商業都市ってすごい。
「地図で見た感じだと…このまままっすぐ進めば次の街に着きそうだな」
「クルルル…」
商業都市ファントム。この人の国で王都に次いで大きな都市らしい。そもそも、ここはどこの国だろうか。
「…聖教国ですよ」
「あ、そうなのか」
「…なんで俺があなたの子守りをしないとダメなんですかねぇ?」
「方向音痴だからな!」
「自覚してるなら帰ってきて欲しいです。本当に家出に向かない人ですよ…」
勝手に思考盗聴しているのは置いておこう。途中、道に迷って道を聞いたまま監視をつなげていたらしいサモンが呆れ気味に答えてくれた。
「旅は道連れ世は情けって言葉が異世界にはあるみたいだし、そういう事で…」
「この世界では敵は道連れ死は情けって言葉ですからね…言葉自体が似ていても意味が全く違います」
敵は刺し違えてでも殺せ、相手を殺してやることこそ最大の情けだ。…考えた人は相当脳筋だと俺は思った。
「じゃあまた連絡入れるわ」
「迷子になる前にお願いします」
…信用ないなぁ。
やはり商業都市というだけあって警備は厳重だった。そのことに安心しつつ俺は商業都市の中に入る(ラプトルは帰した)。そして俺は驚いた。
「…噂に違わず、異世界そのものだな」
白亜にいた時から噂自体は聞いていた。だがこれほどまでとは思わなかった。異世界人の言っていた…げーせん?らしきものはないものの大きなガラスの中には着飾った人形がポーズを取っている。そして広大な敷地をフル活用し、1つの大きな店に商業施設を集めた施設。その外には広場があり、リア充や子供達が沢山いた。…本当、人間のする事には脱帽だな。今から土地開発を進めさせるか?
「ギルドもこの中にあるのか…ぅっ」
…明るい。外より明るいってなんだよ…目がチカチカする…。
「どうかなされましたか?」
「…っぁー。ちょっと明るさに目をやられて…」
「初めていらっしゃる方は皆さんその様な反応をなされますね。そこに椅子がありますのでご利用ください」
「すまない…あと、冒険者ギルドってどこにあるんだ?」
「ギルド施設ならそこの移動床を使って2階へお上がりください。確かその突き当たりにあったかと」
「ありがとう。助かった」
「…はい」
何故か間があったな。どうかしたのか?…気にしても仕方ないか。とりあえず上にあがろう。
「あの人、モデルさんかな…?」
「背ぇ高い…細いのに筋肉すごい…」
「声かけてみる?え、私は恥ずかしいから…」
…この施設ってここまでうるさかったのか。早く出たいが仕方ない。我慢してちゃんと勉強するとしよう。
「ギルドで依頼ももらったし…あ、確かここって遊ぶ施設あったよな。行ってみるか」
施設案内のパンフレットはこれか。
「えっと、真後ろにまっすぐ進んがっ?!」
…痛い。鼻血出てないかな…?
「おにーさん大丈夫?」
「急に壁ぶつかったけど気分悪い?」
なんて優しい子たちだ…お小遣いあげたい。多分あんまり歳変わらないだろうけど。
「大丈夫だ。ちょっと遊べる施設に行こうとしてだな…」
「「…?」」
「このパンフレット通りに、後ろにまっすぐ進んがっ!?」
「…既視感すごいなぁ」
「パンフレット逆だよ?」
…本当だ。気が付いたところで迷う気しかしないので俺は道案内を頼むことにした。そして快くOKをもらい、移動床に乗っていた。
「おにーさん面白いねぇ。どこ出身?」
「…遠いところ」
「辺境って事?だからこんなにスタイルいいんだ?あとその服、見た事ないね。どこで買ったの?」
「これ?…秘密」
「けち」
流石に魔族領とは答えられない。言ったら誰かさんに怒られる気がする。ここにはワンピースとかTシャツとかは多いのに、パーカーは無いんだな。これ以上に機能性の良い服はジャージ以外ないだろう。本当はジャージ着たいけど寝巻きに見えるらしく俺は寝る時に着ている。
「ここだよ。私達も久しぶりに来たなぁ」
「おー。広いな」
「3階の半分がこれだからね。あと半分は子供用」
あとでそっちも見てみるか。福祉施設や遊ぶ施設が増えることは民の満足度につながるからな。
「体を動かして遊ぶのか?それにしても、ここらの床は歩きにくいな…まるで弾性スライムみたいだ」
「お兄さんよくわかったね?これはトランポリンって言って弾性スライムで作ってるんだって。これ楽しいから小さいのは私も持ってるんだよね」
「ここは…あったあった。はいこれ」
「ありがとう…?」
なんだこれは…。手袋?
「ここはね、鬼ごっこをする場所なんだぁ。普通の地面じゃ飽きちゃったんだって。こうやって、跳ねて避けたりするんだよ」
「お兄さんこちら」
…触れれば良いのか?それくらいなら簡単だが…。
「ほっ!」
「よいっと!」
「…避けられた?」
「おにーさん今手加減したでしょ?」
「本気で来て?」
…めちゃ煽るやん。魔力込めたろか。
「じゃあちょっと速くするぞ!」
「「ほいっ!」」
…ははーん?コイツらまさかとは思うが…一応聞いておくか。
「お前ら、人間じゃないだろ?」
「「!」」
はいビンゴー。
「魔力量的に魔族では無さそうだし…獣人か?」
「…正解」
「おにーさんすごいねぇ」
獣人か。それなら納得だ。獣人は魔力が少ない代わりに凄まじい筋力と獣化の能力を持っていた筈だ。魔人は治癒能力を持ち、人間は確か進化適応だったか?そもそも魔族は少数の種族が生き残るために集まってできた種族だからな。魔人はその中の一つで1番数が多い。俺は魔人じゃないけど。
「さて、じゃあ軽い本気で相手してやろう。存分に逃げ回れ」
「…魔術はダメだよ?」
「身体強化もか?」
「…それくらいなら別に大丈夫かなぁ?でも、他の魔術は絶対ダメだよ?ルール違反だから」
「分かった。…身体強化」
「「?」」
「無詠唱魔術だ」
「消え…?」
「上っ!」
すごい察知能力だな。縮地のフェイントを見破って天井からのタッチを避けるとは。たまたまかもだけど。だが二手に分けることはできた。ここまですれば俺の勝ちだな。
「誰も、天井を使うなとは言ってないよな?お前達も壁使ってたし」
「…おにーさんってもしかして近接職?」
「しがない魔術師だ」
「あっ!」
「おーにさーんこーちらー」
「むぅぅぅ!」
「私も手伝う」
…獣化、ウサギと猫の獣人か。だがまだまだ若いな。耳と尻尾だけとは。
「ほら来い」
「「やぁっ!」」
しばらく遊んだがとても楽しかった。これは魔族領にも取り入れよう。
「じゃあまた会えたらまた会おうな」
「…え?」
「遊ぶだけ遊んでポイ?」
言い方が悪いぞ言い方が。
「金は払ってやるから。さっさと帰れ。俺は暗くなる前に武器屋に寄らないとダメなんだ」
「おにーさん、鈍感すぎない…?」
「?」
「じゃあまた会えたら遊ぼうね」
「バイバーい」
「おう」
…そういえば俺初めて会った2人と遊んでたのか。めっちゃ楽しかったけど。
「さて、武器研いでもらいに行くか」
…また道に迷いました。