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40.利用価値


元々、面白くもない小説なんですが、今話を投稿できたのは活動報告にまでコメントくださった方のおかげです。


ありがとう

ございましたm(_ _)m

-翌日。


「…とりあえず顔流してこよう」


…仕方ない。

未だ眠る体を引きずり廊下に出た。

何度か流した後、ふと横にあった窓に目をやる、窓から見た空は少し曇っていて快晴とはいかなかったが、それでも雨の気配はない。

それだけを確認して胸をなで下ろしていると、ちょうどそこを歩いていたレノアと鉢合わせた。


「あんまり寝てないみたいだな?」


「……あー」


(あー、わかってんなら話しかけてくんじゃねぇよ)とか続けてしまいそうになる気持ちは抑え、普通に返事を返す。


しかし、朝からコイツの顔を見るとは幸先悪いな。


「特訓の方はどうだった?」


「……え?」「どうした?何かおかしな事でも聞いたか?」


「…いや、意外と心配性なんだなーと思って」


「…茶化すな。で、上手くいったのか?」


「……」


その問いには答えない。

それはやってみればわかることであって、今なにを言ったところで意味などもたないのだから…。


ちょっと格好付けたが、要はそういうことだ。


ただ一言、


「どうだろうな…」


それだけ言って自室に戻った。



(ホントは今からなんだけど…言った方がよかったかな…?)


実は、みんなには正確な時間を教えてない。

見られながら戦うのはなんだか気が散るので、元々一人で行くつもりだったのだ。簡単に支度を終えると、こそっと屋敷に向かう。

迷うかな?とも思っていたが、意外にも道は朧気に覚えていた。少しすると、見覚えのある巨大な門がみえてきた。

(あ、門番…には話が通ってるか)


「こんにちは。じゃあ通りますんで」


門の前まで来ると、門番に軽く一礼して通ろうとする。

しかし、門を開いてくれない…。


「昨日は使いがいた。だが、今日はいないな…?」


(ん?伝わってない?)


「ここの主人に呼ばれて来たんだけど?」


「知らんな」


「今日ここで……あぁ、えっと…」


説明しようと口を開く…が、寝起きの頭では言葉を用意仕切れなかった…。


「あー、めんどくさい。じゃあ勝手に入るから、お前の主人に後で説明してもらえ…!」


-屋敷の一室-


「…おっと、門番に言うを忘れてた」


屋敷内部…

ごくありふれた椅子に座る屋敷の主は、特に興味もなさそうに呟いた。



-屋敷玄関前-


「よかった。ここは誰もいないな」


扉の前に立ち、

悠は安堵の息を漏らした。

自分の身を案じてではなく、さらに増えると思っていた犠牲者(勿論、殺したりはしないが)に…である。


考えるのもそこそこに、扉を押し開き中に入った。

広過ぎて内部を把握していないため、とりあえず昨日と同じ部屋に向かうことにする。


「失礼しまーす」


今度はノックもせず、そのまま部屋に入っていく…



「良く来たね」


と、そこまで読まれていたのか、屋敷の主人…サンテは、相変わらずつまらなそうな顔で目の前に座していた。


「!…いたのかよ。いないと思ったからノックしなかったぞ?」


「う~…まぁ、今日ぐらいは不問としよう。そんなことより、自信はあるのかい?大丈夫そうならすぐにでも始めよう。お偉方がお待ちかねだ」


昨日から今日まで何度となく聞いた自分を心配する言葉だ。

今まではぐらかしてきたが、最後くらいは調子に乗ってみようかな…?


そう思った俺は、ニヤッと笑い…


「そうか?なら早く始めようぜ」


「笑顔…か、フ…余裕だね。わかってると思うが、この部屋じゃ狭い。屋敷の中に闘技場があるんだ、今からそちらに移ろう」


そう言われ、サンテの後をついて行く。

幾数もの扉を見送り、長い廊下を歩いて外に出、また中に入り廊下を…


すると、その言葉通り確かに屋敷の中に闘技場があった。

丸く広い部屋で、他の部屋のような木造の床では無く、この部屋だけ石で出来ていた。

壁は全面が白く、よく見ると一部だけ硝子張りになっている。

その硝子の向こう…薄暗くてここからは見えないが何人分かの人影が見える。


恐らく、この人影が今回の観客で…上層部の人間なんだろう。


「向こうに扉があるだろう?そこからキミの相手が出てくる、というわけだ」


「あぁ、わかった。もう始めてもいいんだが最後に聞きたい。あの硝子の向こうにいるのが上層部…ってやつか?」


「そうだ。じゃあ、始めようか」


そう言って、横にいたサンテが何処からかマイクを取り出し…


「出てくるんだ…。先日言ったように、この男を倒せれば僕がキミたちを昇格させてやる!」


始めてサンテが声を張ったかと思えば、軽く小突かれて丸い部屋の中に。


「では、頑張ってくれ」


パタン…


唯一、後戻り出来る扉も閉じられた。


「え?おい!…はぁ、こんな感じでいいんだな?」

バンッ!


俺が押し出されてすぐ、間髪入れずに反対側の扉が開かれた。


1、2、3、4……


どんどん入ってくる人、人…

それも全員が黒い服の男だった。


「なにも顔まで黒で統一しなくても…」


合計で十三人になった時、合図も無しに全員が一斉に動き出した。


「おい、そんな急がなくてもこっちは一人だぞ?」


パンッパンッ!


いきなり四方から飛んでくる銃弾、だがそんなことは想定内だ。


ピタ…ッ


俺の体を中心に、約1メートル辺りの所で銃弾を制止する。

撃った奴らは流石に動揺していたが…


「…これぐらい、武器有りの時点で準備してるって」


俺は、能力を使われる前に余裕を見せて相手のペースを乱そうと考えていた。…が


「…銃は効果が無いようだ。全員、近接に切り換えろ」



(何人かは動揺してたけど、やっぱ慣れてる奴もいるみたいだな…)


俺を囲むように広がった時、背後に立っている(多分)奴は、異能と対峙した経験が多分にあるんだろう。

特に焦る事もなく指示を出した。


それを聞いて、周りの奴らも指示に従い、日本刀からレイピアやら両刃の斧まで…ゲームでしか見たことがないような武器を続々と腰から抜き放ち構えていく。

丸腰の俺の武器といえばこの異能のみ。

抜き放つ、と集中するのは違うが目的は同じだ。


「しゃーない。早いけどそろそろ…」


周りに武器を構えた男が13人、そんな状況で集中するのは難しい。

だが、出来なければ死は其処まで迫っている。

その緊迫した空気の中、俺は静かに目を閉じた。


「…勝負を諦めたか?まぁいい。このチャンスを逃す手はない」


口々になにか小さく話しているようだが、そんなことはどうでもいい。


冷静にイメージして、固定する。


「全員!あの男を殺せ!」


話し合いにも区切りがついたのか、全員が気持ちを一つにこちらに向かってくる。


ー…だが、遅い。

-固定、完了-。


ガツ…ッ


「「うぉぉぉ!!…なっ!?」」


ザザァァー。


勢いよく向かってきた男達は、手を後ろ手に組んだまま倒れ込んだ。

全員が自分の意志とは関係なく動いた体に困惑を隠せないでいる。


「はぁっ!はぁ、はぁ…あー、疲れた。ぶっつけで上手くいってホンットよかったぁ…」


「おっ、お前!俺達に一体何を…!?」


何が起きたかわからず、しかも殺されるかもしれないという恐怖に怯えた男が、口早に説明を要求する。


「なにって…俺がやったのは、手を後ろにやって足を引っ掛けただけだぞ?」


「そ、それだけなら何故今も動けない!?」


「あぁ、それは手と足に大体100キロずつぐらい力を加えてあるからな。そんな体勢だと力、入んないだろ?」


「そんなことを…これもお前の風の力なのか?」


「いや、俺の力は風とかじゃない。物を動かすだけの能力だよ。単純だろ」


今まで気付かなかったのは空気が動かし易くて、それしかやったことがなかったからだ。

急激に力が増したことで発見出来たわけだが、今回この力に気付いて本当によかった。


「…それにしても、俺達全員を縛っておいて余裕そうに見えるのはどういうことだ?」


「それは…使ってる力が全開の半分ぐらいだからな」


「ー…!!」


俺が言った途端、周囲を囲んでいた男達が絶句していた。


少なくとも見えている範囲では全員が。


俺は、俺とこの連中の実力差を確かめた上で今度は硝子の方へ指差す。


「おい!硝子の向こうでのんびり観戦してる奴らも、俺の実力がわかったのか!?」


今回の目的は俺の実力を買ってもらうことで、言い換えれば俺の価値次第で後の待遇も変わるということ。

それなら、判断する奴らを直接脅した方がより簡単に結果に繋がるはず…。


そう思った俺は、体を宙に固定したまま硝子の前まで浮遊し、再度問い掛けた。


「それで、俺の利用価値はこんな戦いで計れたのか?」


他人を脅す、というのはあまり楽しいことではない。

冗談で通じる程度ならまだ解るが、もともと俺にそんな趣味はない。


早く終わってくれ。

と思う俺を尻目に、向こうに見える人影は動じなかった。

少なくとも、驚いている様子はない。


「若いなぁ…君はいくつだね?儂には物事を判断出来ない年には見えないが」

俺から見て一番右端にいた老人が口を開いた。


「そっちこそわかってないようだな。俺にはあんたらが強そうには見えないぞ?」


「粗相も大概にしておけ。これ以上、度が過ぎれば死期を早めるだけだ」


老人に言った言葉は、隣にいた若い男が返した。


「今なら下級兵士2人相当の金額で飼ってやると言うのに…」


明らかな挑発だった。

それは男性の表情からも読み取れる。

少し頭にきた俺は更に挑発で返した。


「だったらあんたが俺と戦えよ。本当に俺の実力がそんなもんか教えてやる」


「私に勝てると思うか?馬鹿馬鹿しい…お前の相手は私の部下で充分だ」


「…あれを使うのかね?それでは今回の勝負は決まったようなものではないか」


「キミ、殺されるみたいよ?ワタシはあなたのような若くて馬鹿な男は嫌いじゃないんだけどねー」


意外と簡単に挑発に乗ったようだ。

男の言葉に、隣の老人がニタニタと笑っている。

唯一、一番左にいた女性はおどけた様に残念そうな言い方をした。


最初からこいつらを殺すつもりはない。

俺としては逆に、こいつらの自慢のなにかを倒せばそれが評価に上乗せされる、という条件にもっていきたかったので…

まぁ結果オーライってわけだな。


「じゃあそいつを呼んでくれよ。自慢の兵士なんだろ?」


「ふっ…すぐにそんな軽口も利けなくなるさ。…肇!出番だ」


…トッ


(はじめ)

そう呼ばれた人物は、驚くほど軽やかに闘技場へと身を落とした。


「…どっから降ってきたんだ?」


闘技場の入り口は、俺と相手が入ってきた二つしかないはずだ。

思わず気になって聞いてしまった。


「…どこって…上から」


俺が聞くと、なにを当たり前のこと聞いてんだ?と言わんばかりに怪訝な顔で天井を指差した。


「上…?」


指につられ天井を見上げると、確かに小さく穴が開いている。


「でも、音はしなかったぞ?」


「あぁ、オレそういうの得意だからな」


あ、そうなんですか。

いや、そうじゃなくて


「一つ聞く、お前の名前って…」


「…なんだよ?苦情なら受けねぇぞ?これでも自分で気に入ってんだから」


「…そんなわけないだろ。…もしかして俺と一緒じゃないのか?」


「…あぁ、そうだな。生まれも育ちも、つってもまぁ中学までか。日本で育ったよ…人並みに」


「興味なさそうだな。帰る気はないみたいだな?」


「ないね。お前もこっちの方が楽しいだろ?ウゼークズ共を合法的に殺せる。日本じゃ味わえないもんな」


「はぁー、そう言うお前もク…」


「おい、クズ。お前が空けた天井の修理代は給料から勝手に引く」俺が言い掛けるとサンテが割って入ってきた。

しかも珍しくお怒りのようだ。


「お前たちがなにを言ってるのかは知らないが、直せ。絶っ対に!」


おぉ、語尾も強くなってる。


「それぐらい勘弁しろよ。ったく、相変わらず嫌われてんなぁ」


「僕はお前のそういう態度が気に入らないんだ!…丁度いい。ここは闘技場、決闘でもしようか?」


「あー、いいって!自分の力量ぐらいわかってるっつの。オレがあんたに勝てるわけないだろ!」


「フ…わかればいい。尤も、給料からは引いておくことは変わらないよ」


「うぇぇ!?またかよ!こんなやつが居るからオレはいつも貧乏なんだ!あーくそ、萎える。マジ萎える」


「いや、それは穴を空けたお前が悪い。じゃなくて、俺と闘うんじゃないのか?」


キレたサンテに気圧されて黙っていたが、流石に話が進まないので割って入ってみた。


「うっさいな…お前は殺してやるから黙って……あ」


それにも、さも鬱陶しそうに言い返す肇。

どうやら育ちはあまり良くないようだ。

言葉遣いも悪い。

と、ふとなにかを思い付いたように目を大きく開いた。


「そうだ。コイツぶっ殺したらチャラにしてくれるとかは…?」


「…良いだろう。お前のような馬鹿に、この男が負けるとも思えない。逆にぶっ殺されるといい」


「え?おい、ハードル上げんなよ。やるの俺だぞ?」


割って入ったのが仇となったのか?

なんだかよくない方向に話が進んでく…


「よっしゃ!じゃあ覚悟しろよ?えっと…」


「あぁ、まだ名乗ってなかったな。俺はゆ…」


「そこのお前!早速、死ね!」


イラ…ッ


「…どいつもこいつも…話聞け、バカ!」


威勢よく向かってくる肇に合わせ、俺は意識を集中し始めた。




次も久々にバトル物です。



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