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50.増員、加入、仲間入り


この物語はフィクションであり、実際の個人や団体などは一切関係ありません。




「……あーぁ、帰りやがったよ。マジか……」


 突然現れた少年は、何処に居たのか少女を呼んだ。


 かと思えば、少女の背中から不釣り合いな大きさの翼が広がり、凄まじい速度で飛び去っていった。


「なんだぁ? ドラゴンの翼……? ……なんだか知らねーが、このまま放置喰らって死んじまわねーかな……」


 死闘の末、力を使い果たした肇は指一本動かす事が出来なかった。


「このままじゃちっとヤバいな。……さて、どうするか」


 目だけを動かして辺りを視ると、今まで何人もの頭蓋を砕いてきた肇の最強の武器である右脚がぐちゃぐちゃになっていた。


「…………あららら?」


 見た目ほど酷くなくても、間違いなく骨は粉々になっているだろう……。

 そんな傷だった。


「……ほっときゃ治んだろ」


 あとは所々に切り傷や擦り傷、打ち身……etc.

 しかし、そんな自分の体には直ぐに興味を無くし、凄まじい力で猛威を振るっていた少女に目を向ける。


「なんでこんな奴に手こずったんだか……」


 しかし、そこに先程までの只ならぬ雰囲気はなかった。

 変わりに、違和感。

 少女は相変わらず倒れたまま。


 だが、自分の手を頭に置いていた。


「あん? ……こいつ、自分の頭なんかさすってやがったか?」


 --すると、のっそりと少女が立ち上がった。


「--う~ん」


「--……ッッ!! ……嘘だろぉ!? クソッたれがぁぁ!!」


 少女は、肇の声に反応した。

 あまりの非常事態に、ヴィィィィ!! と、死の警笛が頭に響き渡る。


「あれ? ウチはなーんでこんなトコにおるんやろか? ……あぁ、ちょっと、そこのお兄ィさん? どしたん? そないなとこで寝そべって……、あんまし寝心地良さそうには見えへんけど」


 ……方言だろうか。

 少女の言葉は少し聞き取りにくかった。


「……あー、急に物凄く眠くなってな」


「……絶対嘘やん」


「……死ぬほど眠かったんだ! 解ったら話しかけんな!!」


(……チッ、さっきまでのは夢だったってかぁ?)


 というより、夢だと思いたかった。

 これが紛れもない現実であることは、自らの傷が物語っている。

 そうではなく、こんな少女に殺されかけた……、なんて事は、間違っても数少ない同僚に言えるわけがない。


「あのさぁ、もしかして、動かれへんの?」


 さっきまでの物々しい雰囲気はどこへやら。

 見るからに警戒心の薄そうな少女が近付いてくる。


「あはは~♪ 図星やったねぇ?」


 そう言って、この状況を楽しむかのような笑顔で少女は目の前に屈み込んだ。

 ……その都合上、


「…………チッ」


「お困りのようやったら、ウチがなんとかしよか?」


 ……気に入らねぇ。


「おい、くそッたれ」


「ふふん♪ ……終わりそうな命、ウチが終わらしたろか?」


「やってみろよ。汚ねェもん見せやがって……」


「え?」


 吐き捨てると、肇は目を逸らした。

 疑問に思った少女は、恐らく肇の視ていたであろう……、はしたなく晒け出された、自分の真っ白い布を目にする。


「……あぁぁぁッ!?」


 遅れて、少女は悲鳴を上げる。


「……うるせェな。視てねぇから早くしまえッ!!」


「……とは言うたけども……、ウチは別に気にせえへんねよな……」


「……あァ!?」


「や、だって、視たところで何も出来へんやろ?」

 言葉の通り、少女は隠す素振りすらしなかった。


 それが気に障ったのか、鬱陶しさから肇は声を荒げる。


「……あぁウザッてェぇぇ!! 死……がふッ!?」


 しかし、吐血によりそれは中止する。


「……だ、大丈夫?」


「……大丈夫じゃねぇよ……、全ッ部お前の所為でな……!!」


 またもや喉に血が詰まり、声が掠れる。

 更に、血を吐き出そうとして今度は咳が止まらなくなった。


「えぇ~? ウチの所為?」


「あぁ、そう……。いや、そういやさっき野良犬に襲われたんだったな。あー、そうだった」


 余程、こんな女にボッコボコにされたのが気に入らねないのか、肇は嘘を付いた。


 尤も、この女には通じなかったが。


「あはは……、またウチがなんかやってんな? --ううん、なーんもない。あ、兄さん、空飛んだことある? まー、お困りのようやからウチが運んだるわ。」


「……お前、頭は大丈夫かぁ?」


 この時、肇は生まれて初めて後悔を覚えた。

 そして、彼女の天真爛漫な笑顔はそのままに、なんだか影が差して見えた。


「じゃあ、行っくでぇぇぇ?」


「ッ!! ま、待て!!」


「遅いわぁ~♪ ウチをコケにして、無事でおれると思いなや?」


 彼女は、怖い笑顔でそう言った。

 そして、動けない肇の右手を無理矢理掴むと、


「うぁぁぁぁぁぁッ!?」


 両脚で、高く高くジャンプした。


 やがて、二人は重力に従って速度を落とし、空中で制止する。


「あっれー? 兄さん、高所恐ひ……あ、噛んだ」


「違うッ!! オレはなッ、人に任せるのが不安なんだよぉぉ!!」


 少女が翼を広げ、高速飛行を開始した。


 しかし、肇にはそれを理解する余裕がなかった。


「にひひッ……、ウチなぁ、兄さんみたいなんがビビってんの見るの、だぁぁい好きやねんっ♪」


「----ッッ!? ……ッギャァァァァァァァァァ!!」


 彼女は、肇とは違った、異質な笑みを浮かべ……、一気に地面すれすれまで急降下した。




「ほらほらほらぁぁぁ、もっと泣いて!? もっと叫んでぇな♪」


「ッあぁ!? うぉぁぁ! 降ろせぇぇぇぇぇぇー……!!」


 旋回して勢いを付け、上昇、螺旋を描くように凄まじい速度で空に軌跡を残していく。

 肇は振り回され、遠心力で傷口からなにかが零れそうだった。


「もう限界だ……! 殺すッ!!」


「今墜ちたら兄さんも死ぬよ?」


「ぐ……っ!! なら、このまま真っ直ぐ飛べ! それで勘弁してやるから!」


「はいはーい」


 偶然にも、二人は肇の家のある方へ向かっていた。


 彼女もそろそろ満足していたのか、笑顔は辺りに光を撒く程に輝いていた。


 まるで、今まで我慢していたことから解放された時のように……。


「……なぁ、兄さん?」


「なんだぁ? さっきまで機嫌よかっただろーが、今度はしょんぼりかぁ?」


「……ふぅ、なんか手ぇ疲れてきたわ……」


「さっさと話せよ、ウザッてぇな」


「ウチな? これからどうしたらいいんやろか……、あこから出れたのはえぇけどお先真っ暗やねんて」


「あぁ? 知らねぇよそんなこと」


「はーい、落ちまーす」


「あぁ!? オレんとこ来いよ! 困ってんだろ!?」


「あはっ♪ えぇの?」


「……最近、寂しくてな。ちょうど話し相手が欲しかったとこだ」


「…………御免な」


 彼女は、小さな声でぽつりと呟いた。


「……チッ……あぁ」


 ……気に入らねぇ。


 いつも通りそうは思うが、肇は今迄となにかが違っていた……。



「……兄さんは、ウチのこと受け入れてくれんの?」


「お前は嫌いだッ!!」


「……さよか? でも、ウチは兄さんのこと気に入ったわ」


「あぁ? こんな無愛想なやつによく言えたな?」


「わかってないなぁ、そこがまたいいんやんか」


「……………………………………あぁんッ!?」


 --こうして、肇に仲間が加わった……。




こんな話の方が書いてて楽しいです。


あくまでも、今の作者の気分では……ですが。



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