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60.闘神グラディアス


人生、小説、悩み、共に迷走中\(^o^)/


へるぷみー……




「……あぁ、今思えば遺跡楽しかった……」


 自分の部屋で一人呟く。

 あの後、ルイスに連れ回されてスイーツ巡りをしたんだが、それも既に過ぎた話だ。

 その後はとくになにもなく、サンテに休みを言い渡された一週間が平和に経過した。

 あいつの性格からすれば、そろそろまたなにか頼まれるんだろうが……。


 俺の予想が正しかったのか、少しして遠慮がちに扉を叩く音がする。


「あ……、あのっ」


「お、」


 この物凄く人見知りそうな声は……、


「……あぁ、やっぱフィオリか」


「……あの、お……お久しぶり……です……」


 この娘も相変わらず……、ではなく、以前より更に小さな声で返事が返ってくる。


「あぁ、久しぶり。……って、なんか前より人見知りが激しくなってないか?」


「あ、ぅぅ……はい」


「いや、責めてないから。大丈夫」


「は、はい……」


 あぁ、なんか懐かしいなこの感じは。


「それで、今日はまたパシリに?」


「……あぅ、えと、その……はい」


「なんで落ち込むんだよ……」


「……すす、すいません」


 徐々に、けれど確かに落ち込んでゆくフィオリを励ましつつ、さっさと用意を終えて指示された場所まで向かった。


「……やぁ」


「今度はなにをすればいいんだ?」



「……わかってるようだね。話がし易くて助かるよ」


 すっかり見慣れてしまった屋敷の一室、社長室のように鎮座するその部屋で用件を仰ぐ。

 軽い気持ちで聞いた俺が驚いた。

 思ったよりも事態が深刻なのか、サンテの表情は冴えない。


「僕らが所属する組織を政府と呼ぶなら、今回はその反政府組織が暴動を起こしたんだ」


「……クーデターか?」


「あぁ、そうだね」


「……それぐらい、直ぐに鎮圧出来るんじゃないのか?」


 なにせ、世界の殆どを掌握する組織だ。

 突発的なクーデターなんて歯牙にも掛けない筈……、疑問に思った俺は率直に聞き返した。




「勿論、出来る限り……つまり、既にそれに裂ける戦力は注いであるんだ。滅多に出て来ない組織の守護神、ガーディアンも召集を受けたほどだからね」


「……だったらなんで--」


 予想済みだったようで、俺の言葉は遮られた。


「敵に異能力が居るようだ。それも、顔見知りの」


 真剣な眼差しで言うところを見ると、本当にそいつが圧倒的な戦力差を覆しているのだろうか……。


「この際、なんで顔見知ってんのかは聞かない。ただ、強いのか?」


「……強さが当時以上だと考えると、そいつ一人でキミを三人は殺せるね」


「そんな冗談……には聞こえないな」


「僕は真剣に言ってるんだよ。正直、キミは強いが一人で戦局を変えるのは無理だ」


「……そいつなら出来るって?」



「現状、その通りだと言わざるをえないだろうね」


 サンテは、事実を淡々と述べていく。

 遠回しに言ったところで意味がないことを知ってるんだろう。だから尚更、俺にも事態の深刻さが伝わる。


「……それに巻き込まれる人もいる、そいつがどうだか知らないけど、結局は行かなくちゃならないんだろ?」


「……フ、キミは話が早く済んで助かるよ」


「あぁ、じゃあ直ぐにでも行く」


「わかった。今回は非常事態だからね、龍の力も頼るといい」


「いや、流石に女の子を連れて行くわけには……」


「妾は行きますっ」


 さて、今度はどこに隠れて居たのか……、突然ティーナが姿を現した。


「駄目だ。連れて行けない」


「……妾は忘れません、遺跡に連れて行ってもらえなかった事を」


「……あー、あれはいきなりだったから……」


「それに、ご主人様を放って置けません」


「いや、そうは言っても--」


「こんな時の為に、ティーナは在るのですっ」


 ティーナが今まで放置以外に反論したことはない。

 その態度が一転、今回は説得しても一歩も譲らず、頑として揺らぐことはなかった。


「……はー、わかった。でも、危ないことは絶対させない。いいな?」


「はいっ。きっとお役に立ちます」


 瞳に闘志を宿すティーナ。

 と、サンテが割って入った。


「あぁ、最後に一つ。あいつと一人で当たっちゃ駄目だ。最低でも二人、現地の守護神とそのティーナと三人だよ、いいね?」


「……あぁ、わかった」


 今まで借りがある分、なにも言い返すことはしなかった。

 それに、これは心配じゃなくて警告だ。恐らくは。


「そう言えば、レノアはどうしてるんだ?」


「既に向かわせてる。でも、今回は別働隊だから会わないと思うよ?」


「……俺よりあいつの方が適任じゃないのか?」


「僕はキミに可能性を感じる。……それじゃ駄目かい?」


「いや、お前に言われると心強い」


 平和ボケした頭は、一転して烈火の如く危険を報せた。

 行って初めて解る。元の世界も同じ、どこに行っても争いは確かに在る。

 俺一人が加わってなにが変わるのかは解らないけど、そうじゃなくて、行かないと駄目なんだ。


 決意を固め、ティーナの翼で戦場へ。

 凄まじい速度で、どれだけ飛んだのか、少し遠すぎるぐらいの距離に、そこは在った。

 直ぐに降りる場所を見繕い、着地する。


「……うっ、これは……ッ!」


 百聞は一見にしかず、予想と現実は違う。

 知らぬが仏とはよく言ったもので、凄惨、壮絶極まりない。

 この戦場にいる人数分、大量の銃器が投入され、吐き出された火薬が火薬に引火、誘爆し、今も辺りを灼土へと変えていく。


 倒れている人は例外なく体のどこかに穴が穿たれ、足が、手が、首が、千切れて先がない。



「っくそ……今、倒れてる人が悪人か善人かなんて俺には解らねぇけど、話す余地は無かったのかよ……ッ!!」


「ご主人様……」


 なにが最善かなんて俺は知らない、けどこんな光景はもう見てられない。

 誰だって見れば思う、終わらせなきゃ駄目なんだ。


「一番被害出してるやつを潰せば……少なくとも戦いは終わりに向かう。ティーナ、手伝えるか?」


「はいっ」


 見当なんて要らない。

 一番戦火の激しい場所、そこに居るはずだ。


「……許せるかよ、こんなの……ッ!!」


 背負った大剣を抜き放ち、激戦区へと向かう最中、倒れている人、それによって流れた夥しい量の血。

 ギリギリと、歯が折れそうなほどに軋んだが、煮えた頭には解らなかった。


「…………あれは?」


 ふと、目に留まるものがあった。

 戦場では一際目立つ桃色の髪を靡かせ、流れるような動きで次々と敵を切り裂いていく。

 周りに指示を与えながらも戦う姿は、素人でも一目でただ者ではないと判断できる。

 しかし、一番驚いたのはそれが女性だと言うこと。それも、戦場からはかけ離れて美しく、軽い防具を身に纏った有り得ない程の美女だった。

 少し、足を止めてそちらに意識を向けるとその集団に左右から敵が迫っている。


「おい、このままだと挟撃に合うぞ」


「ご主人様は右をっ」



 隣から、粉塵が舞う。

 ティーナが翼を広げ、飛び去った為だ。


「あれは助けないとな……、あのままじゃまずいっ!」


 遅れて、俺も一直線に走り出す。

 近寄ってくる人を味方か判断しながら薙払い、右から迫っていた集団に突っ込む。


「……退けぇぇぇッ!!」


 肩まである大剣を、力の限り大地に叩き付ける。


 地鳴りがして、深く抉れた大地が集団を覆うほどの砂埃を巻き上げた。


「「な、なんだこれは!?」」


 突然の出来事に、敵の集団が叫んだ。

 俺は、それに負けないぐらいに声を張り上げた。


「退けッ! これは脅しじゃない!!」


「そ、そんな脅しに誰が--」


 恐らく集団のリーダー格であろう男が反論する。

 しかし、俺が威圧するように殺気の篭もった瞳を向けると気圧されて押し黙った。


「お前、今まで何人殺した? これだけ人が倒れてて、殺してない訳ないよな? ……言っとくけどな、俺はお前たちを斬るのに躊躇わない」


「ぅく……ぐッ!」


 俺の脅すような物言いにリーダー格は大量の汗を吹き出しながらも堪えた。


 余計な犠牲は出したくない。

 だから、能力を行使して死なない程度の圧力を掛けた。


「ぐ……ぉッ!!」


「言ったろ、退け。それ以外は認めない」


 俺は善人ではないが、流石に知らない人が誰かによって倒れていればむかつくし、憤る。

 犠牲は出したくないとはいえ、こいつらが許せるわけもない。


「おーい、そこのあんた」




 対処に困った俺は、さっきの舞のような動きを見せた女性に声を掛けた。


「……わたしか?」


 蒼い眼を持ち、鋭い眼光を放つその女性は、凛とした声でこちらを振り返った。


「指示して、こいつらを縛って置いてくれ。情報が聴ければ根絶やしに出来るだろ?」


「な、なるほど。それにしても、さっきの翼の子といい、キミといい……、一体、何者なんだ?」


「味方だ。あんたは?」


「むぅ……名乗ってくれないのは少々寂しいが……、わたしの名はフェルト、階級は大尉で、ここの守護神(ガーディアン)だ。何者か解らないが、協力に感謝する」


 フェルトと名乗った女性は、軽く一礼すると部下に指示を出し始めた。


「そっか、あんたが……どうりで動きが他と違うわけだ」


「ほ、褒めてもなにもやらんからなっ」


 ちゃんと話を聴いていたようで、指示を中断して満更でもない表情をした。


「いや、礼よりも指示が終わったら、今度は俺たちに協力してほしい」


「なにをだ? 部隊を救ってもらったんだ、わたしで良ければ喜んで協力しよう」


「ありがとう。実は、サンテに現地の守護神と協力しろって忠告されて……」


「ら、雷神が……? わかった。Special一人の討伐だな?」



 フェルトは一瞬、驚いた顔をしたが、既に事情は伝わっているようで逆にこっちが驚かされた。


「なんだ、伝わってるなら話は早い。それで、場所は解ってるのか?」


「場所もなにも、向こうで味方を蹴散らしているのがそうだ」


 フェルトが戦場の一角を指差した。


 見れば、確かに其処が一番激化しているようで、誰も太刀打ちなんて出来ていなかった。


「助けに行けないのが悔しいよ……、わたし一人では犬死にだからな」


「……さて、どれくらい強いのか解らないけど、俺たちは先に行っとくぞ?」


「あぁ、頼む。わたしも落ち着いたら直ぐに駆け付ける」


「ティーナ、行くぞ」


「はいっ」



 ティーナは本能からか敵の強さを感じているようだ……、汗が一筋、頬を伝っていた。


「無理しなくても大丈夫だぞ?」


「……大丈夫です」


 怯えているわけでは無さそうだが、これまで見ないティーナの真剣な顔つきを見ると俺まで気が引き締まる。


「ご主人様、飛びます」


「……あぁ、頼んだ」


 なにかを決意したように、ティーナが翼を広げた。

 返事をすると、手を掴み、飛ぶ。


「……あいつだ」


 空から集団を見下ろすと、明らかに一人だけ次元が違う。


「ご主人様、気を付けてください。他とは存在感が違います」


「あぁ、わかってる。じゃ、降ろしてくれ」


 俺が言うと、ティーナは心配そうな顔で手を離した。


(落ちる勢いで斬ってやる……っ!!)


 空中で抜刀、


「お前を倒せば……、食らえぇぇぇッ!!」


 落下の勢いを加え、集団の真ん中、人を蹴散らすその男に背負った大剣を振り下した。


「……ん」


 男は、俺に気付くと手に持った矛を振り上げた。


 直後、甲高い激突音が辺りに響くと、俺は矛の刃に圧されて宙を舞う。


「な……ッ!?」


 勿論、殺す気で放った全力の一撃だった。

 だというのに、弾いた男はまるでそれが当たり前だと言うように。


「ふむ、新しい敵かね。やれやれ、これではキリがない」




 俺を真っ直ぐに見据え、力強く大地を踏みしめた。


「……っく!!」


 俺が驚いたのは、踏み出した瞬間には目の前で矛を振るっていたことではない。


 圧倒的なのは、その腕力。

 俺と変わらない身長、ともすれば戦える年齢でもなさそうな外見。どうみても、今刃を交える相手とは違和感がある。


「お前は、他の人間とは違うな」


「ぐッ! な、なにがだよ!?」


 話している間も矛は振るわれる。

 能力を行使していても圧される程の勢い、威力で。

 目で見て防ぐ余裕はない。腕が動いたと思うや否や、俺は合わせるように剣を振るう。

 未だ、俺の身体に矛が触れていないのが奇跡だった。


「お前は、儂が攻めても死なん。つまり、他の人間とは存在が違うのだ」


「へぇ、お前の頭がどうかしてるんだろ? じゃあ……、これならどうだ!?」


 この男は強い。そんなことは動きからも交えた矛からも解る。

 それとは異なる、全貌の見えない異質の恐怖感に、俺は疲労も惜しまず能力の全てを解放した。


「ぐぅ……っ、この力……、やはりお前も神に選ばれたと言うことか……」


 一瞬、押さえ付けられ膝を付く男だった。

 だが、掛かった重力に、と言うよりは突然で驚いた、という感じだ……、暫くすると、考えを呟くように立ち上がった。


「……っっ! 嘘だろ……、これでなんで動けんだ--」


「まさかお前、これだけじゃなかろうな?」


「はぁ? ッうぉ!!」


 ガキッ!! 再度、矛が俺を襲う。

 伸ばせば触れられる距離で刃を合わせる。しかし、確実に俺が圧されていく。

 決して力を緩めていないのに、だ。


「……おっ!? 危ねっ!」


 刃が頭を掠める。

 屈んでなければ頭が無くなってるところだ。


「っくそ!」


 屈んだまま、相手の足に剣を振るう。


「……ふむ、これだけか」


 それを見た男が矛を回す。

 鋭い音を立て、火花が散った。


「悪かった、なぁッ!!」


 俺は弾かれた勢いで回転、巨大な大剣を振るった。


「……ふん、どうやらこれだけのようだな」


「は?」



 言って直ぐ、男を纏う雰囲気が変わった。


 直後に、俺の振るった剣は音もなく素手で鷲掴みにされた。


「そうか、お前はまだ知らんのだな」


 またも意味の解らないことを言う男。

 止められた剣は俺の力じゃどうやっても動かない。

 だから情けないけど、


「……なにがだよ?」


 そう、言葉を返すしかなかった。


「お前にはなんのことだか解らんだろうな。嫌でも解るよう、神に選ばれし者、その身に闘神を宿す力の片鱗を見せてやろう」


「さっきからなにを言ってんだ? 訳がわからな--」


 ぐんっ、と、男の身体から高密度の力が噴き出した。


 男は、下手をすれと視認性すらあるそれを己の矛に纏わせると、あたかも命を刈る死神の鎌のように俺の脳天へと振り下ろした。


「え……--」


「ご、ご主人様っ!!」


 その一撃で、何時の間にか戦いに魅入っていた敵や味方、果ては大地と一緒に、その場にいた全員が吹き飛んだ。

 幸い、俺は直前でティーナが押し出してくれたため直撃は免れた。


「「うぉぁぁぁぁッ!!」」


「……あぁっ!!」


(全員止めきれるか……ッ!?)


 今度は俺が助ける番だ。

 と言うより、ここにいる全員で立ち向かわないと……、

正直、勝てる気なんてしなかった。



「止まれ!!」


 能力を全解放、俺とティーナは勿論、全員分のクッションを作る。


「うぁぁ……--へ!?」


 叩き付けられると思っていた人々は驚く、が、あの男は待ってはくれない。

 更に、空気が変わってからの様子がおかしい……。


「……フーッ、フーッ」


「グ、グラディア様……?」


 敵の中の一人が、豹変した指導者に疑問の声を上げる。


「……みんな、聞いてくれ!! 一体、何人の人が苦しんだと思う!? クーデターなんておかしい! ちゃんと、話す機会がある筈なんだ! だから今は……、手を貸してくれ!!」


 ざわざわと、俺の言葉に動揺が走る。

 その時、今や理性があるのかすら怪しい男、グラディアスが抗議の声を上げた。


「フーッ……、キサマラァァ、テキニ、テヲカスノカァァァ!!」


 男は、狂ったように矛を振り回した。

 触れたものは全て音を立てて崩れていく……、その鬼神のような姿を見た敵が恐怖に身を竦ませる。


(一体、どうしたってんだよ……? まさか、あいつが言うとおり闘神ってやつが乗り移ったみたいな……)


「落ち着いてくれ!! 俺があいつと戦う。要は援護が欲しいんだ」


「「よし、任せろ!!」」


「お、おい……。どうする……?」


「お前こそどうすんだよ!」


 元々、味方だった連中とは違い、ざわめくばかりだ。

 と、歩くのが煩わしくなったか、全てを吹き飛ばした張本人が走り出した。


「迷ってる隙なんかない! やるんだよ!」


 みんなを鼓舞するよう声を掛ける。

 次いで大剣を構え、迎撃の体勢を取り、


「ガァァァァァッ!!」


「あぁぁぁぁぁッ!!」


 三度に渡って、刃がぶつかり合った。


「……ぐぅ、くっ!!」


 味方は援護射撃を始めた。

 しかしそれでも劣勢を覆すことはなく、見かねたティーナが離れろと手で合図をする。


「……っく、これでいいか!?」


「下がって!!」


(駄目か……っ!!)


 まだ射程圏内か……、聞きつけた俺は背を向けて走ることに専念した。


「いきますっ!!」


 ティーナは深く息を吸うと、周囲を焼き尽くす業火を一点に向けて吐き出した。


「ォアッ!!」


 それに気付いた男が矛で周囲を薙いだ。


「嘘……っ!!」


 ズバン!! と、男が振るった矛は大地を裂き、出来た谷を炎が越えることはなかった。


「…………くそ、言われた通りだ。でも、フェルトが加わってもこれは……っ!!」


「ヴァァァッ!!」


「っくそぉぉ! 負けるかぁぁぁッ!!」


 どうやら俺を最優先事項だと決めたようだ。

 再び滅茶苦茶な速度、数で降りかかる矛の刃、ここで気圧されたら隙が出来る。

 俺に残された手段は負けじと応戦することだけだ。

 だがそれでも、人間は気合いだけではどうにもならないもので……、少しずつ、徐々に確かに生傷が増え、身体に刻まれていく。


(……一撃が重いんだよッ!! あぁ、手がジンジンする……)


 その時、凄まじい形相で矛を振るう男がよろめいた。


(なんでか知らないけど、今だ!)


「済まない、少し手間取ったが……微力ながら援護する!!」


(フェルトか、ありがとう!)


「おぉぁぁぁぁ!!」


 この隙に、ありったけの力で柄を握り締めて、渾身の一撃を放った。


「はー、はー……っ!!」


 ……のに、だ。


 男は、自らが名乗った闘神さながらに、起き上がってくる。

 本当になにもなかったかのように。


 これはその場にいる人達の力を借りないとどうにもならない。いや、それでもどうなるか……、といったところか。


「……もう、まどろっこしい交渉は無しだ。みんな、やれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


(押しつぶすのは無理、それなら打ち上げてやれば!!)


 俺は、自らを神に選ばれた者だと謳う闘神グラディアスを空中に"押し上げて"力の限りに叫んだ。


「「……う、うぉぉぉぉぉぉ!!」」


 敵、味方、今はその区別もなく、打ち上げられた標的に向けて集中砲火を浴びせる。


 赤龍であるティーナも、守護神であるフェルトも、それはつまり、この一瞬で炸裂する威力が、この一瞬では、世界一であることを意味する。


「ォォォ、アァァァァァァァァッ!!」


 他に類を見ない量の火炎、火薬、エネルギーが、互いに融合しあって途轍もない爆発が拡がる。

 例外なく視たものの聴覚を麻痺させ、視界を埋め尽くしたそれは、やがて規模を収縮させていき、最後には火薬の匂いと煙だけを残した。


「やったか……?」


 ぽつりと、ちゃんと認識できたか危うい耳に、フェルトの呟きが聞こえた。


(これで無傷なら逃げるしかないぞ? ……致命傷じゃなくてもいい、頼むから効いてくれ……!!)


 暫くして、男の身体が地面に激突。

 反動で二度、三度と叩き付けられた。


 --これが死体か、それとも生きているのか、結果で俺達の生死が決まる気がした--。




ちょっと先までの構想はあるんですが時間がありません(汗


特に最近は、



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