59.遺跡探検Ⅲ
あらー?
やっぱ描写が……、
バトルは描写が難しいです(汗
奥へ進んでいると、ふとリリィがこんな事を言った。
「……ね、帰るときどうするの?」
リリィが言うのも尤もだ。
しかし、考えないようにしてたのも確かだし、なんと返したらいいのか……、そんな複雑な心境は表情に現れてたと思う。
「……どーしよっか?」
自分に言ってるのかどうなのか。
とにかく困り果てた表情で、もう一度問い掛けてきた。
「とりあえず進もーよ」
何時だって暢気なルイスが奥を指差す。
「……マジで? 行っちゃう?」
「うん、行っちゃう」
ルイスは、そう言うと何時もの軽い調子で頷いた。
「え? でもでもっ、何時かは帰らないと駄目なんだよ?」
「だからって止まるのはなしだ。別に出口が一つとは限んないだろ?」
「……確かに、これだけトラップがあると設計者自体も出られなくなっちゃいますわ」
「そ、そうだねっ。よし、じゃあ……行こっ?」
フローの言葉で、リリィは元気を取り戻した。
うん、やっぱりお姉さんは強いよ。
「そうこないとな。行こう」
それから暫く歩いていると、
「ね、ねぇ。やっぱりあたし達……、帰れな……」
……また発症した。
「言うな……」
ややあって、無理やりに立ち直らせ歩き出すと、また部屋に出た。
今度は狭くもなく広くもなく……、中途半端な部屋だった。
なにかが暴れた後のように荒れていたのが少々気になるが……、まぁいいや、触れないでおこう。
そして、目の前には思わせぶりな宝箱が一つ。
「…………罠、ですわ」
「……だな」
「悠、ふざけて開けないでよ?」
「なんで俺が開けるんだよ……、それを言うならルイスとかが」
「どーん!」
ルイスは宝箱を開けた。
「「お前ぇぇぇぇ!!」」
部屋に静寂が渦巻く。
「……なにも、起きませんわね?」
「あぁ、でもまだ油断は出来ないぞ」
「あれー? 中身ないじゃーん? チッ、しけてやがんなぁ」
「……どこの輩だお前は」
「誰かが先に入ったのかな?」
リリィの言葉を聞き、フローがなにやら気難しい顔をした。
「……おかしいですわ」
「なんでぇー?」
「こんな所まで踏み入ることが出来る人間なんてそうは居ないはずですわ。それに……」
「この部屋の荒れようだろ? これって多分、トラップが作動した後だよな」
「えぇ、それにこれは推測ですけれど、一度開けた箱を、それも罠が発動しているのに拘わらず閉めている所を見ると……」
「相当捻くれてるな、そいつ」
「えぇ、失礼ですけれど……、かなり」
「なぁんか、ニーナみたい」
「アイツもか……」
「あの子、自分の寝室に手榴弾仕掛けるんだよー? 気付くの遅かったら死んでたなあん時わww」
「……お前も相当クレイジーだよ」
結論が出たところで俺達にはどうしようもない。
(まぁ、同じように出れないでいるならどっかで会うだろ……悪い奴じゃ無いことを祈ろう)
それからは、なんだか笑えない状況になってきたのでルイスの軽口も減り、フローの洞察力でトラップを回避しながら俺達は更に奥へと進んでいった。
「これ、RPGならどんだけLV上がってるか……」
「あ、あーる……? なんですの?」
「……いや、なんでも?」
「あ、扉だよーっと」
ルイスの言うとおり、目の前に巨大な扉があった。
更に驚くべきことに、ルイスが突然、鬼の形相で閉じた扇を扉に突き立てたのだ。
「な、なにやってんだ?」
どうしても意味が解らないので、恐る恐る尋ねてみた。
「邪魔なんだよぉ! 早く帰らないとニーナが、ニーナがアタシのドーナツをを!!」
ギャアギャアと騒ぎ立てて扇を叩きつけるルイス。
……恐怖だ。
「お、落ち着け! ドーナツでキレんな!」
俺のその一言に、ルイス(恐怖)の手が止まった。
「わかってない! チョコの素晴らしさをあんたはわかってない!」
「いや、確かに旨いとは思うよ? 俺だって人より甘党だし……」
「え……?」
怒り出すかと思いきや、目を見開きキョトンとした。
(お? ちょっと効いてる? ……って、目ぇ開いたルイス可愛い)
「プリンとかも美味しいよな? あ、あとシューとか」
「……だよねだよねーっ?」
「おぅ、いいと思うぞ」
その言葉に、ルイスの表情がぱぁっと明るくなった。
「こんなに好みが一致する人初めてぇー。ルイスかんどぉー♪」
普段はつまらなそうにしているルイスがとびっきりの笑顔を見せ、俺の手を両手で掴んできた。
元が悪くないだけに、ギャップも合わさって心に響いたのは内緒だ。
「だから落ち着け、な?」
「うんっ、じゃあこれ終わったらスイーツ巡り行こうねー?」
「お、いいね。それは行こう」
「聞き捨てならないなぁ、あたしも行くからね?」
「えー? 2人で行くのー」
「まぁまぁ、フローは?」
「わたくしは遠慮しますわ」
「なんで?」
「甘いものはちょっと……、スイーツはビターしか許せませんの」
「そっか、わかった」
とりあえずルイスが落ち着いたので、それからもう一度扉と向き合うことに。
「……どうやって開くの?」
「さぁ……ルイスの扇でも無理だったしな」
「わたくしの能力でもこれはちょっと……」
明らかに人を通す気のない扉と暫く睨めっこ。
していると、中央にどうみても関係ありそうな窪みが2つ。
(……まさか、さっき拾ったダイヤと形が一緒だなんて……っ!!)
「……悠さん?」
「えっ!? どどどどうした?」
フローに見透かされて、あからさまに動揺してしまった。
いや、しかしだ。
ここでせっかくのダイヤを手放すのは惜しい。
「なにか渋ってますわ」
「いや、なにも渋ってないぞ?」
「……? おかしいですわね……」
ここで、フローが自分を疑いだした。
よし、これは誤魔化せるか……?
「あー、アンタがさっき拾ってたダイヤと形一緒だー」
(どちくしょぉぉぉ!! なに気付いてんだぁぁぁ!!)
「……き、気のせいだろ」
最後の望みを掛けて、出来る限り平静を装ってみる。
しかし、
「悠さん」
「………………はい」
結局、大人しくダイヤをはめ込むと、あっさり扉は開いた。
開きすぎてダイヤが壁にめり込む程に。
「あぁぁ、俺のダイヤモンドぉぉぉ……」
「はいはい、先に行きますわよ?」
そして、最後の部屋。
そう、ここは最後の部屋だ。
何故なら、髭を蓄えた老人を模した、5メートルを越す石像が三体、独りでに歩き回っているから。
ふと、石像の意識がこちらに向く。
みんなが絶望感に苛まれるかと思いきや、しかし違った。
(コイツらぶっ潰したら帰れんじゃね? なんか、ノリ的に!)
このタイミングで、みんなの心は一つになった。
「……ルイス」
「おっけぇー、ほんじゃー……飛んでけぇぇぇー!!」
言わなくても通じた。
今、みんなの心は一つだ。
お家に帰って寝たいのだ。
と、そんな事はどうでもいい。
とにかくルイスが扇を広げ、俺を吹き飛ばした。
背中に背負った大剣を抜き放ち、迎撃しようと手を伸ばす石像にぶち当たる。
「石が5tの衝撃に耐えきれるわけねぇだろッ!!」
どうやら、この剣が持ち主の意志を汲み取ると言うのは本当のようだ。
俺が振り払うと、鈍い音を立てて石像の手が吹き飛ぶ。
俺の力が通じることに味をしめ、今度は本命の頭を狙う。
柄を握る手により一層力を込め、飛ぶ勢いをそのままに、俺は銀に輝く剣を力強く振り下ろした。
「……はぁっ!」
ふと、銀の腕輪から光が漏れた。
何故だか解らないが、そこから力が溢れて、俺の放った一撃は頭どころか5メートルもの巨体をただの一太刀で斬り伏せた。
(俺にこんな力なかった筈だぞ……?)
自分で驚きながらも、両足で着地する。
三体の内の一体を真っ二つにし、残りの二体が一斉に踏み潰しに掛かってきた。
「……まぁいいか、倒してから考えればッ!」
1、2、心の中で予想し、ギリギリまで引き付けて二歩下がる。
二体の石像が、さっきまで俺のいたところを踏みつけ、驚いていた。
数瞬遅れて、避けられたことに気付くと怒りを露わにし、二体の石像が暴れ出した。
「こう見えて避けゲー得意なんだよ、俺は」
しかし、冷静に見て、攻撃を交わす俺に石像の怒りは募るばかりだった。
「さて、そろそろ反撃するか……、早く帰りたいし」
面倒だが攻撃した後、その隙を待った。
「……よし」
片方の石像が、自分の動きについていけずに仰け反った。
「倒れろッ!!」
石像の右足に刃を叩きつけ、石で出来た体を砕く。
片足を失い、ぐらっとバランスを崩した石像は凄まじい地鳴りを起こして倒れた。
「……立つな」
倒れた後も、もがくように立ち上がろうとする石像の右腕も砕いた。
……これで立ち上がれないだろ。
それで見切りを付け、最後の一体に向き直る。
「お前で終わりだ」
最後の一体が腕を振り上げた。
それを目で追いながら、石像に向かって走り出す。
「……そんな大振り、当たるわけないだろ」
石像の腕が、床に振り下ろされた。
「おぉ……っと、地響きが凄いな」
その腕に飛び乗り肘の辺りで跳躍すると、左から右に振り切って石像の首を薙ぐ。
咄嗟に、石で出来た手で防ごうとするが、
「遅いッ!!」
ガゴォッ!! 石像の頭が首から滑り落ちた。
頭と同時に床に着地し、少し心配になって剣を見る。
幸い、刃には傷一つ無く、手に入れた時と同様に淡く光っていた。
「……勝手に取ってきて言うのもあれだけど、ちょっと恐いな。なにで出来てんだよ? 石切ったのに傷一つないなんて……」
疑問に思いながらも鞘に戻すと、ひとまずみんなの方へ向かう。
「どっかに扉とかないのか?」
「あ……? 悠、危ない!!」
突然、リリィが叫んだ。
かと思えば、俺の後ろを指差している。
「ん……、おぉ!?」
見れば、片手片足の石像が俺を叩き潰そうと残った手を振り上げている。
「っくそ……、この剣で居合い斬りなんか、出来るかぁぁぁッ!!」
俺は言いながら、剣を鞘から抜き放ち、向かってくる手を切り裂いた。
「あれ、出来た……」
あと石像に残ったのは片足のみ、これなら流石になにもできないだろう。
そう判断すると、今度こそみんなの元へ。
「それで、出口は?」
「多分、あれじゃねー?」
ルイスが石像達の奥にある扉を指差した。
「あぁ、それ以外なさそうだな」
「少し疲れましたわ……」
「さっきから歩いてばっかりだもんね」
「早く帰ろー、アタシはとりあえず寝たい」
そして、また扉が開かない。
押そうが蹴ろうがビクともしない。
「……なんで?」
「あー、また開かないってぇー」
今度はさっきのような窪みがない。
一体どうやって開けたら……、
「……悠、それ貸して」
「ん? あぁ」
言われた通り、リリィに剣を手渡した。
「こっちは帰れなくてイライラしてんのにッ! さっさと開けぇぇぇぇ!!」
リリィは、さっきよろめいた程の重さをものともせずに剣を振り下ろした。
刃が当たった箇所を中心に、辺りに轟音を轟かせ、途方もない電流を炸裂させた。
あまりの光量に前が見えない明日も見えない。
そして、放電が収まった頃、
「あ、斬れた……」
扉は真っ二つに焼き切れていた。
「助かった~……」
安堵して、みんなで扉をくぐると階段があった。
「ま、まさか……上までこれを登るんですの?」
「そんなぁ~……」
階段は遥か上まで続き、段が多過ぎて終わりが見えなかった。
ついでに明日も見えない。
「……仕方ない、登ったら出るだろ」
「えー……」
「あんまりですわ……」
渋々、途中愚痴を言いつつも一時間掛けて階段を登ると外に出た。
色々と言いたいこともあるが、とにかく全員が無事に脱出出来たことに感謝だ……。
どんな話にすればいいんでしょう?
なんか、書けば書くほどおかしくなっていくような……。