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61.総力戦


ご指摘、要望などあれば気軽に感想どうぞ。


というか、もしあれば気軽にお書き下さいm(_ _)m




 未だ残る煙を、その場にいる全員が固唾を呑んで見守った。


 さっきの爆発を見れば有り得ないことだとは思うが、もしもあの男が無傷なら、為すすべはない。

 待っているのは一方的な虐殺だからだ。

 辺りを包む緊張感に、全員が口を開くことすら忘れる。


(立つなよ……? 今は全員が無傷とはいえ、余力は残ってないんだからな……)


 --しかし、突き立てられた矛によって静寂は破られた。


「ふーッ、ふー……、おのれ……まさか、防ぎ切れないとはな……」


 男は瞳に理性を宿らせ、立ち上がった。


 静寂はこの時を待っていたかのように喧騒、一転して装飾する材料に変わる。



 その中でも冷静さを保っていたフェルトがなにかを投げた。


「キミっ、これを!」


 受け取ってよく見れば、種類まで解らないがそれは爆弾だった。


「これで決めろって……?」


 まぁ、そういうことだろう。

 さっきの攻撃をまともに喰らって五体満足だったことには驚いたが、満身ではない筈。

 理性が戻ったこともその証明ともとれる。

 動揺しても事態は好転しない。


「ティーナ、点火ッ!!」


 矛が引き抜かれる間、俺は手に持ったそれを、外さないよう慎重に、正確に投げた。


「はいっ!」


 ティーナはそれに応じ、放物線を描く爆弾を炎で撃ち抜いた。


「ぐぬ……っ!!」



 再度、視界を火焔の球体が埋め尽くし、爆音、紅蓮、空気を焦がす赤が膨張する。


 みんなが勝利を確信したその時、俺は静かに大剣を構えなおし、未だくすぶる炎の中に突っ込んでいった。


「……ッ!! この隙を……」


 驚くことに、この男は途轍もない爆発の中で油断した隙を狙っていたのだ。


「信じられないぐらいタフなのはよく解った。だから、俺はお前に隙を見せないし、もう誰も殺させない!!」


 残った炎が肌を焼く熱気の中、俺は残った力を注ぎ込んで剣を振るった。


「よく言ったものだ……。狙いを見抜いたのも見事、しかし、まだ甘い」



 再度、刃を掴む手。


「……そうかもな。でも、お前も矛と手を封じられた状態でよく言えたな!!」


 俺は素直に柄から手を離し、


「うあぁぁぁぁッ!!」


 能力を全解放、思いっ切り拳を叩き付けた。

 効いているのかどうなのか、男の顔が歪む。


「お前如きの拳など……ッ!」


「万全なら通じないだろうな、知ってるよッ!!」


 剣を捨て、応戦の構えを取る男だったが、まぐれに俺の蹴りが顎に入った。


「ぐぉ……、おのれッ!!」


「ダメージが簡単に回復するかよ、今まで敵の攻撃なんて受けたことないんだろ!」


 受けたダメージは、確実に男の身体を蝕んでいた。

 能力を解放した状態ならついていけるぐらいには。


 それでも、一発喰らえば終わることに変わりないだろうが。


「限界だろ? さっきの姿を見てお前の味方しようってやつもいない、もう諦めろ!」


「調子に乗るな。儂とて、なにも素手で闘ってやる筋合いはないのだからな!」


 隙を突いて、男が矛を引き抜く。


 それを見て俺も剣を拾って、応戦した。


「……ぐっ!!」


 やはり武器の扱いは男の方が上か……。徐々に俺の方が追い詰められていく。

 

 実力の差を痛感するが、ふと、俺の目に2つの影が映った。

 男の背後から寄った2人を見て、今度こそは俺も勝利を確信する。

 男が俺の視線を見て振り向く。


「何時の間に……っ!」




 驚きを露わにする男に、フェルトが上段から切り掛かった。

 同時に、ティーナも拳を突き出す。


「はぁぁっ!!」


「でやぁぁぁ!!」


「ぬぅ……っ」


 剣は矛、拳は手とぶつかって独特の激突音を放った。

 2人の攻撃を見事に相殺した男だが、これで両手が使えない。


「……甘いのは、お前だったみたいだな」


「おのれぇ……っ!」


 剣を半回転、柄を握る。

 一応、この剣の特性を説明しよう。持ち主の能力を、意志を汲む、だ。


「……終わりだ」


 力加減一切無しの全力で、柄を空いた腹にぶつけると、一瞬、苦しむように呻き、気を失った。


 見届けて、大剣を鞘に戻す。



 と、フェルトが話し掛けてきた。


「キミには随分と助けられたよ。有難う」


「いや、利害の一致ってやつで俺は別に……」


 いやいやと、首を横に振るフェルト。

 気絶した男を拘束しながら、更に話を続け、


「なにを言うんだ。それを言えばわたしなんてなにも……、とにかく、このままでは申し訳が立たない。なにかお礼をさせて欲しい」


 軽く腰を折って一礼した。


「そう言われてもな……」


「あぁ、もぉ!」


 それでも渋る俺に、フェルトが手を取った。


「わ、わたしがキミに、個人的に興味を持ったんだ……その、ダメか……?」


 結局、断りきれずに後日、食事の約束をさせられたのだった……。




さて、次は恐らくですがフェルト視点です。


お姉さん好きなんで



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