02
~茶色い石~
『夢だったら別にいいっしょ。で、ここドコ?』
眉間に皺を寄せて泣きそうなリコちゃんさんは「寝なさい!」と怒りながら言った。
『いやー、そんなコト言われても寝れないし』
へらへら笑ってみたらリコちゃんさんは溜息をついた。
「………今から言う事は嘘じゃないの」
リコちゃんさんが言うには、ここは某実験施設の一部で、タイムスリップ実験の失敗で研究室ごと妙な空間に来てしまったらしい。
『スゲー。日本でそんな実験やってんの?』
ワクワクが隠せない俺に対してリコちゃんさんは始終うつむきがちだ。
「ごめんなさい。何とかここから出られないかと思って……」
実験をしていたら何故か俺が出現したと。
夢かなと思ってもう一度ほっぺたを抓っていると真っ暗だった空間に急に他の部屋が出現した。
「来たっ!」
リコちゃんさんは大きな機械の前に行って何かしている。
上手い具合に扉と扉が繋がった部屋は透明な実験室みたいだった。新しい部屋は壁があるけれど、全部透明なので中がよく見える。
『スゲー透明扉。氷みたい』
机の上が黒くて理科室みたいだなと思いながら透明な扉をガチャッと開けて、あちこち覗き込む。シャーレの中に透明度の高い薄茶色の石があった。
「えっ。嘘っ」
リコちゃんさんは俺を凝視して目を見開いて、口に手をゆっくりと持っていくと眉間に皺を寄せた。
「--------どういうこと?」
足早に開いた扉からこちらに来ようとしたリコちゃんさんが急に動かなくなった。
ん? 違うな。すごく遅い。
急にパントマイム? と思っているとゆーっくり眉間を皺々にしてから、後ろ歩きで逆戻りしていくリコちゃんさん。
「ねぇ。その石持てる?」
スピードが元に戻って、立ち位置も大きな機械の前まで戻ったリコちゃんさんが何事も無かったかのように聞いてくる。
え、ちょっと面白かったんだけど笑っちゃ駄目なやつ?
一応空気を読んでこっちも真面目な顔してこれかと薄茶色の石を指で摘まんで掲げてみせる。
リコちゃんさんは大きくうなずいた。
「そう。それ。あるだけ持って来てみて」
シャーレの中には小指より小さな透明度の高い薄茶色の石が2つ。
別の机には同じ見た目でネックレスのように首から紐で掛けられるようになっている石が1つ。
「早く戻って!」
リコちゃんさんの声に慌てて俺は、
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