Ep2
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「なんだてめぇっ!」
人数は4人。
全員ゴツい上に、俺より頭ひとつはデカい。俺だって198あるってのに。
腕はちょっとした女の胴くらい。義肢と強化細胞のミックスってのが、見ただけで分かる。
あんなのが直接当たったら、コンクリの壁ごと叩き割られる。
ーーこういう時は、先手必勝。
ニヤリと笑い、身を低くして突っ込む。
前に2人、後ろに2人。そいつらの間を駆け抜け、最後尾の野郎の股間を、勢いそのまま踵で潰した。
ぐちゃりと水音。膝が折れて、前屈みに倒れ込む。
そこへ顎をフルスイングで横から叩けば、ごきんっと鈍い音がして、そいつの頭は不自然にねじれながら崩れ落ちた。
驚いて固まってる別のやつの膝を、振り向きざまに遠心力の乗ったローで刈る。
膝が内側に折れて、顔面から倒れたところに踵を振り下ろす。
ーー残り2人。
ようやく落ち着いたのか、前に出た1人が軽くジャブを数発。
軽そうに見えて、拳は小石どころか煉瓦サイズ。ジャブでも当たれば骨が砕ける。
ステップを踏んで距離を取りつつ、左肘で顎を覆うようにしてガード。
にやりと笑って煽る。
「ドンガメみたいな見た目して、ボクシングかよ」
「TKOなんて甘っちょろいもんはねぇぞ、死ねや!」
タッパもあるからリーチが長い。
ブロッキングで何発か受け止めるが、2発目でもう骨にズンと響く。
チッ、と舌を打ちつつ、踏み込んできた奴のストレートを掴んで、背負い投げの要領でぶん投げた。
「どらぁっ!」
掛け声と共にぶん投げられた巨体が、後方のソファへ突っ込んで木っ端微塵。
「……おい、いい加減にしろ。動くんじゃねぇ!」
最後の1人が銃を抜いた。
銀色のボディに蒼の装飾が施されたその銃口は、ブレずに俺の背に据えられている。
「……それ、俺の得意分野だが、いいのか?」
息を整えつつ、ゆっくりと振り向きながら、左脇のホルスターに手をかける。
黒鉄の大口径六連発拳銃。引き抜き様、膝を落とし、低い姿勢から撃つ。
獣の咆哮にも似た轟音が響いた。
銃口が火を吹くと同時に、相手の左膝から下が吹き飛ぶ。
まるで喰い千切られたように失われ、男は絶叫と共に崩れた。
「どうよ?こいつ専用の弾じゃなきゃ味わえねぇ痛みだぜ。……痛がるフリしてんじゃねえよ。その足、生じゃねぇだろ?」
「い、いてぇ……」
呻いてる膝のあたりを蹴り上げると、やっぱり悲鳴。
「ほんとに生ならな、今ごろ泡吹いて痙攣してる。ショックで死んでもおかしくねぇ。
それに、銃をあんなにしっかり構えてたら、不意打ちしますって顔に書いてるようなもんだろ」
痛がるのを止めた男が、悔しげに睨んでくる。
「……なんなんだお前、”クラーケン”の殺し屋か?」
「縄張り争いに興味はねぇよ。俺が探してるのは、最近シンクロで出回ってる”ヤバいやつ”の情報だ」
銃をホルスターに戻し、タバコに火をつけてカウンターへ腰を下ろす。
一瞥すると、先ほどの悪魔店員が慌てて酒を注ぎ出した。やっと仕事する気になったらしい。
酒を一口。芳醇な香りが鼻に抜ける。
ーーこれは、あとで瓶ごといただくか。
そんなくだらねぇことを考えてると、足音と共に怒鳴り声が響いた。
「おいっ!イブラッ!お前の客だ!さっさと相手して帰ってもらえ!」
店の奥から現れたのは、顔を骨董品のパソコンにした細身の男。
金属の擦れるノイズ交じりで、そいつは喋った。
「ーーサイキンマワッテルのは、イチブだけ」
細い指が、ネモ用のサムドライブを差し出す。
「特徴は?」
「ーー5ビョウダケ、ダイヴシタヤツラはコワレタ」
「……名前は?このデータの名前」
答えは、こうだった。
ーーLPD
妙に耳に残る、奇妙な響きだった。
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