最強の魔術師レイト
『ククク……よくぞ我を打ち倒した、勇者達よ……』
ボロボロと朽ちていく魔王が満足げに、勇者パーティー3人に告げる。
「私達はついに魔王を……!」
「お宝……!?」
「今いいとこだろ。静かにしてろ」
「あだっ?!」
『ククク……愉快なもの達よ。宝物は好きにするといい……』
だが、と魔王は続ける。
『我とて最強の一角。みすみすと死ぬわけにはいかぬのだよ……!』
魔王が勇者……もとい俺の幼馴染みであるミラに魔法を撃つ。魔術師の俺は咄嗟に体が動き、ミラを庇っていた。腕が消し飛び、血が滴る。だがしかし。
「重力系かぁ……食らい損だな。ルナー」
「はいは~い。【治癒】」
腕が生える。そして
「何でいっつもそんなことしちゃうかなぁ……!」
(……え?我、もう死ぬんだけど……)
ミラに怒られる。それを見ていた魔王がもう一発打ち込んでくる。
スパァァッァン!
『……?』
さぞ驚いただろう。なんせ、魔術師の俺がノールックの素手で無造作に弾いたのだから。今では三人の勇者パーティーも少し前まで男の重騎士がいたがあろうことかこの女二人を襲う気だったらしい。たまたま俺が居合わせ、物理的に心身をボコボコにした。(身体強化を使用)
まあ普通は勝てないだろうが、俺は幸いにも格闘のいろはがあり、何より俺が男だった点もある。あれは普通に蹴られるより押し潰す事を意識した方がいい。ナニとは言わないが。それを小一時間ほど続け、降参してきたので冷やすための氷を用意してやった。これは善意である。たまたま座標指定を失敗し、物理法則に乗っ取って天空から亜音速で自由落下したとしても。
「もういいや……ほら、さっさと死んで?帰りたいし」
『……えぇ』
魔王の最後の言葉だった。
「勇者ちべたーい」
「私を食べっ?!」
「クールって言いたいんだよムッツリ勇者」
「そそ、えっちいねぇ……離れるかぁ……」
「ちょっと?!あんたにだけは言われたくないわルナ!」
Xや6と言えば笑う勇者ミラ。強いムッツリスケベ。
「そうだぞ。お前聖女で聖職者なのにヤニ酒ギャンブル好きな性欲バカだろ」
「ムッツリスケベよかマシじゃーん。私はオープンスケベだしぃ?」
色々ダメな破戒聖女ルナ。まあ聖職者が生殖者にならなければ文句はない。
僧侶だけに。
そして突っ込みの俺、レイト。この三人で織り成す物語である。
「ふと思ったんだけどぉ……」
「ルナ?なにかあったのか?」
魔王を倒し、お宝を根こそぎ奪って帰っていた途中、ルナがそんなことを言い出した
「これさぁ……私達ってもう用済み?」
「確かに、魔王を倒すために編成されたパーティーだしね」
「……魔王と相討ちってことにすれば報奨も出さずに済むからな」
ぞろぞろと物陰から暗殺者らしき人間が出てくる。
「んじゃぁ、任せるねぇ」
「そうね。お願い」
「はいはい。折角だし国取りでもするか?」
「いいじゃん、楽しそう!」
「私もするぅ……」
暗殺者のナイフが俺の首を捉える、が。
パキッ
「……!?」
「あちゃ……ナイフ折っちまった」
「流石、か。お前達、対竜形た」
「うるさいな……」
首根っこを掴んで地面に叩きつけ、魔法を展開する。
「さて、暗殺者殿。何回耐えるかな?」
「ま、待っ」
「【雷撃】」
……一撃、か。弱いな。
「全部やっていいか?」
「「任せる」」
「はいよ。【絶対零度】」
「よし、いこっかぁ……」
「そうね」
「あ、魔力反応あるぞ。……なんか空から騎士が向かってくる。大量に」
「魔王退治終わってすぐなのに……」
「ごほーび欲しいなぁ」
んなこと言われても。
「町ついたらなんかおごってやるよ。さっさと働け」
「ケチ」
「エッチ」
「甲斐性無しで悪いな。生憎と複数でする趣味はないあとお前は聖女だろ……」
「むぅ」
むぅ、じゃない。
「半分は受け持つ。あと頼んだぞ」
「自信ありげ?」
「ま、前衛魔術師だからな。【堕天撃】」
「落としてくれると助かるよぉ。【繚乱魔嵐】」
「私もいちゃつきたぁぁぁぁい!【断崖の秘剣】!」
分断成功。騎士様達も哀れだなぁ。
「覚悟ぉぉぉ!」
「隙だらけ」
「かはっ……!」
柔術習っててよかった。男を投げ飛ばした隙をついて攻撃してくる騎士達を蹴りあげ、空中からかかとおとしをお見舞いする。
「ほんと、これだから忠犬は嫌いなんだよな……」
魔術師は懐に入れば殺せると教育され、統率された動き。全く楽しくない。
「「「「【固定】!」」」」
「!」
動けなっ……
「【業火渦】!」
「……やった、か?」
「……やったぞ。勇者の一角を討ったぞ!」
「報奨は山分けだからな?」
「みんな分かって……」
「【炎竜】」
「「「「?!」」」」
ドサッと音を立てて焦げた人間が落ちる。
「……ったく、よく考えるもんだな。範囲外からの地面がないと成立しない魔法で攻撃。よく考えられてる。だが……相性が悪かったな」
「な、なにを……!」
「形象術式。俺得意なんだよ」
体に帯電を始める。植物達が動き出す。燻る火の粉が燃え上がる。大地が鼓動する。空気が冷やされる。
「【龍征群】」
五つの龍が、全てを蹂躙した。




