57.遺跡探検
リリィが遺跡なんて言うから……、ピラミッドみたいなのを想像したんだけどな……。
なんだよ?
長方形のボロい建物じゃないか?
今日は、
「ね、悠?」
「どうした? ていうか、もう諦めてるけど俺の部屋に勝手に入るなよ」
「遺跡探検しよっ」
「…………は?」
リリィの一言から始まった。
―-遺跡前――
「とぉーちゃくっ」
「え!? いつの間に?」
「実はさ、バカ兄に頼まれちゃって……」
「聞いてねぇよ! なんで気付いたらもう着いてんだ!」
「悠さん……、うろたえる姿も魅力的ですが、些かみっともないですわ?」
「え? なんでフローが?」
「アタシも居るよー」
「うぉっ! ルイスまで?」
なんでいるのか知らないが、フローにルイスが一緒に居た。
「おーい、アタシの時だけ反応違くねー?」
「なんで二人が?」
「無視かよ!」
「遺跡探検なんて聞いたらウズウズしますわ。わたくしを放ってなんて行かせません」
「アタシは嫌だーって言ったのに」
見ると、フローはライトの付いたヘルメットを被って、抑えきれない衝動に堪えるようにして体を揺らしていた。
ルイスは……、まぁ、例によって興味がなさそうだ。
「……めちゃくちゃやる気だな」
「えぇ、似合いまして?」
「どーでも良いけどさー、アタシの説明雑くない?」
ぶつぶつ言うルイスは放って置いて、頬に右手を当て、首を傾げるフロー。
手を見ると、薄いレザー(黒)の手袋着用。
思えば、何を着ようが相変わらず人形みたいだ。
「あぁ、似合ってると思うよ?」
「まぁ……、言いつつも心はオレンジなんですのね?」
「え? あぁ」
そう言えば、フローって心が色で見えるんだったな。
「オレンジってなに?」
「……う~ん、優しさと言いますか、神秘的と言いますか……、わたくしにもわからない色ですわ。とにかく、いやらしい事は考えてないようですわね……」
「お、おぅ」
それもバレるんだったな……。
……怖っ。
「……少しくらい、欲情して欲しかったですわ」
……おいおい。
「ひーまー、ほんじゃー、勝手に行ってきまーす」
「あぁっ! ズルい! あたしも行くっ」
「あ、おい! 俺も行くから待てよ!」
まとまらねー!
「あぁん、悠さんっ!」
勝手に走り出した二人を追いかけ、ここは遺跡内部。
外から見ると長方形だった建物だが、入り口にあった部屋は丸く、それなりに広い部屋だった。
「……なんもないね」
「そだねー」
「なぁ、あんまり勝手に動くなよ?」
「うん」
「おっけぇー」
素直に頷くリリィと、相変わらずどこを視てるかわからないルイス。
一応、返事をするところを見ると解ってくれたようだった。
「じゃあ、危なそうだからまず俺が先頭で行……」
「あぁ! ルイス! 抜け駆けなんてズルいですわ! わたくしも行きますっ」
「えぇ!? 解ったんじゃないのかよ!! ってフローまで!」
返事を返したのにも拘わらず、勝手にフラフラと先に進むルイス。
それを追い掛けてフローまで走り出した。
何故かノリでリリィも続く。
「おいおい、俺の話は無視かよ……ッ!?」
暴走する三人を追いかけようと踏み出した矢先、足下の床が沈み、カチッという音がする。
「ま、まさか……!?」
「トラップですの? あぁん、悠さんもズルいですわ!」
「いーなー、アタシも押そーっと。どっかないのスイッチー?」
「……悠、大丈夫?」
突如、ガゴンッ、と嫌な音がする……。
次いで……、
「うぉぉぉ!?」
部屋の天井が徐々に落ちてきた。
「……っくそ、止めんのは……無理だな。みんなっ! 走れぇぇぇッ!!」
「キャー!! 遺跡はやっぱりこれですわっ!」
「あはははは! 逃げろ逃げろー」
「悠っ!! これで死んだらあんたのせいだからねっ!」
明らかに楽しんでいるルイス、フロー。
更にマジ切れするリリィ。
「ごめん、悪い! すいませんでしたぁぁぁぁッ!!」
……走りながら叫ぶ俺。
情けない気持ちで一杯になったが、どうやら間に合ったようだ。
全員、既に天井の外に出ていた。
ズーン!、と天井は派手な音を立てて入り口の部屋を塞いだ。
「ふー、危なかった……」
「スイッチスイッチー」
「わたくしも探しますわっ」
「……あ、あたしも探そっかな……?」
「……頼むから落ち着いてくれ」
各々、トラップを探して迷走し始めた姿を見て、俺は溜め息が止まらなくなった……。
「はぁ、はぁ……、なぁ、みん……」
俺が息を整え、話だそうとする。
その時だった、カチッと、不吉な音がしたのは。
「~…………ッ!! 馬鹿野郎ぉぉぉぉ!!」
ちなみに、俺達が居るのは通路だ。
ベタに岩なんて転がってみろ、間違いなく死……、
ゴゴゴゴ……、
「あら? 今度は岩ですの?」
「ベター過ぎー」
「あ、あたしじゃないからねっ!?」
「今度は誰だぁっ!?」
「わたくしじゃありませんわ」
「アタシでもないよー」
ズズズズズズ、地響きを起こし、凄まじい音がする。
「「…………」」
「…………悠さん?」
「……また俺かぁぁぁぁぁぁ!!」
全員、ダッシュ!
「うぉぉぉぉ……、ん?」
必死に通路を走っていると、なにかが光った。
俺は何故か、立ち止まってそれを拾うと……、
「悠っ!?」
「危ないですわっ!」
「え……? うッ!!」
岩は、途轍もない速度で間近まで迫っていた。
俺は恐怖に思わず目を瞑り、身が強張ったのが解って……、
(ヤベ……ッ!!)
「…………あれ?」
岩が音と破片を盛大に撒き散らし、砕け散った。
「悠さん! 次は絶対、わたくしが押しますから……、押す前に言ってくださいな?」
フローが腰に手を当て、そう言った。
「ま、まさか……」
「ふふ、見くびってもらっては困りますわ?」
「フロぉ~……」
「あらあら、甘えん坊さんですの?」
岩を砕いたのは、どうやらフローのようだ。
逆に、フローの能力の恐ろしさも思いしったが……。
「そう言えば、岩は砕けるんだな?」
「いえ、きっと転がった際に微細なヒビが入っていたんですわ」
「あぁ、なるほど」
「ね、さっきなに拾ってたの?」
リリィが俺の手を指差した。
「え? あ、なんだろうな?」
俺はみんなに見えるように置く。
よく見ると、ちょうど腕に通りそうなサイズの輪で、比較すると大きめな銀の髑髏の装飾に、輪の外側が黒で、真ん中に銀のラインが通っていた。
「……趣味の悪い髑髏ですわね」
「な……ッ!?」
「えー、カッコいいじゃーん?」
「カッコいいよな?」
「悠、もしかして……?」
「おぅ、腕に付ける」
「ゆ、悠さん……が付けるとオシャレですわ」
フローが話してる間に、腕に通してみた。
フローの意見が変わった事は放って置いて、身に付けると、一瞬だけ髑髏の目に怪しい光が灯った。
しかし、それは誰も見ていなかった。
「いや、いいのかよ」
「似合ってらー」
「なんか……、怪しい」
「それでいいんだよ、シルバーのアクセサリーはクールだからな」
このクールさがわからないなんて……ッ!!
みんなのなに言ってんだ? って顔はこの際、無視だ。
「……先、行くか」
「ちょっ、ちょっとお待ちくださいな?」
「ん?」
「わたくしにはこの腕輪……、本来の色とは別に、オレンジに見えますわ」
「オレンジ……って言うと、神秘的だったっけ?」
「えぇ、わたくしも物がこんな見え方をするのは初めてですの」
(ってことはつまり、心があるってことだよな?)
「……それって大丈夫なのか? ま、まさか呪われてたりは……」
「いいえ、それはないはず……、この腕輪から感じる温もりはとても心地良いものですから」
あー、まぁ、なんだかわかんないけど。
「それなら良かった……、じゃあ改めて、先行くか」
「そだねー」
……と、歩き出した矢先、またまたまたカチッ、と、聞き慣れ始めた音にゆっくり足下を見る。
すると床が一区切り分、沈んでいる。
「いやいやいや、今度はなんだよ?」
ガガガガガ……、続いて目の前の壁がせり上がっていく。
「どしたぁー?」
「おぉ?」
「どうかしましたの?」
「壁が……?」
駆けつけたリリィが呟く。
~チャラララン♪
悠は、階段を発見した。
「…………すげぇ」
「行くしかないっしょー?」
「ですわっ」
「悠、行こっ?」
こうして俺達は奥に、奥に進んでいった……。
小説、迷走中!