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プロローグ

過去に書いていた作品の続きを改めて描いていこうと思います。暫くは書き溜めがあるため、毎日更新できたらなと思います。

 むかしむかし...と言うほどではない、たったの()()()程度のお話だ。しかし"たったの"と言うには事が大きすぎていた。


 三年前、突如ある王国の王女がただ一人、行方不明になった。側仕えも、騎士も、侍女も、一人として欠けることもなく、ましてや怪我をしたものも居なかった。誰にも気付かれず、誰も傷付けず、いつの間にか忽然と王女が消えた。それは、王族一同が集う朝食時にサンドイッチを美味しいわ、と笑顔で召し上がられた後だったという。普段と全く変わらない出来事の中で、突然起こった異常だった。


 国民はこの事実に悲嘆した。


 王女は鉄壁の女王の異名を他国にまで知らしめる王妃の聡明さを引き継ぎ、国王の暖かく他者を思いやる心と物事を的確に裁く判断力を持っており、国民からの支持は絶大だった。


 王国内でただ一人の王女は、アンドリア王国の華と謳われる程の美貌を持っていた。艶やかに波打つピンクゴールドの髪は柔らかくふわりと彼女を彩り、一度大粒のカメリア色の瞳と視線が交われば心を奪われてしまう。時が経つという感覚が失われ、呼吸という当たり前の動作でさえ忘れてしまうという。あまりにも、彼女は美しすぎた。僅か十三歳という若さで、数多の国から王妃の座に立つことを求められるほどに。


 しかし、彼女にはもっと凄いものが秘められていた。


 ーーー彼女は、古の王家の血筋の真価をも手にしていたのだ。


 アンドリア王国は、元々は治癒魔術師が軍事に酷使されることを厭い、争い事から逃げるために建国した国なのだ。建国後も各国から逃げてきた治癒魔術師が集い、全ての治癒魔術師がアンドリア王国民ではないか、というほどにまで治癒魔術師が集まった。それにともなって、争い事から逃げたい他国民が貴賎問わず移民してきた。アンドリア王国は移民を全て受け入れ、傷付いているものは、癒す。癒したものは争い事に参加させない。それが、他国の王であろうとも。癒したものは、全てアンドリア王国民となる、それが国のルールだった。他国にもそれを知らしめ、完全独立国として現在まで存続させてきた。当時、技術と能力ともにもっとも優れた治癒魔術師を王とし、当代まで王家として残っている。


 しかし、かつての治癒魔術師としての能力は、他国からの争い事を行わないという意思表示のための王家同士の度重なる婚姻によって失われていった。以前として国内には治癒魔術師は多くいるものの、王家内では現れにくくなっていった。


 魔力は多いものの、治癒の才能がない。それが王族の印象へと代わりつつあった。それにともない、もっとも王族に近い近衛騎士の所属する第一騎士団で治癒魔術師が重要視されるようになった。王族が怪我を負われた、病気になられた際に直ぐに治癒できる環境を整えるためだ。


 王女は王族らしく莫大な魔力を持ち、そしてーーー治癒魔術師としての才能を持っている。


 このことに王族だけでなく国民が歓喜し、"平和の象徴"と王女を敬愛した。


 そんな王女が突然行方不明になったのだ。その事実は三年という月日が経ったにも関わらず、依然として生傷のまま多くの者の心に深く残っている。


 王女は何処へ行ったのか...。


 ーーーそれは、王女のみぞが知る。






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