第十五話 聖域ダルダイル湖とナンパ男
ガンガン進むぞー!!
―――――北の出口で息子を待たせておこう。案内も息子に任せるからくれぐれも用心してくれ。
「って、事だったけど――――」
「いないよね?」
「いない――――ですね」
只今<アクオルマ>王都ラグール北門付近にて王子を待っている。
待ち合わせの時間から三十分程過ぎていた。
「放っといて、行くか?」
「それもいいかも知れませんね?」
「それは流石にダメだよ。二人とも・・・」
無茶を言う二人をたしなめるユニ。周りの人々は昨日と同じように三人に見入っており、殆ど話の内容は入ってこない常態である。
「やぁやぁ、君達かい?<ウィルマーズ>の使者で今回の旅の同行人は・・・」
振り返ると其処には如何にもな格好をした男。
水色の上等な格好をしてその上には深い青色のマントを羽織っている。
(ルーと同じぐらいの歳かな?)
「やぁやぁ・・・じゃねぇだろうが!」
遅れてきた王子の発言に堪忍袋の緒が切れたルーは襟を掴んで引き上げた。
「く・・・苦しい・・・」
顔が真っ青になっている王子を見てリヒターはニコニコと笑っている。
それを見て慌てたユニは二人の間に割って入るとルーに説教をした。
「ちょ・・・ちょっと!ルー落ち着いて!いくら遅れて来て謝らなかったのが気に食わなかったからって、いきなり暴力はよくないよ!?・・・・だかr、きゃっ!!」
怒られて下を向いてシュンとなっていたルーがユニを見ると、そこには後ろからユニに抱きつく王子。
「あぁ・・・いい抱き心地だ・・・君、僕の妻にならない?」
突然の物言いに固まったユニの肩口に顔を埋め匂いを嗅ぐ王子――――
「ほう・・・舐めた事を・・・」
ルーの後ろには見たことも無い黒いオーラ(リヒターの後ろにもある。)しかし、二人とも物凄くいい笑顔である。だが、ユニは気付いていた――――――二人とも目が笑って無い事に。
『姫に舐めたマネを・・・』
『ふふふ・・・タダでは済まさないわ』
『いっそ殺るか?』
精霊たちも話をしていて、炎の精霊の一言に目で会話をつけると、ユニと王子の間に風が吹き二人が離れると王子の上から炎が降り注ぐ。
「うわっ!?何だこれは?・・・アチッ、熱い!?」
炎はマントに燃え移りメラメラと燃える。すかさずマントを脱ぎ捨て踏み消そうとするが、その上から今度は滝のように水が打ち付ける。ボロボロになって地面に座り込んだ王子は、呟くように。
「な、なんだったんだ・・・?今のは・・・」
「ユニは神子だからな・・・精霊の怒りにでも触れたんだろ・・・」
当然だと言わんばかりのルーに驚き声を上げる。
「ルー!?」
「ん?あぁ・・・どうせ神殿に行ったら魔物と戦うのに精霊魔法使うだろ?もしもの時は精霊王にも手を借りなきゃならないかもしれないんだぞ?今のうちに話しておいたほうがいいだろ?」
あまり納得してない様子のユニだった。
「改めて、俺はレイクリス・マールデル・アクオルマ。レイって呼んでくれ!姫?」
ユニのほうだけを見て挨拶する王子、もといレイにイライラするルー。
「私はユニこっちはルーで、こっちはリヒターよろしく?」
小首をかしげるユニから目を背けながら赤くなるレイであった・・・
「で?このデカイ湖の何処に神殿があるんだ?」
王都から少ししか離れていない所―――ダルダイル湖
ダルダイル湖は周りが壁のように切り立った山に囲まれており、入り口として切り開かれた所以外からは入る事は出来ない。そして、その入り口も王立軍が守っている為基本的には入る事は出来ない。
そのダルダイル湖の水際で手を浸けて目を閉じるユニを目の端に入れながら尋ねた。
「湖底に沈んでいるんだ」
「は?」
何を馬鹿げた事をと言わんばかりに言うルー。
「湖の中心に小島があるだろ?あの小島には全く解読されていない謎の古代文字の書かれたレリーフがある。」
「じゃあ、先ずはその小島に行かないとね?」
そう言ったユニについて、一同は小島に向かった。
湖面は陽光を反射しきらきらと光り目を細めるユニに見惚れる二人がいた。
神殿・・・行けませんでした。
申し訳御座いません。次回こそは必ず・・・