オーバーヒート
魔族領は日本と似たような文化があります。漫画とか劇とか。アニメは作ろうとしたけど無理だった。あと、聖教国が魔王だけを敵視してるのは…簡単に言えば今のロシアみたいな感じですね。国自体を批判する声はあるけど、ロシア国民は批判するのおかしいよね?みたいな感じ。
【メイ】
…この人、魔術を無詠唱で展開した?それも凄い速度だ。通常、魔術は詠唱がないと発動できない。一部の魔術師は無詠唱での発動が可能だがここまで速くもないだろう。そして威力も落ちる。これならまだ勝てる。そう思っていた。
「っと。」
「っ!」
先ほどよりも数段速い!?まだ全力ではなかったのか!…落ち着け。私のペースに乗せろ。それが私の戦い方だろう。
「ふっ!」
「抜剣…。殺す気かな?」
「こうでもしないと貴殿は倒せないからな。そもそも、貴殿はわざと溜める隙を与えただろう?」
「ばれたか」
こうも会話をしながら笑顔でいなされると私のメンタルにも傷がつくな…。アレはまだ使えない。だとすれば魔術を使うしかない!
「…天よ、我が敵に天罰を!重力増加!」
「詠唱省略…!ぐっ…」
「再増加!」
多少損害は出るが…何よりこの人と本気で戦いたい。そのためなら自費で建物くらい直してやる!
「これはなかなか…ろくに動けないな」
「先に魔術を使ったのは貴殿であろう?それなら私も使って良いはずだ」
…分かってはいたが床に伏さないとは。なんて筋力だ…!
「身体強化使ってもギリギリ走れるくらいか…。メイは影響を受けない魔術。凄いな、魔術師できるんじゃないか?」
「騎士の方が好きなんだ!」
「分かりやすいっ!」
まだ対応してくるか…!だが隙はできた!足に一本入る!避けたとしても先は角、終わりだ!
「あぶっ!?」
避けたか!
「取った!」
「防御が疎かだぞ?」
「…っぁ」
…なんで、いつの間に、私の足を切り付けたのだ?
「刃は潰してるから安心しろ。ちゃんと治してやる。…手応えが妙だけど」
「…私の負けだ。だが、楽しかった。私だけかもしれないがな」
久しぶりに本気で戦えた気がする。負けてしまったがとても心地いい。
「俺も楽しかったぞ。1人にあそこまで追い詰められるのは久しぶりだ。動きだけなら勇者と遜色ないんじゃないか?」
「…そうか。…ん?勇者?」
「うん、勇者」
「……」
「……」
「「……」」
なぜ姉の動きを知っているんだこの人は!?これだけの力があるなら姉の助けなど要らないだろうに!?
「そ、その…つかぬことを聞くが…職は何を?」
「え、魔王」
「…え?」
「…系冒険者」
「もう遅いぞ?!直ちに陣形を組め!王宮に連絡しろ!」
「待て待て待て!敵対の意思はない。あったらお前ら殺してるし」
…確かに私達は死んでいないが腹の内が読めない。なぜ敵地に単身で…いや、まさか軍で?この国の警備はザルだからな。…どうすればいいのか。
「…魔王様?」
「はいはいどーしたサモ…ン…?あれ、幻聴かな?そうだきっとそうに違いないそれではぐへぇ」
「…敵地でなにしてるんですかあなたは…。馬鹿なんですか?馬鹿なんですね?!もうだめです帰ってもらいますよ!」
「俺の隠居生活はまだ始まって1日経ってないぞ!」
「隠居したいなら目立たないでください…!」
「首根っこ掴むな!仮にも魔王だぞ?!」
「今更ですし今は俺が代官ですよ!」
…なにが起きているんだ?ダメだ、手が震える。最初こそ恐怖と緊張で震えていたが今は…
「…ははっ。あはははっ!」
「…なんだよメイ」
「いや、つい面白くてな。まさか魔王が常日頃からこんな事をしていると思うと…くくく…」
…いや待て。魔王?それも、氷属性?
「…まさか、貴殿は」
「…俺が紡がせていただきます。このお方は魔王リュウト。七大罪、憤怒を司り涙氷の二つ名で知られる魔王ですよ」
「…あの、歩く災害の?」
「今では傷心中のドルオタだ。というかどうやってここまで…」
「監視魔法の主導権奪って転移してきました」
魔王から主導権を奪うほどの実力だと?!…本当に敵じゃない事を願いたい程の実力だな。
「というか、魔王様?なんでそんなに変装完璧なんですか?」
「前から魔術作ってたからな」
「んな事する暇があるなら職務を…」
「よしメイ。一緒にこいつを倒そう」
…へ?
「…へ?」
「あなたという人は…!俺の勝ち目ないじゃないですか!…これ以上騒ぎ起こさないでくださいよ?」
「多分起こす」
「やっぱり戻って…」
「うわー手が滑ったー」
「足蹴りじゃないですかぁぁ?!」
…消えた、のか?
「よし、反省会をしよう」
「…?」
「メイってなんで片刃しか使わないんだ?せっかくの両刃なのに」
「………」
「…気絶してしまった。とても責任を感じてしまう!」
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《しばらくお待ちください》
〜選曲〜
白鳥の湖 作 チャイコフスキー(テだけで歌ってみたbyリュウト)
《もうすぐ復旧いたします》
【リュウト】
「…私はどうすればいいのだ」
そりゃ魔王が目の前にいればこうもなるか。あの冒険者がおかしいだけで。ここは敢えて、肩に手を置き、こう言ってやろう。
「諦めなさい若人よ」
「…本当に敵対の意思はないのか?」
「平和が1番だからなぁ。あ、あともう一つ言っておくと俺は別に勇者と戦ったことはない。俺ドルオタでさ、推しが勇者なんだよ。身体能力は大体ライブの5倍くらいの想定だな」
最初こそ敵情視察のためだったが歌と踊りにどっぷりとハマってしまった。資金集めのためなのか良くわからんがとりあえずとてもいい文化だと思う。
「そうなのか…。姉と遜色ないと言ってもらえると私も嬉しいな」
「…ん?」
姉?…メルたそが?…そうか。いやなにもしないけどな?俺はちゃんとした距離感を保つタイプの同担OKオタクだ。正直同担拒否の気持ちが分からん。もしそのせいで推しのファンが減ったらどうする?そのせいで推しが辞めたらどうする?本当にそこだけは理解ができない。別に個人の思想を壊したいわけではないが。
「…というか、さっきから右脚に魔力巡らさてるけど…襲う気ないの信用できないか?」
「…貴殿は魔力が見えるのか。…これは逃げるためではない。私は右脚が無いのだ。昔事故で失ってな。部位欠損となると治すのもできないらしい」
「…そうなのか。すまない」
「別に気にするな。隠しているわけでも無いしな」
義足か。…義足で俺に身体強化使わせるくらいの強さなら本当に才能と努力の塊だな。魔力も少ないと思ったが脚に使っていたのなら納得だ。というか人間の国の医療技術は遅れすぎじゃ無いか?俺の国は転生者や転移者から技術をもらって、とっくの前に部位欠損は治せるようにしたし今は不老のテーマを研究している者もいる。不死の研究はさせない。絶対に。…治してやれるのは治してやれるんだが…。こいつが素直に受け取ると思えないんだよな。なんか絶対拒否してくる。…いや待てよ?確か効果が出始めるのは睡眠中だったな。細胞の活性化と複製を促進しまくるのが効果だったはず。副作用で強制的に寝てしまうって書いてたような気もする。…俺は魔王だしな。少しは悪いことをしても咎められはしないだろう。
「メイ」
「なんだ?」
「いろいろ騒ぎを起こしてしまった謝罪を受け取ってほしいんだが…いいか?」
「別に気にしないぞ。団員も皆、いい陣形訓練になったはずだ」
「じゃあ言い方を変えよう。俺は少しでもお前の手伝いをしたい。なにかできることはないか?」
ここまでは計画通り。多少悪い気もするが、俺の計画を説明しよう。メイは今、俺への警戒心がほぼ無い。それに漬け込んでどこかのタイミングで水に混ぜて飲ませる。バレたら信頼は0になるが…メイが強くなったら俺に会いにくるかもだし(殺害目的)、それ以外出会うことはないだろう。
「…義足のことか?別に気にするなと…」
「実はさっきの攻撃で少しひび割れさせてしまってな(本当に偶然)。弁償したいが金もない。だからこれくらいしかできないんだ」
「それは私も伝えていなかったから…いや、あまり断るのも貴殿に失礼かもな。分かった。それでは今日1日、頼むとしよう」
「おう」
順調順調。あとは騎士団で2人きりになれれば…
「本当は今日休みだったし、私の家に招待しよう」
…ゑ?