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初恋と決意【視点 メイ】

…これは、夢だろうか。何かに優しく包まれているような安心感と、少しの寂しさ。なにに包まれているのかすら分からないのに自ずと、心の内を明かしたくなるような、そんな暖かさ。ずっとこのままで居たかったのでその暖かさに縋ってみれば、ゆっくりと暖かさが消えていく。…嫌だ。行かないで。またひとりにしないで…。


「ったぁ…こんなに寝ていたのか」


頭を打ち、目が覚めたので窓から覗く広場の時計を見ると、もう夕飯に近い時刻を指していた。空も朱色に染まっている。


「やはり、寝起きは動きにくい…な?」


いつもなら片足がないので少し苦労するのだが、今は普段通りに足が動く…いや、普段より少し動かしにくいが。義足を付けたまま眠ってしまったのだろうか。ヒビが入っているのに、壊れてないか心配だ。…ん?


「これは、私の…義足、なのか?」


枕元を見るとそこには大切そうに義足が包まれていた。リュウト殿が新しいものを用意してくれたのだろうか。…そういえば、リュウト殿はもう行ってしまったのだな。短い時間だったがとても楽しかった。そんなことを考えながらふと、昨日の一撃をもらったところを見た。新品に傷などついているはずがないのに。


「…え?」


…傷?それも、場所まで同じ。…どういうこと?じゃあ今、毛布で隠れている右脚はなになの?…怖くて、見れない。


「…手紙がある。…リュウト殿から?」


毛布に包まれたままでも届く範囲だったので、取って内容を読む。


『メイへ。


メイ寝たから勝手に帰らせてもらうぞ。

ちなみに寝たのは俺のせいだ。お節介とか、ありがた迷惑なことは分かってるしこれは俺の自己満足だ。怖がらずに右脚を見るといい。きっと、驚くだろうから。…できればいい意味であって欲しいけど。右脚を見たら布団を出てベット下を漁れ。メイに合った武器を置いてある。


リュウトより』


「…脚を、見ろ?」


…大体分かった。分かったはずなのに見るのが怖い。もし思っていたことと違ったら。もし、傷が開かれていたら…は流石にないだろうが。…勇気を振り絞れ、私!


「えいっ!……っぁ」


…脚が、戻っている…?戻すことは不可能と言われたのに…彼は本当に凄いな。強くて、優しくて、脚まで治せる。…本当に非の打ち所がない。


「…まさか、こんな事で私が泣いてしまうとは…。脚を失った時以来か?…全く、魔王とは本当になんでもありなのだな…」


ここにリュウト殿がいなくてよかった。こんな顔、見られたらと思うととてもじゃないが目を合わせられない。


「…もし居てくれたのなら、抱き締めたりしてくれたのだろうか。…いや、これは私の願望か」


脈が速い。顔が熱い。特に耳なんて焼けるような熱さだ。


「…これが、恋…なのだろうか」


そういえば、ベット下に私に合った武器を置いてあると書いていたな。漁ってみるか。


「…立てる。今までとは違う、ちゃんとした感覚が伝わってくる」


いつもならこんな独り言、言わないのに。…嬉しい。早く、また会いたい。隣に…居たい。我ながら単純なものだ。ベット下を漁っていると、何か、ひんやりとしたものが触れた。それを手繰り寄せて足元へ運ぶ。


「これは…曲剣?」


変わった形の剣だが、スッと手に馴染む。片刃なのか。…美しいな。一体どれほどの素材を注ぎ込んだのだろうか。…また手紙だ。


『見てくれたか?これは、ニホントウと言うらしい。異世界人が教えてくれたんだ。俺には合わなかったがメイならきっと使いこなせる。次俺に合った時、また手合わせしよう』


…また会う約束をしてくれるのだな(本人は決闘だと思い込んでいる)。その時はちゃんと感謝を伝えよう。そして、隣に並べるくらい強くなって告白する。…乙女な目標だがこれでいい。私の友人も言っていた。「恋をするならとことんね」と(友人ちゃんは騎士団に所属しながら男っ気の無さすぎるメイを心配していた)。


「待っていてくれリュウト殿。すぐ会いに行く!」


目指すは…隠居できそうな場所。必ず探し出してみせる!


「しばらく休暇を取るとしよう。もし見つからなければ…魔族領にでも行ってみるか」


入るなと言われればそれ以上なにもできないが…もしかするとこの手紙を見せれば通してくれるかもしれないしな。


「魔族領といえば…神竜ミリュウの魔術師の気配が消えているな。なにかあったのか?…ついでに探してみるか」



この時はまだ、ただ1人を除いて誰もなにも知らなかった。元祖の魔術師7柱の内の1柱が後に起こす悲劇によってこの世界がまた恐怖で支配されるまで。その悲劇を巻き起こす、本人でさえ。



疫病の魔術師 シラフ


血鬼の魔術師 ヴァンプ


幻影の魔術師 メフィス


万華の魔術師 オルラ


鳳灰の魔術師 サモン


天峯の魔術師 メイ


神竜の魔術師 リュウト



なぜなら、それを知る1人でさえも想像できなかったのだから。今、それを知る者はこの中にいる。

とりあえず大事な設定をぶち込んでみました。

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