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秋芳馨る  作者: 故
9/10

 翌日アキは、梅中が誘うままに二人乱の稽古に付き合った。

 兄弟子に教えてもらいながら、ふたりで舞ってみる。やはり気心の知れた梅中と舞うのは息も合い、楽しかった。

 入れ替わりながらトテトテと舞う猩々が可愛いと、いつの間にか見物が集まっていた。自分もやりたいと、幼い子がキラキラとした瞳で慕ってくれると、やはりここでの生活も放しがたい気持が湧いて来る。

(そろ)えないって逆に難しいな」

 梅中の祖父である流祖七太夫は、猩々が寸分も(たが)わずに酔うて舞うとはいかな事か、己は己で酔うのだと、事前に舞い合わせを望んだ十太夫を叱り飛ばしたと云う。

 常に息を合わせて舞って来たアキと梅中は、つい動きを揃えてしまう。

 舞は個で魅せるが、ただ手前勝手なだけでも演目として成らない。これは、ふたりが演者としての段階を上がるために与えられた課題でもあるのだ。

「あと、もう少し重心下げないとダメだな」

「うん。でも、キツイな」

 ただでさえ乱は腰を低く入れねばならず、持久力も必要となる。あの時は夢中で舞ったが、改めてやってみると、この曲の難しさを痛感する。

「まあ、だいぶ慣れたけどな」

 梅中のほうは、簡単に言って笑った。

「……やっぱり、梅中は凄いや」

「そうか? 歳の差だろ?」

 年上の自分と同じ事をやってるアキの方が凄いんだぞと、梅中は笑った。

「ついこの間まで、ゼイゼイ言ってたくせに」

「本当だね。なんだか懐かしいな」

 三人で稽古していたのは、それほど昔の事ではない。その間に芽吹きを迎えた若葉は、ようやくその色をしっかりとさせて来たばかりだった。

 ここがどうのと細かな確認をしながら乱をさらっていると、宗能が稽古場を訪れた。何の発表もされていないのに、勝手に練習して良かったのかと少し気になったが、彼はただじっとふたりの舞を眺めていた。

「扇を」

 弟子からそれを受け取った宗能は、ふたりの元へと近づき、乱を見せてくれた。

 ああ、やっぱり凄いなあ…… 

 師のそれは別格で、アキなど溜め息しか出て来ない。

「まあ、こんなものだろうな」

 いつものように簡単に言って、宗能は扇を離した。

「あと、ふたりとも腰が甘い」

 もう少し鍛錬するように言われ、アキと梅中はがっくりと肩を落とした。

「まだまだか……」

「まだまだだね」

 共に溜め息を零し、それから貌を見合わせて笑う。

 こっちの道も険しいやと、改めてアキは思った。

「小秋、ちょっと来なさい」

 宗能はアキにそう声を掛けた。部屋へ来いと言っているようだ。

「俺も行っていいか?」

 先程、西田家からの遣いが来ていた。用件が届けられた文の内容であろう事は、梅中も察したのだろう。

 宗能は少し考える素振りを見せたが、

「まあいい、お前も来なさい」

と、稽古場を出て行った。

 ふたりが改めてその部屋を訪れると、やはり手元には文が広げられていた。

「久右衛門殿からだ。次男丈夫届が無事受理されたそうだ」

「なんだよ、その丈夫届って?」

「実は子供が生まれていたが、病弱でいつ死ぬかわからなかったので届けなかった。無事に成長したので届けます。とまあ、そういったものらしい」

「なんだよそれ」

 梅中は呆れ顔だが、珍しい事ではないと宗能は言った。

「小秋を迎えれば、一清はその次弟として扱われる事になる」

 せめて一清の弟として迎えてくれるのなら、まだ気持ちが楽だったかもしれない。

 彼は、梅中のさらにひとつふたつ上のはずである。年子くらいならまだしも、この歳の差で兄と呼ばれるのも、弟として接するのも、難しいだろうとアキは思った。

「アキはまだ返事もしてないのに……。だいたい、断ったらその丈夫届はどうするんだよ」

「その時は、やはり次男は亡くなりましたと届けるか、長男が死んだ事になるのか。西田殿次第だろうな」

「いいかげんだなあ」

「武家など建前で成り立っているからな。案外とこんなものさ」

 公的な記録であっても、次男と記されていた者が途中から四男となり、平気で三男に変わる。時には中身が別の子に替わっている事さえあるのだ。家督相続が最重要事項の武家において、この手のすげ替えなど茶飯事だった。

 宗能は呆れた様子の梅中にひとつ笑うと、膝元の文を取り上げた。

「それでな。その次男も一緒に小姓として出仕させないかと言われたそうだ」

「一清さんも一緒に?」

 思い掛けない展開である。差し出された文を受け取り、アキは視線を落とした。

「文面では抑えてあるが、それでも望外の喜びと書いておられる」

 全てアキのおかげだと、感謝の言葉が繰り返し綴られていた。

「西田様の家にお招きくださる?」

 記されていた内容に、アキは貌を上げた。

「武家の暮らしがどういったものか、一度見てみるのも良いだろう。どうだ、一清の見舞いがてら行ってみるか」

(一清さんに逢える?)

 アキはその話に心を動かされた。

 逢えるのなら、彼と話がしたいと思った。西田の嫡男の座を追われようとしているその人が、この事をどう思っているのか。それを確かめられれば、この心も決まるかもしれない。

 宗能は、アキの思いを察したように頷いて、

「では、私からその旨返信しよう」

と、差し戻された文を丁寧に巻き上げて行った。


 互いの遣いが何度か行き来した末、西田家への訪問日がまとまり、アキは宗能に連れられて甲府上屋敷へと向かった。

 迎えに来た西田家の中間(ちゅうげん)について門をくぐると、さながらひとつの城下町のようににぎにぎしく人の行き交う広い敷地を進み、居住区の一角へと案内された。

 辺りに立ち並ぶのは、御貸小屋と呼ばれる建物である。入口は独立しているものの、造りは長屋だった。それぞれのお役に応じて、割り当てられているのだ。

「狭い所で驚かれたでしょう」

 アキを歓待した清貞は、そう言って小さな家の内を見回した。

 確かに、喜多邸の稽古場のほうがよほど広い。畳も多少古びてはいたが、埃ひとつ見当たらないほどに清められた室内は、さすがに武家らしいきりりとした空気を湛えていた。

 それから清貞は、家族にアキを引き合わせた。娘二人と息子が二人。そして、その母たる人である。

 一清の他に四人も子供がいると知って、アキは驚いた。西田家には、養子を迎える必要など全くないという事である。

「長女が一清のみっつ下で、これは十一になりましたかな」

 行儀よく座っている前髪立ての少年を示す。

「末は……」

「よつにございます」

 一番小さな男の子は、まだ幼さを残した口調で元気な声を上げ、うずうずとアキを見つめた。

 明るい瞳をした子である。人懐こそうなその顔に、好奇心が溢れるほどに満ちていた。

「あにさん、とくいは?」

「トクイ?」

「きのぼり? かけっこ? おうまのる?」

 どうやら一緒に遊びたいらしいのはわかったが、どれもろくにやった事のないアキはまず戸惑いを覚えた。

「これこれ、まだ父との話が済んでおらぬ。お前はおとなしくしていなさい」

 清貞の言葉に、前髪立ての少年が気を利かせ、自分と遊ぼうと幼弟を誘った。

「いやじゃ、そこなあにさんがいい」

 ごねる弟を手成れた様子で抱き上げると、次男は立ち上がった。

 泣きわめく末子を抱えたまま次女へと手を伸ばし、一緒に連れて行く。一言も口をきかなかった彼女は、去り際にちらりとアキを見つめて行った。

 歓迎されているのかいないのか、同じ兄弟でも温度差があるのだろうか。

「いやいや、お恥ずかしい限りで。あの末子にはほとほと手を焼いておりましてな。たえも少々難しい子ゆえ……」

「難しいなどと。内気なだけで、気立ての良い子にございますよ」

 そう言って清貞をたしなめたのはその妻女である。一清に良く似た面ざしの人だった。ただ少し、アキを見つめる視線が険しい。五人もの子供の母親らしく、どしりと構えた貫禄があった。

「それより、そろそろお出掛けの刻限かと」

「ああ、そうだった」

 これから清貞と宗能は御殿へ上がるのである。主に目通りするのだと聞いて、アキは羨ましく思った。

 やっぱり逢いたい……

 あの方と同じ敷地の内にいると思うと、その距離に心が(うず)いた。

「その間に小秋殿は、一清を見舞ってやってくだされ」

 清貞はそうアキに言い置いて立ち上がった。

「迎えに来るまでこちらで待たせてもらいなさい。しばらくお願い申し上げる」

 宗能も傍らの女主人へそう頼んでくれた。

 すぐそこが上がり口の狭い家である。アキもそのまま家人と並んでふたりを見送った。

「ご案内申し上げます」

 清貞と宗能が送り出された戸が閉ざされると、長女が手をつき、アキを導いた。

 案内と言っても、ほんのすぐそこである。

 引き戸の前に膝をついた彼女は室内へ声を掛け、静かにそれを開けた。

「やあ、小秋。良く来てくれたね」

 薄暗い、おそらくは納戸として使う一角に、一清は身を横たえていた。

 薄く笑ってはみせたが、頬の陰りは強い。

 ゆっくりと身を起こす兄を手伝い、彼女はそっと肩へと衣を羽織らせた。

「お見舞いに卵を頂いたの。召しあがって下さいますわね?」

「そうか。ちゃんと頂くよ。ありがとう小秋」

「それは太夫が……」 

 自分に礼を言う必要などないのだと、アキは小さく首を振った。

(せんせい)には、まだきちんとお詫びもしてなかったな。小秋にも」

 一度居住まいを正した一清は、改めて手をつき頭を垂れた。

「今回の事では、いろいろと迷惑を掛けて申し訳ない。私が不甲斐ないばっかりに……」

「一清さん、止して」

 アキは慌ててそれを止め、もういいからと、横になるよう促した。

「もうだいぶいいんだよ。最近腹も空くし」

 素直に身を横たえながら彼は笑ったが、部屋にはまだ薬湯の匂いが強く漂っていた。

「さえ。ここはいいから、母上を手伝ってあげておくれ」

 きちんと蒲団を整え手を添える妹に、一清はそう声を掛けた。

 彼女は少し心配そうなまなざしを向けたが、静かに腰を上げ、ひとつ手をついて部屋を出て行った。

「あの子もそろそろ嫁入りを考える歳だけど、母上が心配みたいでね。私がこんなだから家族には苦労ばかり掛けて……」

「一清さん……」

「でも、小姓として出仕が叶えば暮らしも楽になるし、さえだって良い縁があるかもしれない。みんな小秋のおかげだ。ありがとう」

 一清は全て聞いているらしく、そう言ってアキに微笑んだ。

「その話なんだけど……」

 アキは俯いてしまった。まだ迷っているのだ。

「うちのお殿様にお仕えするのは嫌?」

「まさか!」

「じゃあ、西田家に入るのを躊躇(ためら)ってるって事か」

 ますます俯くアキに、一清はなるほどねと呟いた。

「確かにうちは家格も低いし、父上の扶持米では食べて行くので精一杯だけど……」

「そんな事。だって、こちらはきちんとしたお武家様だし、西田様だって御立派なお侍じゃないか。そんな事じゃないんだ」

 アキは大きく首を振った。

「ねえ、一清さん。一清さんは本当にいいの?」

 アキはその瞳を覗き込んだ。

 自分が入れば、この家は他人が相続するという事になるのではないのか。家を継ぐために生まれ育った嫡男でありながら、それを容認する事など出来るのだろうかと。

「やっぱり、その事を気にしてるんだね」

 一清はにこりと笑った。

「なら、この話をしたら、少しは気が楽になるかな」

 冗談めかしたように彼は言い、少し自分に寄るよう手で促した。

 心持ち耳を近づけたアキへ小声で話し始める。

「実は、父上は元々西田ではないんだ」

 一清の話によると、彼らの血筋は古くから続くある家系の末裔なのだそうだ。戦国の頃に浪人して貧窮し、清貞も経緯があって西田を名乗っているが、本当の家名が他にある。このままふたりで出仕して、いずれ一清が分家として独立出来るなら、それはそれで構わないのだと言う。

「もしかしたら、家名の再興が叶うかもしれないしね」

 僅かな望みでも賭けてみたいと一清は笑った。

 西田家にはそれほど重きを置いていないと、アキに言いたいのだろう。

 けれど、それにしたって他に男の子が二人もいるのだ。大した家格ではないとは言うが、武家は武家である。他人のアキより兄弟の誰かが継ぐのが筋ではないか。

「弟か……」

 ふと、一清は視線を落とした。

「すぐ下の弟は、私がこんなだから、とにかく丈夫ならいいと育てられたけれど、いざ育てばやはりいろいろと比べられてね。一番下は下で手のつけられないわんぱくで、その面倒も見て……。あの子が言いたい事ひとつ言わずに我慢してるのは、私には良くわかるんだ」

 哀しそうに彼は笑った。

「私が病弱で、一番割を食ったのは次男の丈夫(タケ)なんだ。あの子にこれ以上負担を掛けるわけにはいかない。末はまだ四つだ。元服するまでどうやって家計を支えて行こうかと、正直悩んでたくらいなんだ」

 一清は、包み隠さずその心情を述べた。

 子沢山の西田家は、食べて行くのでかつかつな経済状態なのだと言う。

 一時は喜多への謝礼を捻出するのも難しくなり、察した宗能が清貞に講義を頼んだ事もあるそうだ。講師代でそれを穴埋めした形にして、西田家の面目を保ったのである。

 アキも彼に論語など習ったが、あれはそういう事だったのかと、今更ながらにその事情を知った。

 育ち盛りの子供を抱えた西田家は、この先も何かと物入りである。せめて長子にお役をと期待しようにも、そもそもが狭き門な上に、本人は病がちと来ている。いったいどうやって暮らしていこうかと途方に暮れていたところに、今回のお話を頂いたのだと、ありていに一清は口にした。

 小姓として出仕すれば、扶持米の他に切米百五十俵の提示があった。それが一清とアキのふたりとなれば、西田家の収入はさらに上がる。

 もちろん役目に応じて出る金も増えるし、新たに人も雇わねばならない。けれど、与えられる住居も長屋から独立した屋敷に代わり、今より暮らしが豊かになるのは確かだった。

「本当は、小秋にこんな事を頼むのは筋違いなのはわかってる。そもそも私がしっかりしさえすれば良い話なのだから。だけど……」

 一清は涙を滲ませ顔を背けた。

 思うようにならない体を抱え、一番悔しい思いをしているのは彼だった。

 西田久右衛門は子供相手にとはいえ、講師が務まるほどの教養人である。きちんとした教育を受けて育ったのだろう。そんな彼の言葉尻にふと褒め言葉が混ざるほど、一清は出来の良い自慢の息子だった。その陰には、人知れぬ努力があったはずである。

 苦しい台所事情も、下に続く弟妹達の事も、彼はじっと見つめ、嫡男としての責務と期待とを、その病弱な体で一心に背負って来た。

 あの能会までの日々は、口にこそ出さなかったが、まさに死に物狂いであっただろう。最後の最後まで、彼は病を隠して舞おうとしていた。それほどまでに思いつめていたのである。

 それがあんな結果となって、どれほど落胆した事かと、アキはその心情を思った。

「あのね、お殿様は病なら仕方ないって仰ってた。これは一清さんのせいじゃないよ」

 とにかく、自分を責めて欲しくなかった。これでは治る病も治らない。

「そんな風に言ってくださったんだ。私はまだお目通りした事はないけれど、御立派なお方だそうだね」

「本当に素晴らしいお殿様だよ」

 しみじみと吐息を零すアキに、一清もまた頷き目を閉じた。

「そんな方に小姓としてお仕え出来るなんて、夢のようだ」

 呟くように言って、一清は少し赤い瞳をアキへと向けた。

「いろいろとあさましい事を言ったけれど、お役料だけじゃないんだ。お殿様のお話を聞くにつれ、御家中にある身を幸せだと思った。私はこの通りだけれど、それでも何かお役に立てるのなら、これ以上の喜びはないよ」

 お殿様にお仕えしたいのだと一清は言った。

 その気持ちはアキにも良くわかる。あの方のためにこの身を捧げられるのなら、何の悔いもないだろうと。

「小秋。お殿様はどんなお方? 間近くお言葉を交わしたのだろう? 話を聞かせてよ」

 このときばかりは一清の青白い頬に、僅かな赤みが差した。若者らしい好奇心に輝く瞳に見つめられ、アキはそれに応えようと記憶を辿った。

「えーっと、細面で鼻筋が通ってらっしゃって、思ったよりお若い方だった」

「寅年のお生まれだから、御歳二十三歳のはずだ。あの方は十七歳でご当主となられたのだよ」

「お若くして家督を継がれたのだね」

「御先代様は三十半ばで身罷られたんだ」

「そんなに早く……」

 三十の半ばとなれば、宗能と同じ位である。まだまだこれからという時ではないか。

「御無念であられたと思う」

 一清も、しんみりと瞳を伏せた。

「御養子先からお戻りになられたのが九つの時だそうだ」

 思ったよりも長く他家で過ごした事に、アキは少し驚いた。

 その上父君は若くして亡くなった。共に暮らせた時間は、それほど長くはなかったと言う事である。

 お寂しい事であっただろう……

 アキは思った。

「御容姿がさほど似てるわけではないのに、やはり親子でいらっしゃるなと思う時があるって父上が。お背が高いそうだね」

「うん。確かにすらりとしてて、でも、お体つきは華奢でいらした」

 大柄という印象の人ではなかった。

 けれど、その腕は温かく、包み込むようにアキを抱きしめてくれた。

「とても気品がおありで、優しい声で話されて、すごく澄んだ瞳をしていて、それが本当に綺麗で……」

 逢いたい……

 アキは思った。

 そして、今一度触れたかった。あのぬくもりに。

「……一清さん。あなたを利用してもいいの? 私の身勝手な思いを満たすために、西田家を踏み台にしても、それは許される事なの?」

「踏み台だなんて、そんな事ないよ」

「でも……」

「それを言うなら私だって一緒さ。殿が望まれているのは小秋だ。それを利用して私は出仕しようとしている。お互い様じゃないか」

 泣きそうなアキを穏やかに見つめ、一清は笑った。

「ねえ小秋。私達は案外といい家族になれるんじゃないかな」

「家族……?」

「不肖の弟ばかりで申し訳ないけど、西田の家には貴方が必要なんだ。どうか私達の家族になってくれまいか」

 そして一緒に、あのお方のお役に立とう。

 一清はそう言って、冷たい指でアキの手を取った。

「それまでに必ず元気になる。だから、小秋もどうか良く考えて欲しい。良い返事を待っているから」

「うん……」

 アキは一清の手を温めながら頷いた。

 お役に、立てるのだろうか。こんな自分でも……

 ふとアキは、御殿の方へと視線を巡らせた。

 もし、あのお方に、必要だと思ってもらえるのなら……

 それならば、この命さえも要らない。

 アキは、心から思った。


 一清の顔に浮かびはじめた疲れを察し、アキはとにかく大事にして欲しいと言い置いて、その病床を辞した。

 宗能達はまだ戻っていない。

 部屋数も少ない家の中で、それを占領しているのも気が引けて、アキは家人に断わり外へと出てみた。

 同じような造りの長屋が向かい合っているその間で、おそらくはそこで暮らす子供達なのだろう。数人が何やら楽しげに飛び回っていた。

「何して遊んでるの?」

 アキの姿に立ち止まったたえに、その視線に屈みこんで声を掛けた。

 だが、彼女はぱっと身を翻し、兄の袴へとしがみついてしまった。

(脅かしちゃったのかな……)

 申楽を学ぶのは男子ばかりだから、女の子と関わる機会はあまりない。こんな時、どうして良いのかわからなかった。

「たえ、危ないよ!」

 木の棒を手に弟達に付き合っていた丈夫(たけお)は、妹に気を取られた隙にぽかりとやられ、「痛てっ」と声を上げた。

「あにさん、取った!」

 末っ子は大喜びである。

「ごめんなさい。大丈夫?」

 自分が邪魔をしてしまったのだと、アキは慌ててその身を気遣ったが、丈夫は不思議そうにアキを見返した。

「こっちのあにさんもやろう」

 末子だけは屈託なく、アキへとまとわりつく。

 アキを相手にしたいらしく、棒を持てとしきりにせがんだ。

 刀は扱えるが、本格的に剣術を習ってはいない。ましてや、子供同士でこうした遊びをした経験は、アキにはほとんどなかった。

 どうしたものかとそれを眺めたアキは、ふと思い立って船辨慶を舞ってみた。知盛が義経を海に沈めようと襲い掛かる場面である。

「すごい! あにさん、じょうず!」

 長刀には長さの足らぬ棒でお囃子もないが、思ったよりも子供達の歓心を買ったようだ。キラキラと輝く瞳がいくつもアキを見上げていた。

「父君も兄君も舞われるでしょう?」

「うん。でも、あにさんがうまい」

 自分もやりたいと、末子は棒を振り回した。

 他の子供達も、真似た気でいるのか、てんでに腕を廻して飛び跳ね、それがまた遊びへと転じて行った。

「ほかもできる?」

「出来るよ。お能好き?」

「あんまり。うえのあにさんはじょうずだけど、つぎのあにさんもあんまり」

「人それぞれ、好きな事も得意な物も違うものね」

「あにさんは、おのうがとくい?」

「得意なのかな? でも、教えていただいてるから」

「おしえてもらったら、とくい?」

 面白い事を言う子だなと、アキは思った。

「そうだね。たくさんお稽古すれば、得意になるかもね」

「なら、おけいこする。おしえて」

「私も教えていただきとうございます」

 縋ってねだる末っ子とは対象的に、次男は礼儀正しくアキへと向かい合った。

「人に教えられるほど上手くないけど、でも一緒にお稽古は出来るよ」

「ならば、次にいらした時にはきっとお付き合いください」

 その視線の先に宗能と清貞の姿があった。御殿から戻って来たのである。丈夫は、今日はもう客人が帰ると察してそう言ったのだ。

「やあ、小秋殿。子供達の面倒まで見ていただいて、かたじけない」

 父親の姿に喜んで駆け寄る幼子を撫でながら、清貞はそうアキに声を掛けた。

「いいえ。私がお相手いただきました」

 微笑むアキに清貞は何度も頷き、子供がかじりついている腰の辺りへと顔を向けた。

「これ、兄上様に御迷惑を掛けなかったか?」

「はい。ちちうえ、おのうの、おけいこを、いたします」

「うん?」

 末子の言葉に父親は首を傾げた。

「次にいらした時に、一緒に舞って下さる約束をしました」

 幼い弟に代わり、兄が父親にそう説明した。

「そうか、そうか。それはぜひ、拙者からもお願い申し上げる」

「ぜひ、近いうちにいらして下さい」

 喜ぶ清貞の横で、丈夫は真面目な顔つきでアキを見つめた。

 この子は全ての事情を知っているのだろうとアキは思った。

 彼だけではない。心配そうなまなざして兄を見つめていた長女のさえも、もちろんその母親である人も。

 ひとりひとりに気持ちを聞いてみたがったが、当主たる人の定めた事に反するそれを口にするはずもない。武家とはそういったものである事は、なんとなくではあったがアキにもわかっていた。

「では、そろそろ送らせましょうかな。又八を呼んで来てくれ」

「ああ、いや。知らぬ道でもございませぬ。帰りはふたりで参ります」

 父親の言葉を受け、中間を呼びに踵を返すのを宗能が引き止めた。

「宜しうございますか?」

「お気遣い下さいますな。それより、このような所で御無礼致しますが、皆様にもどうぞ良しなにお伝えください」

「心得ましてございます」

 互いに礼を尽くし、宗能と清貞は挨拶を交わした。

「小秋殿。いつでも遠慮のう参られよ。西田家一同、心よりお待ち申し上げております」

「ありがとうごさいます」

 清貞の言葉に精一杯頭を下げて、アキは宗能と共に甲府上屋敷の敷地を後にした。


「同じ兄弟でも違うものだな」

 傾き始めた陽射しの中を歩みながら、宗能はくつくつと笑った。

「確かにあの末子には手を焼きそうだ。通って来るようになれば賑やかになるな」

 いずれ教える心づもりでいるのだろう。愉快そうにそんな事を言う。

「なれど、素直で可愛らしい方だと思いました。丈夫殿も直ぐな御気質のようにございます」

「上手くやって行けそうか?」

「さあ、それは……。たえ殿には嫌われてしまいましたし……」

「あれは恥ずかしがっているのさ。新しい兄上が(まばゆ)いのだろうよ」

 宗能はそう言って、アキへと向けた瞳を少し細めた。

「一清はどうだった。少しは良くなっていたか?」

「御自身はだいぶ良いとは口にされていましたが、まださほどには……。長く話すのもお疲れのようにございました」

「そうか。早う元気になると良いのだがな」

「はい。(せんせい)にくれぐれも宜しくと言付かりました」

「うん。私も見舞ってやりたかったが、顔を合わせればあれは詫びるだろうと思うてな」

 その気遣いにアキは頷いた。

「私も、深々と手をつかれてございます」

「だろうな。だが、お前と話せて一清も喜んでいよう」

「そうでございましょうか? であれば嬉しうございますが……」

「小秋は一清と話せて良かっただろう?」

「はい」

「ならば、向こうも一緒さ。膝を交えて言葉を交わせば、見えて来るものもある」

 そう言って穏やかな笑みを浮かべる宗能を、ふとアキは見上げた。

「私も、甲府様と改めて言葉を交わせる機会を持てたのは、この上もない事であった」

 満足そうに、その横顔が頷いた。

「それにしても、申楽師と言うのは便利なものだな。本日のお目通りが叶って、改めてそう思ったよ」

 宗能はおかしそうに笑った。

 禄をもらう申楽師は名字帯刀を許され、住まいも与えられる。限りなく士分に近い待遇でありながら、厳密にはそれに準じる身分とされる。

 それでいて、門構えから足袋に至るまで細々と定められる規制も、申楽師には非常に寛容で、家元ともなれば旗本や大名並みに許される。

 そして、武家に生まれついた者でも、その身分によっては屋敷の御廊下にさえ上がれぬと言うのに、申楽師はその職務上、そうした制約を受けないのである。

 もちろんそこには、身分差による厳格なしきたりも存在する。

 ただ、招いてしまえばどうとでもなる。

 アキが御前に召された時もそうであったように、綱豊卿は非常に柔軟な方なのだろう。その謁見が心ゆくものであったのは疑いようもなかった。

「お殿様は、お健やかであらせられましたか?」

「ああ。御機嫌良う逢うて下された」

 良かったとアキは思った。とにかく元気だと判ればそれで嬉しい。

 ふと宗能は、そんなアキへと視線を留めたが、特に何も言わずに少し足を速めた。

 しばらく口を閉ざしたまま彼はさくさくと歩み、アキもまたその後ろを従った。

 だが、喜多邸への道を逸れる背中に、おや? と思った。どこかに寄るつもりだろうか。

 やがてその先に見えて来た小さな鳥居に、アキは「ああ」と心の内に小さく呟いた。

「お前と出逢った場所だ」

 しめ縄の掛けられた大樹に手を添えて、宗能はそれを見上げた。

 アキもまたその視線を追い、まっすぐに空へと伸びる銀杏(いちょう)の樹に(おとがい)を上げた。

 大きく広がる枝々は空色を新緑で被い、風に吹かれてはさわさわと音を奏でていた。

「お前はこの辺りにいて、周りには落ち葉が降り積もり、一面が金色(こんじき)だった」

 彼が指さす辺りの、苔むした地面を見つめる。

「きっと、迎えが来るのを大人しく待っていたのだと思う。暮れて来て不安になって泣き出したのだろうな」

 語る脳裏には、その日の光景が鮮明に刻まれているのだろう。少し想いを馳せるように視線を流し、彼は続けた。

「真新しい産着にくるまれた、まるまるとした赤子だった。余程の事情があって手放したのだろうと、皆で噂し合ったものだ」

 それはアキも幼い頃から聞かされていた。

 産着は絹でこそなかったが真っ白で、古衣などで(あつら)えた物ではなかった。栄養状態も良好で、食うに困って捨てた様子はなかったと言う。

 けれど、だからこそアキは思った。ならばなぜなのだろうと。それほどまでに取り返しのつかない事を、自分はしてしまったのだろうか。

「連れて帰ったものの、家には乳の出る者などいない。重湯を含ませたり、膳をすり潰したりして与えたが、まだ乳房の恋しい頃だ。指をしゃぶっているお前を不憫がって、お勝は良く乳をもらいにおぶって行ったものさ」

「たくさんの方の御厄介になりました」

 申し訳ない思いで頭を垂れるアキに、宗能は小さく笑った。

「お前は本当に可愛い赤子でなあ。笑うのが嬉しくて、みんな夢中だった。喜んで手を貸してくれたものさ」

 子のいない職分家やら、噂を耳にしてわざわざ訪ねて来る人まであり、引き取りたいと言う話は幾度となくあったそうだ。

 そもそも喜多流三世として立つ彼には広い人脈があり、赤子の貰い手など、その気になればいくらでも探せたはずである。

 だが、思い切れなかったのだと宗能は笑った。

「じきに這うようになって、囲炉裏にでも落ちるのではないかと気が気ではなくてな。お勝も他の者もちゃんと気にかけてくれていたのだが、小秋は案外と活発で、とにかく私が落ち着かない。せめて目の届くところに置こうと稽古場に連れて行くと、これが機嫌良うしている。そのうち囃子に乗って手を打ったり、何やら声を上げるのも謡と合っている様子でな。おもしろいものだと皆で目を細めて眺めていたよ」

 目の前にいる宗能もまた瞳を細め、アキを見つめていた。

「子供とは、これほどまでに可愛いものかと思った。本当はその時に決めていたのだ。いずれ申楽を教えてやろうと。私にはそれしかないからな」

 ただ……。

 宗能は小さく呟き、視線をそよぐ銀杏の葉へと転じた。

 しばらく彼は、押し黙ったままそれを眺めていた。

「幼い頃は下働きもさせた。お前にはいろいろと辛い思いをさせたな」

「辛いなどと。そういうものだと思っていました」

 本心だった。

 お勝をはじめ、きびきびと立ち働く者達に囲まれて育ったアキにとってそれは日常で、共に働くのに疑問や不満を(いだ)いた事はなかった。

 こうして飢える事も凍える事も心配せずに育ててもらったのだ。それを感謝こそすれ、恨み事などあるはずもない。

 それを口にすると、宗能は少し哀しそうに笑った。

「本当は、それしきの事など当然だと思えるように育ててやりたかった」

 アキを見つめる瞳が寂しそうだった。

 ふとアキは、先日梅中の元服の話をした時の事を思い出した。

 梅中の意思を確認して、ようやく梅弟を跡継にと定めた様子だが、ずっと宗能が抱えて来たであろう迷いを、アキはその時初めて思った。

 梅弟の誕生が相続問題に影響を与えたのは確かなようだが、さらに自分の存在が長らくこの人を悩ませて来たのではなかろうか。

 梅弟は、アキの拾われた翌年に産まれている。年が明けてすぐの事であったから、実際には何か月かの違いであろうが、年が変われば年齢はひとつ下となる。仮に、同じ養子となった場合、梅中ならばアキの兄となるが、梅弟の場合はアキの方が長子になるのだ。誕生を待ち望まれている梅長の子となれば、尚の事である。

 四世問題を抱えていた宗能は、継承者を定めるまで、アキを正式な養い子にする事は出来なかった。たとえそれを望んでいたとしても、ただの拾われ子として育てる以外になかったのである。

 いったいどれほど思い悩んで、心を決めてくれたのか。その矢先に御出仕の話である。アキは、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 これほどまでに慈しんで育ててもらっておきながら、何の恩も返さず離れても良いのだろうかと、また心の中に大きく迷いが広がって行く。

「……私はどうしたら……」

 どうしたら良いのかと訊ねたかった。答えが欲しかった。

 けれど、自分で決めろと言われた事を思い出し、アキは口にしかけたそれを閉ざした。

「――アキ。本当はもう、心は決まっているのではないのか?」

 俯くアキをしばらく眺めた後、静かに宗能は言った。

 貌を上げると、彼は穏やかにアキを見つめていた。

「甲府様はな、私と会うとまっ先にお前の事を訊ねられた。息災だと知るや、安堵と喜びとが入り混じったような優しい笑みを零されてな。ああ、この方の想いは本物だと思った」

 宗能はそっとアキの頬に触れた。

「小秋も、先程私に甲府様は元気かと訊ねて、嬉しそうに笑ったね。同じ想いなのではないのか?」

 瞳を覗き込む宗能から、アキはそれを逸らした。

 そうしたところでこの人から心を隠す事は出来まい。全て見透かされているのだとアキは思った。

「アキにと預かった」

 懐へ手を入れた宗能は、一通の文を差し出した。

「私に?」

 思いがけないそれに驚きながら、アキは封を開いた。流麗な筆跡が伝えて来るのは、アキへの気遣いとまっすぐな想いだった。

 もうダメだ……

 アキは文を掻き抱いて泣いた。

 もうこの人から離れる事など出来ないと。

「あのお方のお傍に……」

「行きなさい。それが一番だと私も思う」

 濡れた頬を上げて告げるアキに、宗能は静かに頷いた。

「甲府様はな、大切に育てた子を奪うようで心が痛むと、私の事も随分と気遣ってくださった。それでも、アキが愛しいのだと。許せとまで仰った。あのような方が護ってくださるのだ。なんの心配があろう」

 許してくださるのだ。何ひとつ返せぬまま傍を離れようとしている自分を、快くこの人は送り出そうとしてくれているのだ。

 かつて西田久右衛門から受けた講義で、人には報いなければならない者が三つあると教えられた。

 すなわち、君と親と師である。

 あの方を生涯の君と定め、西田様を親と思って尽くそう。そして太夫の事は師として敬って行くのだ。たとえ傍を離れても、ずっと……

 それが、アキに出来る唯一の事のように思えた。

「叶いますなら、半元服はこのまま太夫の手で……」

 涙に濡れる瞳で見つめるアキに頷き、宗能は腕を伸ばしてアキを抱き寄せた。

「もっと願いを叶えてやりたかった。甘えさせてやりたかった。甲府様のおかげでお前の先にはなんの不安もないけれど、だからこそこれまでが悔やまれる。ここ数日は、昔の事ばかり思い出されてな。取り返せぬとわかっていながら、こうして思い出話ばかり……」

 ひしとアキを抱きしめたまま、彼は小さく首を振った。

「いや、このような慶事に涙は似合わぬ。これが今生の別れでもあるまいに、ぐずぐずと……」

 頭では分かっていても、いざとなると寂しいものだと、腕を解いた宗能は笑った。

「お別れではございませぬな?」

「もちろんだ。なんと言っても私は申楽師という便利な身の上だ。御殿で逢う事もあろう」

 申楽の盛んな家である。確かにそういった機会は皆無ではないだろう。そう思うとアキの心は少し明るくなった。

「――アキ。僅かな間だが、私に親の真似事をさせてくれぬか。せっかく隣の部屋も片付けた。アキに使って欲しい」

 請われてアキは頷いた。彼の想いが心から嬉しかった。

「ならば」

 宗能はアキに向って手を差し出した。

「もう手をつなぐ歳でもあるまいが、まだ前髪立てと諦めてつき合え。アキ、一緒に家に帰ろう」

 アキは涙をいっぱいに浮かべて宗能を見上げた。

 幼い頃、一緒に祭り見物に行こうと差し出してくれたこの手を、アキは取れなかった。

 一度つないだら、離せなくなるのがわかっていたから。

 この人を父と呼びたかった。甘えて、抱き上げてもらいたかった。

 でも、それは出来ないのだと、何度も何度も自分に言い聞かせた。

 アキはこの人の子ではない。誰かに要らぬと言われた捨てられ子なのだからと。

「ととさん……」

 一生呼ぶ事は叶わないと思っていたそれを口にして、アキは宗能の胸に縋りついた。

 親を呼ぶ子が羨ましかった。手を引かれて、肩車をされて、楽しげに笑い合う家族が妬ましくてならなかった。

 求める傍から諦めなければならなかった想いの全てが、涙に溶けて流れて行った。

 さらりさらりと……。

 風が吹き抜ける度に銀杏の葉が揺れる。

 傾く陽射しに色づき始めたその風は、流れ落ちたアキの想いもまた遠くへと運び去って行った。

 わだかまりも、ためらいも、不安さえも全て――

 アキはそっと宗能の手に自らのそれを重ねた。

 十四年前に自分を拾い上げてくれた人は、おそらくは、その日と変わらぬぬくもりで、アキの手を強く包み込んでいた。

 天に向ってすらりと伸びる、銀杏の樹を見上げる。

 同じようにそれを追った宗能は眩しげに瞳を細め、やがてふたりは長くなり始めた影を並べて、家路を辿って行った。

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