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65.不抗Ⅲ


入りきらずに長編です。

それでも入りきりませんでしたが……。




 刃を交える度、力を増していく肇。


 交わす度に、力が抜けて剣を落としそうになる俺。


 勝敗以前に、勝負にすらなっていなかった。

 それは名前も知らない女の子が入っても同じで、俺よりはマシでも片手間にあしらわれていた。


「……やっぱり殴りたない……」


「言ってる場合かよ!? どちらが抜けても負ける、解るだろッ!!」


「それ言うんやったら、既に圧されてるわ!!」


「お前、この程度だったかぁ? あの時の圧力はどぉした!?」


「黙れよ!!」


 今の肇に通じないのは明白、それじゃどうする?


 肇の挑発に思わず言い返すが、それどころではない。

 俺は既に、曖昧ですらある意識を必死に繋いでいる状態だ。

 そんな頭を振り絞っても、なにも思い付かない。

 足りない手札に苛つくが、このままだと負ける。それだけははっきりしていた。


「……気に入らねェんだよ、お前はッ!!」


「知るかよ! だからって他人を巻き込んでんじゃねぇ!!」


 ハンデを背負った将棋か、八割が相手の色に染まったオセロか、圧倒的な実力差に追い詰められていく。

 もう殆ど、結果は解っていた。

 それでも負けは許されない。

 ルイスは?

 この子の思いは?

 そう思うと、倒れることすら出来なかった。


「もう止まれよッ!!」


「あぁッ? 馬鹿にしてんのかてめェ!!」


「今の内に止まっとかなあかんって、わからんのかぁぁぁぁ!!」


 あまりにも激しさを増していく肇に、女の子が思わず叫んだ。


「構わねェよ、覚悟はもうしてんだからな!」


「なんの覚悟や? アンタが解ってないから言うてんやろ!!」


「解ってねェのはお前だ! オレがどれだけ苛立ったか! 殺してやりたかったか! 知らねェで勝手言ってんじゃねぇぇぇぇ!!」


 咆哮のような叫びの後、肇が刀を薙いだ。

 見えない衝撃波が、軌跡に沿って全てを抉っていく。


「……ッくそ! ルイスッ!!」


 軌道上にはルイスがいて、俺は形振り構わずその前に立った。


「お前の自分勝手な事情なんか、知るかぁぁぁぁぁぁッ!!」


 目の前に迫った衝撃波。

 それを断ち切るべく俺は手に持った大剣を振るった。

 同調するように光を放つ腕輪。

 縦に振るった俺の一撃は、肇の放った衝撃波と交差するようにぶつかって消滅した。


「答えろよ!! なんでその為に! ルイスが倒れたんだ!!」


「……しつこいやつだな、煩わしいんだよ!! 全部、壊れちまぇぇぇぇぇッ!!」


 深く息を吸う肇、俺は龍の息吹きが放たれる前に、駆け寄って喉元に剣を振るう。


 ガキィッ!


 しかし、肇の刀によってそれは防がれ……、


「消えろッ!!」


「させへん!」



 肇の知り合いらしい女の子は、この時初めて全力で攻撃した。

 肇の横腹を思いっ切り蹴りつけたのだ。


「ぐ……ッふ!!」


 向こうの壁まで吹っ飛んだ肇は、放とうとした龍の息吹きを口内で炸裂させた。

 頭全体が消し飛んでもおかしくないほどの威力に、肇の顔が歪む。


「ぐぉぉぉ! いってぇぇぇぇ!!」


 少しはダメージを受けたようで、地面をのた打つ肇だったが、それでも圧倒的優位は変わらない。


「……ゲホッ! くそ、血が……」


 腹の出血が収まらない……。

 前に行った、自分で治療する手段もあるにはある。 しかし、今回はあの時より傷も深く、なにより意識が朦朧として……、今は剣を通さないと力を行使することも出来なかった。


「うぁ……、フラフラする……」


「大丈夫かぁ? 残念やけどウチ、治療は専門外やわ……」


 不安げに尋ねてきた誰とも知れない女の子に、俺はなにも返せなかった。


 ……と、最早、鮮明に聞き取れない耳に、凛とした声が響いた。


「……あれ、キミは?」


「え……?」


 声の持ち主は、守護神であるフェルトだった。


「な、なんでここに……?」


「せっかくの休日だったからケーキ屋に行こうかと……いや、それどころじゃないだろう。さっきから響いてる凄まじい音はなんだ? キミがなんでそんな傷を?」


「あぁ、説明は後だ。とにかく、そこで悶えてる男を止めないと……、手伝ってくれないか?」


「そ、それは構わないが……。キミは立ってるのがやっとじゃないか! そんな状態では戦えんだろう?」


「いや、今はそんなこと言ってる場合じゃ--」


 気遣いは嬉しいが、このままでは肇が立ち上がってくる……。

 しかし、俺の言葉はフェルトが遮った。


「とりあえず傷を診させてくれ。前回は披露できなかったが……、わたしが評価されているのは戦力よりも治療技術なんだ」


「……マジか」


 あの強さで?

 驚く俺を尻目に、フェルトは駆け寄って来て服を捲った。


「……相当、鋭利なもので貫かれたな。これならくっつけるだけで済む」


「ほ、本当か?」


「あぁ、多少動いて広がってはいるが……、大丈夫。一分もあれば直してみせる」


「有り難い、けど……」


「にひ、ウチに任しとき?」


「……大丈夫なのか?」


 さっきまで殴るのも躊躇っていたのだから、俺の心配は当然の疑問だろう。


「なにがよ? 一分ぐらい大丈夫やって」


「いや、そうじゃなくて……」


「あー、そっちか……。大丈夫。元はウチの責任やし、止めたらな可哀相やで。あのまま暴れてたら力に飲まれて壊れてまう……」


 今度こそ。

 決意は、合わせた目に映って見えた。

 これ以上は俺の言うことじゃない。


「わかった。俺も加勢するから」


「……御免な」


 女の子は、最後に呟くと怒りを籠めて立ち上がった肇に向かっていった。


「面倒ついでに、あっちで倒れてる子も診てやってくれないか? 多分、俺より重傷だ」


「……わかった。手遅れでないことを祈ろう」


 ズキズキと、断続的に響く重い痛みは徐々に、暖かい光に飲まれていく。

 どうやってるのか全くわからないが、やはり今はそんなことを気にしてる場合ではない。


 俺の目には、力の差に圧されている女の子が映っていた。


「--もう大丈夫だ」


 フェルトの言葉と共に、腹をじんわりと包むような暖かさが抜けていった。

 治療は完璧で、全く痛みがないことに驚く。

 まぁ、血が足りなくてふらつくのは仕方ないだろう。


「ありがと。また直ぐに頼むかも知れないけどな」


 俺の軽口にフェルトが神妙な顔付きになった。


「先に言っておくが、完全に切断されればアウトだ。あとは内臓も治せない。わたしに出来るのは傷の治療だけ、覚えておいてくれ」


「あぁ、わかった。それと、改めてありがとう。フェルトが来てくれて本当に助かったよ」


「ふ……これで、貸し借りなしだぞ?」


「……あぁ」



 そんな声を、背後に感じた時には駆け出していた。


「自分で止まれないなら、俺が止めてやるよ。これだけしてもらっといて、なにも出来ないじゃ済まないからなッ!!」


「ふざけんな、オレがお前なんかにッ!!」


 フェルトのお蔭で、これまで以上に力強く剣を振るえる。

 自由に動けることに、フェルトが治してくれたことに感謝しながら、壊れるぐらいに柄を握り締めて、再び刃を合わせた。


「どれだけ気合いを込めたところで! そんなんでなにも変わらないことぐらい! 解らないような年じゃねェだろうが!!」


「お前が気に入らないから壊すって言うんなら、俺はそんな理不尽が気に入らないんだよ!! そんな力の方が、お前の腐った考えの方が、よっぽど壊してやるッ!!」


 色んな想いに応えるように、腕輪が輝きを放った。


 そうすると不思議と力が湧いて、打ち交わす刃に力が籠もっていく。


 想いが強くなるように、加速するように力が増していき、遂には肇の刃を圧し返した。


「まだ粘んのかぁ? もう、死ねッ!!」


「粘ってるんじゃない、勝つんだよッ!!」


「だからウチが止めたるって、任せぇなっ!!」


 俺との打ち合いに集中していた肇が、唐突に吹っ飛んだ。


 見れば、女の子の息吹きが当たったようだ。

 威力は肇に及ばなくても、それは僅かな隙を作るのに充分だった。


「らぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ザンッ!!


 振り下ろした剣が肇の身体を斬った。

 致命的ではなく、動きを止めるには及ばなかったが……しかし、それでも充分だった。攻撃が通じた、その事実だけで。


「どうしたよ? お前こそ、この程度だったか?」


「…………」


 俺の挑発に、肇は無言で服に着いた血を眺めるだけだった。


「なんだ? いったいどう--」


「……血だ」


「は……?」


「もう止められねェぞ、お前ら。これが抑えきれない破壊衝動ってやつかぁ? 動かなくても動くような、これが……」


 ドクッ、と、血を眺めていた肇の身体が見て解るほどに脈打った。


「……なんだよコレ? ハハッ、サプライズってかぁ? 力が噴き出してとまらねェ、力を飲み干したみてェに、身体ん中で渦巻いて……」


「……だからウチは言うたんや。やっぱり解ってないやんかぁ……っ!」


「どういうことだ? あいつが一体、どうしたって?」


 肇の異変に、なにか知っていそうな女の子。

 俺は思わず問い掛けた。


「説明してる時間はないようやから、結果だけ言うで?」


 肇を気遣うように見ながら、呟くように言葉を続けた。


「……やっと血が混ざったんやと思う。だから漸く、肇の元の戦力に龍の力が加わるってこと」


「え? いや、あいつは龍の力を使ってただろ?」


「舐めとるみたいやね? さっきまでのは、八割ぐらいは肇の力やで?」


「な……ッ!?」


 なにを言ってるんだこの子は?

 一瞬、頭が真っ白で単純な計算も出来なかった。

 ……つまり、残ったあと八割の力がプラスされるってことか?


「それが本当なら、戦うことすら……」


「だから止めたんやって……。そんな力を、ただの人が使ぉて無事でおれるわけない、力は加えた分だけ反動があるって解るやろ?」


 悲しげな女の子の表情を見て、逃げるって考えは浮かばなかった。

 さっきまででも圧倒されてたって言うのに、それでもこの子は……。


「はー、なんでそんな力に拘るかな……。こんな想ってくれてる人がいんのに……、馬鹿なやつ」


「なぁ……っ!? ななな、なにを言うてんのっ?」


 明らかに動揺する女の子。

 と、そう言えば女の子と呼ぶのも失礼か。


「名前は?」


「えっ?」


「だから、なまえ」


「あぁ、ウチはアンジェ。そっちは?」


「悠でいい。手伝ってやるから、さっさと終わらせるぞ」


 大剣を構えなおすと、突然、大きな翼を持ったなにかが舞い降りた。


「--あ、ご主人様っ!!」


「ティーナ!? 家でじっとしてろって言ったろ?」


「……我慢しましたっ! でも、もう限界なんです。……いえ、とにかく、あれはなんですか? あの男からは妾と同じ匂いがします……」


「知り合いだ、止めてやらないと暴走する寸前みたいで……悪いけど、手伝ってくれるか?」



「はいっ!」


「じゃあ、始め--」


 仕切り直して、今から始めようとしてまたも俺の言葉は遮られた。

 同時に、俺の左右に影が2つ。


「あー、アタシを忘れんなぁー」


「わたしもだ。それと、終わったらちゃんと説明を頼む。このままでは気になって寝られないじゃないか……」


「ルイス!? 大丈夫なのか?」


 服に付いた血が痛々しいが、見た目には大丈夫そうだ。

 首がふらふらと揺れているのはいつも通りか……。


「アタシを舐めんなー。いきなり人をブッ刺すようなやつ、ニーナだけだと思ってたし」


「……元気そうだな」


「ごちゃごちゃうるせェな……」



 声に振り向くと、翼を生やした肇がいた。


「あ? 増えたか? ……まぁ、どうでもいいけどな」


 肇は一旦、そこで言葉を切ると、


「……全部、消えるんだからなぁぁぁッ!!」


 真っ直ぐ俺の方へと飛んだ。


「仕返しだ。……らぁッ!!」


「げぅッ!!」


 なんだか解らない内に、途轍もない衝撃を受けた。

 俺が吹き飛んだことに、その場にいた全員が一切の反応もできずに見ているだけで……。

 当人の俺でさえ、正直なにをされたかサッパリだった。


「ぐは……ぁッ!」


「……チッ、本気でやったら反応も出来ねェのかよ」


「……余所見とは余裕だな? はぁっ!!」


 情けなく呻いた俺に、肇が吐き捨てるように呟いた。


 ……と、その隙を突いて、フェルトが斬り掛かった。


「……甘ェよ」


「な……? あぅっ!!」


 肇はそれを受けようともせず、ただフェルトの腹に蹴りを放った。

 それだけでフェルトは、地面を二回も跳ねて息を漏らした。


「かは……ッ!!」


「手応えねェんだよ。全部が隙に見えんぞ?」


「もうやめぇな、肇ぇっ!!」


「妾のご主人様を……っ! 下等な混血種がッ!!」


 なんの合図も無しに、2人が同時に息吹きを放った。

 竜巻の如く渦を巻く風と、その台風の目を埋めるように燃え盛る火球とが肇に向かって直進する。

 幾らなんでも、これは肇にも通じる筈……。全員がそう思った。


「なんだぁ? その、しょッぼいのは。当たるわけねェだろ」


 刀で切り裂く積もりだろうか?

 肇は迎撃の構えを取った。


「……このルイスちゃんを貫いといて、無事で居られると思ったら大間違いなんだなぁー?」


「あぁ--ぐッ!?」


 構えた肇の背後から、ルイスが閉じた扇で足を払った。

 予期しなかった攻撃で、綺麗に足を掬われる。


「…………チィィッ!!」


 慌てて立ち上がろうとする肇に、強大な龍の力が炸裂した。

 根刮ぎ薙払うような風と、それによって抉るように回転した業火を散らしての爆発。


 その中心に居る肇は叫んでいるのだろうか、俺の耳に凄まじい轟音だけが響いた。


 爆心地を中心に広がるクレーター、堪えきれる理屈なんてなく、圧倒的な威力だった。


 しかし、煙が立ち上る中、希望を打ち砕く声がする。


「……ゲホッ! チッ、油断したってかぁ?」


 肇は僅かに血の混じった唾を吐き、袖で拭った。

 大して気にしていないように、平然と歩いているのだ。


「はー、あれで立ち上がってくるなんて、アンタも相当イッてるねー?」


「なんだそりゃ、褒めてんのか?」


「違う違う。倒れるまで何度でもぶち殺すって言ったのぉー」


「そうか。でもな、それは宝くじ当てるより難しいんじゃねェか?」


「わっかんないってぇー……ぅ、あッ!!」


 挑発するルイスを、間に入る時間も与えず蹴り飛ばした。


「はッ! 一回刺された身でよく言えるぜ。そういう意味ならお前のがイッてるっつの」


 肇の言葉に、気付けば衝動的に動いていた。


「それを言ってる、刺した当人のお前が一番イッてるんだろッ!!」


 走り出して、勢い良く右に薙ぐ。


 ガギンッ!


 鋭い音を立てて、止まった。

 簡単に受け止められての圧し合い、

 所謂、鍔迫り合いだ。


「あー、なんかもうどーでもよくなってきたぜ?」


「なんだと?」


「お前とは既に、次元が違いすぎんだよ」


「ふざけんな、まさかそんな理由で逃げる訳ないよな?」


「……はッ! 相変わらず気に入らねェよ、お前はッ!!」


 直後に弾かれる刃。

 互いに体勢を直し、もう一度斬り掛かる。


「……くっ!!」


 肇が漸く本気になった。

 これまでとは段違いの力、速度で刃が襲い来る。

 悔しいが俺には余裕など無く、しかし、受けに転じた瞬間に負けることもまた、解っていた。


「ハハハハハハッ! また圧されてんぞ? もっと頑張れよぉ!!」


 俺の力が、一瞬でも上回ったのが奇跡だとでも言うように、それを更に上回る速度で肇の力が増していく。

 熾烈さを増す攻撃に、余裕どころか防ぎ切ることさえ出来なくなってくる。

 その時、フェルトが声を上げた。


「キミっ! 後のことは考えずに思いっ切り振るんだっ!!」


「え? あ、あぁ、わかった!!」


 俺は言われた通りに振り切った。


「甘ェッ!!」


 ギァン!!


 やはりと言うべきか、激突音を響かせて、容易くそれは防がれる。


「……ぐっ、くそ……」


 再び鍔迫り合う刃。

 俺は両手で肇は片手で……力量の差を物語っていた。


「これぐらいなら圧し返すぞ?」


「ふっ、これならどうだ?」


「あぁ? チィッ!!」


 合わせた刃に、フェルトの剣が重なる。

 力を振り絞り圧し合う俺の背後から思いっ切り叩き付けたのだ。




「……両手使わせるかぁ? 馬ッ鹿がぁぁ!!」


 一人対二人とが拮抗する。

 通常なら、これですら充分に奇跡とも言える状況で、それでも肇は耐えた。

 出し切るように全力を出して。

 それは少しでも手を緩めれば2つの傷が刻まれる為だ。

 但し、互いに余裕はなく、更にあと一つでも力の要素が加われば崩れるであろう均衡に、肇も焦りを隠せなくなり……、


「……ティーナ!!」


「はいっ!」


 声に応じたティーナが、普通の剣なら切れないという証明するかのように、翼を広げ高速飛行を行いながら、フェルトの剣を蹴りつけた。


「ぐ、おぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 だと言うのに、肇はそれにも耐え抜いた。

 踏ん張った足が深く埋まる。


「お前の……、お前の剣が邪魔なんだよ!! クソッタレぇ!」


 確かに普通の剣なら切れないだろうが、肇の脳裏に切り裂かれた記憶が甦ったのだろう。

 柄を握る手に力が籠もる、それが俺達にも伝わった。


「しぶといねー? まともに勝負してたらそれも評価したんだけどぉー」


「言うたよな? 絶対止めるて」


 肇の背後に、2人が立った。

 これ以上の力が加われば、間違いなく負ける。

 肇の顔に動揺が浮かぶ。


 焦った肇は、最後の意地も捨てて叫んだ。


「アンジェェェ!! お前は、オレを裏切るのかぁ!?」


「--ッ!! そ、それは……」


 今度は、アンジェの方に動揺が走った。

 ビクッ、と肩を揺らし、焦点の合わない目が虚空を泳ぐ。


「……手伝うってんなら、何時でも一緒に居てやるよ。極力、頼みも聞いてやる……、どうすんだぁ?」


「そ、そんな……ウチ、どうしたら……?」


「--この男はぁぁぁっ!!」


「そう言うのは、往生際が悪いって言うんだよぉぉぉッ!!」


「お前らは黙ってろ!! オレは、アイツに聞いてんだからなぁッ!!」


 肇が気迫と共に力を込めた。

 圧し返すには及ばないまでも、ほんの少し、俺達に不利に傾く。

 体力は龍の力を得た肇に部があったのだ。

 これで勝敗が決まるわけではない。だが、この競り合いに負けた方が不利になることは全員が解っていた。

 肇は執拗に説得を試みて、俺達がそれを否定するが、こちらもこうして何時までも粘っては居られない……、最後はやはりアンジェの意志に託された。


「どうすんのー?」


「ウ、ウチは……」


「幾らでも良くしてやるって言ってんだ、どうすんだぁ?」


「こんな男の声に耳を貸すなっ!!」


「それは解ってる……。解ってんねんけどぉ……」


 時間、声、想い、葛藤、敵か、味方か、そして自分の行動に寄って変化する状況……、全てがアンジェを苦しませているようだった。

 事情を知らない俺には解らない。しかし、アンジェにとって肇の言葉は特別な意味を持つようで。

 こうしてる今も、意志と言葉とがせめぎ合い渦巻いて、精神を引き裂こうとしているのだろうか……?


 俺は、この子の言葉に動かされた。

 それは決して、困らせる為ではない。


 それじゃ意味がない。

 俺はただ、手を貸してやりたかったのだ。


「……これはアンジェが決めるべきだ。俺はアンジェを手伝ってやりたかった。アンジェの言葉に動かされたんだ。それは当然、本人の意志を曲げたら意味がない。……だから、任せる」


 アンジェは、俺の言葉を噛み締めるように俯いた。

 そして、小さく頷くと顔を上げる。


「…………うん、せやね。兄さんの言うとおりやわ」


 真っ直ぐに肇を射抜く瞳が、力を帯びた。

 それから、確固として揺れない強さを持って言葉を紡いでいく。


「ごめんな? ……ウチは、肇を止める」


「……チッ、やっぱ裏切んのかよ」


「もう一度、やり直したらえぇやんか。次はそんな力に頼らんとな?」


 目の前で、肇の歯が軋んだ。


「やり直しなんか利かねェよ!! この力が無くなれば、オレはまた負け犬だ!! そんなもんは、もううんざりなんだよッ!!」


 躍起になって否定する肇。

 だが、覚悟を決めたアンジェには動揺は見られない。

 そんな肇に対して怒りもしなかった。


「……そんなことない。だってあの時、ウチを止めてくれた肇は弱くなかったやんか」


「……オレはなにもしてねェよ。全部、コイツだ」


 そう言って、俺の方を首で指す。


「違う!! 最後にウチを正気に戻したのは肇の言葉やった。その前の記憶はまだまだ曖昧やけど……、それだけは絶ッ対に間違えへん。……だからこそ、今度はウチが止める。嫌われてでも、絶対に」


「否定してくれて有難うよ。……じゃあな、そんな強さでなにが出来んだ? オレは、悔しがることしか出来なかった。幾ら吼えたところで、無力だったんだ!!」


 思いを叫ぶ言葉の端々に、悔しさが滲んでいた……。

 どうすることも出来ない怒り、それを聞いて俺は思わず口を挟んだ。


「その悔しさは解る、強さが欲しいのも同感だ。それは誰だって同じだと思うし、悪いことじゃないと思う。けどな、お前がその力の使い道を間違ってるから止めるって言ってんだ。関係ない人を巻き込むような奴が強さを語るなッ!!」


「お前が強さを決めんじゃねェ! 強さは結果が決めるもんだ。そして、オレはお前より強くなった。結局なぁ、弱い奴がなに言ったって無力なんだよ!!」


「誰にも認められないで、なにが強さだと言うんだ? 出過ぎた力は淘汰される、人間がそうやって何度過ちを犯してきたか!」


「ふんっ、壊すだけなら妾達でも出来る、だからなんだ? そんなことで威張るなッ!!」




「アンタさー、強いのは解ったけど、その強さでなにがしたいの?」


「得た力でねじ伏せて……、それだけじゃ世界は回らへんねやで?」


「……お前の負けだな」


 アンジェが、ルイスが、肇の背後で全てを飲み込んで砕く程の暴風を巻き起こした。


 その風は、禁忌を犯した者への天罰のように、凄まじい威力を撒き散らしながら真っ直ぐに肇へと向かっていった。


「オレは認めねェぞ……。この世界に、正しい答えなんて用意されてないんだからなぁッ!!」


「だからって、お前が正しい訳ないだろッ!!」


「……報いを受けぇな、肇……」


 アンジェの呟きと共に、膨大な威力を持った衝撃が炸裂した。



「がッ!?」


 あまりの衝撃に体勢を崩す肇。


「……っく!!」


 身を引き裂く程の風に、思わず飛んでしまいそうになる身体を抑える。

 一歩前に踏み出す足。

 同調するようにして、腕輪に光が宿ると……、


「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 俺はただ、形振り構わず、残った力の全てを燃やすように剣を振り下ろした。




ここまでで、やはり作者としては反応が気になります。

ここがいい、ここが悪いでも構いません。

一応、端から端まで読み直して修正はしてます。

それでもおかしな点があるかと不安になったりして……。

とにかく、妥当な評価が欲しいんです。

でなければどうしていいのか解りませんし、進歩しないと思うので。

こんな駄文ですが、作者はこの作品が終われば次の作品も……と、考えております。

一言でも構いません、是非ともご意見下さい。


たかが素人の作者の戯れ言で長文、失礼しましたm(_ _)m



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