63.不抗(あらがえぬ)
短いです。
物凄く。
「ね、またどっか行こうよー」
「……今更、注意しないけどさ。とりあえず勝手に俺の部屋に入るの止めてみないか?」
--今回は、ルイスの一言から始まった--
「今日は何処行くんだ?」
「うーん、チョコ食べたいかなー」
「あぁ、やっぱり力は入んないんだな」
相変わらず軽く猫背のルイスに思わず突っ込んだ。
「まぁいいじゃーん? あ、あこ入ろー」
そう言って入ったのはケーキの店だった。
「ほらー、これ食ってみー」
「え? お、これうま……」
「でしょー?」
ルイスが食べ掛けのガトーショコラを寄越した。
勧められるままに一口食べて、これが旨くて止まらない。
「……全部食べていい?」
「ふふ、いいよー。もう一個頼むからぁ」
「おぅ、これちょっと止まらねー」
「でしょー?」
そうして和やかに、更に二個頼んでそれを食べ終わった頃、
「はー、旨かった。じゃ、そろそろ帰るか」
「そだねー」
充分堪能して帰ろうと立ち上がった。
一応、自分の分は自分で払って店を出ようとする。
「あ、フローとニーナの分も買ってくから先帰っててぇー」
「わかった。じゃあ、先帰るぞ?」
「おっけぇー」
ルイスがそう言うので、そう遠くもないし大丈夫かと思い、先に歩き出した。
「……ありゃー? フローって甘いのダメだっけぇー? ま、いっか」
「……おい、そこのお前」
「あん? あたしぃー? ってなにマフラーしてんの、もう冬は終わったよー?」
「うッせぇな。それよりだ、さっきの男は知り合いか?」
「そだよー。……で? もしかして口説いてんのぉー?」
「あいつは何処に向かった? 教えろ」
「や、だねぇー」
「そうか、じゃ死ね」
「は? ……アンタ、頭おかしいんじゃないのぉー?」
「そうだよ、悪ィか?」
ドスッ!
「--ッ! う、ぁぁぁぁあぁぁぁあッ!!」
……先に帰った俺が、部屋までの道のりを半分程消も化した頃、どうしようもなく嫌な予感がして、急いで引き返すことにした。
「……まぁ、大丈夫だとは思うけど、ルイスも女の子だしな」
先に帰っていたとはいえ、距離は大したことはない。
だからすぐにルイスを見つけることは出来た。
ただ、さっきまでとは様子が異なっていたが。
「……お前、なにしてんだよ?」
そこにいたのは、血に濡れた刀を持った肇と、その横で倒れているルイス。
そして、倒れたルイスから流れた血。
「あん? ……あぁ、てめぇか。始めんぞ、構えろ」
「なにしてんだって聞いてんだよ……! 答えろッ!!」
俺の問いに、肇はいかにも怠そうに頭を掻くだけだった。
「しゃーねェだろ。答えなかったんだから」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
激昂した俺は、背負った大剣を鞘から引き抜き肇に斬り掛かった。
ちょっと物足りないでしょうか?
……と、反応を諦めて呟いてみたり。