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第1話 死と異世界と

感想求

 彼は焦げ付いた鉄の臭いで目が覚めた。

 井関(いせき)高校二年一組、出席番号11番の姫田紅雄(ひめだべにお)は炎に包まれたバスの中から、必死に体を這いだした。全身血まみれで、紅雄がはい出た道筋には血が点々と落ちている。

 湿り気を帯びた地面の上で大の字に寝ころぶ。もう、疲れ果てていた。


「いてぇ……いてぇよ………」


 強い痛みが全身を襲い続ける。この痛みから解放されるのなら、もうなにをしてもいいと思うほど。

 ちらりと、壊れたバスを見やる。

 歪んだ車体に割れた窓。丘にはバスが通った道筋が地面に刻まれその先には途中で引きちぎられた白いガードレールがある。

 あそこから落ちたのだ。

 運転手の居眠り運転なのだろうか、彼ら井関高校二年一組を乗せたバスは高速道路のカーブを曲がらずにそのまままっすぐ進み、落下した。

 誰か生きている人はいないかな。そう思って、紅雄は丘の上からバスへと視線を戻した。

 割れた窓の向こうに手が見えた。こちらを招くようにブラブラと揺れている。彼か彼女かわからないが生きているんだ。助けに行こうと、体にムチ打ち、起き上がろうとした時だった。

 気づいてしまった。その手の色が肌色ではなく黒色であることに。


「ああ…………」


 全身から力が抜け、どさっと地面に落ちる。

 どうしてこんなことになったのか、自分たちが何をしたというのか。


「死にたくねぇ、死にたくねぇよぉ……!」


 燃えるバスの横で紅雄は泣いた。泣き続けた。泣いている間も、バスの中から人が出てくる音は聞こえなかった。

 自分の鳴き声を聞きながら、段々と姫田紅雄の意識はなくなっていった。

 そして、フッと宙に体が浮くように姫田紅雄は息を引き取った。


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