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52.巡回


やってしまいました。


話にも関係ないし、挟む意味もなく。


でも、偶にはこういうのもいいんじゃないでしょーか……?




 面倒だけど……、やっぱり声だけでも掛けとくか。


 まずはここから近い、隣の部屋から。


 扉を軽く叩いて返事を待つ。


「誰かいないのか?」


 暫くして、


「だ、誰だ君は? ぼ、僕に話し掛けるな……あぁ、死にたい。死にたいぃぃ」


「……失礼した」


 さて、次だ。


「誰か居ませんかー?」


「抱いて! お姉さん、アンタみたいな子大好物なのっ! だから抱いてー……」


 俺は、最後まで待たず扉を閉じた。


「ちょっ、ちょっとぉ!」


「失礼しましたー」


 さて、次だ。


「誰か居ますかー?」


 鍵が掛かっていなかったので、好奇心から扉を開くと一匹の猫がいた。


「勝手に開けるにゃー」


「……了解」


 さて、次だ。


 まだ判断するには早いが、ここにはまともな人がいないらしい。


 その証拠に……、


「誰か居ますかー?」


「はーい。……あぁ、ここに新しく来たって人かしら?」


 中から返事がして、扉が開いた。


「はい、三階の左端の部屋です」


「あぁ、やっぱり。わたしの部屋に来たのは多分だけど、律儀に挨拶じゃない?」


「そうです。なにも用意してないですけど……」


「いいのよ、そんなの面倒でしょ。……っと、これから用事があるの。失礼していいかしら?」


「あぁ、どうぞ。失礼しました」


「はーい」


 そう言って、部屋に戻っていく。


「って、普通かい!!」


「なにか言ったー?」


 おっと、中に聞こえたらしい。


「いえ、なにも」


 さて、次だ。


「……留守か、」


「あれ? ここも?」


「あぁぁ死にたいぃ」


「おっと、間違えた」


 一周してしまった。


 回ってみると留守が多く、元々、全部の部屋に人が住んでいる訳でも無さそうだった。


 挨拶も終わり、少し手持ち無沙汰になってしまう。


「……よし、ティーナと遊ぼう!」


 だから、そう言ったのは半ばやけくそだった。


「ティーナー?」


 ティーナの部屋は、本人の強い要望により、俺の隣の部屋だ。


「はい、どうされました?」


 ……しかし、返事は俺の後ろから聞こえた。


 おい、ここ三階!


 声に振り向くと、小さめに翼を生やしたティーナがパタパタと飛んでいた。


「……まさか、ずっと付いて来てたんじゃないだろーな?」


「はい! ……あ、いえいえ! 妾はずっと部屋にいましたっ!」


「ティーナー……?」


「ずっと、部屋に……」


「……ほんとは?」


「……ついて行きました」


 ……やっぱり。


 遊ぶ相手を変えるか。


「ふー……、おーい、リリ……」


「あぁぁぁ! ごめんなさいご主人様ぁ!」


 俺がそう言うと、物凄い速度で口を塞がれてしまう。


「呼んだー?」


 ティーナの隣の部屋、つまり俺達が今居る隣の部屋から返事が返ってきた。


「……んぐー」


 しかし、俺は口を塞がれている。


 なんという力だ、女の子の手に鼻息を掛けたくないので息が出来ない死ぬ。


「うるさい、人間!」


「なっ、なによ!」


「さ、逝きましょうご主人様っ?」


「んんっ? んんんー!(おまっ、字が違うー!)」


 おい、ここ三階!


 予想通り、ティーナは俺の手を掴むと三階から飛び降りた。


「んんー!(手を離せー!)」


「え……? あぁっ! すいません! ……大丈夫です?」


 息の詰まりそうな俺をティーナが心配する。


 そして、それに気を取られて翼は動くのを忘れ……、


「ぶは……っ、おい、ティーナ! 墜ちてる!」


「え? ……あ」


 ……ぐしゃっ、俺達が落ちた音だ。


「……いってぇぇぇ!」


 ギロッ、と、今回ばかりはティーナを睨む。


「あははは……、ご主人様が心配で……つい気が疎かに……」


「……ティーナ」


 びくっとティーナが肩を震わせる。

 そして、身を小さく縮め、両手で頭を庇った。


「すっ、すいません……ご主人様……」


 ……こうしてると、俺が虐めてるみたいで、なんだかどうでもよくなってしまった。


「……あぁ、もういいよ。幸い、どこも怪我はないみたー……」


 あれー?


 ぶらーん、と……視界の端で腕がぶらぶらしている。


「ど、どうかされましたか……?」


「いや? なんでも?」


 いや、しかしだ。


 そう、俺が睨んだ時点でティーナは涙目だ。


 うぉぉ!? 肩が外れてるー!

 なんて言ってしまえば、きっと泣く。


「……あ、ティーナがまた粗相を……?」


 いや、絶対泣く。

 しかも、謝りながら!

 俺達の新住居、つまり、今日出会った皆さんの前で!


「……いや、ちょっとな?」


 そんなことになれば……、


「あれ? あの子は今日挨拶に来た……」

「ちょっ、ちょっと! 女の子が泣いてるわよ!」


「もしかして、いい年してあんな可愛い子を泣かせたんじゃ……」

「最低ね?」


「「最低よ!!」」



 なんてことに!!


「ご、ご主人様……?」


 それは避けないと……!


「ん?」


「そ、その……腕が……ぶらぶらと」


「え? ……っっ!!」


 ティーナが震える声で指を指す……前に俺が気合いで肩を嵌める。


「うぐぉぉぉ……」


 絞り出るような自分の声、


「ご主人様……や、やっぱりティーナが……なにか、粗相を……ッ! ……うぇぇ……ぐすっ」


 ぬぉぉぉ!


 堪えろ俺ぇぇ!


「なぁ、ティーナ? 撫で撫でしてやる」


「でもっ、妾の所為でご主人様に怪我を……!! ふぇぇ……っ」


「よーしよし! ほら、俺は怪我なんかしてない!」


 ティーナを慰めながら、勢い良く腕を振り回す。

 そうしながら、出来る限り力加減をし撫でてやる。


「だから泣くな?」


「……ご主人様、肩外れてまし……」


「いやいやいや、よく見ろ! 俺の腕を!」


「うぅ……、服が破れてます。……ふぐ……っ、やっぱりティーナが……」


「え……?」


 し、しまった!


 見れば確かに肩を強く打ちつけたであろう部分が破けている。


「……だ、大丈夫。えっと、これは多分……つ、強く掻きすぎただけだから」


「……ふぇぇぇぇ! すいませんご主人様ぁ! ティーナが、ティーナがぁぁ!」



 なに見破ってんだこの野郎ぉぉぉ!!


 苦しい嘘はやっぱり見抜かれてしまい、ティーナはとうとう自分を責めて泣き出してしまった。


「あぁ! 泣くな! 俺はなんともないから泣くなぁぁ!」


 正直、俺が泣きたいわ! とも言いたかったが、仕方なく慰めながらティーナをおぶって部屋まで連れて行った。


 結局、今日は偶にえずくティーナを慰めるのに終始し、泣き疲れて眠ってしまったのを見届け、俺も眠ることにした。


……えぇ、見ればわかる通り変えました、ユーザー名を。


以前にも変えましたが、その時は皆さんを楽しませるような小説を書きたいという意識も薄かったんで……。


感想で指摘して下さったり、度々、なにかとご迷惑を掛けますが、作者としてはこれからもよろしくお願いしたいものです。



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