揺れ、立っている事が出来ない。
「一体何なんだ!?」
レイが言うと、リヒターが橋まで行ってマグマの中を見渡す。
「何かがマグマの中を泳いでいますね」
丁度その時、黒ずんだ禍々しいマグマの中から飛び出すように真っ赤な鱗の龍が出てきた。
「コイツが地震の正体か!」
「行くよ皆!!」
「「「「応!!」」」」
全員が武器を構えるのを待っていたように、龍は空中を旋回して口からマグマを吐いた。
「うわっ!?」
ルーが飛び退いて、居た所の地面を溶かしていた。
「マグマに気を付けろ!」
フレッドが叫ぶと大きく裕に十メートル程飛び上がって、龍に一閃した。
ぎゃおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
龍はマグマの中に飛び込んだ。
「何処から来るか分かりません。注意してください!」
リヒターの言葉に周りを警戒する。
「ルー!危ない!!」
ルーの後ろに突然マグマの中から飛び出して龍が現れ、口から火球を放った。
「っく!?」
剣を突き出して火球を凌ごうとするルー。
その時、後ろからレイが駆けながら詠唱をする。
「猛き水の流れよ、堅牢なる障壁を!!」
ルーの前に立った時、水の盾が展開し火球を押し留めた。
「今だ!」
「応!!」
空中に飛び上がったルーは龍の顔面に一閃した。
「よし!!」
傾きかけた龍の体が体勢の崩れた状態から火球を放つ。
「ヤバイ!!」
空中のルーにはなす術が無かった。
「偉大なる水の女神よ悪しき者を塵の如く押し流せ・・・『アクア』!!」
ルーの前に水の精霊王が現れ、火球ごと龍を押し流した。
着地してから振り向くと、背中に輝く翼をはやしたユニが空に浮いていた。
「ユニ・・・?」
ルーが呼ぶが、返事はしない。僅かに視線を向けるだけだ。
その時、後ろから龍がユニに向かって突進してきた。
ユニはゆっくりと振り向き、手を横に一閃すると龍の体は一直線に分断された。
「・・・・・・」
そのまま、マグマの中に落ちていく龍をユニは無感情な目で見、四人は信じられないという驚愕に満ちた目線でユニを見つめていた。
次回、炎の神殿編完結・・・予定。