頼れるお姉さまシャルロワ(年下)
昨日、私はとある事件を追っていると怪しい探偵に出会った。
名前は多田正道。
一応探偵と名乗っている。
そんな奴が今日は私の助手をしたいと申し込んできた。
こいつに探偵としてのプライドはないのだろうか。
そして、今日は一人増えている。
この前さらわれていた多田の助手らしい。
名前は原美音外見的特徴をとらえるならば、特にない。
いかにも平凡で目につかなそうだ、町娘とでもいった方がいいだろうか。
ちなみに、彼女のチャームポイントは後ろにつけている青いリボンだ。
そして、今日の多田の格好は昨日と同じスーツだ。
髪色が茶色、その他の特徴といえば、スーツのズボンの根元に長い間同じ姿勢で座っていた折り目がついていることぐらいか。
自称探偵でしかも、助手までいる。それなのにスーツなんて高級なものを着て外を歩いていた。
通りすがりの人が見たら、執事か何かに見間違えるんじゃないか。
「ところで、君たちはいったいどこから来たんだい」
「実は…」
「異世界人⁉」
「信じてくれるか?」
「…まあ、それを私は嘘だと証明することができない。信じたとしてもデメリットはないし、君たちが嘘をつく理由もない。そのことはいったん横に置いておこう。ところで異世界の探偵は、私の助手になりたいみたいだけど何ができるんだ?」
「事務作業を手伝ってやろう。具体的に言うと、依頼の確認、留守中の来客の対応、手紙の返信、スケジュールの管理、事件の概要をまとめた資料。などなど、」
「事件の概要をまとめた資料。というのは何のために使うの?」
「もし、迷宮入りをしそうな事件があったとしましょう。まず、証拠がなければどうにもならない。もし次に同じような事件が起きた時に備えて記録を残しておけば似たような事件で過去の事例から証拠が見つかることもある。つまり何が言いたいのかというと、照らし合わせができるということだ」
「役に立つこともあるかもしれないわね。ところで、助手の助手はいったい何をしてくれるの?」
「私は、長い間一人暮らしの経験があるから。家事全般は一通りこなせます」
「つまり私は、家政婦と助手が手に入るわけだ」
これなら、より多くの依頼をこなすことができるかもしれない。
事務作業と家のかじを任せてしまえばその間私は自由に動くことができる。
しかし、これだとなんというか。
私が働いて二人を養っているみたいだな。
「まあ、いいだろう。下手に冒険者上がりを雇うよりもしっかり働けそうだし。」
「やりましたね、先生」
「おい、本当の探偵の前で先生と呼ぶのはやめてくれ」
「じゃあ、正道君って呼びますね」
「確かに俺の方が年下かもしれないが。まあ、別にダメとは言わない。これからは、同じ職場で働く同僚になるわけだしな」
「喜んで浮かれているところ悪いんだけど、雇用契約をするには何か身分を証明するものがなければいけない。君たちは住所もないし、言ってしまえば市民権がないわけだから。身分をしっかり証明するものがないと雇用契約書を書くときに、契約の魔法門が発動しない」
つまり俺には働く権利がないのか。
確かにそうだよな、元居た世界でも大学卒業の資格がなければ就職する資格もないし。
実務経験がなければ転職もできない。
つまり、俺はすべてをあの世界に置いてきた。
かっこつけてるわけじゃない。
「じゃあ、もう詰んでるじゃ…」
「そんなに心配しなくてもいい。これにはれっきとした裏技があって、冒険者に登録して、ある程度実績を残すと正当な冒険者として認められ冒険者カードを発行することができる。まずはこの町の冒険者ギルドに行ってくるといい。受付で仮登録をしたいといえば、名前を書くだけで問題はない」
つまり免許証をとるようなものか…
「その前にその格好で行くのは不自然だし、第一印象が悪くなる。その服を売って適当な服を買ってくるといい。その余りで安い短剣ぐらいは買うことができる」
最初は機嫌が悪そうだったがなんだか今では嬉しそうに色々教えてくれる。
「今から出かけようか、私はちょうどギルドに用があるし。一緒に行ってあげよう」
そんなこんなで今は服屋に来ている。
まあなんていうか、女子たちが楽しそうで何よりだ。
その間俺は男物の服をあさりながら疎外感を抱いていた。
こいつには今まで友達ができたことがなかったんじゃないだろうか。
悲しみからそんな皮肉を言ってやろうとした。
もちろん口からは出ていない。
俺を置いてあんなに踊るようにはしゃがなくてもいいじゃないか。
ぶつぶつぶつぶつ……
「…お客様何かお探しでしょうか」
「ああ、冒険者が切るような服ってあるか?」
「それでしたらこちらはどうでしょうか。これが一番オーソドックスな形です」
「なんか薄くて寒そうじゃないか。夏用なんだか冬用なんだかよくわからないな」
「冒険者なら一年中同じ服を着ますのでこの上にマントを羽織ったり。腕まくりをしながら生活しています」
「じゃあそれをくれ」
「かしこまりました」
こんな場違いな格好をしているせいか店員の態度がやけに丁寧だな。
さっきから気になっていた、シャルロワたちを少し見てみる。
遠目からアテレコしてみよう。
シャルロワが原に「こんな服はどうかしら?」
という感じで持ち上げた服を伸ばして、原の体に当てている。
そうすると、今まで着たことがないような服だからか似合うかどうかわかんないよ~
みたいな感じの顔をしている。
やっぱり女の子同士だと仲良くなるのが早いんだな。
そして、シャルロワがそんな様子も気にせずにこれを下さい。
と、片手を挙げている。
シャルロワは人に服を着せるのが好きなタイプなのかもしれない。
急にシャルロワがこちらを見てきた。
やばい、いやらしい目線を送っていたと勘違いされたか。
「あなたの服も選んであげましょう」
別に俺はかまってくれてうれしくはない。
「一応一番安そうなやつを買ったところなんだけど」
「それだけじゃ足りないでしょ」
「まあ、確かに」
「原も選んであげなさい」
「じゃあ、これとかどうですか?私が読んでいた漫画の主人公が着ていた服にそっくりだし」
そうして渡されたのは半ズボンの先がモフモフしていて明らかにどこかおかしい服だった。
するとシャルロワが何か面白いことを思いついたように、
「これと組み合わせるといいんじゃないかしら」
シャルロワは手にアロハシャツを握っている。
「早く試着してみて」
女の子に頼まれたら断れないのは言うまでもないだろう。
しかし、この組み合わせを見てさっき原が何を言っていたのか分かった。
少し違うけどル○ィーのコスプレになっている。
シャルロワのやつどうしてこの組み合わせが分かったんだ。
これが探偵の勘というやつなのかもしれない。
「すいません。麦わら帽子っておいてあります?」
「ちょうど今なくなっちゃってて」
「そうですか…」
やはり計画的犯行だったのか。
そのあとはシャルロワが持ってきたものを一通り着て。
いくつか買っていった。
女の子と遊んでるみたいでやばいぐらい楽しい。
楽しいひと時は一瞬で過ぎ去り。
とりあえず短剣を買って、俺たち一行は冒険者ギルドに向かった。
酒場兼宿屋、それとギルド。
昼間だからか人が極端に少ない。
俺のイメージだと入った瞬間ににらみを利かせてくるおっさんがいるものだと思っていたのに。
「シャルロワ、いつもより遅かったじゃない。」
「昨日はいろいろあって」
この受付のお姉さんとシャルロワは知り合いなんだろうか?
「連れがいるなんて珍しいわね。この二人は?」
「私の助手になる予定の男と家で働くことになった家政婦…お手伝いさんみたいなものよ」
ひどい紹介文だな。
「初めまして多田正道です」
「変わった名前ですね。私はマリー見ての通りギルド職員よ。」
「シャルロワさんのところで雇ってもらう予定の原美音です」
「そう、これからよろしくね。」
「早速だけど、私は依頼があるから二人はあなたに任せるわ」
「じゃあ、シャルロワは三階の応接室で待っててちょうだい。あなたたちは冒険者の仮登録をするのよね。」
「はい」
「じゃあこの紙に名前を書いて、そうするとあなたの魔力が登録されて裏面にステータスや、依頼の達成回数なんかが表示されるから。」
「魔力が登録されるっていうのはどういうことなんでしょうか?」
「魔力っていうのは人によってそれぞれ少しずつ異なっているから。魔力をデータベースに保存しておけば魔力を調べるだけで個人が特定できるの」
今までの世界でいうところのDNA検査みたいなものか…
この世界に来る前に魔法陣を書かされたからなんとなく予想はついてたけど魔法の概念があるんだな。
「じゃあ俺から名前を書こう」
多田正道
実はデスノートだったりしないよな。
緊張するし。
しかも書いた瞬間青色に光った、どうなってるのか仕組みが気になるな。
「五分ほど待つと。文字が浮き出てくるからちょっと待っててね」
振ったりしたら早く乾いたりするのかな。
「じゃあ次は私が…」
しょうもないことかもしれないが原の漢字ってこうやって書くのか。
俺が書いたときは青色に光ったのにこいつの時は白色に光ってる。
何か違いがあるのか。
「正道君のカードはそろそろ浮き出てるんじゃない?」
正道君って呼ばれるのなれないな。
「こんな感じだけど…」
俺のカードに記載されている項目は主に五つ。
魔法系統 青
種族 人
素質 魔法
転生 「」
戦闘能力 ゴブリン
ほとんど意味が分からない。
「マリーさん上から順番に説明してもらっていいですか」
「魔力系統はあなたの魔力が何に変化するかを表しいて青色だと水に変化する、素質っていうのはパーティーを組む時に何の役割が向いているか。転生は…見たことがないからわからないけど。戦闘能力はモンスターの強さを基準にどのぐらいの戦闘力なのかを客観的に表しているの。美音ちゃんのカードも見せてくれる?」
「こんな感じです」
魔力系統 白
種族 人
特技 魔法
武器 剣
スタイル ヒットアンドウェイ
「白は魔力を光に変換できるタイプで、特技はすでに魔法が使える状態にある場合に魔法と表記される。
これは、途中で表記が変わることがあるから、成長次第で変わったりすると思う。
武器は剣が向いているみたいね。
スタイルは戦闘スタイルのことで、素早く動けて器用な人が使う戦い方よ。
正直魔法の素質を持っていたとしても六年程度の勉強をしないと意味がないから、あまりいい素質ではないけど、美音ちゃんはれっきとした戦闘向き。
このまま冒険者になるならかなり活躍できると思う。」
「上の二つは変わらないのにその他の表記は人によって変わるのか?」
「上の二つは人によって変わることもないし、成長によっても変わることがないけど。下の三つは項目自体は変わらないものの、内容については多少の変化があるから、自分の目指したい方向で頑張ってみるといいわ」
「それじゃあ、魔法の勉強っていうのはどういうことをやればいいんだ?」
「魔術教本は高いから普通の人が買えるようなものじゃないし、魔術師の家系っていうのは親が子供に教えるものだから、頑張って魔法の師匠を探すしかないわね」
あきらめろって言われたようなもんだな。
どんな世界でも才能という言葉はあるに決まっている。
魔術師の家系に生まれなければ魔法は使えない。
無償で魔法の使い方を教えてくれるような人がるわけがないことぐらい想像がつく。
原は冒険者に向いているといわれて喜んでいる。
まさか、戦闘の素質があったなんて意外だ。
今気づいたけど、俺が短剣を買う必要なんかなかったんじゃないか。
この世界の金銭感覚がいまいちつかめてないけど、結構高い買い物だったはずだ。
「二人とも登録は終わったの?」
シャルロワが下りてきた。
「短剣を買うなら。ステータスを調べた後の方がよかったんじゃないか」
「別にあなたたちは戦わないんだからそんなの見るまでもないのよ」
つまりどういうことだ?
冒険者になったのに俺達には戦う予定がないだと?
「最初のうちはその短剣で薬草や木の実を採取したり。トラブルに巻き込まれたときに何か対抗できるように持っておくためのものだから」
「それは分かったけど、一体いつになったら。本当の冒険者として認めてもらえるんだ?」
「まあ、そういうのを千回くらいこなしたらかな」
「年月でいうと?」
「二三年ってところが妥当だけど」
「つまりそれまで無職ってことじゃん」
「大丈夫。それについてはもう考えてあるから、私のところに来た依頼の依頼書にあなたたちの名前を書いてそれをギルドにもっていけば実績としてカウントされるから、半年ほどで足りると思うわ。その短剣は副職として、依頼をこなすのに使えばいいの」
「じゃあ今お前が受けてきたギルドからの依頼を俺たちが手伝うってことだよな?」
「あなたは助手なんだから。何も言わずについてくればいいわ」
なんて頼れるんだろう。
こんなに頼れる探偵が居るなんて。
お姉さまとお呼びした方がいいかもしれない。
「マリーこれから私たちは仕事だから」
「あなた、性格がよくなったんじゃない?」
「ほっときなさい」