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15.電光石火

途中から名前が抜けていますが、意図的なものです

嫌いな方が多いんじゃないかと思い、あえて抜きました


悠「…ふっ!」


勢いよく体を起こして体勢を直す



痛むのは肩、膝、背中…ぐらいか


さっき転がった時に打ちつけたらしい


特に肩が酷く、服に血が染みていた



でも動けないほどじゃない



さて、どうしようか…


これだけでも力の差は歴然としている

やり方を変えないと潰されるだけだ



……見たところアイツ自身は一歩も動いてない、謎の力で潰しただけ…


疲れるけど一度だけ全力で撃ってみるか…?


駄目なんだろうな。さっきのは全然本気には見えないし

こっちだけ本気になってちゃ部が悪い…



悠「って、うおっ…!」



バッ



いきなり自分の中で悪寒のようなものが膨れ上がった


体が許す限り全力で右に跳んでかわす




ゴシャァァァア!




その一撃で地面を大きく削った

子供がスコップで掘ったのなら一年はかかりそうだ



それが一発でもなく次々と降り注ぐ。



悠「うっ…あぁぁぁぁ!」



さすがに見えないものを何度もかわせない、勘を頼りに全力疾走あるのみだ



ガァン!


ドン!ドドドド!!



といったふうに威力はそのままにさらに激しくなり続けた


それを右、左、前、後…と緩急をつけながら的を絞られないように全力のフットワークで動き回る




…このままじゃ先に体力が尽きる


ぶっちゃけて言えばアイツは接近戦は得意じゃなさそうだ

この力も自分の近くで使うわけにもいかないだろう


それこそ自爆だ




悠「この次は左に跳んで……よし、今だ!」




思いっ切り前に体を倒して助走をつけた

能力をフルに使っての助走だ。もはや目で追える速度ではない


相手の10mほど手前で飛び上がり、空中で右足を伸ばす

腰をひねって…振り切る!



「なっ…!?」



ガッ!



奇しくも初撃は防がれたが、もともと一撃で決められるとも思っていない


着地して右、左手で二撃。


もう一度加減無しで右の蹴り


ガンッ!


「ぐおっ!」


右足に少しだけ心地よい感触が広がり、わき腹に突き刺さった



吹っ飛んで一回転、今の突撃は予想外だったようでまともに防げなかったようだ

常人なら何がおこったかすらわからないだろう…

連写カメラなら程度にもよるが、2枚目ですでに見えなくなっているようなスピードだ




「はぁっ…はぁ…うぐっ…」



どうやら最後蹴りが効いたらしい。立ち上がっても顔を苦痛に歪めている



「よくもやってくれたなぁぁ……もう人の形をしていられると思うなよ」



息を整えてこちらを睨んできた

さっきのヘラヘラした態度とは別人のような目に圧されて思わず後ずさった



「…発」



一言、短く吐き出すように呟くと



バンッ!


と破裂音がした


するとみるみるうちにしまった体が筋骨隆々の大男になった




悠「げっ!マジかよ…こんなの漫画でしか見たことないっての!」




一気に距離を詰めて鳩尾あたりに鋭く一撃いれた


風を纏わせ、さらに腰のはいったいい一撃だ、と思ったのだが…




「邪魔だぁぁぁ!」



何事もなく、さも鬱陶しそうに振り払われた


それを後ろに跳んでやり過ごす



悠「あぁ~…効いてないとか…そういうパターンね」


悠自身、意味のない一言を言ってるような余裕は無いのだが、漫画そのまんまの状況にいまいち実感がわかなかった



悠「これじゃ接近戦は無理だ。まださっきの力が使えるのか確かめないと」



腰にある銃を抜き、引き金を引く



ガンッ!



痛む肩に反動を受けながら一発



ビシッ




悠「…あーぁ」




あの力は健在のようだ…


どうしよう…手詰まりか?




「……蒼煉…火葬」




ズガァァァン!



「!!…ガ、ァアッ…ゴ…アァアァァ!」




かなり後ろで見ていた女の子の聴こえる筈のない小さな声がなぜか反響して辺りに響いた




そして直後、

さっきとは比べものにならない驚くほど綺麗な蒼の炎

思わず強く目を瞑る強烈な光量



その後に続く男……いや、獣の咆哮




悠「…凄いな、思ったより…なんてもんじゃない…普通に規格外だ」





藍「……まだ…今の内…」




また、声が響いた

小さく呟いているのに何故聴こえるんだ?

目の前で激しく燃える音しか聴こえないはずなのに…




悠「っ?…まだって…まだ死んでないってことか?…あの爆発で」



藍「…はやく」



悠「あ、あぁ…わかった」




俺の問いには答えなかったが時間がないことはわかった


今残ってる力を全部つぎ込む勢いで風を制御する




悠「ふー…まぁ、こんなもんだろ」




直径1メートルほどの微かに輝く光の弾を作り出した



悠「よし、行け!」




パン!



目の前から光が消え、炎が一気に散った

発生した空を切り裂く音で耳が聴こえなくなる



悠「うっ……」



あの巨大な肉塊が一瞬で吹き飛ぶ衝撃、その余波に自分まで飛ばされそうになった



悠「…これで終わったか?」



結構力を使ってしまった

これでもまだ立ち上がってくるようなら

おそらく勝ち目はないだろうな…










「…っあー、今のは効いたぞ……おかげで目が覚めたがなぁ?」




悠「!?…コイツどんな構造してんだよ…」



少し離れた所からゆっくり歩いてくる


ただし、おかしな点が一つ


左足がない



根元の部分から完全に千切れてなくなっている


かわりに触手のようなうねうねしたもので体を支えてるようだ



悠「なんだよあれは」


元の…ってか原形…はないな…再生してるってのがしっくりくるかんじ……かな


なんにしろ気持ち悪い

なにせ左足だけ這って動いている




悠「再生…か、確かめる必要があるな」




残った力でギリギリまで薄めた刃を飛ばす




ザクッ



肉が断ち切られる生々しい音が耳に入った

次いで…ボトリ、と足が落ちる




悠「おぇっ…自分でやっといてアレだけど…マジで気持ち悪い」





「……なんだこれは?もしかしてこの程度の力しか残っていないのか?…お前には私を傷つけた、という罪があるんだ…少しは楽しませてもらわないとなぁぁぁ!」

そんな台詞を吐いた後、体に見てわかる程の異変が起きた




グジュルルル



酷く粘膜の擦れるような音を立てつつ

さらに人の形を失っていく

ぞわぞわと嫌な感触が背中を這い上がってきた



藍「…死んで?……あなたはもう…とっくに終わってるの…」




ボン!



凄まじい爆発に目と耳が使えなくなった

うぅ、耳が…


色は、緑、蒼の2色で

爆発の規模は今のが最大級だ




悠「こんどこそ…っ!」




「グァァァ!…熱い!熱いぞぉ!誰だこんな事をするやつは!……殺してやる!全部、全部殺してやるぅぅぅ!!」







…ただの肉塊が半狂乱で叫んで暴れているが、もう気にしなくても大丈夫だろう





「なんだ?この塊は…」



「よく燃えてるわね…ん~、やな匂い…」




悠「リリィ、レノア…そっちは終わったみたいだな…あれ、咲妃は?」



リ「ま、ザコばっかだったからね。咲妃さんはあっちの子を見に行ってくれてる」



そう言って後ろを指差す


あぁ、なるほど




レ「コイツが幹部のようだな…だが、こんなヤツはいなかった筈…」



悠「…最初は医者みたいなヤツだったぞ。薬かなんかで変わったんだと思う」






レ「あぁ…大方、検討はついた」




なるほど、アイツか…気に入らないヤツで良かった、あんなヤツなら遠慮なく潰せる




レ「行くぞ」





…ここから仕切り直しだ


悠「今までなにしてたのかは知らん、けどもう好き勝手やらせねぇ」


…罪はお前が償え!






「はぁぁぁ!」


まずはレノアが飛び出した

まぁ一番速いし鎧着てるし、妥当な判断だろう



ビュッ!



なんか最終的に雑草?みたいなのになった肉の塊が鋭く触手を叩きつけるが、



バヂッ



しかしレノアに当たる前に弾け飛んだ



「大丈夫?」

リリィがすぐにフォローに入ったからだ



…一気に暇になってしまったすることがない

でも俺も何かしないと…



「なぁ、フォロー任せていい?」



「いいけど…あたし1人じゃ限度あるからね?」



「あぁ…わかってる」


そう言い終わると同時に走り出す


それにしても、凄い再生力だな

レノアが何度となく斬ってるハズなのに



そう考えてる間も次々と襲ってくる触手、


それをよけながら少しずつ近寄っていく




悠「よっと」



だんだん目が慣れてきたみたいだ

避けた後、目の前にある触手を掴んでみる



そしてそのまま引きちぎった




「jgwmaj0TJM!!」



すると、聴いたことのない奇声を発して暴れだした




悠「うわっ…あばれんなよ」




右、左、また左と避けた所までは良かったんだが、目が慣れて油断した

死角から触手が迫っていることに気付けなかった



バチィィ!



触手はなんの抵抗もなくわき腹にヒットした



悠「ごふっ!」



おもっきし吹っ飛んだ挙げ句、これは…




わーお、今のでアバラが逝ったみたいだよ☆

そりゃー痛いわけだ



悠「っくそ!…油断した!」




吹っ飛んで距離が出来た俺は、また油断してしまっていた


しかし、気付いた時にはもう遅いというのが人生というもの…



顔目掛けて触手が迫る!

時間にしてみれば一秒あるかないか…でも、その時の俺はなにもかもがゆっくりに流れていた


永遠のようになどとは言わないが、少なくとも体感した時間は一分はあっただろうな


体もゆっくりだからまるで意味ないけど…





悠「あー…言ってたそばから……またやっちまった」




その後、ズン!…と地面もろとも潰されてしまった


腹の奥に響く重い音が耳に届いたところで、俺の意識は途切れた





「あ、……悠!」



最初に気付いた咲妃が倒れたままの悠に駆け寄る




「咲妃さん!今、近寄っちゃ駄目!」




リリィが止めようと声を張り上げたが、咲妃には聞こえていない




「咲妃さん!?近寄るなと言われただろう?」




レノアも声をかけるが、まるで聞いていない



「…悠!悠ぅ!」





(完全にパニックだな…心配しなくても、あれぐらいじゃ死なない筈だ。焦燥で周りも見えてないか…)



レノアの思った通り、咲妃は早く助けないと、という一心で何も見えなくなっていた

もうすぐ触手の射程内だというのに止まる素振りすらない




(…自分の愛する人がこんな化け物の前で倒れたんだ…自身が傷ついてでも助けないと…と、思う気持ちは解るが…)


「仕方ない…同じ幹部同士、手加減なしで勘弁してもらおうか…」




手の甲がうっすら光を放つ

布越しでは微かにしかわからない




「broodRelease(限定的な力の解除)」


「…変化しない程度だとこれが限界だな」




誰にも聞こえない呟きを残し、前の肉塊に向き直った



柄を握りしめ、振り上げると激流とも言える大量の水を剣が纏っていく




ザァァッ




「はあっ!」




限界まで力を込め、渾身の一撃を振り下ろした




それに反応した肉塊がレノアの一撃を止めようと触手を伸ばした



(反応が早いな、ここまで肉だと反射神経もないのかと思っていたが…)




ドドドドド!




伸ばした触手を蹴散らしながら全て肉塊にぶつける




「これで……潰す!」




本体に当たった瞬間、水の勢いが体を抉っていく…





「グギャオォォォ!…」




今の一撃で体の半分以上をもっていかれてかなり苦しんでいる


再生はしているのだが、それも悉くレノアに切断されてうまくいかないようだ




「とどめだ…!」




次の一撃で決められると確信したレノアは、剣を振り上げ意識を集中する






…しかし、それが失敗だった



この肉塊はトドメを刺そうとしているレノアではなく、射程圏に入った咲妃に反応してしまった


触手は、咲妃に向けてその矛を放った




(反応が早いな…反射神経などないと思っていたんだが…)


自分の言葉が反芻される


大半の人は自分の視界に小さな虫などが飛んでいれば考えもなしに手で払うなどの反応を示す


それと同じことが目の前で起こっている


「…しまった!」


いくらレノアが早い、とはいえすでに触手は咲妃に攻撃を開始している


反応してからの行動よりも反射の方が早いのは当然だ




ゴオォ!


空を切り裂く音がする…真っ直ぐに、咲妃に向かって



目の前が真っ白になった


ああ、死ぬ時ってこんな感じなんだ…頭の片隅ではそんなことを考えていた


それに熱い、燃えてるんじゃないか…と思うほどに


…って、あれ?私が燃えてるの…?


それで、手を見て…


あ!?ほんとに燃えてるじゃない!


私じゃなかったけど…




「…なに?…どうなってんの?…」



咲妃さんが危ない!ってとこまでは見てたんだけど…


急に真っ白になって、次に真っ黒でところどころ赤い光が走ってる灰の山になってて…




「咲妃さん!…大丈夫!?」



「・・・」



「咲妃さん?」



「え?…あ、ああ!私のこと?私なら大丈夫。それよりも…」




こうしてちゃんと会話しているのに、どこか一点を眺めている


気になって、咲妃さんの目線を追ってみると


火が消えておらずまだくすぶっている灰の山があった…なにも変わったところはなさそうだが、妙な音が聞こえる



ザッ…ザッ…ザッ




「…もしかして、誰かいるの?…まだ火が残ってるのに」




よく聞いてみると、火に巻き込まれた木がパチパチと音を立てているそれに混じって誰かの足音が聞こえる



その足音の正体は紅い髪をなびかせて私たちの前に現れた




「あ、さっきの人…大丈夫だったぁー?」





煙に包まれて出てきたのは紅い髪をした少女だった









「あつい…ひたすら暑い…みんな俺のこと忘れてないよなー?」


アバラが折れてあちこちボロボロな悠は未だに動けないでいた…




「まぁ…自業自得なんだけどさ…」




ちなみに悠が救助されたのは脱水症状をおこしかけた一時間後である




「…あんた、誰よ?」



初対面だというのにピリピリしているリリィ



「なに?そんなにピリピリしちゃって」



「うっ、うっさいわね!どぉでもいいでしょそんなこと…あんたが誰だってきいてんの!」




急に現れた少女はリリィがチラチラとどこかを見ているのに気付いた



…あぁ、なるほどね…




「…もしかして、胸のコトとか気にしてんの?」



少女がなんとなく、といった風に聞いてくると、リリィは見てわかる程にビクッと肩を震わせた


そう、この少女は胸がデカかった。…といってもデカ過ぎず形もいい感じ(Dぐらいだろうか…?)


追加補正、リリィは胸を張る程の胸もなかった…





「あらら…もしかして図星かしらー…」



余裕の笑顔で髪に指を通す少女




「っーー…!うっさい!!こっ!殺すわよ!アンタァ!」



「ふふん、出来るの?あなたに」



あまりにも余裕綽々な対応を見せる彼女に、リリィの怒りが爆発した


頭の中で理性のセーフティーが外れた…というか吹っ飛んだ




「…そっこまで言うんなら殺ってやるわよ!!」



ザワザワと怒りに同調して体から電気を発し始めた



本気は可哀想だから加減はするけど

…ちょっと寝ててもらおっかな…




軽い調子でとんっ、と飛び出した

調子とは裏腹に雷の軌跡を残して凄まじい速度で突っ込み、そのまま蹴り飛ばして終わらせようと思っていた





「やぁぁぁっ!」



飛びかかっているリリィに対して少女は深い紅の瞳を不敵に光らせると薄い唇を僅かに歪ませた




ガッ…ドォォン!





激しい炸裂音のあと、背中を打ちつけ苦悶の声を漏らす






「うぅっ…いったぁ~!」




蹴り飛ばしてやろうと思っていたリリィだったが…吹っ飛んだのもリリィだった





「そっ…そんな筈は…」



「どぉしたの?こないんならこっちから行きましょうかぁー?」



「うぅぅぅ…っ!よっけいなお世話よ!いいわ…来なさい!」




勢いよく立ち上がって構えを直した。

今度は本気で殺ってあげる…!




リリィの力は雷、反応速度は少しよくなる程度だが、スピードは本物のそれに近くなる


常人なら反応出来るような動きではない……ハズだったが



あの女は側頭部を狙ったのに、ちゃんと目で追って手で弾き落としていた


…それなら、さらに反応出来ない速度で動けばいい





「ふふ、はぁっ!」



少女は何の所作もなしにあたしの右に在った空間を燃え上がらせた





「っ…!あっぶないわねぇ!…あぁぁっ!髪がちょっと燃えちゃったじゃない!」




ホントにホントに殺してやるんだからっ!

と叫びながら強く拳を握りしめる





「たぁぁ!ふっ!やぁぁぁ!」




右、左、上段に蹴り、もう一度手刀で右に薙ぐ

そして最後に落雷…





「嘘ぉ…」





「あはは…ホ・ン・ト♪」




ゴッ、と鈍い音を立て、リリィが地面を転がった




「うぁぁぁっ!あっ、い…ゲホッ」



「あっ、ごめん…今のはモロに入っちゃったね」



「情けなんて…いらない!ホンッットにムカつくわアンタは!」



もう一度、リリィが繰り出した


雷と炎、あちこちに雷が落ち、大地が燃え、光を放つ

リリィが突きを放てばそれを流され、流した勢いを利用して蹴りを放ち、リリィがそれを流して…と、目にも止まらぬ攻防が繰り広げられた


地球さんにかかった迷惑もハンパじゃなかった




ガッ、ガッ


ドォン!ボォン!


自分が相手の攻撃を弾く音、稲妻、業火などの爆音が鳴り響く




「へぇー、よくついてくるじゃない」



「あ…当たり前…じゃない……これくらい…」



虚勢を張ってはいたが、誰が見ても限界だった


息は切れ、足は震えている




「あ、そうなんだ。……じゃ、ちょっとペースあげるよ?」



「えっ!?ちょっ、ちょっと待って!」



「ダメ~」






…嘘ぉぉ、明らかにペースが上がってる…これ以上はキツい、かなぁ~…?




「う、あぁぁぁ!」




って、やっぱ押されてる!

もっおぉ、無理!




「そろそろホントに限界みたいね、じゃ次で最後ね」


「…光燕(ひかりのとり)



少女の体が炎に包まれ、一つの形を成していく


その姿は正に鳥、炎が鳥を形作っている




「そろそろ疲れたから、終わらせるね♪」




少女はあまりにも場違いな口調でそう言うとリリィを炎で包み込んだ




「っあぁぁぁぁ!」



「ふぅ、これでもう懲りたでしょう?わたしは上位の悪魔と契約を結んでるの、あなたが勝てるわけがない。…まぁその力は使ってないけど」



「…悪魔?…契約…あんたは一体、何者…?」




リリィを包んでいた火は消え、聞き覚えのある言葉を聴き、疑問を口にした


すると、彼女は軽い口調でこう言った




「わたしは琴蒼(ことお) 藍香(あいか)



「…これからお世話になります、よろしく♪」



「はぁぁ?」



それがあたしの唯一出せた言葉だった…










「…ギャァァ!服に火がぁ!アチチチ…あ、そう言えば今日が俺の命日だったっけ…」




あ、俺今から死んじゃうんだ

と本気で思い始める悠であった




「ー…で、どういうことかしら?」



先程の言葉の意味がわからず問いただしているリリィ




「だって…行くとこもないし」



「だからってなんで、これからよろしくぅ~♪…になるのよ!」


「そこの…洋館?、みたいなとこでひっそり暮らしてたのにそっちが勝手に入ってきたんでしょ?」



「うっ…ま、まぁ…それは…えっと…」



「それにそのせいで場所もわれちゃったしね」



「…あぅぅ…」



「最近は平和だったのに…もう戻れないでしょ?誰かさんたちのせ・い・で」



「……ご…ごめんなさい…」




さすがに反省しているリリィ、が可笑しくてたまらない藍華




「…ちょっと待って、なんっか忘れてる気が…」



額に指をあて真剣に考え始めた




「…そう言われるとなんか引っかかるような…」




思いだそうと辺りを見渡すと、




「あれ?咲妃さんがいない…」





「……あ、そういえば悠もいないわね」




2人して目を見開いて、それだ、と言わんばかりに相槌を打つ


ハッと我に帰って悠!と言って走り出したのは藍華だった




「なんであんたが知ってんの?」



一足遅れて疑問を口にしつつもあとを追いかけるリリィ




「そ…そんなこと!…どうだっていぃじゃない…」



「…顔、赤くなってるよ?」



「えっ!?ホントに!?」



「…嘘よ」



「謀ったわね!…今度わたしを怒らせたら…燃やしてやるんだから!」




ビッ、と勢いよくリリィを指差して宣言する藍華だった


2人で言い合ってる間にレノアが悠を担いできた

見ると、咲妃も一緒のようだ

どうやら命に関わる程じゃなかったらしい

ホッとした様子で、安堵の表情を浮かべている





悠は大丈夫なの?と問い掛けるリリィ




「…熱い、誰かぁ~」



その問い掛けに応じたのかは解らないが

譫言のように熱い。と呟く悠




「ほらぁ、あなたが邪魔してるから眠れないんでしょ?…その…ゆ、悠…が」




心配しているリリィに割ってはいるように押しのけた藍華だったが

なんだか挙動不審だ


なにかを感じ取ったリリィが目を少し細くする




「…なんでコイツの名前でそんなキョロキョロしてんの?」



「…な、馴れ馴れしいでしょ!?最初から呼び捨てなんて」




なんてことのない、普通に返答すれば問題ないようなリリィの問いに微かに動揺してしまった


さらに疑惑の色を濃くしたリリィがさらに追い討ちをかけてくる




「でもさっき呼び捨てで呼んでたじゃん…もしかして本人に聞こえるから、とか意識してる?」




この発言に頭にきたのか藍華を中心に蜃気楼が発生し始めた




「…あなた、自分の立ち位置わかってんの?わたしがその気になったら一瞬で丸焦げよ?…この人に免じて我慢してるだけなんだから」



「この人…って悠のこと?…そういえば、なんで悠のこと知ってるの?」



「…わたしを人として扱ってくれた久しぶりの人だもん、それなりの敬意を払って接してるの」




やはりどこかおかしい

まず、堂々と言えばいいのに目を合わせないし

顔も少し赤い




「それは正当な意見なんだけど…どっかおかしいのよね…あんたの態度が」



「ななっ…なにがおかしいのよ、至って真面目に言ってるんだけど?」



(…これは、あとで悠にいろいろと尋問しないと駄目ね)



さらに動揺し始めた藍華に、全てが繋がってしまった


しかし、いかに気に入らない相手とはいえ、最低限守るべきプライバシーというものがある


というわけで藍華に近付いて耳打ちしてみる




「ボソボソ……?」



「……!!」




まさにギクッ、という擬音が相応しい。


もう顔なんて目も当てられない有り様だ

見ているこっちが恥ずかしくなるほど真っ赤になってしまった




「で?あってる、よね?その反応は」



「…もっ、燃やす!やっぱり燃やしとく!あ、あってる…って訳じゃないけど!」



「だったらいいじゃない…合ってないんでしょ?」



「え、えっと…誰かに、まして本人が聞いて誤解なんかされたら失礼でしょ!?」



「ふーん…ま、一理あるけど…それが理由であたしを燃やさなきゃならないの?」



「だってだって、それは…あの、えっと…そんな…」




藍華にはもう打つ手は残ってないようで、せわしなくうろたえるだけになっている



しばらくして諦めたのか自暴自棄になり始めた




「あぁ、そうよ!合ってる!…だから」



「だから…どうするの?」



「ちゃんと念入りに燃やしてあげる!」




もはや怒りかどうかもわからない、ぐちゃぐちゃにな感情をそのまま露わにする




「遺言はないの?今の内に言っておきなさいね…もう、止まらないから」




コイツなに言っちゃってんの?的な怒り、バラされたらどうしよう…という恐怖、その後の羞恥…それならいっそ燃やした方が…という訳のわからない欲求、でも、という自制心

…もはや処理仕切れなかった


まぁいっか、と思った途端、頭の熱が炎に変わり放出されていく錯覚にとらわれた


…今の藍華に自我などないに等しかったが、

すでに自分が自分でなくなっていることは理解出来ていた


そんな矛盾した、逆にありがちな感覚に陥っていた




「はい、じゃあ…行くよ?」



「え?…いやいや、言ってることおかしいでしょ!?」




さっきまで優位にいたはずが、急に豹変した藍華について行けず

今度はリリィがうろたえる羽目になった




「もぉ、いいじゃん…燃えたら…気持ちいいよ?」




言ってることもよくわからなくなってきた頃、この男は状況も把握できていない状態で、無謀にも首を突っ込んだ




「なにやってんのかわかんねぇけど、やめとけよ~…」




…どうやら半分寝言らしい、言い切って寝てしまった





「…悠?起きたの?」



「はわあぁ!?はい!止めますぅ!」




何気ない一言に過剰とも言える反応をする藍華

背筋など、ピーンってなってしまっている




「別に怒られてる訳じゃないんだから、そんなに背筋伸ばさなくても…」




今のリリィに突っ込む元気はなかった…




ちょこちょこ結合していますが、わかりにくくなってますよね…


良識ある読者の方々、ご了承ください(汗)

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