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16.月夜の実験

この話は恐らく読まなくても問題ありません


まぁ読んでもらうのにこしたことはないんですが(^_^;)

ハァ、ハァ…


足が重い…

鼓動がいつもより激しい…


荒い吐息とやけにでかい鼓動だけが聞こえる


踏みしめる一歩は、そのたびに心を折ろうとしているようで


確実に体力を削っていく




それでも頭が告げる

走れ、逃げろ。と





ガサッ



「!!」



草を掻き分ける音にピタッ、と足を止める


走っていた時よりも心拍数があがる


呼吸がしづらい…


くそっ…なんだよ!


姿を見せろ…


誰だっつんだよ!、そこにいるのは




ヒタ、ヒタ、と音の正体が姿を現した



わぉ~ん…



ソイツは間の抜けた声で遠吠えた




「なんだ、犬かよ」




・・・




「…じゃねーだろ!なんでこのタイミングで出てくんだよ!」




思わぬ来訪者に蹴り飛ばしておもてなそうと足を振り上げる




「グルルル…」



犬が今度は唸りだした


それだけで何故か冷や汗が額から鼻を伝って流れた




「…オイオイ、まさか…やめてくれよ。悪い冗談だって」




犬、がその姿を歪めていく


しかし、変化を見届ける間もなく走り出した




「くそっ、くそっ!逃げ切ったかと思ったのに…何だってんだクソったれェェ!」







助けて…助けてよ!


レイィィ!!




「…ウグッ!」




頭に人生最悪の記憶が蘇る



年は六歳ほど…


俺の名を呼び


助けを求め、声を荒げる紅い髪の女の子





「やめろ!やめろ!俺が悪いんじゃない!」



言い訳が小宇宙のように脳裏を駆け巡る





「ちがう……しょうがないだろ…俺にはそんな度胸なんて…ないんだ」





いくら言葉で言い訳したって心ではわかってる


全部、俺のせいだ


ごめん…ごめんな…







「……藍華…」







まだ、鮮明に覚えてる


そりゃそうだ…ついさっきだからな







「レイ、これ見てよ」



その言葉に、回転するイスをクルリと回し


少女が差し出している手を見る





すると、ボッ…ボボッと、消えかけの炎を灯した




「すごい?藍、すごい?」



この少女は自分のことを藍、と呼ぶ


まぁ、今6歳なんだからそんなもんだろう



しかし実際、6歳で能力が開花するとは…凄いな



俺は成人してから開花、死に物狂いで努力して今の地位まで上り詰めたってのに


スタートラインが6歳から、というのはとてつもなく有利だ


人には個人差はあるが、成長期というものがある


人生の四分の1程度の時間だがその間に一種の完成系を迎える



そんな成長期に獲得する経験値は筆舌に尽くしがたい。


全ての人間の身体能力も知恵も人生観もどんな成長期を過ごしたかで決まる、といっても過言ではない


勿論、能力を使えるか使えないかで全く別の成長を遂げることになる


それこそ常識など覆してしまうほどに



と、ベラベラと喋ってしまったが


凄さは十二分に伝わっただろう




「凄いな…藍華は。その歳でもう使えるようになったか」



「凄いでしょー!」



褒められて嬉しそうに胸を張る




「レイもこの力を使えるの?」



「ん~?俺は藍華よりもっと凄いぞ!」




当たり前だ

俺は学者で、もう120年は20歳の姿で生きている


世界で俺に並ぶ実力者はなかなかいないだろう




ま、まぁ不老が実験を失敗して偶然…ということを除けば、学者としては完璧だ




「見せてよ!凄いんでしょ?レイは」




「そうだな…いいよ。すげぇの見せてやる」


チラッと窓の外に目をやる




「ただし、明日の夜な…満月がないと中途半端になっちまう」



「わかった!明日だよ?約束ね」




子供らしく指切りを求めてくる


それがなんだか微笑ましくて、頬が弛む




「ああ、約束だ」





ちなみに藍華は俺の子ではない


親が生活費に困り、苦渋の決断を下したらしい


藍華は覚えていないようだったが、少し記憶を覗いたことで判明した


あんまりやりたくはなかったが、

さすがに知らない子を拾ったらなにがあったのか気になるのが普通だろう





「こんな日ぐらい外でゆっくりするかな」




最近は研究に行き詰まって煮詰まってたからな


まぁ、一段落したことだし


明日の夜を待つだけだ





「さて、片付けも終わったし…外に出よう」



ギギィィ…


手入れを疎かにしてしまった扉は、錆びて軋んだ音を立てる




「あっ…タバコ忘れた」



吸い始めたのはいつだったか…


今ではどこへ行くにも必要になってしまっている


どんだけ吸おうが数々の実験を経て、体は常に最善を保つように出来ている俺には関係ない


ただ、気持ちの切り替えにはちょうどよかった






藍華には、何度やめろと言われたか知れない


さすがに気遣って外で吸うようにはなった




ボッ…



指に小さな火を灯す


ジジジ…


葉の焼ける音がする




「……フーー…」




少し青みがかった紫煙を眺め、緩慢な動きで外に置いてある椅子に腰掛ける




「……」


ジジ…



物思いに耽り、なにをするでもなくほったらかしで伸び放題の木々を眺める


更に遠くには山がある


この辺りには俺の住んでる集落がポツポツと在るくらいだ




「…フー…あれ、もう無くなったか」




気付けば火種は根元まで来ておりフィルターまで迫っていた




「…もう寝よう」



明日まで特にする事もなく

藍華も自分の部屋で眠りについていることだろう



ベッドに倒れ込み、翌日唱えることになる呪文を頭で反芻する


二回ほど復習したあと自然と眠りについていた





-翌日-



まだ眠っているような体を起こし、瞼を擦り、思いっきり伸びをする



そのまま洗面台に向かい、顔を洗い目を覚醒させる




「っあぁー…まだ眠い」




窓から光が差し込んで朝とも思えないほど明るい




「あれ、もう昼か…」




夜~昼までしっかり眠っていたらしい



しばらくボーっとしたあと、外に出ようとタバコの箱に手を伸ばす




「よし、まだあるな」



残り5本になり、余白に寂しさを感じる箱を手に、玄関をくぐる



急にくる日差しに思わず目を瞑る



目が慣れると辺りを見渡す



日差しが強いが、涼しい風が吹いている



ボサボサになった髪を風が撫でる


とても心地よい風の余韻に浸りながら



タバコに火をつける





「う~ん、いい天気だ」




さわさわと葉を揺らす音に耳を傾けていると


家の方から扉を開ける音がする




バタン、と今度は玄関から音がした




「…ぉはよ」



そこには、俺と同じく眠たそうに瞼を擦る藍華がいた




「おはよ」




フー…


いつもより勢いよく煙を吐く


別に意味はない




「あ…またタバコ吸ってる…」




まだ眠いようでいつもの元気はなりを潜めている




「俺の肺は特別製だからいーんだよ」



何百回目の注意に、イヤミと100%の作り笑いで応じる




「いーなー、ずっと調子いいままなんでしょ?」



「ふっ…いいだろ?でもな…真似すんなよ、これはやっちゃいけねぇことだ。…俺は、こうでもしないと弱虫を隠せないんだ」



「えー?でもレイは強いんでしょ?」



「あぁ、強いよ。これ以上ないくらいにな」


「…??」



今の少女には、強さと弱さは相容れないらしい


理解しようと難しい顔をしている




「今のお前にはわかんなくていいさ。ただな、いつかわかるようになるから覚えててくれ」



「えっ?う、うん」




普段見ない真面目な表情に六歳の少女は姿勢を正した




「この世で最強の男…その強さは、弱虫が弱虫なんだと思われたくない精一杯の強がりだったってことを」



「……うーん??」



俺の言葉に、さらに迷宮入りしてしまった藍華は頭を抱えて悩み出した




「はは…いつかわかるさ」




その言った俺は、藍華と出会ってから自分でもわかるくらいの一番の笑顔を見せた









「…そろそろ始めるぞ」

夜になり、大体の準備はすんだ




「…うん」


「…そんなに緊張すんなよ…ま、無理もないか。この部屋に初めて入ったんだからな」



初めて見る部屋の異様な雰囲気に呑まれたのか、緊張しているようだ


今居るこの部屋は、階段下の物置…更にその床下にある(ベタか?)


入り口は特別に、魔力と呼ばれる力で施錠してあるため、力では絶対に入れない


これもありがちな、誰かが入ったらわかります機能もついている


部屋の中は謎の文字に謎の紋、グロテスクな材料は使っていないが(単純に気持ち悪いから)、完全に独学なために見たことがあるものなど一つもない




「集中するから…話しかけんなよ」



「…わかってる」




邪魔する余裕はない、か

好都合だ




自ら描いた紋の前に立ち、儀礼の言を紡ぐ





「汝、炎を司る鬼よ…我が身に宿る業を喰らい、その身に業火を纏いてこの地に顕現せん」



「…数多に存在する混沌のなかで、俺はお前を選んだ」



「来い!戦火灼閻の鬼、ほむら!」





バキンッ




何もないところに縦の亀裂が入った


次いで赤い手が亀裂を横に裂き



限りなく肌の赤い鬼が這い出てきた




伝承の鬼と違い、見た目は人間の男性と大差ない


肌が赤く、二度折れ曲がっている角、少し長い歯に、白い髪…それ以外は人間と同じだ





「我を呼んだのは貴様か?」




ひどく重い声と共に、その眼で一筋に見据えている


相当な威圧感だ




ただ、その威圧感、迫力を一心に向けられているのは藍華だった




「お前を呼んだのは俺だ!」




声を張り上げ、自分を指差す


だが、この一般に炎鬼と呼ばれる異形の者は、なにかがおかしかった




「…貴様などに要は無い。我は餌を喰らいに来ただけだ」



「…え?この人だれ?怖いよ、レイ…」



…なんだと?俺の炎を喰らいに来たんじゃなかったのか?


怯えた藍華が後退り、棚に足を引っ掛け尻餅をついた



「おい!なに言ってる?お前の餌は俺だ!」


「貴様こそなにを言ってる?貴様の汚れた残飯の様な炎などより、この小娘の天に優るが如ぐ澄み切った炎の方が美味いに決まっておる」




いや、純度はともかく、いくらなんでも俺の炎の方が圧倒的な量だ


調べによれば、こいつは長年なにも食っていない、少量の美味より俺の方を狙うはずじゃないのか…?




「おぉぉ、なんだ…この炎は。こんな炎、ついぞ見たことがない!なんという純度!なんという量だ…!こと炎において我は最高位を誇る…だが、純度だけで言えば既に我を凌いでいる!…ふふふ、ふはははは!面白い!面白いぞ小娘よ!」

なっ…!?

確かにあの歳から自分の力に目覚めるのは珍しい。

しかしまだ発展途上以下だ


その時点で俺の力を越えているのか?




「では、いただくか」




鬼が嬉しそうに表情を歪めた




「ちっ…見誤ったか!」



このままではまずい、無理矢理にでも止めるしかない




「我、天地魔導が名において命じる!漲る怒涛の勢いにより、我が敵を撃ち抜け!」



手から沸き起こる流水が炎鬼を撃ち抜こうとその勢いを増す





「ふん!」



ジュゥゥ…


炎鬼は、それを腕の一振りで掻き消した




「……そうか…お前…床に描いた召喚紋から俺の魔力を根こそぎ食いやがったな?」


「ふっ、今更気付いた所でもう遅いわ…貴様の魔力は凄まじいな、炎も水も雷も最高位ときては何者も手は出せまい」



炎鬼は余裕を隠さずに態度にだした




「はっ、もう勝った気でいるのか?…甘いな!"力"ならお前のがあるだろ!」




話しながら、相手の力を自分のモノにする印を結ぶ




「来い!(つむじ)




バキン、とさっきと同じく亀裂が入る


亀裂の中からは緑の細い髪をした華奢な女性が現れた




「あらあら、久しぶりに呼び出したかと思えば…こんな物騒な所でなにをさせるつもりだったの?」




緊迫した空気に、1人のろのろと喋る旋




「のろのろ喋るな!早く来い、吸うぞ!」



「はいはい、全く人使い粗いんだから」




寝てたんだからしょうがないでしょう…とかなんとか文句を言いつつも(そう言われれば寝るときの服装で出てきた)レイの指示に従ってくれた





「「風引(ふういん)!」」




声を揃え、魔力を放つ


すると、レイを中心に風が発生した


机や棚の物は動かないが、炎鬼の力は




「捕まえた!」




確かに掴んだ


この禍々しい炎はあの炎鬼のものだ、間違えるはずもない




「レイ…ほんとに怖かったよぉ」




は?…俺の見間違いか?

なんで…藍華が




「あ、藍華…?」



炎鬼の力は掴んだ、だが、そこに居たのは…藍華だった





どうですかね…

過去編、みたいな感じを意識して書いたのはこれが初めてです


意味わからなくしたつもりなんですけど伏線とかは期待しないで下さい


作者はそこまで頭が回りません(><)

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