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23.雷騰雲奔


相変わらず、展開はやっぱり急です




「ここが5階…だな」



正直、階段登ってるだけでしんどい…


目が霞んで5であってるのかどうか…




カツカツ…


耳を澄ますと足音が聞こえてきた




「あっちか」




階段を登る間に簡単に止血しておいた


これで痛みは少しマシになった…かな



拳銃を構え、足音が聞こえた場所の手前で立ち止まった




「いた…まだこの辺ウロウロしてんのか…」


通路の角から覗いた限りでは、無線機に耳を当てたまま右往左往している


相当にうろたえているようだが…上司はそんなに上層部の人間なのだろうか


軍事関係はさっぱりわからないが、無線の相手…つまりこいつらの指揮者が幹部級だとしたら…


この狼狽えよう…本当にそうなら勝てるわけがない


とりあえずこちらに気付かないうちに始末しておこう




バン!



通路から飛び出し、しっかり狙いを付け一発。



当たった敵兵は声を出す間もなくその場に倒れ込んだ




「ちょっと卑怯だけど、こんな時にそんなこと言ってられないからな…」



その銃声を皮きりに、他の音がしなくなった



「これで最後か…」




ふー…


やっと終わった…



その後、傷ついた身体を引きずるように自分の部屋に戻った





ガチャン!




「よし、鍵は掛かったままだな…」




部屋で寝ていた藍華が心配だったが、どうやら杞憂だったらしい




ガチャ


鍵が掛かっていることを確認し、解錠して中に入った




「あっ…弾が肩に入ったままじゃないのか?」



…考えたくない…でも、取り出さないと治らないだろうな



そう思い、肩に手を伸ばした





グチャ…ッ




嫌な…音がした





「ほら、取り出せたよ?これで問題ないね?」




そう言った"誰か"の手には、確かに血に塗れた銃弾が握られていた




「な…っ!?部屋に人の気配なんかしなかったのに…っ!?」




第一、鍵が掛かっていたはずじゃ…




「空いてたから入ったんだけど?」



「…俺が開けてから入ったのか…でも、そんな音は聞こえなかったぞ?」



「そんなことよりさぁ…それ、痛くないの?」




そいつが俺の肩を指差した



前から見るとなにも変わらなかった




「…?なにも変わってなんか……いっ!?」




普段は自分から死角になっている後ろを見ると、素手を突っ込んだような穴が空いて血が吹き出ていた


もう一度、そいつの銃弾を持っている手を見た


最初はわからなかったが、そいつの手は手首の辺りまで真っ赤に染まっており、手首から肘にかけて大量の血が滴り落ちていた


致命傷に間違いない出血量に、全身の感覚が麻痺していく


足に力が入らなくなり、立っているのが不思議なほどフラフラし始めた




「うっ…誰だよ…お前は」




フラフラする足をしっかり踏み直し、嫌な予感が告げている…既にわかりきった質問を繰り出した





そいつは…その質問に対し、いとも可笑しそうに答えた




「もうわかってるんだろう?そんな顔をしているよ?…僕はこの実行部隊の指揮官にして組織の幹部、サンテ・クラヴスだ」



「あ、友達にはサンちゃんとか呼ばれてるけどね」





これで藍華の嫌な予感は的中したわけだ…




「は…っ!藍華はっ!?」




まだ眠っているんだろう


寝室からは反応がない




「なにか勘違いしているみたいだね?僕は彼女たちには手出ししない」



「はぁっ!?そんなのあてになるわけないだろ!お前の部下には問答無用で殺されかけたんだぞ!」



「あ~…まぁ、確かに僕が受けた指令だとそれであってるんだけどね…」



「なんだよ!…それ以上なにかあるのか?」


「ちょっと気になるんだよ。裏切り者のレノアくんと雷の子は知ってるんだけど…」



どうやらここからはこいつの独断らしい


そこで一旦言葉を切ると、奴らにとって当然とも言える疑問を口にした




「キミとそこで寝てる女の子はどこから来たんだ?…それをちょっと聞きたくてね」



言い切ると、この男が纏っている雰囲気が変わった




「待て!…俺が知ってることなら全て話す…だから、俺の仲間に手を出すな」



「うーん、協力的なのは面倒が省けていいんだけど……ま、いっか。じゃあ行こうか」



「そっちも約束してくれ、お前も部下もなにもしないって」



「あぁ、いいよ。約束する」



「お前、軽いな…あ、拘束とかはしないのか?」




てっきり縛り上げて連れて行かれるんだと思っていた俺は、一応聞いてみることにした




「面白いね、僕から逃げられるとでも?」




意外に自由だな…


まぁ、いつ部屋に入ったかも肩を貫かれたかもわからないほどのスピードの持ち主から逃げようとも思わないが…




「…それもそうだ」



「それで、そろそろ行きたいんだけど…ん?」




どてっ



どこまで本当なんだかわからないが、手を出さないと約束し気が抜けた途端、立っていられなくなり急に意識を失った…


どうせ、今の有り様じゃなにもできやしないから変わりはないんだが…




「こんなところで死なれちゃ困るんだけど…早速約束を破る気かい?」




といっても気絶してる俺が返事するわけもなく…




「一応、荒っぽいけど皮膚を焼いて止血しとくよ…って聞こえるわけないか」



肩に手を置くと、強烈な紫の光を放った



バチッ


シュゥゥ…



皮膚の焼けた、嫌な音と独特の匂いが広がった




「後ろもだったね…面倒だなぁ」




やったのは僕なんだけど…そう呟きながら後ろも同じように焼いて塞いだ


見た目は最悪だが、処置は完了した




「ま…まぁ、ちゃんと直しとけば問題ないでしょ」




失敗した時の子供のような顔をすると、気を取り直して腰に手を回し、肩に担いだ




「やれやれ…男を担いでもなにも嬉しくないんだけど…」




独り言をこぼして溜め息を吐くと、窓に手を掛けた



勢いよく開け放ち、ここが五階だということを嘲笑うかのように飛び出すと


玩具を与えられた子供のような無邪気な笑顔を浮かべ、一瞬で姿を消した






備考:サンテの年齢は16です


どうでもいいことですがイメージがわかなそうなんで…

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