第二十三話 炎の山
炎の神殿まで
「それで、火山内部に繋がる入り口は何処にあるの?」
ユニがフレッドに尋ねた。
―――ここは、ベルフェルム火山の麓。
ベルフェルム火山はこの世界でも有数の巨大な山。
因みにこの火山は未だに活火山で、この世界が何億年も昔に精霊の手によって作られた創世記当初から延々と噴火し続けており、噴煙が止んだ事はここ数千年は無い。
「あぁ、それならもう少し行った所で説明したほうがいいだろ」
「?」
フレッドの説明に頭上に?を浮かべるユニを見てフレッドは苦笑する。
「さぁ!とりあえず行こうかい?」
「「はぁはぁ」」
ルーとレイは仲良く膝に手をついて荒い息を整えようとしている。
その横で、平然とした顔で涼しげに立っているリヒターと少し息を切らしているものの軽くジョギングした程度の息の上がり様である。
「おいおい・・・男二人が嬢ちゃんより疲れてるってどう言う事だ?」
「「!?・・・つ、疲れてなんかねぇ!!」」
「ふぅ・・・で?フレッド!何処に入り口あるの?」
男達の会話を見事にスルーしてマイペースに会話を進めるユニにフレッドが気付いたように答えた。
「あ、あぁ・・・あれだ」
そう言いながらフレッドはバテバテの二人がもたれて休んでいる岩壁の上を指差した。
その指の先にはトンネルのように繰り抜かれた穴が岩壁の途中にポッカリと口を開けていた。
しかし、それは問題ではなくそれ以上にそこまでの高さが目測でも200m以上はある事が分かる。
「こ、これを登れってのか!?」
ルーが半狂乱になって裏返った声で叫ぶとフレッドが腕を組んで頷きながら、
「先に俺が登って登る為の穴を開けてやる!!」
そう、岩壁は磨き上げられたようにツルツルしていてとてもではないが登れそうには無かった。
だが、フレッドは言い終わるが早いか岩壁を登り始めた。
「おぉ、お前等!あぶねぇからちょっと離れときな!!」
フレッドはズガンズガンと大きな音をさせながら登っていく。
「う・・・嘘だ・・・アイツ、人間じゃねぇよ」
レイがうわ言の様に言うのに反応する者はおらず、皆一様に呆然と上を見上げている。
それもそのはず、フレッドは親指以外の指を岩壁に突き刺して鉤のようにし、爪先も同じように岩壁に突き刺してスイスイと登って行く。
「おーい!!」
「「「「・・・」」」」
「皆、先に登ってよ」
ユニが言うと慌てたようにルーが、
「そんな事してもし、何かあったら・・・」
「もう!分からないの!?」
ユニが珍しく大きな声を出したのに驚いて眼を丸くしてルーはユニを見つめる。
((見えるからって直球で女の子に言われないと分からないのか(でしょうか)?))
「おい、何でもいいから登れ」
「何でも前なんかに命令されなきゃ・・・」
「ならいい、俺が先に登る」
そう言いながらスイスイとフレッドの作った穴を使って岩壁を登って行く。
「では、次は私が」
そう言って、リヒターも同じように登って行ってしまった。
後には気まずい状態の二人が残された。
「ルー・・・先行ってよ」
「危ないから、先行けって」
『姫さま、何なら僕が上まで運ぼうか?」
(ルーに見えないように私を上まで隠せる?)
『もちろん』
「じゃ、お願い」
「ん?何だって?」
風の精霊と話が纏まったユニは上まで運んでもらう事になった。
「ばーか」
若干子供っぽい口調でユニが言うと、背中から翼が生え唖然としている間にユニの体は竜巻に覆われ上まで飛んでいった。
「は!?俺も追わねーと」
急いで岩壁を登るルーだった。
「これ以上は暑さで無理だ」
フレッドが少し奥まった所まで行くと振り返って言った。
「大丈夫」
ユニが落ち着いて言うと、手をかざす。そして、詠唱を始めた。
「大いなる水の女神我の下へ、来たれ『アクア』」
言った瞬間に目の前に水の精霊王が現れた。
『姫、いかがなされました?』
「うん、皆の体の周りに熱を防ぐバリアを張って欲しいの」
『分かりました』
――――パァァァ
青い光が体を包み込み直ぐに同化するように消えた。
『姫、まだ完全に力を取り戻していない私には熱を防ぐ物しか作れません。強力な炎やマグ
マにはご注意下さい』
「うん、分かった!ありがとう」
微笑むと水の精霊王は消えた。
目の前で幻想的な光景を見たのに、一同はユニを凝視していた。
「な!?なに?」
ユニが視線に気がついて尋ねるが一気に目線を逸らし、フレッドが代表して言った。
「何でもねぇよ!」
大きな声で言いながら頭をグシャグシャと撫でるフレッドに照れたように笑うユニからルーとレイは目を離すことが出来なかった。
「さ!行こう?」
「あぁ!」
こうして、五人は灼熱地獄に身を投じて行った。
最近若干リヒターが空気に・・・
次回、炎の神殿!