62.守護神
本編に関係もないし、意味がないのも解ってます。
まず面白いのかどうかもわかりませんし。
でもこればっかりは異論は受けません。
良いじゃないですか!
お姉さん。
それに、せっかく書いたんで……その、良かったらご覧下さい。
「キミは、どんな所が良いんだ?」
自分で嫌いな、少し男らしい……、なんならカッコいいと言ってもいいかもしれない声が耳を突く。
でも今はそんなことは関係なくて、とにかくわたしがそう聞くと彼はこう返した。
「どんな……? 俺は洋食が好きなんだけど」
それから、今に至る。
「洋食……か」
あぁ、どうしよう?
自分に与えられた部屋でわたしは呟く。だって、仕方ないじゃないか。
思えば、普通の女の子が抱える悩みなんて、今までわたしには関係ない話だったんだ。
自分で驚くぐらいの大胆な行動に頭を掻く。
「……こんな姿、部下には見せられないな」
……自嘲する。
わたしの部下は、男も女もみんな、カッコいいと言う。
でも実際、そんなことはないんだよ。
確かに幼い頃から男勝りだった。その性格は自覚してる。
「どうしよ……」
まさか、そんなわたしが何処にするか、服はどれがいいかで悩むなんて。
いきなり、何処に住んでるの?
なんて聞きたくなかったから、動揺してたわたしは自分の住所なんて教えてしまった。
もしかしたらもう来るかも……、最近のファッションなんて知らないよ?
あからさまに狙ってるような格好なんて嫌だ。
焦って地味になってしまったかも。
でも、悩む時間は無くなった。
微かに扉を叩く音がしたから。
慌てて扉を開けるわたし。
こんな事で冷静さを欠くのも珍しい。
「こ、こんにちは」
「や、やぁ……」
いつものように、男みたいな口調になってしまった。
「と、とにかく! もう少し待っててくれないか? 用意がまだ終わってなくて……」
「あ、あぁ、わかりました」
「それと、敬語じゃなくていい」
「え? いや……」
「貸しがあるのはわたしの方なんだ。気を使われるとこっちまで堅くなってしまう……」
「それもそうで……あ、そうだな。……こんな感じで?」
「あぁ、頼むよ」
なんだか、ふわふわするような浮ついた気持ちのまま、わたしたちはその場所に向かって歩いていた。
高揚、興奮、浮遊感……?
この気恥ずかしさをなんと表せばいいのか。記憶が曖昧で返事もまともに……というか、目を合わせられない。
少しの気まずさに、辺りに目をやる。
……と、チャラついた容姿の男が2人、困った表情の女の子が同じく2人。
「ねぇ、オレらとさ、なんか楽しいことしようよ」
「え……? いや、ちょっと……」
「まーまー、とりあえずどっかくつろげるトコ行かない?」
まだこの手の誘いをするやつらがいたとはな……。
「……あれ、フェルト?」
居ても立っても居られず、わたしは男たちに声を掛けた。
「お前たち、彼女らは嫌がってるだろ?」
「な、なんだよアンタ?」
「お、この子らよりよっぽど美人だぞ?」
驚く男に、もう一人がなにやら耳打ちする。
「……確かにな」
「じゃあ、お姉さんがオレらに付き合ってよ」
「悪いが先約があるんだ。解ったらさっさと行け」
わたしは、この馬鹿な男共に隠さず鬱陶しそうな態度をとってやる。
「そう言わずにさー」
「遊んでみたら楽しいかもだって」
「聞こえないのか? わたしは、さっさと行け、と、そう言ってるんだ」
男共の軽い態度に苛々が募る。
民間人は殺せないことが唯一の救いだな。
……いや、今のわたしには枷だが。
「ん……? この男勝りな口調はどっかで聞いたことあるな……」
「アンタ、名前は?」
失礼なやつだな……。
まぁいい、わたしには恥じるようなことも、隠すようなこともない。
「……フェルト・フレイル。守護神だ」
「「!!」」
「おい! さっさと行くぞ!」
「しッ、失礼しましたぁぁぁッ!!」
わたしの名を聞いた途端、顔色を悪くした男たちは走り去っていった。
全く、失礼なやつらだよ。迷惑だし。
「あ、あの~……」
困っていた女の子が話し掛けてきた。
「どうした? ……もしかして、余計なお世話だったか?」
「いえ、助かりましたっ! そ、それよりわたしと付き合って下さい!」
あぁ、よかった。
「……って、え?」
「さっきのカッコいい姿に惚れました!」
「えと……、見て解らないか? わたしは……」
同性愛なんてわたしの趣味じゃない。
って断ったんだが……、
「それも解った上で、です」
……困ったな。
「話してるとこ悪いけど、今は俺とデート中だから」
さっきまでの話を聞いていたのか、彼がわたしの手を掴んできた。
ちょ、ちょっと恥ずかしい一言に気を取られてわたしの頭が真っ白になったが……。
「……なぁんだ、やっぱりカッコいい彼も居たんだぁ……」
落胆する女の子。
「……そ、そうなんだよ。済まない、行こうか?」
「あぁ、そうしよう」
焼けるような恥ずかしさから今度は逆に、わたしが手を引いて歩き出す。
「……あの人たち、ホントに付き合ってたらお似合いなのにね」
「だね……」
わたしに男付き合いがないのはこの所為なんだよ。正義感が強いのは解ってる、もしかしたら鬱陶しいかも知れない。でも、気付くと動いてしまっている。
そして、男より男らしいわたしから離れていく……。
あぁ、今回もそうか、って半ば諦めている自分も嫌い。
「良かったと思いますよ」
「え……?」
ふと、彼がそんなことを言う。
「あの2人、助けて良かったと思いますよ。俺は」
「そ、そうかな……?」
「あんな風に動ける人なんて少ないと思うし……、カッコよかったですよ」
そう言うと、彼は微笑んだ。
「そ、そか……?」
……彼に言われると満更でもない。
ちょっと顔が赤くなってたかも知れないな。
--でも、悪くない気分だ。
はい、迷走してますよ。