6.戦闘
今回の話はシリアスイメージです(一応
-…どうする…?-
こんなこと初めてだからな…どうしたらいいのか全くわかんねぇ
これも日常じゃ味わえなかった緊張感だな
…こんなときに不謹慎だが…楽しいと思えてしまう
もちろん、もう死ぬのは御免だが
悠「リリィ」
リ「なによ?」
悠「敵に見られてる…」
リ「…気付いてた?」
悠「いつわかったんだ?」
リ「ん~、悠がなんかしてた後かな」
どうやら俺とほとんど同時らしい
なら信憑性はより上がる
2人で同時に気付いてるってことは…少なくとも思い過ごしじゃないだろうからな
悠「なんかって…」
俺は俺なりに頑張ってんのに…
なんか扱いなんて…心外だ!
…って今はそんなこと考えてる場合じゃないだろ
キリがない…
そこで無理矢理意識を断ち切る
悠「…そんなことより!…どうするんだ?」
平常を装い、声も抑えて相手に悟られないように気をつかう
リ「…わかってないわね」
リリィは、やれやれ。といった様子で全く動じていない
これじゃ1人でテンパってる俺がバカみたいだ…
リ「さっきの悠の撃ったやつとあたしが撃った雷、あの威力で撃てるやつはザラにいないわよ?」
悠「俺のはまぐれだけどな」
リ「なに言ってんの?一回出来たんだからそれだけの力は持ってるってことでしょーが」
諭されるように言われる
…言い方に少しトゲがあったので多少イラっときたのは秘密だ
悠「…でもあれフルパワーだぞ?もう一回出来ても…そんな急に何発も撃てねぇよ」
リ「ふ~ん、じゃあさっきのあと何発までいけそー?」
フォッ…
-…!!
なにか飛んでくる…っ!
その物体は、見えるギリギリの速度で空を切り裂きながら確かに悠を目指して飛んでいる!
…マズい…!
…そう思った瞬間、体が有り得ないくらい軽くなった
身軽などとは段違いに…それこそまるで飛ぶほどに
なんだ?これは!?
これならギリギリ…
避けられるっ…!
右足で左回りに体を捻りながら床を強く蹴る
ビッ
当たる、と思われたその物体は、悠の胴ではなく着ていた服の胴の部分を横一線に裂いた
悠「…あっぶねぇ」
ザクッ
避けた物体が軌道はそのままに近くの木に突き刺さった
チラッと見えたがあれは多分クナイだった…実物見たことないけど
リ「え?…ちょっと!悠!大丈夫!?」
一足遅れてリリィも気付き、心配して近寄ってくる、が
悠「大丈夫。当たってないから…それよりも周りを注意してくれ…避けるだけで精一杯だから守りきれないと思う…」
リ「うん、わかってる!」
今の速度…以前の俺だったら避けれてない…それどころか…気付く前に確実に死んでいただろうな…
やっぱり何らかの力が働いているに違いない
しっくりこないが仕方ない、まずはここを乗り切ってからだ…
ビュッ
-!
音は一つだが間違いない…次は同時に三発飛んでくる
大丈夫。
さっきより馴染んでる
…今度は見切れる!
二発は俺
…一発は…
悠「危ない!」
全身に気を巡らせると一気に駆け出し、近くにいたリリィを引き寄せる
グイッ
リ「キャッ!…あ…ありがと……」
…強引にやったから抱き締める感じになったのは解るけど…照れてる場合かっ!
悠「さっきからの攻撃で位置は大体わかった……今度はこっちからだ」
クナイが飛んできた方向に手を向ける
さっきより加減して、それでも巨大な風の弾を放つ!
放った風の勢いは、おそらく敵がかくれているであろう規模は狭いが林らしきその場所にそのまま激しく炸裂する!
ドッッ…バキッ、バキバキバキバキ!
撃った弾のサイズに反して周囲の木まで薙ぎ倒した
今の破壊した規模を見れば、当たれば恐らく即死しているだろうことは見て取れる、だが…
ヒュー…ダンッ!
…どうやらこちら側に高く跳んでかわしたようだ
そのおかげでその姿が明らかになった
……見たまま忍者じゃねぇか!
それにしても脚力が異常だ
目測で4メートルぐらい跳んでいる
今の体重を感じない俺でもそれ程跳べるかどうか…
?「一筋縄ではいかんようだな」
忍者らしき男が初めて喋った
その声は想像より老けていて、勝手に四十ぐらいだろう、と断定した
よし…以下おっさんと呼ぼう
?「…ふっ!」
そのおっさんが振り絞るように声を発した途端、纏っている気配がかわった
悠「…来る!」
ゴウッ!
おっさんが走ってきた!
…絵面的にどうかとは思うが…
…速い!
俺とおっさんにあったそこそこの距離が一瞬で詰められた
バイ○ハザードのウェ○カーを想像してもらえればよくわかると思うが…
気を張っているのに全く見えないスピード
いきなり掌底を喰らった!
お「フンッ!」
ガン!
悠「ぐっ!」
有り得ない威力だ…
規格外にも程があるだろ
その威力はさっき放った風の弾より地味だが凄まじかった
人を…それもそう軽くない青年を楽々と吹き飛ばした
吹き飛ばされた勢いで後ろの崖にぶち当たる
悠「うっ!…がはっ」
ぶち当たった衝撃で大量に吐血した
内臓まで傷つけてしまったかもしれない
…やばい
…勝てるか?
そう思った瞬間、
リ「…悠に……なにしてんのよぉっ!」
バジッ…バチバチバチ!
リリィが力を解放した
バジジジッ…ジジッ
全身に雷を纏いながらおっさんに歩み寄るリリィ
お「貴様…やはり組織が危惧した通りになったか…」
リ「…危惧ってなによ?」
バチッ
おっさんに威嚇程度の雷を放つ……がそれは気にもしていないかのように避けられる
お「……組織は…お前がいずれその莫大な力に覚醒し、その力をもって世界のバランスを崩いてしまうことを恐れた……しかしお前はどういう理由か、なかなか覚醒しなかった…それを機に、そのまま……消してしまった方がいいと判断したのだ…私は年端もいかぬ女を消すのには反対だが、そのために世界の力のない人々が苦しむわけにはいかんからな…」
…そうか、そんな理由で…
どうやらただのクズじゃないようだ
…だけど
悠「おい、おっさん。」
さっきのダメージで、脳が揺れてしまったのか焦点がイマイチ定まってない、足も立ち上がるのを拒否するかのように意志に反してなかなか動かない
…でも、男が一発もらっただけで倒れるわけにはいかねぇだろ
……しっかりしやがれ
震える足で立ち上がり、叫ぶ
悠「リリィはなにもしてねぇだろ!お前らが何を知ってんだよ…そんな理由で!殺されてたまるか!!」
足は…動かない
手は……大丈夫だ、まだ動く
俺に出来るのは…悔しいけど力尽きるまで撃ちまくるだけだ
情けねぇ、たかが一発もらっただけなのにな
ドン!…ドン!ドン!ドン!!
力の限り風の弾を撃ち込む
お「死にぞこないが…お前ごときになにがわかる!過ぎた力は望まなくとも破壊を生む…その時、何かの拍子に人々が巻き込まれないように…そんな人々のために…私たちがいるんだよ…!!」
ドスの効いた声で凄んでくる
…勝てる気もしねぇ、生き残る自信もねぇ
けど…負けるわけにはいかねぇ!
ズッドォォン
ドォン…ガァン
バチバチバチ……
風の爆音、雷の轟音が鳴り止まない
おっさんは避けるだけで精一杯のようだった。反撃出来ていない
あのスピードで動き回って尚、何発か当たっているのに…それでも倒れない…
その時に、おっさんが背負ってるものの重さを……自身の正義にかける信念を、見た気がした
バリッ
おっさんの足に雷が掠った
お「うぐっ…」
ダメージ自体は深刻ではないが、足が電気信号を受け付けなくなってるらしく、その場から動かなくなった
だが、動けないでいるのもそんなに長くはないだろう
こんなことで止まるようには見えない
…チャンスは今しかない
悠「これで、最後だ…」
全身に巡らされていた気を両腕に集中させる
次第に風が視認出来るほど圧縮され、手首から肘までに小さな羽根が生えたような姿になっていく
悠「迅風![じんぷう]」
充分溜めて右腕を捻りながら風を放つ
悠「疾風![はやて]」
あまり溜めずに左腕も放った
分けて撃ったのには意味があった…
一発目が遅く、二発目が速い
必然的に一発目に二発目が追いつく形になる
…寸前で足が動くようになった、もちろん避けるつもりだった…だが、それにはあの名も知らない青年の決意、信念、心がこもっているのがわかった…
当たってやるつもりはなかった…ただ、それ以上に…避けてはいけないと思った
炸裂する瞬間、二発目が追いついて倍以上に膨らんだ
ガッ
おっさんはそれを真正面から受け止めた
受けきれるはずもないことを知って、尚
…なんでだろうな?なぁ、名も知らない青年よ
何故本当に望んだものが変わってしまうんだ?
長い年月に目が、心が曇ったのか…自分の真実[ほんとう]の見たかったものがわからなくなっていたのかな
貫いてきた、筈なのに……後悔するのは何故だろうな
成果を上げて得るのは
達成感でなく、虚しさなのは何故だろうな…?
受けてわかった…
…そうだったな…お前はその子を守っただけだ
たしかにそれを責めるやつはいないよなぁ
歪んでるのは私の方
この青年はまだまだ正しいことがわかっているようだ…自分よりも遥かにな
曲がってくれるなよ、青年
…そう、聞こえた気がした…この風が生み出す轟音の中で聞いた声は、さっきのドスの効いた声ではなかった
だが、酷く心に響いた
バンッ!
鼓膜を突き破るような音と共に
名も知らぬ男はそれこそ跡形もなく消し飛んだ
だが、思ったより辺りに被害はでなかった
それは恐らくあの風が、細かい真空の刃が渦状になって標的を飲み込み、跡形もなく切り刻む、そんなタイプのものだったからだろう
…勝った気がしない…
敵も重く、それも壊しちゃいけないものを背負っているのがわかってしまった
自分が正義だとは思わない
だから、相手がクズなら良かったのに
あのおっさんはクズだったか?
…あの、俺が殺したおっさんは…
そんな自責の念に潰されそうになる……初めて人を殺したという罪悪感に吐きそうになる…
守るだけなのに…潰した、殺した、守るってそんな簡単じゃなかった…
不意に涙が零れた
…当たり前だ…俺にも当たり前の価値観があるからな…
そんな俺の苦悩に気付いてくれたのか、リリィが後ろからそっと抱き締めてくれた
リ「…甘えて、いぃんだよ?…1人じゃ…解決しないこともあるから…」
それに甘えて俺はとりあえず涙が枯れるまで泣くことにした
…心が壊れそうだ
俺が悪い、だけど俺だけが悪いわけじゃない
でも、相手も悪いようには見えない
そんな輪廻の輪のような答えがでないことを考えていたが、心は心で、体は体で一気に疲れが出たんだろう、激しい眠気で目も開けられない
それでもここで寝たらまた狙われると思ったから、近くの森で、寝られそうな所まで行くと
力尽きて泥のように眠ってしまった
気付いたんですが…この小説、今いる場所の背景描写が少なすぎますよね?
気をつけてはいるんですけどね(ノ△T)