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41.幕引き


なんでか考えてた終わり方じゃなくて、ぐだぐだと終わってしまいました…。


なぜー…?




ガンッ!


「おぉっ?…っとと」


前から走ってきた肇は、その姿が霞んだかと思うと俺の側頭部に飛び蹴りを放っていた。


俺はその蹴りと逆の方向に押すよう、能力を使い防いだ。


「なんだ…?結界…いや、これは…」


信じられない程の速度で動き回りながら呟く肇。


どうやら、自分の蹴りを防いだ力の正体が掴めず攻め倦ねているようだ。


「まぁ…いわゆる斥力?反発力?みたいなもんだな」


「ちっ…違って欲しかったぜ。これは厄介な相手に当たっちまったな…」


嫌な予想が的中したのか、肇は苦虫を噛み潰したような顔をする。


しかし、それはこちらも同じ。


これだけ速く動かれると位置を特定出来ない。



肇が攻めて来る度、俺が斥力で押し返す。

そんなやりとりを二度、三度と繰り返した頃…


「あー、このままじゃジリ貧かぁ?…攻め方を変えるか」


…ザッ。


動き回る肇の足が一瞬止まった。


多分、こっちに跳んで来るつもりだろうが、動きを止めたこのチャンスを逃す手はない。


俺は動き回れなくなるよう、肇の足を固定した。


…が、


「…甘いな。こんなひょろい拘束で、オレが止まる訳ねぇだろっ!」


ザン!


肇は、言い切るのと同時に、押さえつける俺の力を力ずくで外し、石で出来た床を踏み砕いてこちらに向かってきた。


ガツッ!


「がっ!?」


今度こそ、肇の蹴りは驚いた俺の側頭部を蹴り抜いた。


その衝撃があまりに強烈で、クラクラして立てない。

てか足に力が入らない。


「つっ…!いってぇぇぇ!」


やっばい、

マジで痛い。


これまでの人生、BEST3だこれは。


蹴られた部分を押さえ悶える俺に対し、こんなに呆気ないものか、と悠長に首の骨を鳴らしている肇。


「あれ?まさかこれで終わりってわけじゃ…」


「ないな。いや、ないない…一撃とか絶対有り得ないから」


同い年の、それも男に挑発されて大人しく寝てるわけはない。

それでも痛いのは痛いので、頭を押さえつつ立ち上がる。


「お、立った…。流石に一発じゃ落ちないか…」


「馬鹿にすんなよ。お前のヘボキックなんざ効かねーよ」


正直、まだめちゃくちゃ痛い。

でも言われっぱなしじゃなー…と思うので嫌みには嫌みで応じる。

これは効いたみたいで、肇は両手を握りしめ小刻みに震えだした。


「…言ったな?じゃあ、そんな口が利けなくなるまでボロボロにしてやるよ!」


言いながら、またも威勢よく走り出す肇。

貶されたのが気に入らなかったのか、今度も蹴りだ。


「それもう飽きたって」


何度か見たのでただの蹴りなら簡単に防げる。

相手のいる方向を押してやるだけ、肇自身がそれ程重くないため、それだけで足は届かなくなる。


ブォン!


今回の戦いで、初めて空を切る鋭い蹴り。それをただ見てるだけではない。


綺麗に振り抜いた所を狙い足を掴み、遠心力を利用して床に叩きつける。


「はっ!?あ、いでっ!」


そのまま背中で無理矢理に手を交差させ、一番面積の広い背中に重力を掛けていく。


100、200、300…1000kg。


「うっ…おも…っ…ぐぇぇ…っ!」


900kgを越えた辺りから、どこからかミシミシと音が聞こえたため、そこで止める。


「…っおい…。抵抗するな…っ!このままだと骨折じゃ済まなくなる…っ」


「…はっ!…オレを殺す…ことにためらってんのか…っ?ってくそっ!これ…外れねぇ!」


「当たり前だろ…っ。ほ、本気で押さえてんだから!」


拘束を解くわけにはいかない。

だが、これ以上重くすればコイツは死んでしまうかもしれない…。


(いくらコイツがクズだからって…殺すのはやっぱな…)


と、気を抜いてしまった瞬間、肇の手が動いた。


「…っく!」


「やっぱ甘いわ。お前」


そこで俺は、拘束から外れた手に、鋭い銀色の光が見えた。


トス…ッ


「…っぐぁぁぁぁ!!」


一瞬脳が停止し、次に死んだかと思う程の激痛が走った。


「はぁっ!はぁっ!…っ!ナ、イフ…か?こんなもの、どこに…っ?」


突然感じた凄まじい痛みに、目がチカチカする。

痛みの発信源である腕を見ると、手首より少し上の辺りに深々とナイフが刺さっていて…そこからは、体に留められなくなった血が我先にと噴き出している。


「ふー、危なかったぁ…。いや、相手が素手なのに道具使うのもなーとか思ったんだぜ?でもやっぱ死ぬのヤだし」


「…はっ、はっ、そんなこと…聞いてないだろ…っ!」


「…あれ、そうだったか?あ、ナイフだったか…ナイフは、仕事の内容が内容だけにさっきみたいに命の危険が在るからな…見つからない上に、いつでも使える場所にないと困るだろ?」


「あぁ、なるほどね…それは油断した…。で、お前がベラベラ喋ってる間に止血したわけなんだが…」


「…は?」


「まぁ、それもいつまで保つか解らないから早く続けようぜ」


少し、粋がった物言いと一丁前に構えをとってみた…はいいが…。


(…あー、まだジンジンする…。ナイフ抜くのには苦労したし、血管繋いだのなんて初めてだし…さて、どれぐらい保つか…)


悠が試みたのは、裂けただけの皮膚と血管をくっつけるという単純なもの…と、言うのは簡単だが、それでもおよそ常識の範疇にはない。

幾ら稀有な能力を持つとは言え、とんでもない集中力を要する上に、自分の体に手を加えるというのは、それだけで計り知れない恐怖が脳内を埋め尽くす。

今は皮膚に目立った点も見られないが、果たして上手くいったのかどうか…。

長くは保たない、と言ったのにはそうした懸念も含まれていた。



「特殊な体か能力を持ってるのか…そんなことオレにはわからねーけど…お前、面白いな」


「はは、俺より変わった奴に言われたくないな」


せっかく付けた傷が治されと言うのに肇には動揺も見られない…。


(早く決着をつけないと、やっぱあいつの方が場慣れしてるってわけだ…なんとかして足を止める、まで行かなくても鈍くするぐらいは…)


「まぁ、変なヤツとか言われちゃったし、早くしろってゆう御言葉に甘えて…始めるとするか」


蹴りが当たった事で今の戦法が有効と判断したのか、肇はまたしても凄まじい速度で走り出した。


(これをどうやって止めるか……あ)


この時、悠は気付いた。前、とか横、とかなんとなくは解るんだから、大雑把に圧力掛けて押し潰してしまえばいいと。


「悪いな、ちょっと狡いけど…重くなるから」


ズズズ……ッ


力を込めた瞬間、重く、身体の芯まで響いてくるような音に次いで、ギシギシと、石で出来た床が悲鳴を上げる。


「う…ぐっ……お前…っ!」


ズズー…ン


急に重くなった体に、怒りの篭もった目で俺を見る。


床を踏みしめる度、辺りに響く重低音。


およそ2tもの重量を持った体が、その重さに耐えかね、体重に見合わない小さな足を思い切り叩きつけているのだから当然だ。


「この重力でよく動けるな…」


「当たり前だ…!オレは、お前みたいな奴に負けない為に鍛錬してんだよ…っ!」


ズン…ッ


苦しそうに、ゆっくりとだが俺の方へと向かってくる。

これで動けるのは不思議だが、それよりもまだ諦めていないその姿に恐怖すら感じた…。


既に余裕もないだろうが、得体の知れないものは封じておくに限る。


「……ふッ!」


ズズズズズズ……ッ!


「うっ!?…ごァあッ!!」


体は耐えられる限界を越え、あまりの重力からか悔しさからか顔を歪める肇。


床に片膝を付き、受けている屈辱相当に恨めしそうにしながらも、今はこちらを見上げる事しか出来ないようだ。

そんな姿に、少しの情も湧くが……


「さっきの思い出せ、一発は一発だ」


ガツッ!


仕返しの言葉を吐き捨て、俺が受けた一撃と同じ場所の側頭部を蹴りつけた。

俺なんかの力がどれだけ通じるかは解らないけど、とにかく早く終わらせたかったという考えで。


ところが、意外にも肇は衝撃で一度床を跳ねたところであっさり動かなくなった。


「……あれ?」


心配になるほど…それこそ、怒りに任せて叩きつけた後のなんの反応もない携帯のように…。


だが、よく見るとうつ伏せに倒れた体は微かに上下していて、死んではいないようだ。


「もしかしてもしかすると…勝った…のか?こんなんで…?」


「………」


「…ふん、だから言ったろう…お前じゃこの男にも勝てないんだと」


一人、状況を把握していそうなサンテは勝ち誇った顔をしていて、そのことが、より一層この勝利を訳の解らないものにしていた…。


後で話を聞くと、

「だってオレ…蹴られたこと無かったし…」

とかなんとか、なんとも歯切れの悪い返事が返ってきたが…この時はこれ以上コイツと関わるとは思っていなかったし、なんともはっきりしない幕引きとなった。




一応、この勝負は終わりましたが…。


さて、この後どうしようか(^_^;)


出したい新キャラは考えてるんですけどねー…。

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