58.遺跡探検Ⅱ
「…………」
「バトルがしたいの?」
「うん」
階段を降りた所にある部屋。
「ここもなにかあるのかな?」
「さぁな、トラップ踏みそうだから俺は動かないけど」
この部屋は、造りが長方形の癖にまたも丸く、ドーム状になっていた。
「不気味だねー?」
部屋の隅に、騎士を模した鎧の置物があった。
「1、2、……5体か」
「中に人はいませんわ」
心が色で見えるフローが言った。
「……リリィ?」
「ね、ねぇ……もしもだよ?」
リリィがふるふると声を震わせた。
「もしも……動いたり……」
「言うな、マジで動きそうだから」
「動けー」
「おーい、ルイス? 何やってんだ?」
見ると、ルイスが騎士の鎧を無表情で蹴っていた。
絵面的に言うと、鎧が動くより怖い!
「や、止めろ! 動いちゃうから!」
「こっちは、ドーナツ食ってんのに連れて来られたんだよぉ! あー苛々するぅ、動けー」
ガン! ガン! と、ルイスがエスカレートしていく。
と言うか、ドーナツを食えなかった不満を鎧にぶつけている。
想像して欲しい、ドーナツドーナツ言いながら鎧の騎士を蹴っている無表情の少女を。
心臓が弱い人が見れば卒倒ものの絵面に、堪えきれずにルイスを止めた。
「止めろって! 動いたらどーすんだ!?」
「…………あ、」
「動き……ましたわ」
「嘘……でしょ……っ!!」
俺の言葉とは逆に、満を持して鎧が動き出した。
「ルイスッ!! やっぱ動いたじゃねぇか!」
「あー、そだねー」
「そだねって……」
鎧の騎士が、手に持った剣を振り回し始めた。
「うぉっ!?」
剣が、一瞬前に俺が居た空間を滑る。
「キャ!! な、なにすんのよ!」
「ルイス、こ、これは洒落になりませんわっ!」
「あーもー、アタシが止めりゃーいいんだねー?」
「え……?」
「ほぉ、らぁッ!!」
ズンッ!! ルイスが閉じたままの扇を突き刺し、右に一閃。
鎧の騎士の腹を割いた。
「フロぉー、人……、居ないんだよねぇ?」
「えぇ、その筈ですわ」
「ほんじゃー、加減なーしよ? ッとぉ!」
一回転、扇を振り開くと、力の限りに……、
「せぇぇぇぇぇ……、のッ!!」
鎧の騎士を、床ごと根刮ぎ薙ぎ払った。
「……ふんっ、どーよ?」
扇を閉じ、ルイスが力無い瞳をこちらに向ける。
「……さっすが」
予想外のルイスの強さに思わずそう漏らすと、壁に突き刺さった鎧に目を向ける。
「ありゃー? 崩れてんねぇ?」
すると、突き刺さった鎧の合間から向こうの空間が見えていた。
「向こうに部屋があるのか?」
「か、隠し部屋ですのっ?」
亀裂の入った壁を、フローが砕いた。
すると、向こう側の部屋には目が痛くなるほどの金、銀、宝石の山。
「すっげぇー」
「いやいや、見たことねぇぞこんな財宝!!」
「なんだ……、お宝でしたの?」
「醍醐味って言うのはわかるんだけど……、あれぐらい、押し入れにあったよ?」
「……は?」
「普通は……ありますわよね?」
「……うん」
「そっか、お前ら金持ちのお嬢さまだったっけ」
(くそっ、現実離れした常識トークしやがって……)
「悠さん、黒いですわ」
「……気のせいだ」
なんだか、喜びが半減してしまったが気を取り直して、
「あれ? 刀もあるぞ?」
金の山に、一際異彩を放つ銀の光。
何故か惹かれるものを感じて、その剣を山から引き抜く。
「あれ? 意外と軽いな」
ジャラジャラとぶら下がる金の鎖やらなんやらを落とし、改めてよく見るとそれは両刃の大剣だった。
鍔の部分に宝石が付いており、柄に包帯が巻いてあり、長さは全長だと俺の肩より少し下ほどもあった。
「あ、それ見たことある」
リリィが剣を指差した。
「え? この剣が?」
「ううん、その宝玉」
「あぁ、確かに言われてみれば付いてるな」
リリィが指差した鍔の部分には、翡翠の玉が付いていた。
「なんだこれ?」
「それは持ち主の意志を汲み取るんだって」
「え? それってどーゆー……」
「あー、貸して」
リリィが俺から剣を受け取り、振り上げると、
「う……ぁ、重いぃ」
振り下ろした。
と言うか落とした。
「キャッ!?」
その剣が床に触れた瞬間、目の前が真っ白になるほどの光量を放ち、剣の通り道に紫電で軌跡を残した。
「ど、どうやったんだ?」
「あ、あたしもこんなに凄いとは思わなかったけど……、つまり、自分の能力を放つ剣ってことよ」
「あぁ、それで俺が持つと軽かったわけか」
「悠の場合、向けた方に込めた力の分だけ威力が増すんじゃない? 後は能力のサポートで軽くなったりとか」
「だからリリィが持つと雷を放つわけだな」
「まぁ、あたし達が持つには重いから悠専用だね」
「言われなくても意地で持って帰る。男は剣が好きなんだよ」
「へー、てか鞘あったよー?」
ルイスが山から鞘を持ってきた。
「おぅ、ありがと」
山から適当に見繕った丈夫そうなベルトを背中から通し、体の前で装着する。
元の世界だと恥ずかしい恰好だが……、うん、まぁファンタジーな世界だから大丈夫だろう。
「あー、カバン持ってくんの忘れたー」
「……俺もちょっと持って帰ろ」
「浅ましいですわ」
「ねぇ?」
「うっせ! 金持ちにはわかんねぇのか! これがトレジャーハントだ、トレジャーハント!」
ブツブツ言いながら、足下に落ちてた20カラットぐらいのダイヤを二個ポケットに突っ込んだ。
「他になんかあるか?」
「うーん、ないですわ」
「おっけぇー、詰めるだけ詰めたぁー」
「じゃあそろそろ行くか」
用が無いのを確認して、四人揃って部屋を出た。
バトルさせたーい。
描写が難しいのは解ってるけど、バトルしない中二小説に価値なんてなーい(泣)