第十話 風の神殿と囚われの精霊王
微シリアス?気味かなぁ・・・
風の精霊との話が終わったユニは二人の下に駆けて来た。
「ルー!リヒター!神殿の場所分かったよ!」
「どうしたんですか?いきなり・・・」
リヒターが呆れながら言うとそれに少しの共感を持ったルーが、
「どうして分かるんだ?ユニ?」
精霊の事を言わないように言われているユニはどう言えばいいか少し悩んだが、
「とにかく分かるの!着いて来て!」
そう言って二人の出発の準備が出来ると先導して歩き出した。
『姫様。こっちだよ。』
途中幾数回魔物に遭遇したが、ユニの下級魔法により一掃された。
ユニ達は気付けば森の最深部と言ってもいいような薄暗い所に来ていた。
頭上の大木の葉の間から差し込む木漏れ日がなんとも言えない幻想的な空間を作り出していた。
「ほぇ~!綺麗な所だねぇ・・・」
「あぁ・・・」
二人は感動のあまりその後しばらくは喋ることなくその光景に見入っていた。
なんだかんだでそっくりな二人であった。
「感動しているのはいいですが、そろそろ奥に進みませんか?」
少し呆れたような声色でリヒターが提案すると、
「そうだね、行こう?」
「あぁ!」
奥に進みだした時に、案内をしていた精霊が、
『もう直ぐだよ?頑張って!姫様・・・』
先程の所から少しだけ奥に入っただけの所だというのに辺りの空気は一変し、真っ暗になっていた。
その奥にぼんやりと青白く浮ぶ者に近づくとそれが建物だと言う事に気がついた。
「こ、これが・・・」
「シルフの森で発見された神殿・・・」
二人がまたも見入っているとリヒターがこんな事を言い出した。
「どうやらかなり古い物のようですが、人工の建造物のようですね。」
「「!?」」
驚く二人に気付かぬフリをしてリヒターは続ける。
「恐らく世界がまだ古代帝国である『ロルド』によって一つに治められていた頃位の物でし
ょう」
「現代よりも遥かに進んだ文明を持っていたが、何故か数日の内に滅んだと言う伝説が残る
あれか?」
ルーが知っている情報を確かめる様に呟いた。
「えぇ、とにかく入ってみましょう。」
「うん!」
そうして一同は神殿の中に足を踏み入れた。
大分奥まった所まで進むと神殿の中庭があったので少し休憩する事になった。
ユニは水を少し口に含み、ルーはバシャバシャと顔を洗っており、リヒターは水筒に水を汲んでいた。
基本雑用はリヒター、よっぽど嫌な時はルーに押し付けられる。
その時、ユニの耳に掠れた小さな声が届いた。
『助けて・・・』
「!?」
周りを見渡すが勿論視界に入るのは、ルー・リヒターそして案内役の風の精霊のみである。
何故か風の精霊は下を向いて悔しそうに下唇を噛んでいた。するとまた・・・
『助けて・・・』
今にも消え入りそうな声を聞いた途端に、ユニは無意識にフラフラと壁のほうに歩いていく。
「ユニ?どうしたんだ?」
少しいつものハイテンション気味なユニと様子が違うと思ったのか、ルーが声を掛けたが・
・・
「行かなきゃ・・・呼んでる・・・」
「呼んでる?誰が?おい!ユニ!」
ユニはフラフラと壁に向かっていきぶつかると思った瞬間まるで壁を通り抜けるように消え
た。
「「!?」」
驚くルーとリヒターだったが、直ぐに正気に戻ったリヒターが、
「追いましょう。」
「あぁ!」
二人は壁に向かって駆けて行った。
壁を通り抜けるとそこには階段があった。
階段の所々にはローソクが付いているが、途切れている所もあり暗い為ルーが光の下級呪文で照らしながら進む。
(光、闇は火や水などの属性より扱いが難しく適正があり使える者は少ない。)
階段を降り切った所にはかなり大きな部屋があり入って直ぐの所に、ユニが立っていた。
「あれ?ここは・・・」
ハッとした様に声を出すユニは直ぐに驚愕に目を見開く。
目の前には少し小さい鳥籠の様な檻があり、その中には鎖でぐるぐる巻きにされた半透明の女性がいた。
『助けて・・・』
直接頭の中に響く声にルーはこれが精霊と言うものなのかと思った。
ユニが檻に手を触れると檻の錠が重い音を立てて落ちた。続いて鎖に触れると鎖は辺りに飛び散り、部屋の中を緑色の澄んだ光が走ったかと思うと、壁や床の色が濃い黄緑色例えるなら春の新芽のような色に染まり真っ暗だった室内が眩いまでに明るくなった。
その部屋の中心に緑色のローブのような服を纏い明るい緑色をした髪の半透明の女性が浮いていた。
そっと目を開くとエメラルドのような深緑を思わせる瞳が覗き薄く、しかしこの世のものとは思えないほど美しく微笑んだ。
『ありがとう。我ら精霊を束ねる姫・・・会いたかった。」
「え?」
ユニはきょとんとしている。
『私の名前は『フーガ』風を司る精霊の王の一人。』
「精霊の・・・王・・・。」
『そうです。姫。貴女が解き放ってくれるのを私は幾数万年もの月日を檻の中で待ちました。』
それに不思議そうにユニが尋ねる。
「どうして檻の中に居たの?」
『それは、数万年前の事。当時闇を統べる者を封じる為、我ら精霊王は各地のエネルギーの
源たる地域に人間が建てた神殿に籠もりました。しかし、千年前闇を統べる者は封から逃れ力を取り戻しつつあります。その証拠に世界中に魔物が溢れているでしょう?』
「確かに、魔物はここ最近急増しています。」
同意するようにリヒターが言う。
『再び封じる事は最早叶いません。以前の封印で耐性が付いた彼の者には封印術は効かないでしょう。
お願いです。姫。彼の者を打ち倒す為世界各地に散った我ら精霊王を解き放って下さいませんか?』
「いいよ!」
「おい!ユニ!そんな簡単に受けていいのかよ!?」
それに不思議そうにユニが言う。
「だって、そうしないと世界の危機かもしれないんでしょ?」
『はい・・・それに、封印は姫にしか解く事は出来ません。』
「そう言う事らしいから、手伝ってね?ルー!」
「あ、あぁ・・・」
『姫、困ったことがあれば私の名前をお呼び下さい。お力になれると思うので・・・』
「うん分かった!フーガ!」
そう言うと嬉しそうに笑った風の精霊王は目の前から消えた。
「では、一度城へ戻り陛下にこの事をお知らせした方がいいですね。」
「あぁ・・・しかし、何故精霊が俺達の目にも見えたんだ?普通は神子でもないものには声
を聞くことも難しいのに・・・」
それにはユニが答えた。
「精霊王は人に姿を見せる事が出来るんだって!」
「何で、そんな事ユニが知ってんだ?」
「う・・・」
リヒターの方を向いてルーの質問にどう答えればいいのか斯う。
「こうなった場合致し方ありません。言うしか無いでしょう。」
「何をだよ?」
訝しげに問うルーにユニが答える。
「私、実は精霊が見えるの・・・」
「え!?ユニって神子だったのか!?」
「うん。」
「そうかぁ・・・だからさっき姫なんて呼ばれてたんだな・・・」
こうして真実を告げてもそのままの関係を続けられる事に喜んだユニは
「ルー!だーい好き!」そう言いながらユニはルーに抱きつき、抱きつかれたルーは照れて
顔を真っ赤にするのだった。
そして、ユニは旅の意味を始めて知った。
ZG「ヒューヒュー熱いねぇ!」
ルー「うるせぇ!!」
ボコボコッ
ZG「う・・・うぅ・・・」
リヒター「やれやれ・・・まぁ、お熱い事です。」
ルー「くっ・・・」
ZG「ルーはリヒターとユニの笑顔には逆らえないんだね!」
ボコッ
ZG「・・・うぅ・・・」
ユニ「もう・・・」