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36.ご案内Ⅱ


36.人格者と37.ご案内Ⅱを結合しました。

紛らわしくてすいませんm(_ _)m


その後、フィオリの案内に振り回されながらもなんとか目的地に着くことが出来た。

というわけで俺達は今、およそ4メートルはあろうかという門の前にいる。



「…あの…いろいろとすいませんでした…こんなこと、始めてで…ちょっと舞い上がっちゃって…」


「いや、いいよそんなこと…それにしても…」


気弱なフィオリが謝ってくる。

これで何度目だろうか?

そんなに気を遣うこともないだろうに…。


考えるのもほどほどに、サンテの屋敷に意識を戻す。

来るのはこれで二度目だったが、外から見たのは始めてで…まさかこんなに広いとは思いもよらなかった。


門番が居たので、フィオリに話を付けてもらい今は庭を歩いている。


その庭が既に広い。


車が横に二台は通れそうな通路に、それ以外は見渡す限り芝生だ。


さらに、噴水とか常識じゃね?とでも言いたげな獅子を模した頭から水を垂れ流している噴水。


ここから見える屋敷に関しては、一般の住宅が20建はすっぽりと収まってしまいそうなサイズだ。


これは…一体なんの仕事をやってるのか聞いてみないといけないな…。


「…なぁフィオリ?これってアイツの屋敷で合ってるんだよな?」


「ア、アイツ…?ご主人の事でしょうか…?あの…それならここで間違いありませんが…」


「へー…これは凄いな。なんか危ない事でもやってるのか?」


「危ないこと…ですか。さぁ…わたしのような使用人に知る権利はないので…わからないです」


「使用人にも知らされてないのか?それって、尚更怪しいんじゃ…」


「あ、でも…それはないと思いますよ…?ご主人のこれまでの功績は偉大なものばかりですし…こんなつまらないわたしにでも分け隔てなく声をお掛けしてくださる素晴らしい御方ですもの…」


「ふーん…なんか、イメージと違うなぁ…」



自らの主人がどういう人間であるか、語っている時のフィオリは憧れにも似た目をしていた。


…意外だ。

サンテが尊敬されるような人間だったとは…。


最初に会った時の印象が最悪過ぎたんだろうか?



「アイツの事、尊敬してるんだな?」


「はいっ!ご主人の下で働けるのはとても誇らしいですっ」



初めて聞いたこの娘の強気な発言に、俺にも真剣さが伝わってきた。

よっぽど尊敬されてるってことなんだろう。


そんなことを話していると、屋敷の真ん中に位置する同じく巨大な扉の前に着いた。



「お、っと…これもデカいな…って、さっきの話聞いてるとなんか自信なくなってきたんだけど…俺も入っていいんだよな?」


「あの…出過ぎた発言をお許しくださいね…。悠様はお客様ですし…普通によろしいのでは…?」




「…そっ、それもそうだな!じゃあ入ろっか」


変に緊張してしまったが、フィオリの言うとおり俺は客人なんだから堂々としてればいいんだ。


思い直して逆にふてぶてしくずかずかと入っていく俺に、フィオリが…それも違うと思いますけど…なんて呟いた気がするが気にしないことにした。




「それで、どこに行ったらいいんだ?」


入ったはいいが、広すぎてどこに向かえばいいかわからない…。


「………」


「…おーい、フィオリ?」


「えっ!?…あ…ごめんなさい……聞いてませんでした…」



部屋を聞いてみただけなんだけど、なぜかフィオリが上の空だ。


最初から大きくなかった声もさらに小さく、元気もないように見える…。

なにより俯いて顔を上げようとしない。


「どうした…?」


「いえ…なんでも…ないです」


「なんでもなくはないだろ。元気ないぞー?」


「そっ、そんなことないです…ちゃんと元気ですよ?」


そう言ってやっと顔を上げた…のに、その表情には陰りがあったし、俺に覚えはないがどうしてか泣き出しそうな目をしている。


「そんな悲しそうにして…俺か?俺が悪いのか?」


「ち、違いますっ!!悠様は…なにも悪くないです」


呟くように話していたフィオリが急に声を荒げた。

理由を言わないので俺の頭の中を疑問符が飛び回っている。

というか飛び交っている。


ガッ


もうそろそろまどろっこしくなってきた俺は、両手でフィオリの肩を掴んで問い詰めることにした。


「っあ!?…え?…あのっ…」


「なにをそんなに隠すんだ?」


唐突に肩を掴まれたフィオリは驚いて視線を泳がせている。

それも終わり…目を合わせると、詰まりながらも漸く理由を話し始めた。


「…か、格好がつかないと思って…話さないでいるつもり…だったんですけど…あの…短い間でしたが…素敵な人に出会えたのに……それも、もうお別れだと思うと…」


「…あぁ、そういうことか…」


…正直に言うと焦らされた分、拍子抜けしてしまった。

なんだ…

いけないこと言ったか?、とか病気か?、とかいろいろ心配しちゃったよ。


「…まぁ、そう言われてみれば…」


「…す、すいません。…余計…でしたね…あ、お部屋ならあちらです…」


健気に与えられた仕事をこなそうと、通路に一つある扉に手を向けるフィオリ。

このまま別れるのは流石に後味が悪いのもあって気が引けた。

あれ?でも…



「なぁ?…どっか行くって決まった訳じゃないし…会おうと思えばまた会えるんじゃないか?」


「!!……それもそうですね…。コホン、では…お部屋はこちらになります」


「…簡単なやつ」


引っ張った分、なんとなく納得できないが…問題はこれで解決したようだ。

思わず呟いたのは、あっという間に機嫌を直したフィオリには……聞こえてないみたいだ、良かった。


ガチャ…


「失礼しまーす…」


「…やけに遅かったね?」


「や、それは…」


…呼ばれてからいろいろと振り回されてたからな。

サンテはその事に少し気を立てているみたいだ…。

でもその所為(せい)で責められれば

普段から気の弱いフィオリのことだ。

…本当に、顔を青くして卒倒ぐらいはやりそうだぞ…。



「…悪い、俺が行きたくないって言ったんだ。何より気が乗らなかったし…」


わざわざ申し訳なさそうな表情で言い訳した俺に、サンテはそろそろ勘弁してくれとでも言い出しそうな顔をした。


「…カトレア」


「はっ、はい!」


「また客人に迷惑をかけたんだね」


あ、やっぱバレてたか…。


「えと、あの……はい」


失態を犯したフィオリは、これから言われる事を予感してみるみる青ざめていく。

なにかと気を遣いすぎる娘だからな…

人より重くとって考えてしまうんだろう。


そんな光景を前に、

俺まで気が重くなってきた…のに。



「まぁ、今回は相手が良くて助かったよ」


予想に反し、サンテはあっけらかんと言い放った。


「え…?お客様に…粗相を働いたわたしが…不問、ですか?」


これもまた予想に反してガッカリそうなフィオリ。

そういやお前…


Mだったな。


「まさか責めらるのも計算の内…ってことはないよな?」


「??…なんのことでしょうか?」


…流石にそれはないか。

とか思う俺は甘いんだろうか。



「まぁ…わたしは、責められるの好きですし」


「( ̄○ ̄;)!!」


この時から、もう予想するのは止めよう、無駄だから。

と思った。

てか気付いた。


さらに驚いたことに、このやりとりを見て今まで無表情を貫いていたこの男が笑みをこぼした。


「…フフッ、面白いだろう?この娘は」


「…あぁ、いろんなイミでな?」


「やはり案内にカトレアを選んで正解だったよ」


「は…?まさか、それも計算の内か!」


「当たり前だ。こんなこと、普通の客人の前では許されないからね」


そ、それもそうだ…!


「なっ……じゃあ、こうなるのも…」


「勿論、予想通り…といったところだね」


…ってことはつまり、


「…俺は振り回されただけじゃねぇか」


「そうだね」


「あああのっ、お仕置きはなしですか…?」


「……も、もう本題に入ってくれ。なんか疲れた」



この世界の常識(?)についていけなくなった俺は、


話を投げることにした。


次でようやく話が進みます。



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